暴力的なゲームと攻撃性の関係に関する研究で「数学的に不可能」なデータが発覚―論文は撤回に | GameBusiness.jp

暴力的なゲームと攻撃性の関係に関する研究で「数学的に不可能」なデータが発覚―論文は撤回に

指摘を受けた研究者は、不正を否定しています。

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Philip Sowels/Future/ゲッティイメージズ
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Philip Sowels/Future/ゲッティイメージズ


重慶西南大学の研究者Qian Zhang氏が発表した暴力的なコンテンツと攻撃性に関する二つの論文について、調査の結果撤回されたことが分かりました。


Zhang氏は暴力的なコンテンツが暴力行為を助長するかどうかという問題を研究しており、今回の論文撤回はこれに関するものです。イリノイ州立大学の心理学者Joe Hilgard氏がこの研究についての懸念をブログで指摘したことがきっかけとなり、調査が行われました。


Hilgard氏はブログにて、論文内で使用されていた3,000人の被験者による統計データに「数学的に不可能」な部分を見つけたとして、その問題点を指摘しました。Zhang氏とジャーナルに警告したところ同氏は修正を提出し、より信憑性のある論文となったように見えましたが、それでもなお不正確な部分があったといいます。またHilgard氏は、三つの異なる論文でもほぼ同じ結果が出ているなどZhang氏の他の論文にも問題があることを確認。その後Zhang氏に対してデータを確認するようメールを送りましたが、拒否されたとのことです。


Hilgard氏はその後、Zhang氏の論文の共著者を経由してデータを求めたものの拒否され、最終的に送られてきたデータも不完全なものだったといいます。Zhang氏の大学にも調査結果を送りましたが、データに問題はあったが不正ではなかったとし、Zhang氏は「統計的な知識や研究方法に欠陥があった」とするのみ。こうした回答に不満を持ったHilgard氏は、関係する全てのジャーナルに自身の調査結果を送りました。


Hilgard氏ともう一人別の人物からの指摘が、Zhang氏の論文を載せていた「Youth & Society」の編集者でもあるミシガン大学アナーバー校の心理学者Marc Zimmerman氏の元に寄せられた後、ジャーナルからZhang氏の論文二つが撤回。Zimmerman氏は「間違ったデータを公表したいと思うジャーナル編集者はいません。しかし、これは深刻な告発です。」とコメントしています。


Zhang氏は雑誌「サイエンス」へ、「データを見るための“正しい”方法は決して一つだけではありません。」というメールを送り不正行為を否定。Hilgard氏が暴力的なゲームと攻撃性との関連に疑問を持っており、他者の研究にケチをつけて売名しようとしていると主張しました。


Zhang氏の共著者からも撤回を支持する声が出ているものの、一部ジャーナルではいまだに論文が撤回されていません。Hilgard氏はこうした問題への対策の遅れが、不正の巧妙化につながると述べています。なお、Zhang氏の最近の論文は、Hilgard氏に指摘された部分を避けて論じられているようです。

《TAKAJO@Game*Spark》

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