「ゆっくり、プレイしてほしい」―『キングダムカム・デリバランス』日本語版プロデューサー・松本卓也氏インタビュー | GameBusiness.jp

「ゆっくり、プレイしてほしい」―『キングダムカム・デリバランス』日本語版プロデューサー・松本卓也氏インタビュー

ローカライズや吹き替え収録時のエピソード、そして表現規制の部分などを、日本語版プロデューサーの松本卓也氏にお話しいただきました。

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DMM GAMESより7月18日に日本語版が発売される、PS4/PC『キングダムカム・デリバランス』。中世のボヘミア王国を舞台にした硬派なオープンワールドRPGとなっている本作が、全編日本語吹き替えのフルローカライズで登場します。

今回は、ローカライズや吹き替え収録時のエピソード、そして表現規制の部分などを、日本語版プロデューサーの松本卓也氏にお話しいただきました。

ちなみに、インタビューを行ったのは「『キングダムカム・デリバランス』プレスツアー in チェコ」の直後。松本さんもプレスツアーに参加されていたので、お互いその時の思い出を語り合いながらのインタビューとなりました(記事では割愛していますが)。

――改めて、となりますが、松本さん自身のことを教えていただけますか。

松本氏:2015年頭に入社後、『エルダー・スクロールズ・オンライン』『War Thunder』など、日本語ローカライズされていなかったタイトルに携わっています。DMMが得意とするPCプラットフォームで遊べるゲームの領域を広げるため、その後も『PUBG』などを持ち込んでいます。日本に入ってこない穴場のタイトルもたくさんあると思うので、それらを引き続きとっていきたいですね。


――日本語版『キングダムカム・デリバランス』における松本さんの役割を教えてください。

松本氏:本作ではディレクションに近い役割で、日本語版の品質を向上させるためのバグの修正なども行っています。あとは、プロデューサーとして予算をとってきたり、チェコ大使館と組んだ企画のお手伝いもしています。

――『キングダムカム・デリバランス』を日本で売るというお話は、DMM側からされたのでしょうか。

松本氏:アーリーアクセス版の頃から代理店に勧められていたようです。私自身もPC版が発売された時に買ってプレイをしていて、「いいな」と思っていたのですが、すでに社内でつながりがあったという形ですね。それが2018年2月で、交渉を始めながらローカライズのボリュームやDMMプラットフォームへのインテグレーションを確認し、2018年9月の東京ゲームショウで発表しました。

ローカライズもこの頃から始まっていて、本作のボリュームにしてはそこそこのスピード感で進んだと思います。『エルダー』では、シリーズものとして積み上げたものやユーザーさんのMODを丁寧に確認する作業などで、時間がかかりましたので。

――ボイスも含めて、半年でローカライズが完了するというのは、かなり早いのではないでしょうか。

松本氏:『キングダムカム・デリバランス』はゲームとしてはシンプルで、マルチプレイがなかったり、システムも複雑ではありません。とにかく多いのはお話と書物などの周辺情報だったので、ゲームとしてではなく、ドラマや映画としてローカライズ体制を組んで進めたのも合っていたと思います。

プラハで試遊をされて感じたと思いますが、魔法もドラゴンもなく地味な題材でありつつも、お茶の間から始まる丁寧なストーリーの入り方をしている。こうした部分は2クールぐらいのドラマに近く、ボリューム感としても海外ドラマの60話分ぐらいあるとのことでした。「ゲーム・オブ・スローンズ」ぐらいの文字数だとすると、5シーズン分ですね。


――実際の歴史に忠実で、ファンタジー要素がないというのは、ローカライズもしやすそうですね。

松本氏:例えば、チャールズ4世をカレル4世と呼ぶのか、ヘンリーをアンリーと呼ぶのかなどは考えましたが、それ以外では史実に出てくる呼び名をベースにして始められました。DVDではこう言ってたけれど、テレビ版では違う読み方だったなどのバラつきもなかったので、ローカライズも行いやすかったですね。

――『エルダー』などは造語もたくさんありますが、本作にはそうしたものはあまりないですからね。

松本氏:あとは方針として、古典的な重々しい喋り方は選びませんでした。テレーザも普通に可愛いし、お父さんも普通のお父さん。「銀河英雄伝説」よりも芝居がかっていない平易な文章だと思います。日常から入れる分、翻訳もやりやすいですし、ヘンリーの選択肢による行動の幅が大きくても肩ひじを張らずにプレイできると思います。

――とはいえ、苦労した部分もあったのではないでしょうか。

松本氏:音声の尺合わせは苦労しましたね。音響監督立ち会いのもと、収録現場で修正することも多くありました。そのような場合でも、魔法が存在する特殊な世界観ではなかったので、あまり迷わずに行えたのは良かったと思います。平民中心で、偉くても地主ぐらいなので、そうした馴染みやすさも本作のウリですね。

――派手さはありませんが、中世の世界に入り、自分自身としてプレイしていくのには馴染みやすいですよね。ヘンリーという主人公がいるにも関わらず。

松本氏:自分自身を投影する相手として、主人公は無色透明な方がいいと言われますが、ヘンリーには結構色があります。ただ、プレイヤーの選択への圧力はなく、「好きにやっていいよ」というのがずっと続く感じの作品ですね。カットシーンや演出が入ったドラマっぽいゲームが多いなかで、「ヘンリーはプレイヤー自身です」と言えるのは強みだと思います。

――他のオープンワールドタイプの作品と比べると、プレイヤーが自分を投影しやすい感じがあります。

松本氏:ヘンリーは考え方も普通で、女好きだったりおっさんっぽかったりしますからね(笑)。ディレクターであるダニエルは、RPGの新作を作るのに、こうしたキャラクターだったりチェコという狭い舞台を選択したりと、だいぶ難しい道を選んだと思います。開発のどの段階からこうしたビジョンを描いていたのかは興味がありますね。


――本作は他のオープンワールドに比べてキュッとまとまっている印象があり、Warhorse Studiosがどのような体験をプレイヤーにさせたかったのかが、ダイレクトに伝わってくるなと感じました。

松本氏:自分たちの手の長さを見誤っていない感じがしますね。ゲーム開発ではやりたいものがたくさんあってとっ散らかることがありますが、よく抑えてあると思います。

――やることが多すぎず、広すぎず、ストーリーものとして楽しめますよね。

松本氏:序盤をプレイすると、ストーリーに対して信頼感が湧く作りですよね。下手なことしないなというか。英語・ドイツ語・フランス語に続く日本語版なので、我々のローカライズもしっかりしないといけないとは思いました。そういえばチェコ語はまだ無いんですよね(笑)。

――チェコ語が無いのは意外ですね。日本語版では全て吹き替えになっていますが、声優さんを選ぶ際は悩まれましたか?

松本氏:まず、ヘンリーですね。本作は、周りのキャラクターがヘンリーに「どうするよ?」と問いかけて、プレイヤーがリアクションを返すゲームという捉え方をしたので、ヘンリーがどんな選択肢をしても耐えられる、舞台のようなアドリブもできる演技力があることを重視しました。それでいてゲームエンディングまで付き合って心地よいことが必須です。

結果的には、プレイヤーが自分を投影するうえで一番ネガティブが少ない方を選べたと思います。他のキャラクターについては、おじさんを魅力的にしたかったので、ディビシュは重鎮の方に、ぶっきらぼうで汚い言葉を使うハヌシュはそのノリができる方、ラジクは自分が一番好きなキャラクターというのもあって、かっこいい方を選びました。女性キャラについては、大人なシーンがあるのでそれを演じられる方が条件でした。

――収録現場でのエピソードはなにかありますか?

松本氏:最初に、全てのカットシーンを収録したのですが、声優さん全員に来ていただいて収録したんです。そのやり方でしか出ない空気感というのが確実にあって、各々のキャラクター作りはその現場で全部できました。例えば、ヘンリーと母親の掛け合いや、ひとつのシーンに7、8人出るところなどで、その成果は確実に出ていると思います。

声優さんが集まって録る際におもしろいと思ったのは、大ベテランの音響監督によって基本的に統率が取れている中で、声優さんの判断に任せる部分が多かったことです。声優さんたちは、台本を読んで英語音声を聞いて準備して来ているので、キャラクター同士の間を演じていただきながら、選択肢を掛け合いで録れるのは贅沢なことだと思います。

――日本語吹き替え版PVに関する、ユーザーの反応はいかがでしたか。

松本氏:Twitterなどで自然に馴染むというリアクションは見受けられました。メディアさんにもプレイしてもらって、尖ってはいないけれど邪魔をしていない、狙い通りのものになっていると思います。そのなかでお話を進めていくとキャラクターの強さが出ていくので、最初にヘンリーを自分の体に馴染ませていくものとして日本語吹き替えは上手く機能していると自信を持っています。今は音声に関する部分は完了していて、UIについてのクオリティをコントロールしている所です。


――CERO:Zとなる本作ですが、海外版から表現が変わっている部分はありますか?

松本氏:二か所ある少しセクシーなシーンが暗くなっていたりします。むしろ、よりセクシーな感じになっているかもしれませんが(笑)。他には、一か所ある内臓が出ている部分の修正が入っただけで、海外PC版との大きな差異はありません。

――楽しみですね…!海外版ではDLCも配信されていますが、日本語版ではどうなるのでしょう。

松本氏:時期を見計らってになりますが、日本でも出していこうと思っています。

――日本語限定版にはブックレットが付属するとのことですが、内容について教えてください。

松本氏:舞台やキャラクター設定について、ダニエルがいろいろなコメントを入れています。また、現在のメインビジュアルになるまでの過程も見られ、ヘンリーらしくないという議論もあったと書かれていたりと、開発の裏側を垣間見られます。Warhorse Studiosがどのようなビジョンを持ってこのゲームを作ったのか、そして、ビジョンに対する遂行能力の高さなどを感じることができますね。

他にも、マップデザインの繋ぎ合わせに関する部分や、修道院のフロアプランなどなど…100ページ近いボリュームになっています。お城好きや中世・RPG好きの皆さんにもおすすめです。あと、3枚付属するコインは英語版とは違い作中の紋章を再現していて、日本のみのグッズになります。


――最後になりますが、『キングダムカム・デリバランス』のここを見てほしいというポイントを教えてください。

松本氏:開発者にも言われたのですが、「ゆっくりプレイしろ」と。クエストマーカーを次々追いかけるのではなく、ひとつひとつの選択肢を選ぶ時、ヘンリーを操って向かう時、ひと呼吸ついてプレイしてほしいということです。日本語のフルボイスのローカライズにすることで良い点として、ユーザーがセリフをスキップしないというのがあると思います。そのため、彼らは自分たちが望むゲームテンポの設計をし、私たちはそれを崩すことなく、ほぼ完璧な形で日本語版を作れたと思っています。そこに注目してほしいですね。音声をじっくり聞いて、自分でひと呼吸置いて考えて進めていただけたらと思います。あとはユーザーの方々の意見をいただいて、どんどん良くしていきたいと思うので、引き続きよろしくお願いします。

――噛み締めながらプレイしたいと思います。ありがとうございました。


『キングダムカム・デリバランス』日本語版はPS4/PC向けに8,180円(限定版は11,620円、ダウンロード版は7,360円、全て税別)で2019年7月18日より発売中です。
《編集部@Game*Spark》

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