複数メディアで物語る「トランスメディアゲーム」の可能性ー『ガラパゴスの微振動』など3作品からの事例を語る【CEDEC2021】 | GameBusiness.jp

複数メディアで物語る「トランスメディアゲーム」の可能性ー『ガラパゴスの微振動』など3作品からの事例を語る【CEDEC2021】

現実とゲームが交叉する「トランスメディアゲーム」。「物語の大きさ・深さを錯覚」させるなど様々な知見が語られた

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複数メディアで物語る「トランスメディアゲーム」の可能性ー『ガラパゴスの微振動』など3作品からの事例を語る【CEDEC2021】
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石川淳一氏

昨年に引き続きオンライン開催となったゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC2021にて、ゲームの可能性を探り合う「トランスメディアゲームの可能性 ~新たな物語体験を目指して~」が実施されました。

このセッションには、有限会社エレメンツの取締役である石川淳一氏とENDROLLのCEO前元健志氏、バンダイナムコアミューズメントのプロダクトビジネスディビジョン プロデュース2部の森川寛信氏、SCRAPの執行役員きだ さおり氏の4名が登壇しました。

複数のメディアを跨ぐ「トランスメディアゲーム」とは?

始めにエレメンツの石川氏が登壇しました。「トランスメディアゲーム」とは、スライドの説明にもある通り「複数メディアを用いて物語や情報を発見し、行動するプレイヤー自身が参加者となるゲーム」です。この「トランスメディアゲーム」というのは石川氏の造語で、環境ストーリーテリングをリアルメディアに拡張したものではとも考えます。

もともとトランスメディアストーリーテリング(以下、TMS)という考えは、ヘンリー・ジェンキンズが2003年に提唱し、「コンヴィージェンス・カルチャー」で有名となります(意味としては、複数メディアなどで物語を展開し、そのストーリーが世界観を理解する助けとなる手法)。それらは、「スターウォーズ」や「マーベル・シネマティック・ユニバース」でも取り入れたことでも注目を集めました。

TMSには2種類存在し、世界設定を共有しプラットフォーム毎に物語が完結するフランチャイズ型(映画なら映画だけで、ゲームならゲームだけで完結する)や、映像やSNSなど情報が散りばめられ集まることで物語が見通せるARG型です。

トランスメディアゲームという言葉を作ったのは、フランチャイズ型とARG型で大きく異なりハリウッドの影響力が強く、フランチャイズ型がTMSと思われてしまう危険性があることから、ゲームに特化したトランスメディアゲームと提唱した方が良いのでは思ったからです(なお、過去の講演など参考にして欲しいとのこと)。

古くは2001年に実施されたエレクトロニックアーツによるARG『Majestic』や、直近なら『Project:;COLD case.613』が該当します。

『ガラパゴスの微振動』の場合

続けてENDROLLの前元氏が登壇します。本作は青春ADVと拡張現実、タイムトラベルを融合させた作品で、トランスメディア用いて2005年と2021年を繋ぐ物語を描くという特徴を持っています。

ここからは『ガラパゴスの微振動』が持つトランスメディアゲームとしての特徴を説明するものです。ゲームを購入すると実際にプレイヤーの家に謎の組織から1通の封筒が届き、プレイヤーへのタイムエディター任命書や重要なヒントとなるものが同封されています。

専用アプリをダウンロードし過去へと接続。アプリ内の探索などで、パスワードを解除する時はパズルを解くのでなく実際に探索や推理を通じてコードを推察し入力するなどの特徴を持ち、実際にWebブラウザで検索して出てくるブログを過去改変で行うことでリアルタイムに変わる様子が見られます。

またゲームに関わる謎の組織バタフライレスキューと実際にプレイヤーのLINEを通じて連携することや、ゲームの時間軸と実際の時間軸を合わせてゲームが進みます(「午後5時に待つ」とあれば、現実でも午後5時にならないと進行しないなど)。トランスメディアとして複数のメディア的なレイヤーが重なり合う本作の構造を現すとスライドのようになり、エージェントとしてプレイヤーが各世界へとアクセスするという構図です。

トランスメディアとしての説明はここまで、続いてビジネス的な部分での解説に移ります。本作はCampfireでのクラウドファンディングにおいて目標額より250%上回る資金調達に成功したタイトルですが、一般的なクラウドファンディングの出資額を下回るような作品だったという。この結果に対し、興味を持って「面白そう!」と思うユーザーがいる一方で、値付けをする時に市場価格が見えていないという問題があると述べます。

またゲームキットをAmazonなどで販売し、通常のスマートフォンゲームの単価としては高い方ですが、顧客の流入経路としては「口コミ」が中心で、純粋な興味によるオーガニック的なモデルに出来なかったと語ります。

販売戦略は極めて難しかったと結論付けます。小規模プロジェクトだったことから開発費は抑えることに成功している前提があるため、ビジネスとしての成立性があるものの大きさをみると難しいと思ったそうです。

また一方で、SNSなどで評価される時は、「加点法なら1万点!」など極端なものに偏りがちで、斬新さが売りとなってしまうことから連作を重ねていくのが難しいと判断。その中で、コアな価値を抽出したところ、口コミアンケートの結果で現実世界での行動変容があることから、現実の辛い時を体験で楽しい時間に書き換える「ライフハックゲーム」へ取り組んでいます。また本作がCEDECアワードで受賞したことを告知し、発表を次のバンダイナムコアミューズメントへ渡しました。

『#はやぶさ2からのメッセージ』バンダイナムコアミューズメントの場合

続いてはバンダイナムコアミューズメントの森川寛信氏が登壇しました。『#はやぶさ2からのメッセージ』は、「JAXAシンポジウム2020@オンライン」のサイドイベントとして2020年11月から12月まで期間限定で実施されたタイトルです。

本作の前提としては、コロナ禍で「特定のロケーションへ行く」という行為が難しいなか、ロケーションを前提としないリアルエンタメをどう考えるか?ということが出発点です。また開発の背景は、エンタメの力で宇宙についての興味関心の喚起と、JAXAシンポジウムとはやぶさ2のカプセル帰還をリンクさせるものとしての視点があったようです。そこから、現実と物語を繋ぐ手段として「トランスメディア・ストーリーテリング」を活用したと語ります。

ユーザーへのアウトプットに関しては、Webサイトや画像、動画、SNSなど色々考えたものの、「はやぶさ2に感情移入しすぎる物語」にするための能動的な物語体験であるため、インプットとアウトプットを返す仕組みから1対1のメディアであるLINE Botを主体にしています。

その他のメディアにおけるTMSでは、第1章から第3章までの構成で、その中にプラスしてシンポジウムが絡んでくるという構図とし、LINEを中心としながらも章ごとに電話やWebの検索など様々なメディアを用いたという。一方で物語やメディア特性に合ったミッションを設定を心がけ、文脈に沿わないパズルの使用は避けています。

またキャラクターの1人である風見さんへ電話するパートでは、電話自動応答サービスを活用し業務時間内での応答と、音声認識(最初の問いに対して「天文部」という単語に反応するようになっている)による2つの分岐を設けています。加えてARシミュレーターも活用しており、先輩が写真に託したメッセージを再生するように出来ているとのこと。

高い離脱率に関して実在の電話番号に電話をするのが思ったより勇気が必要な行為であったと分析している

「トランスメディアゲームの可能性」としては、宇宙開発やはやぶさ2など事実の積み重ねを活用することで、全てを1からつくらずにリッチコンテンツ化できることや、現実の知識を獲得出来ることにも繋がったと結論付けています。このスライドを説明したした後に次の登壇者へと移りました。

スライドではトランスメディアを用いることで「物語の大きさ・深さを錯覚」というのが他のゲームでも応用できそうだ

ユーザーが体験する物語「インサイドシアター」

次にSCRAPのきださおり氏が登壇しました。「インサイドシアター」は、PCやスマホを使ってオンラインで参加し(コメント欄やSNSなどでアウトプット)、ストーリーの登場人物としてコミュニケーションを取り物語を進めるというもの。2020年7月にスタートし、『シークレットカジノ』や『僕等のラストフェスティバル』、『オンラインパパラッチ』の現在までに4作目まで展開されています。

「インサイドシアター」の特徴としては、ユーザーの行動がストーリーを変えるものの「成功」や「失敗」の概念がないこと、見ているだけでも楽しいこと、同じが公演がなくその日その時間が特別なものとなること、最小100人から最大1万人の大人数が参加できることの4つが挙げられます。

「インサイドシアター」を制作した背景は、頑張りすぎないけど肯定してくれるエンターテインメントという事を出発点とし、結果に成否が分かれるもの既にあったことから、ラフに参加できるものになったと言う。他にも、「非日常体験」でなく我々の世界そのものを肯定するために、舞台設定やプラットフォーム、そしてアウトプットはなるべるリアルなものにこだわっています。また大人数が参加することで、見守った仲間が存在するということも含まれています。

また本作の概要ですが、『シークレットカジノ』は今後講演が再開する可能性があるために言及は出来ませんが、『オンラインパパラッチ』については公演が終わっていることもあり追加で解説されました。

『オンラインパパラッチ』は、横領の濡れ衣を着せられそうになっている依頼主の無実を証明するために、30分におよぶ監視カメラの映像から依頼主が無実の証拠を探し出すというもの。数々映像から、細かな違いや違和感を見つけつつ証拠を積み重ねていくことが主な行動になります。

様々な「現実に起こっていることにように感じられる工夫」を施した結果は、Twitter上で登場人物の名前や「#オンラインパパラッチ」などトレンドに大きく反映されたことに繋がります。オンラインだからこそリアリティや参加感はこれからもっと可能性が広がると述べ、親指一つで協力し仲良くできれば物事は良くなっていくことが体験できるのがオンライン参加型の特徴ではないかと語り、「インサイドシアター」第4弾を告知し、質疑応答へ移りました。

質疑応答

ここからは質疑応答で、気になる質問をピックアップしました。『#はやぶさ2からのメッセージ』で「もし、はやぶさ2が帰還できなかったら?」という不測の事態へのバックアップについての問いで、森川氏はエピローグがはやぶさ2の帰還前提の内容なので、不測の事態が起きたらエピローグの配信を取りやめることにしていたとのこと。また、「ちゃんと帰還したのを確認してからエピローグを配信しよう」と決めていたそうです。

森川寛信氏

「トランスメディアゲームにおいてどのメディアを組み合わせるか?」では、きだ氏が回答しました。それは「面倒くさくない」ところが大切であること。Twitterは登録していなくても閲覧できますが、InstagramやTikTokは登録しなければ深く見られずユーザーが途切れてしまうためボーナス的なところで留めていると答えます。

前元健志氏
きださおり氏

「悪意のある荒し対策はどうしているのか?」についてはきだ氏が回答。ユーザーに恵まれるのか(荒しは)余りないと前置きしつつ「勘違いして(ユーザーが)突っ走らないようにするため、(検索してヒットする)可能性があるアカウントや、一般の人を巻き込まないように絶対にない名前にする」など施策をしています。以上でセッションを終えました。


以上が「トランスメディアゲームの可能性 ~新たな物語体験を目指して~」のセッションです。通常のゲームでもトランスメディア的な施策は物語の補完などで多く活用されているために、新しくも馴染み深い内容でした。このジャンルが如何に周知され発展していくのについても注目が集まりそうです。

《G.Suzuki》

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