「闘神祭」はなぜ行われ、何を目指しているのか―タイトー・椎木庄平氏インタビュー | GameBusiness.jp

「闘神祭」はなぜ行われ、何を目指しているのか―タイトー・椎木庄平氏インタビュー

アーケードゲームで日本一のプレイヤーを選ぶ大規模大会「闘神祭2018-2019」が2019年3月23日、24日の二日間開催されました。会場にてタイトーのe-ARCADE SPOTS担当である椎木庄平氏にお話を伺うことができましたので、その模様を会場の写真とともにお送りします。

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数多くのアーケードゲームで日本一のプレイヤーを選ぶ大規模大会「闘神祭2018-2019」が2019年3月23日、24日の二日間開催されました。各タイトルごとに昨年4月から全国のゲームセンターでしのぎを削り、数多のプレイヤー中から選ばれた少数による予選・決勝。入場者で賑わい、名勝負がたくさん生まれた「闘神祭2018-2019」は今年で4回目の開催となります。

今回、会場にてタイトーのe-ARCADE SPORTS担当である椎木庄平氏にお話を伺うことができましたので、その模様を会場の写真とともにお送りします。

株式会社タイトー ビジネスプランナー/e-ARCADE SPORTS担当 椎木庄平氏

――本日はよろしくお願いします。さっそく質問なのですが、闘神祭の開催目的についてお聞かせください。

椎木庄平氏(以下、椎木)一つは弊社のNESiCAxLiveと呼ばれるプラットフォームのプロモーション、もう一つはゲームセンターで遊んで下さるお客様のモチベーションアップのために年に一回大きな大会を開いております。というのも、もともと僕たちはゲームセンターを運営している企業なので、お店単位では定期的に大会を開いていたのですが、全国のゲームセンターを使って日本一を決めようという目的のもと、闘神祭を開催していますね。

――ありがとうございます。この「闘神祭」という名前を見て私が思い出すのは、以前開催されていた「闘劇」というイベントなのですが、そちらの影響を受けているということはあるのでしょうか?

椎木:闘神祭の立ち上げ当初、関わっていたスタッフの中に闘劇にも携わっていた方はいました。しかし、そこから全てを引き継ぐというよりかは、私たちで独自に、全国大会を一から始めてみてはどうかというところがはしりですね。結果として名称に「闘」が付いているので、闘劇にちょっと似ているんですが、別物であると考えています。ですが、お客様に関して、闘劇と闘神祭との差別化について私達は特に気にしておりません。闘劇と比較されることも多いですが、私たちとしても文化の流れだと思っていますし、昔闘劇にいらっしゃっていた方が、こうして闘神祭にもお越し頂いていることをとても嬉しく思いますね。

――そうだったんですね。別物ではあっても、こうしてプレイヤーに愛される大会は素晴らしいと思います。
椎木さんは今年の闘神祭を直接会場で見てみて、どう思いましたか?


椎木:昨今のe-Sportsブームの影響で、今年の闘神祭の来場者数は非常に増えていると感じています。今年は新たにバーチャファイターの大会である「ビートライブカップ」を同じ会場にて併催しておりまして、そちらのお客様の入りも満員御礼ということで、非常に好評頂いております。また、前回までの闘神祭とは違い、若いお客様も多く見るようになりましたので、こういった形でe-Sportsの影響も出ているのかなと思っていますね。

――確かに選定されているタイトルについても、幅広いジャンルを揃えていると感じました。私が驚いたのは『湾岸ミッドナイト マキシマムチューン 6』や『頭文字D ARCADE STAGE Zero』といったレースゲームであったり、『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス 2』や『DISSIDIA FINAL FANTASY』であったりですね。格闘ゲームだけではない対戦の楽しさを今回感じることができました。こうしたタイトルの選定理由はどういったものなのでしょうか?

『湾岸ミッドナイト マキシマムチューン 6』の大会模様。多くのドライバーたちが会場で観戦していた。

椎木:基本的にはNESiCAxLiveで配信されているタイトルをメインに置こうと考えております。しかし、人気タイトルやお客様からの要望があるタイトルもございますので、そうした場合は各種メーカー様にお願いをしてNESiCAxLive以外のものもご協力頂き、提供していただいております。また、ドライブゲームをはじめ、ゲームセンターでしか味わえない体感型のゲームも率先して選定しています。今回選ばれた『湾岸ミッドナイト』や『頭文字D』についても、ゲームセンターならではのタイトルになりますよね。ゲームセンターの世界で日本一を決めるお祭りという目標のもとで動いておりますので、国内でアーケードゲームを作っているメーカー様ほとんどにお声がけしています。

当日はリリースされたばかりの『ストリートファイターV タイプアーケード』も種目として選定された。
写真は優勝したいぶき使いの「ナリ君」選手とカプコン プロモーションプロデューサー 綾野智章氏

――なるほど、ありがとうございます。今回で第4回目の開催ですよね?

椎木:そうですね、4年目になります。だいぶお客様にも覚えていただけましたし、今後も続けていけたらよいなと、目下検討中でございます。

――私も今回さまざまなブースを回り、対戦・観戦しているプレイヤーたちの姿を見て、ゲームセンターの盛り上がりを生で感じることができました。
それ以外にもメーカーさんの出展や試遊、放送番組など多くありましたが、今後もこのようなブースの増加は考えていますか?



株式会社ハムスターによるアーケードアーカイブス特設ブース。
会場にはファミコン芸人フジタとのアーケードアーカイブスタイトルによる対戦コーナーも

椎木:はい。今後も開催することができたら、ゲームセンターに関するお客様が喜んでいただけるコンテンツを協賛企業様にお声がけをして積極的に増やせていければと考えております。徐々に来場者数も増えてきておりますので、お客様が楽しめるものを可能な限り詰め込んでいきたいですね。参加プレイヤーたちの熱い戦いを観戦するだけではなくて、自身も遊んで帰れるお祭りを作っていければなと。

アークシステムワークスによる『キルラキル ザ・ゲーム -異布-』 試遊出展。

ゲームセンターの良さとして、ゲームを遊びに行く場所ではあるのですが、必ずしも自分がゲームをやっていたら楽しいというだけではなくて、仲間がゲームしているのをチーム皆で応援するというのも楽しいんですよね。チームやプレイしている人同士で盛り上がったり、今はオンラインで世界中がつながる良い時代になりましたが、コンシューマーゲーム機においてオンラインで知らない人と楽しむゲームの良さと、ゲームセンターで目の前の仲間とときには喧嘩したり慰め合ったりしながら楽しむゲームの良さと、それぞれ楽しみ方があると思うんですよね。そうして楽しみながらも切磋琢磨してきた仲間たちが全国大会に来て下さるんですよ。そして、表彰式でプレイヤーの方にコメントを頂くと、皆様必ず自分のことを言う前に仲間のことを褒めるんですよね。そうした瞬間を見ると、大会をやってきてよかったなと思いますね。

――なるほど……それで闘神祭に選定されているタイトルのレギュレーションにチーム戦が多いんですね。

椎木:そうですね。ソロの良さもあるのですが、ゲームセンターらしい良さを含めて2on2や3on3といったチーム対抗戦を多くしています。

――そのお話を聞いて、こうしたレギュレーションにとても納得できました。ありがとうございます。

『鉄拳7 FATED RETRIBUTION ROUND 2』決勝戦直前、TEAM YAMASA【ノビ選手/ユウ選手/タケ選手】と
キムチカステラ【Rangchu選手/チクリン選手/ノロマ選手】による対戦前コメントシーン。

――それでは次の質問へ。少しセンシティブな話題にはなりますが、こうした大きく盛り上がっている大会なのに、なぜ闘神祭に賞金をつけないのかをお聞かせいただきたいです。

椎木:正直な話、賞金に興味が無い、又は賞金を出したくない。というと嘘になります。ただ法的規制の壁がまだまだ強くてですね……。私たちのように、ゲームセンターを運営しつつ、同じ場所で予選大会を開くということになると、どうしても風俗営業法をはじめとした法律と照らし合わせていかなくてはなりません。よって賞金を出すということに関しては今慎重に進めていますね。将来的にその辺りのことがクリアできるのであれば、出す可能性もあるかもしれない……というところです。

ただ、闘神祭に参加するプレイヤーの方って賞金目的の方は非常に少ないんです。どちらかというと名誉とか、仲間たちと勝ち取った良い思い出というお金に代えられないものを目指して頑張っているんですよね。

――先ほど『ミリオンアーサー アルカナブラッド』の予選を見ていましたが、試合をしているチームのメンバーが喜んでいたり悔しがったり……真剣に戦っているプレイヤーの表情を見ていると、自然とこちらまで心を揺り動かされました。

椎木:その気持ち、すごくわかります。皆仲間のために一生懸命になるんですよ。各々一人の人間なんで、ときには喧嘩もすると思います。それでも仲間が勝ったら自分のことのように喜んでくれる。皆のおかげだ、という気持ちから涙を流す。こうして試合を見ていると皆さんが良い人たちに支えられてきているんだなというのを感じますよね。

ゲームセンターをそういったコミュニティにしたい、仲間がいて皆がいて、強くなっていくという場所にしたいんですよ。スポーツの良いところって、共通の目的のために仲間を作って、目標を達成する点にあると私は考えていて、体を動かす運動やゲームを問わず、皆のモチベーションに繋がるのかなと思っています。そういった意味でタイトーステーションのお店作りを今後も変えていこう、e-Sportsを見てゲームをうまくなりたいという人にもステップアップとして利用してもらえるようなお店を作っていきたいですね。

『ミリオンアーサー アルカナブラッド』決勝を勝ち抜き優勝したぼぶれいぶチーム【ぼぶ選手/れいぶ選手】

――ステップアップとして利用できるお店があったら私としても非常に嬉しい限りです!
先ほどe-Sportsのお話も出ましたが、昨今のe-Sportsブームに関して、運営者側から見た意見をお聞きしたいです。


椎木:運営をしていて感じるのは、前回大会と比べメディア取材依頼が飛躍的に増えまして、協賛企業に関するお問い合わせも非常に多くいただいております。とはいえ、私たちとしてはお客様が喜んでいただくために開催している大会ですので……少しだけ冷たい言い方にはなってしまうのですが、ひとつの事業として考えたときに、この闘神祭をどうやってマネタイズしていくのか?ということが現在の課題でして、慎重に検討している状況です。これに関してはほかの大きな大会も同様に、どうやって世間のe-Sportsに対する関心をビジネスとして盛り上げていくのかというのは課題としてありますね。私たちも企業ですので。

マネタイズの形式としてはチケット制にして、チケット収入としてお金を頂くのか? それともスポンサーからの協賛金を得て、大会予算を賄っていくのか? やり方はいくつか考えられると思うのですが、どういった形式にせよクリアしなければいけない壁はあります。なにより、このe-Sportsブームが突然去ってしまうのではないかという不安もあります。私たちが本気になって、来年は予算もしっかり確保し以前よりも大きい規模の闘神祭を開催しよう!と意気込んでみても、ブームが去ってしまっていたら肩透かしを食らってしまうと思います。このブームの勢いも非常に強く、どう対応していったら良いのかわからないという部分もあり、私たちとしても慎重に見極めております。

また、先ほどお話した法規制の壁も絡んできます。大会の規模を大きくするとなると、やはり賞金や賞品をはじめ、勝者に具体的ななにかが贈られるというものは参加者を増やすためのきっかけになるという事実もあるんですよね。名誉だけではない、もう少し参加者を増やす施策も、アミューズメント協会をはじめとした業界団体とも相談しながら進めております。一方、e-Sportsという言葉ができる前から、ゲームセンターでは、ゲームのうまい人の回りに人だかりができたり、対戦ゲームで盛り上がるという楽しみ方があったのも事実です。従って、流行に振り回されるのではなく、お客様が本当に喜んでいただけるような形で、ゲームセンターというリアルな場でのゲーム・コミュニティーを盛り上げていければと常に考えています。

――ありがとうございます。私個人の意見になりますが……椎木さんのおっしゃる通り、正直このブームがどうなってしまうのか、ある種の不安や恐ろしさを覚えています。

椎木:そうですね。皆様がおっしゃる意見として、人が作ったもので大会やイベントをすることによって、誰かが儲かってしまうというのは不公平なのではないか? また、自分が遊んでいる・練習しているゲームの運営が終わってしまったとき、今まで培ってきたものが無駄になってしまうのではないか?という不安を抱えているプレイヤーがとても多いです。

サッカーや野球は無くなりませんし、上に行けば行くほど甲子園・プロ野球といった受け皿があるじゃないですか。e-Sportsにおいてはコンテンツ・ゲーム側で発生する問題もありますし、なによりプロゲーマーとしての受け皿がないように、さまざまな問題があります。私たちとしては大会実施だけではなく、そういったプロゲーマーの受け皿としてのサポートや取り組みを検討できれば、と考えております。今はプレイヤーをプロゲーマーとして、チームとして企業が囲うということも起きていますからね。

――ありがとうございます。
では最後の質問へ。まとめになってしまいますが、闘神祭は今年で4年目となります。その経験を経て、今後検討すべき課題などはなにかありますか?


椎木:まずはやはり、アーケードゲームに慣れ親しんでいないお客様に闘神祭会場に来ていただくにはどうすればよいのか?という課題を感じております。いかにして興味を持っていただき、「ちょっと楽しそうだし行ってみようかな?」という気持ちでいらっしゃっていただける大会の実現が目標ですね。来年以降もお客様の層を増やし、厚くしていけるよう検討していきたいです。

あとは、法規制の壁とも真摯に向き合いながら、もっとプレイヤーが喜んでいただけるようなものを実現できればと考えています。


『DRAGONBALL ZENKAI BATTLE』優勝チーム「月1鶴見」【ロイド選手/宮ち1A9】
優勝チームに贈られる特別称号も。

――Twitchにて大会内容を配信しているというのも、アーケードゲームに慣れ親しんでいない方たちにも向けた戦略なんですね。

椎木:確かに、動画視聴がメインのお客様にも配信で会場の雰囲気をお伝えして興味を持ってもらいたい、ぜひ会場にいらっしゃっていただきたいという考えはあります。

加えて、家庭用のゲームをやっている方たちが、ゲームセンターに来ていただけるような理由を作ることができればなという意識もありますね。先ほどお話した内容にリンクするのですが、家庭用で練習していた方が、実際にe-Sportsの大会に出場してみたいなとなったとき、オンライン対戦から大きな大会への規模の変化に最初は驚いてしまうと思うんですよ。ギャラリーもいますし、多くの人にプレイを見られることになりますから、どうしても緊張してしまうと思います。

ですので、家と大きな大会とのワンクッションのような、中間地点の練習場所として位置するようなイメージで、ゲームセンターを利用していただきければ一番良いかなと考えているんですよね。家庭用で自信が付いてきた方が、大会が醸し出す空気に慣れていくためにゲームセンターに出向いて腕試しをしつつ、ほかのプレイヤーたちとも対戦していく。ゲームセンターで対戦するプレイヤーって基本的に中級者以上の方が多いですし、普段と違う環境に身をおいたあと、大きな大会に参加していくという道筋が、私たちとしてはおすすめかなと。最初からいきなりゲームセンターというのはどうしてもハードルが高いと思うんですよ。行く理由もないですから。しかし、自身が抱えているモチベーションをどうしていくか?と考えたときに、ゲームセンターを候補にあげていただければと思っています。

先ほど例に上げた野球もそうなんですよ。試合を見ている側から、やってみたいという意志が生まれ、友達とのキャッチボールからはじまり、ステップアップしつつチームに入ってみる。実際に試合を通して、多くの仲間ができて、だんだんと自分の人生の一部になっていきます。そういったライフサイクルを、ゲームでも形成することができるんですよね。そうした経験を経てきた多くのプレイヤーが、こうして闘神祭にいらっしゃっていますので、皆様のライフサイクル、人生経験の一部としていただければ私たちも嬉しく思います。

私たちが経営するタイトーステーションにおきましても、古くからあるゲームセンターのイメージ、タバコ臭かったり、薄暗い照明といったようなものを払拭し、明るいお店づくりに取り組んでおります。若い女性の方からお子様まで入りやすいお店づくりをしておりますので、家庭用でちょっと自信が付いてきてステップアップしたいと思ったら、ぜひ当店にて腕試しをしていただければ嬉しいですね!

――野球のたとえにまつわるお話は私としても共感できる部分があります。こうして闘神祭を見ることで、私も腕試しを兼ねてゲームセンターへ出向きたくなりました!
非常に興味深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございます!


《伊藤ガブリエル@インサイド》

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