老舗ビヤホールがアプリで“おもてなし” ー老舗の伝統と革新を伝えるアプリ活用術とは | GameBusiness.jp

老舗ビヤホールがアプリで“おもてなし” ー老舗の伝統と革新を伝えるアプリ活用術とは

ビヤホール・ビヤレストランを中心に和洋中の飲食業を展開している(株)ニユートーキヨー。創立80周年となる今年6月にスマホアプリをリリースした。店舗のチェックイン機能などをはじめ、顧客がアプリを使用することによってカスタマーサービスの向上を目指している

市場 マーケティング
公式アプリ「ニユートーキヨー」。「お客様の声をすぐに反映・改善する」ーーそれを具体化するために導入したのがスマホアプリでのサービス。“攻めの形”でサービスを提供できるのがプッシュ配信の強み
  • 公式アプリ「ニユートーキヨー」。「お客様の声をすぐに反映・改善する」ーーそれを具体化するために導入したのがスマホアプリでのサービス。“攻めの形”でサービスを提供できるのがプッシュ配信の強み
  • 店舗のチェックイン機能、位置情報利用による近隣の店舗検索機能、ボーナス特典機能などを実装。顧客がアプリを使用することによって各種データの蓄積・解析をすることでカスタマーサービスの向上が図れる
  • アプリのダウンロードは40~50代が中心。30代や女性に向けてのアプローチ方法が今後の課題。“登録するとビール1杯無料”のインセンティブは効果大
  • 「ニユートーキヨー」のほかに「庄屋」「七代目卯兵衛「HAMBURG WORKS」などグループ内で複数の業態によって違う「チェックインスタンプ」を発行。鉄道のスタンプラリーのよう集める楽しみも提供
  • 株式会社ニユートーキヨー 業務部マネージャー 犬井貴之氏(左)、社長室マネージャー 中西るみ氏(右)
【記事のポイント】
▼スマホアプリは顧客の要望をすぐに反映・改善するための強力なツールとなる
▼自社のメッセージやサービスを攻めの形で提供できるのがプッシュ配信の強み
▼アプリ登録を促すためには“登録するとビール1杯無料”などのインセンティブは効果大
▼アプリに来店時に楽しめるスタンプラリーの要素を入れることでリピーターを増やす施策も
▼カスタマイズが可能で安価なセミオーダー型のアプリ作成サービスも登場している


 インバウンド需要の拡大、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックといった要因から、「おもてなし」がキーワードとして注目されている。さらに、IT/IoTを活用した「おもてなし2.0」とでもいうべきサービスや製品が、飲食業・旅行業・物販業の領域で、多数登場しつつある。本記事はそうした最新事例を紹介し、自社での導入の参考とする内容だ。

 今回は株式会社ニユートーキヨーに焦点を当てる。ビヤホール・ビヤレストランを中心に和洋中の各種飲食業を展開している同社は1937年創業、創立80周年となる2017年の6月にGMO TECH株式会社の提供するアプリ作成プラットフォーム『GMOアップカプセルPRO』を使い、スマートフォン用の公式アプリ「ニユートーキヨー」をリリースした。

 公式アプリ「ニユートーキヨー」には店舗のチェックイン機能、屋号によって異なるスタンプカード機能、位置情報を利用することによる近隣の店舗検索機能、ボーナス特典機能などが実装されており、顧客がアプリを使用することによって各種データの蓄積・解析をすることによりCS(カスタマーサービス)の向上を目指しているという。

 なぜこのタイミングでスマートフォン用アプリを導入したのか、またアプリ導入による変化などについて、株式会社ニユートーキヨー 業務部マネージャーの犬井貴之氏と、社長室マネージャーの中西るみ氏に話を聞いた。

■アプリ導入による攻めのアプローチ

 今回リリースされた公式アプリ「ニユートーキヨー」には、店舗のチェックイン機能、スタンプカード機能、位置情報による近隣店舗検索、ボーナス特典(クーポン)機能などが実装されている。そもそもスマートフォン用のアプリを導入するきっかけは一体何だったのだろうか。

「旧本店を閉館し新たな創業期を迎えるにあたり『CS(カスタマーサービス)向上』というキーワードのもと、何ができるかを見つけて実行するためのプロジェクトチームが立ち上がりました。そこで出てきたのが、『お客様の声をすぐに反映・改善する』という方向性でした。それを具体化するための施策としてスマホでのサービスを考えようということになったのです。既存のグルメサイトのようにただ単に店舗の情報を掲載するだけでなく、お客様に“攻めの形”でサービスを提供できるという発想から、ダイレクトにアプローチできるプッシュ配信の利用が可能なアプリを導入することを決定しました」(犬井氏)

 “攻めの形”で顧客へアプローチする方法としてはSNSも有効だといえる。ニユートーキヨーではSNSの活用は検討されなかったのだろうか。

「SNSについては各店舗ごとにアカウントを作って発信していたため、情報の会社本部での一元管理が困難でした。その中でいかに全体の店舗を統一的に管理していくかを考えた結果、アプリの導入という結論に至りました」(犬井氏)

■インセンティブを付けて効果を増大させる

 公式アプリ「ニユートーキヨー」のダウンロード数はリリースから約2ヶ月で約2000とのことだが、実際に顧客や店舗スタッフの反応はどうなのだろうか。

「ニユートーキヨーのお客様は50~60代の世代が多く、アプリのダウンロードも40~50代のお客様が中心となっています。今後は30代のお客様や女性のお客様に向けてどうアプローチをするかが課題ですね。店舗でポスターを掲出したりQRコードを印刷したPOPを設置したりしてアプリの存在をアピールしています。“登録するとビール1杯無料”のようなインセンティブを付けたところ効果があがってきました」(中西氏)

「店舗スタッフへのガイダンスは、各店長へ個別に丁寧な説明を行いました。本部主導で一方的にアプリを配布すると『やらされた感』が強くなってしまうことを懸念してのことです。そのせいか、各店舗からアプリに対する要望が徐々に出てくるようになりました。このアプリでどのようなことができるか、どう情報発信できるかということを、スタッフの皆に引き続き強調していきたいと考えています」(犬井氏)



 ウェブサイトやアプリなどのサービスにおいて、ユーザーの利用実態を把握するための指標に「MAU(Monthly Active Users/月間アクティブユーザー)」がある。1ヶ月の間にそのサービスを実際に利用しているユーザーの割合だ。公式アプリ「ニユートーキヨー」のMAUは約50%。飲食業では通常15~20%だというから、利用者の数はかなり多いといえるだろう。

「アプリ導入にあたり重視した点はプッシュ機能と位置情報ですが、個人的に気に入っているのは各屋号(グループ内には「ニユートーキヨー」のほかに「庄屋」「七代目卯兵衛」「HAMBURG WORKS」など複数の業態があり、各店舗の情報もアプリ内で見ることができる)によって違う「チェックインスタンプ」を発行していることです。スタンプを集めていただくと特典がつくのですが、それだけでなく鉄道のスタンプラリーのように個々に違うスタンプを集める楽しみも提供できていると感じています。これは複数の屋号のある弊社ならではの強みだと思っています。今回採用したGMO TECHさんの「GMOアップカプセルPRO」は拡張性もあるので、その点も期待が大きいです。今後は個室のある店舗や貸し切りができる店舗を検索する機能や、その場で予約ができる機能などを組み込んでいきたいですね」(犬井氏)

「GMOアップカプセルPRO」はカスタマイズが可能にも関わらずセミオーダー型のサービスであるため、導入コストはかなり低く抑えられたという。オリジナルアプリをスクラッチ開発(ゼロから作る)する場合は、10倍程度の初期費用、納期は3倍程度かかる可能性が高く、スマホアプリを検討中の中小企業にとっては導入しやすい内容だといえるだろう。

■老舗が考えるおもてなしとは?

 今年の6月に創業80年を迎えたニユートーキヨー。老舗のビヤホールが考える「おもてなし」とは一体どういうものなのだろうか?

「私たちの提供する具体的なサービス以上に『お客様がどう感じるか』ということがポイントだと思います。それがおもてなしであるのか、そうでないのかはお客様が判断されることです。お客様が店を出られる時に笑顔であるかどうか、そこが一番重要な点です。サービスはどこの飲食店でもできますが、お客様に笑顔で帰っていただくということはなかなかできません。『また来るよ』『もう一度ニユートーキヨーでビールが飲みたい』とお客様に思っていただく、もっと極端にいえば『お客様が笑顔でお店に入ってこられる』ーーそういう風にお客さまに感じていただけて初めて、おもてなしのできるお店といえるのではないでしょうか」

(インタビュー/加藤陽之)

サービス業のIT利用最前線!13 アプリで伝える、老舗の伝統と革新/ニユートーキヨー

《HANJO HANJO編集部》

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