4つの会社の叡智が結集した『ガンダムキングダム』 Autodesk Mayaの「MEL」を用いてDCCツールを開発効率向上にフル活用・・・第2回「3Dモバイルゲーム新時代」 | GameBusiness.jp

4つの会社の叡智が結集した『ガンダムキングダム』 Autodesk Mayaの「MEL」を用いてDCCツールを開発効率向上にフル活用・・・第2回「3Dモバイルゲーム新時代」

ディー・エヌ・エー(DeNA)とバンダイナムコゲームスの合弁会社として設立されたBNDeNA。ソーシャルゲームと家庭用ゲームの叡智が集ったこの会社ではバンダイナムコを代表するIPの「マクロス」と「ガンダム」を用いたソーシャルゲームが制作されています。「3Dゲーム新時

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ディー・エヌ・エー(DeNA)とバンダイナムコゲームスの合弁会社として設立されたBNDeNA。ソーシャルゲームと家庭用ゲームの叡智が集ったこの会社ではバンダイナムコを代表するIPの「マクロス」と「ガンダム」を用いたソーシャルゲームが制作されています。「3Dゲーム新時
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ディー・エヌ・エー(DeNA)とバンダイナムコゲームスの合弁会社として設立されたBNDeNA。ソーシャルゲームと家庭用ゲームの叡智が集ったこの会社ではバンダイナムコを代表するIPの「マクロス」と「ガンダム」を用いたソーシャルゲームが制作されています。「3Dゲーム新時代」の第2回では同社を訪問してUnity + Mayaで制作されている『ガンダムキングダム』の開発チームに話を聞きました。

■参加者
・寺本秀雄氏 プロデューサーとして開発全般を指揮
・奥井幸人氏 企画・プランナーとして作品全般の企画立案を担当
・渡来慎氏  デザイナーの統括としてスケジュール管理や進行などを担当
・兼子和浩氏 テクニカルアーティストとしてMayaのMELを用いたツール開発や背景制作を担当
・田村敏明氏 プログラマーとしてアプリケーションの開発を担当

■ガンダムキングダム
パブリッシャー:バンダイナムコゲームス
開発・運営  :BNDeNA
アイテム課金制




■4つの血が交じり合ったユニークな会社

―――『ガンダムキングダム』の概要を教えてください。

寺本: 『ガンダムキングダム』は、様々なガンダムシリーズのキャラクターやモビルスーツが登場し、それをカードとして収集、デッキを組みバトルをしていくゲームです。カードゲームなのですが、3Dポリゴンを使った派手で迫力のあるビジュアルが楽しめ、「かっこいい」と思って貰えるようなゲームにしました。スマートフォンですが、家庭用ゲーム機並のものが実現できていると自負していて、その実現には今回集まったメンバーの頑張りが必要不可欠でした。ゲームは2013年1月11日にサービスを開始し、現在はiOSとAndroid向けに運営しています。

―――BNDeNAはDeNAとバンダイナムコゲームスの合弁会社ですが、『ガンダムキングダム』のチームの皆さんは、実はもっと色々なところから集められたと聞きました。


寺本氏
寺本: 会社としてのBNDeNAはご存知の通り、DeNAとバンダイナムコゲームスの合弁会社です。でも、バンダイナムコ側のメンバーも、バンダイナムコゲームス、バンダイナムコスタジオ、B.B.スタジオ(ベックとバンプレストが合併)という風に様々でして、今回のチームは実に4社からメンバーが集まっています。バンダイナムコのメンバーは全員、家庭用ゲーム機でゲームを作ってきた人間です。そうしたメンバーとDeNAでソーシャルゲームを作ってきたメンバーが集まるとどんな化学反応を起こすだろう? というのが会社の始まりです。最初に『マクロスSP クロスデカルチャー!!!』を作って、続いて『ガンダムキングダム』を制作しています。

―――多くの会社から集まり、チーム作りは容易ではないと想像できますが・・・。


奥井氏
奥井: そうですね。それは大変な部分でしたね。DeNAとバンダイナムコではやってきたことが全然違います。それにバンダイナムコの3社でも、実は一緒に仕事をするという機会はそう多くはありませんでした。そういう意味で非常に新鮮な体験ではありました。会社のテーマが化学反応を起こすということでもありますし、非常に多くの議論を重ねました。

―――何のゲームを作るというのはどうやって決まったのでしょうか?

奥井: もともとバンダイナムコの強みを活かすということで、会社設立の段階から作品として「マクロス」と「ガンダム」をやることは決まっていました。しかし内容は固まっておらず、集まったメンバーでやっていくことになり、議論をしながら大枠の企画は私が書きました。特に「ガンダム」については既にソーシャルゲームで複数の作品がリリースされていましたので、差別化をしながら、このチームで何を作るべきかを考えました。そこで生まれたのが「3D」や「Unity」といったキーワードです。徐々に端末の性能も上がってきていましたので、魅せる「ガンダム」を作ったら面白いんじゃないかということですね。

―――意思疎通のために、ゲームの完成形のイメージムービーを作られたそうですね

奥井: 初めて仕事するメンバーで、共通言語がありませんでしたので、具体的に見て共有してもらうのが一番シンプルだったんです。「3D」や「Unity」というようなキーワードも紙の企画書だけでは、どういうものが実現できるのか説得力が余り無いですよね。そこで、実際にUnityを使って、それも現在の端末での実現可能性も踏まえたスペックで、デモを作成し、それを実際にスマートフォン上で触って貰うということを行いました。見てもらうと、「3Dってこういうことか!」「今までのガンダムゲームとは違う」といった事が容易に理解されるようになりました。プロトタイプを作ることで、信ぴょう性の高い残り工数も試算でき、会社に対する企画提案としても良いものができたと思います。

寺本: 『ガンダムキングダム』のチームは極少数のメンバーから始まって、僕も含めて後から入った人間が多いんです。そうした際には奥井が作ったプロトタイプが一番分かりやすかったですし、チーム全員の共通言語として「ここを目指すんだ!」というのが明確になっていました。それから、単に理想を描いたものではなく、きちんと端末性能や必要工数を考慮した実現可能性を持ったプロトタイプだったというのも良かったですね。プロジェクトのかなり強力な推進力となりました。

―――普通はここまでしないですよね?

奥井: 全く新しいチームだったというのが大きいと思います。それから、バンダイナムコとしてはソーシャルゲームを未経験の人間ばかりだったのですが、「無勉強でソーシャルゲームを始めたわけじゃない」というのを見せる意味もあったかもしれません(笑)。鵜之澤(バンダイナムコゲームス代表取締役副社長)からも「勉強せい」と言われてきまして、既存のソーシャルゲームの分析はかなりやってきました。ゲームシステム、パラメーター設計、演出設計、通信速度、Unityの性能、マーケティングなども考慮したプロトタイプでした。

―――開発のスケジュールはどのようなものだったんでしょうか?

奥井: 一昨年の10月3日にBNDeNAという会社ができて、年内くらいでプロトタイプを制作しました。Unityでの制作は思った以上に順調に進みました。先ほどもお話したように、かなり実制作を考慮して設計しています。実際の開発作業は1本目で取り組んでいた『マクロス』との兼ね合いもあり、翌年の8月頃からでした。1年くらい企画を暖めていて、ようやくメンバーが集まってスタートという形です。本格的に開発を行ったのは、それから3、4ヶ月間で、10月中旬からクローズドβを開始して、今年の1月に正式サービスインですね。

寺本: 本当に短い期間で、本格的な3Dゲームをどう作るか、効率的なワークフローをどう構築するか、そういう戦いでしたね。

―――ゲームとしては「3Dで魅せる」というキーワードがありましたが、この他に意識された点はありましたか?

奥井: 企画者として気にしていたのは、ある程度ライトなカードゲームを意識していましたね。カジュアルに遊べて、本格的なビジュアルで魅せていく、という組み合わせでしょうか? ただし、何がライトか? という点はまだ手探りではありますね。今の段階ではソーシャルゲームのカードゲームに親しんでいるお客様に受け入れられるものを意識して運営しています。

―――「ガンダム」ゲームとしてはいかがですか?

奥井: 見せ方としては、前を向いてるガンダムをずっと作りたくて(笑)。過去のゲームはアクションゲームが多く、どうしてもガンダムを背後から見るケースが多くて、いざという時のカットシーンくらいしか前方からのガンダムを見られなかったんです。でも、ガンダムのソーシャルゲームを作るということで、前から見たカッコいいガンダムをもっと見せられると思ったんです。ある程度カジュアルに遊べるものを目指しましたので、ビジュアル要素を強く入れても破綻しない、と。カードゲームですので、色々なカードを集めて遊んでいきますが、簡単に手に入るようなカードでも映像を見るとワクワクするようなところは目指しました。そのガンダムを最も美しく描いた映像や、アニメの名シーンを再現した映像など、今後はもっと取り入れていきたいと思っています。

渡来: 「背中を見せないガンダム」って言ってましたね。


正面からのかっこいいガンダムを存分に楽しめる


―――非常に短い開発期間の中で、制作で注力した部分はどこでしょうか?

奥井: 作ってみて一番ネックになったのはモーションの大量生産ですね。どうしてもデザイナーの工数を割かなければならない部分で、かつ大量のキャラクターをいかに効率良く作るかというのは苦労しました。意識したのはメリハリを付けることですね。どこに注力して、どこに妥協するかというのは家庭用ゲーム機で作っていた時よりもシビアに考えました。ちょっとした動きを入れるか入れないかで大きく工数が変わっていきますので。

寺本: このメンバーが意識していたのは、「ガンダムを魅せる」というのもしかりですが、同時にサービスイン時にキチンとした数を揃えるということです。カードゲームですので、ある程度の数はどうしても必須ですが、工数は掛け算になりますので。

奥井: 初期で現場が奮闘したのは、シーンのコスト計算です。そのシーンを作るのに必要な全ての要素とパーツを洗い出して、どのくらいの負荷になるかを事前にプログラマーとデザイナーで検証していきました。このパーツとパーツは負荷が高いから同時には出せない、とか、半透明の処理は負荷が高すぎる、といった話ですね。なんとか辻褄の合う組み合わせや、ゲーム性の調整を行なっていきました。事前の準備をしっかりしたお陰で、最後になって負荷が高すぎて描画できない、なんてことは無く成りました。

寺本: 長く運営していきながら要素も追加していきますので、その辺りも考慮に入れてます。例えばこの3月に「ガンダムUC」の新作エピソードが公開されたように、サービスイン後にもあたらしいキャラクターが発表されていくわけです。

奥井: ガンダムの言葉で説明すると、今までのガンダムやジムやボールでは大丈夫だけど、「ガンダムユニコーン」のシャンブロなんかは今まで想定していたテクスチャ容量じゃ全然間に合わなかったりといったことですね。チームがガンダムゲームのベテラン揃いだと想定できたりするんですが、やっぱり初めてだと分からない(笑)。でも、納品されてきた素材が異常に大きかったり、とんでもない突起物がいっぱいくっついてるのを見て「これは無理だね」という意志の疎通ができてくる(笑)。ここに到達するまで、ある程度の時間は必要でした。

寺本: 端末が多いというのもネックになりましたね。


田村氏
田村: 家庭用ゲーム機と一番違うのはそこですね。スマートフォンはどんどん性能が上がってきてますが、お客様の使ってる端末は最新機種とは限りません。性能も全端末が一直線に上がっていくわけじゃなくて、描画が得意な端末もあれば、不得意な端末もあるんです。売上を考慮すれば古い端末もカバーした方が良いですが、その分で制約は大きくなります。それに端末だけでなくOS異存もあります。この辺りは現場判断ではいかんともしがたい部分はありますね。

寺本: 対応端末を決める上ではDeNAの知見も非常に大きかったですね。

―――ワークフローはどうやって構築されていったんでしょうか? ゲームエンジンに「Unity」を使うのはある程度前提になっていたのですか?

寺本: そうですね、Unityを使うのは最初から決まってましたね。

渡来: オートデスクさんのMayaを使うというのは、コンシューマーで培った技術を応用したいという理由からです。兼子がMEL(Mayaにおけるスクリプト言語)に精通していましたので、最大限発揮してもらって効率的な制作ができるようにという考えもありました。


兼子氏
兼子: ワークフローとしては、過去にリリースされたタイトルの資産もありますので、まずはそれらの変換作業を行っています。この機体データは、1体20〜30枚のテクスチャが使われているため、テクスチャをワンパック化するMELで、256×512px1枚に統合する処理を最初に行っています。資産のない機体は、新規に作成しています。


次に、この機体モデルに対して、骨とアニメーションリグを入れるセットアップ作業を行います。人型の機体に関しては、自動セットアップMELを使い、数分から数十分の作業時間でセットアップが完了するようになっています。このセットアップMELでは、様々なポーズの確認を行う機能を入れていますので、セットアップ→ポーズチェック→骨位置調整→再セットアップが、素早く繰り返し行える仕組みとなっています。人型以外の機体に関しては、手作業でのセットアップとなります。

続いてモーション作成となります。人型の機体であれば、上記でセットアップをした同一の骨・リグとなっていますので、体型補完処理を加えたモーションコピーで、モーション流用がしやすい作りとなっています。ただし、腕の長さや肩幅が極端に違う機体など、コピー後に調整が必要となる機体もあります。ガンダムの事なら何でも知っているモーションデザイナーが揃っていますので、特徴的な機体や、攻撃シーンのように各機体のメインどころとなるモーションなどは、極力オリジナルのモーションを制作しています。人型以外の機体についても、構造がそれぞれ異なるものが多いため、オリジナルのモーション制作となります。


リグ生成、モーションコピー、コンバートなど機体関連の作業を行うMEL



人型の機体は共通のリグ構造が自動生成されるようになっている



モーションコピーの実行結果。共通のリグ構造で、どの機体にも同じポーズのモーションコピーが可能となっている


寺本: ガンダムって過去に非常に多くの作品があって、データもバランスの取り方も違っていたりするんです。それをいかに吸収して、効率化するかという課題をMELで解決したということかなと思います。実際にかなり効果的でしたね。

奥井: もう一つ背景として、過去のガンダムゲームは個別にDCCツールが3ds Maxだったり、XSIだったりとバラバラだったんです。それを6年程前から各社でMayaに統一していこうと着手してきたんです。共通の素材を使いたいというのは今に始まった課題ではありませんので。残念ながらDCCツールの統一以上にはなかなか進めてこなかったんですが、力技で解決を探れる家庭用ゲーム機ではなく、予算も期間も限られるソーシャルゲームへの挑戦という良い機会を得て、プログラマー、モーションデザイナー、モデラー、色んな人の協力を得て、過去の試算を活かす仕組み作りがようやく日の目を見たということではないかと思います。MayaはMELで機能拡張が自由にできるというのが良い点で、本当にMayaに統一しておいて良かったです(笑)。

―――次はこの仕組を他のプロジェクトに応用するのが課題になりそうですね

兼子: リグ構造など、プロジェクトごとにルールが異なる部分もあったりするのですが、流用しやすい環境づくりを進めていきたいと思っています。

―――作ったモデルデータはどのようにUnityにインポートしていくのですか?

兼子: モーションのついたMayaデータを、Unity用にFBXとして出力するのですが、各機体に大量のモーションデータがついていますので、FBX化直前に、必要なモーションだけに絞りUnity出力する処理となっています。

奥井: これを必要としたのは実はカードゲームならではで、同じ機体でもハンマーを持った機体、ライフルを持った機体、サーベルを持った機体という風に色々なカードが存在します。どれも共通のモーションはあるんだけど、全てのモーションが必要なわけではないと。製作段階では全てのモーションを持った機体なのですが、実際のカードとしてリリースする際には必要なモーションだけを抽出してデータ化しています。

兼子: 全てのモーションを持ったまま出力すると容量やメモリが膨大なものになってしまいますので。

―――なるほど

兼子: 出力時には、モーションの何フレから何フレか、ループの有無などの情報を同時に吐き出していて、そのままUnityに持っていくことで、その通りにモーションの切り分けが行われるようになっています。デザイナーがチェックする用のビュアーも用意していますので、モーション確認をUnityで見ながら行っています。


Maya上でのモーション確認と、コンバート用の設定を行うモーション管理シート。チェックを入れたモーションと武器のみが選別されてコンバートされる



Unity上のモーションチェックビューア。確認したい機体のモーションが瞬時に確認できる


―――負荷を軽減する工夫は他にもありましたか?

兼子: 機体データは、ポリゴンの追加や修正がいつでも行えるように、骨の下にポリゴンを入れた非スキンデータで作業を行っています。ただし、このデータのままUnityに出力すると、ドローコール数による処理負荷が高くなるため、出力時に、ポリゴンモデル全体を結合し、一つの頂点が一つのボーンにウエイトされる形のスキンデータ処理を行っています。
これは、以前オートデスクさんのセミナーに参加した際に、元セガで現在はオートデスクにいらっしゃる築島氏の講演内容を参考にさせていただき、組み込んでいます(こちらを参照)。

兼子: 3Dデータも、通信でお客様の端末に送られていますので、軽い容量にする必要があります。背景については、1ステージ500〜6000頂点で制作しています。テクスチャは512×1024もしくは1024×1024の不透明テクスチャ1枚と、128×128程度の半透明テクスチャ1枚で仕上げています。機体も256×512テクスチャ1枚ですので、容量はかなり小さく抑えているかと思います。描画負荷に関する工夫ですが、背景は、画面全体に描画しますので、最も処理が軽い、テクスチャをそのまま貼り付けているだけのシェーダにしています。テクスチャのみでもクオリティが高く見えるように、Maya上で、ライトマップ、オクルージョン、グローバルイルミネーション等のベイク画像を生成し、各画像の強弱をブレンド調整して、1枚結合するMELを使用しテクスチャ生成をしています。半透明テクスチャは処理負荷が高いため、最低限必要な部分のみで使用しています。


ステージ用のテクスチャ生成ツール。複数枚の陰影テクスチャを生成し、そのブレンド具合をリアルタイムに確認しながら調整を行う。調整結果は1枚のテクスチャとして出力される




機体もステージも非常に少ないポリゴン数で作られている


―――エフェクトについてはいかがですか?

兼子: エフェクトについてはエクセルシートを使って、タイミング設定や様々な調整ができる環境となっています。この辺りは田村さんに環境を整えて頂きました。

田村: Unityではアニメーションの機能として、イベントを設定できますので、エクセルシートに書かれている情報を元にエフェクトの発生をコントロールしています。これだけでエフェクト付きでアニメーションが再生できます。エフェクトの付加はプログラマーがいなくてもデザイナーだけで行なって、それを実機で確認できる部分まで環境を用意しています。実際のリリース時には、アセットバンドルして機体データと一緒にアップロードして、随時ダウンロードしてもらうようになっています。機体はどんどん追加されていきますので。サーバーに上がっているデータを一覧して確認できるようなビュアーも制作しました。

―――聞いているとツールもスクリプトも膨大な量ですね

兼子: 恐らく1万行は書いてる気がします

―――随時追加していきながら?

兼子: そうですね。色々なパターンの機体がありますし、元データの作りもバラバラでしたので、どうしても不具合が出てきてしまい、それを潰していった感じですね。時期的には6〜7月頃にツール制作に取り組んでいたのですが、その後も多々修正に追われて・・・。それから、Mayaで作ったものと、Unityにインポートしたものとで、少々違いが出てしまう部分もあったりして、その違いを吸収するのに苦労しました。なにせ初めての事が多かったので、手探りではありました。

―――ワークフローも変わっていったのですか?

奥井: 最初に構築するまでは大変でしたが、それ以降はどんどん進化させていった形でしょうか。Unityという開発環境を初めて使って、非常に開発が容易になった面もありますし、全然足りない部分も試作の段階で見えてくるわけです。試作の段階で、そこに足りてなくて必要なものはすぐに明確になりました。重い部分については本格的な開発が始まる前に手当できました。

■リリースしても終わらない

―――開発チームはどのくらいの規模なのでしょうか?

寺本: 自分が最初に参加した際は4、5人でしたが、現状は30人弱の陣容です。

―――30人弱というのはどういう考えで決まってるものなのでしょうか?

寺本: 正解は分からないというのが正直なところです。今は、売り上げを見てというよりは、必要なものを作って運営していくために必要な人数ということで考えています。今はまだ攻めの時期ですので、お客様に求められるものを迅速に提供するための構成です。ただ、30人という数字はタイトルを掛け持ちしているメンバーもいれば、複数の役割を果たしているメンバーもいたりして、単純に数字だけで考えられるものではないですね。

―――サービスイン前と比較すると?

奥井: 人数は増えてますね。

―――3Dデザイナーは何人くらい含まれるのでしょうか?


渡来氏
渡来: 3Dに携わっているデザイナーはモーション、モデル、エフェクトで7名ですね。兼子のように、テクノロジーに携わりながらデザイナー的な動きをしている人間もいますね。掛け持ちもいます。

―――サービス前と後では体制やワークフローは変わるものですか?

寺本: ワークフローという意味では変わらないとおもいますね。チーム編成は業務的な意味もあるので、多少変わってくるかなと思います。実際に先日行いました。

渡来: 時にMayaを使うような部分のワークフローは変わらないですね。ただ、どんどん制作コストを引き下げていく努力は特に兼子の方でやっていく感じでしょうか。

兼子: 例えばいまはデータ管理ツールなんかも作っています。これもMELですね。本当にMayaがなかったら、僕自身の作業効率も10倍落ちると思います(笑)。


奥井: 人数は増える傾向にあるんですが、兼子がMELで環境整備を進めてくれたお陰で、データ制作で外部に発注できる範囲も広がっているんです。それでデータ単価のようなものは格段に下がってきています。それに、カードゲームとしてはカード数や機体数は圧倒的に足りないと思っています。サービスインまでに揃えられれば良かったのですが、なかなかの苦労があって、ようやく改善を続けた結果、外部にも出せるようになって、何ヶ月かかかって大量生産できる体制になってきました。

渡来: 何ヶ月と言っても4ヶ月くらいですけどね(笑)。

奥井: 本当に月単位でどんどん進化していっています。

渡来: 2Dのカードゲームと3Dのゲームでは圧倒的に必要な工数が異なります。そのハンデを乗り越えて、同じくらいのコンテンツを用意するには他に負けないワークフローを構築する必要があったということですね。これくらいのコンテンツを用意するには、よくあるワークフローでは無理だと思いますよ。

奥井: ツールによる自動化と、長年ガンダムを作ってきた職人芸が上手く噛み合っている印象はあります。ガンダム人間が見れば3秒で分かることも調べなきゃいけないと4時間かかるということもありますので(笑)。

―――現在、キャラクターは何体くらいになっているでしょうか?

奥井: 敵も含めて350体を超えています。ただ、プレイヤーが使えるキャラクターとして考えれば、まだまだ足りないですね。内製だけではとても対応しきれないのですが、先ほどからもあるように環境構築が済んだことで、適切な金額で外注することもできるような体制になってきました。ある程度人数もいて大規模なプロジェクトになってますが、少人数で力技でやるよりも結果的にはコストは下がっている気がします。色んな知恵が、4社から集まったチームの強さがここにきて発揮されているように思います。

―――やっぱり個性が違うものですか?

奥井: 話をしていると、それぞれの会社で持ち得ているもや、持ち得てないものが際立つ感じはします。そこを上手く、融合していければもっと凄いものを生み出せるだろうと日々感じますね。

―――バンダイナムコさんの中でも感じられるものですか?

奥井: 実はなかなか一緒に仕事をする機会はなかったんですね。今回は「リッジレーサー」や「エースコンバット」や「ガンダム」といった色々なチームの経験者が、しかもディレクタークラスが集まって何をしようか、と議論しているというのは面白い光景ですよね。家庭用ゲーム機でもチームによってワークフローは異なりますので、刺激を受けながら良いものを作っていくというのは楽しい仕事です。足並みを揃えるのはちょっと大変でしたが(笑)。

―――良いツールも、体制もできて・・・

一同: そうですね、これからですね。やるべきことは多いです。

■Mayaの活躍はソーシャルゲームの世界でも

―――Mayaや3ds MaxといったDCCツールはハイエンドの世界でこそ活きるものという先入観があったのですが、ソーシャルゲームでも活躍の方法がありそうですね

奥井: いやいや、本当に活躍のフィールドは広いと感じましたね。先程から話にあったようなMELを活かした効率化という点でもそうですし、ソーシャルゲームでも家庭用ゲーム機クラスの作品というのはどんどん増えていくと思いますから、これまでMayaで培ってきた経験というのは今後もっと重要になってくるんじゃないでしょうか。

寺本: プロデューサーとしては、おっしゃる通りで凄いハイエンドなCGツールという理解だったのですが、ワークフローを効率化してプロジェクトを速く回すことに繋がる・・・プロデューサー的に言えば「安く」(笑)するための武器でもあるというのを今日、話をしていて改めて感じましたね。

―――スクリプト言語をバリバリ書いてツールを作れる兼子さんという存在がチームにあってこそ、という面もあるのでしょうか? Mayaの威力を上手く引き出せるメンバーだったという。

渡来: そうですね。兼子は世間一般で言うテクニカルアーティスト(TA)という位置付けだと思うのですが、なかなか大規模なチームでないとアサインするのは難しいかもしれません。そういう意味では偶然か必然か分かりませんが、今回のチームは幸運だったかもしれません。テクニカルアーティストという存在の必要性を示す事例かもしれません。

兼子: でも、デザイナーがコードにも触れるというのは最近の潮流ではありますよね。ソーシャルゲームはウェブの世界に近くなっていますので、社内のUIデザイナーは、HTML/CSS/JavaScriptを扱える方ばかりです。自分がMELを書き始めたのは約6年前で、当時の部署にテックプログラマーが居なかったたために書き始めたのですが、必要な機能を模索してるうちに、そこそこ書けるようになった感じです。デザイナーがプログラムを学ぶスタートとしてはMELはとても良い言語だと思います。

―――最初は必要に迫られて、ですね

渡来: Mayaの良いところはブラックボックスになってなくて、何でもオープンにされているところだと思います。だから、とても開発しやすいんです。そこがデザイナーでも触りやすい部分に繋がっていると思います。

■『ガンダムキングダム』の進化はこれから

―――最後に皆さんの今後の目標を聞かせてください

寺本: まずプロデューサーとしては、お客様が喜んで貰えるゲームであり続けるために努力していくのが一番大事だと思っています。加えて、チームを指揮する立場からすると、チーム全員が健康で楽しくゲーム作りができる体制を作るのがテーマと思っています。ソーシャルゲームは長く運営していくものですので、家庭用ゲーム機のように無理して締め切りに間に合わせて一週間休む、というわけにはいきませんから。持続可能なチーム作りという意味ではやるべきことが多いように思います。

奥井: 今の目標はなるべく早く『ガンダムキングダム』を遊んでくれているお客様の期待を上回るゲームにすることです。まだ登場する機体の数も少ないですしね。それから、お金を払っている人も、そうでない人も充分に楽しめるゲーム作りというのを模索していきたいと考えています。ソーシャルゲームってお金突っ込まなきゃダメなんでしょ? と言われるのは健全ではないと思いますので。そのためにはコンテンツも運営も努力すべき点は沢山あると思います。

渡来: 私からは、BNDeNAで新しいソーシャルゲームの遊び方を提案するようなゲームを作れればと思っています。どうしても似たようなゲームが多くなってしまっているので。そのためにはオートデスクさんの力が必要です、よろしくお願いします(笑)。

兼子: 今はMayaをもっと使いこなして有用なツール作りが出来ればと思っています。Mayaも進化していますし、モデリング、モーション、ダイナミクスと多岐に渡る機能がありますので、それを活かして、デザイナーがボタン一つで思い通りのデータ作成ができるような、夢のあるツールを作っていきたいですね。

田村: 私はアプリのプログラマーですので、アプリの改善に取り組みたいと思っています。操作感もレスポンスもまだまだ改善の余地があると思いますので、チャレンジしていきたいですね。

―――本日はどうもありがとうございました



©創通・サンライズ
《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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