【TGS 2012】ゲーミフィケーションの盛り上がりにみるゲームの力 | GameBusiness.jp

【TGS 2012】ゲーミフィケーションの盛り上がりにみるゲームの力

東京ゲームショウ2012、ビジネスデイのGREEブースではクリエイターやゲーム業界の識者を招き、ソーシャルゲームやスマートフォンゲームの展望を議論する「ビジネスゲームセッション」と題されたイベントが開催されました。

その他 その他
東京ゲームショウ2012、ビジネスデイのGREEブースではクリエイターやゲーム業界の識者を招き、ソーシャルゲームやスマートフォンゲームの展望を議論する「ビジネスゲームセッション」と題されたイベントが開催されました。
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東京ゲームショウ2012、ビジネスデイのGREEブースではクリエイターやゲーム業界の識者を招き、ソーシャルゲームやスマートフォンゲームの展望を議論する「ビジネスゲームセッション」と題されたイベントが開催されました。

ビジネスデイ2日目の9月21日の「ゲーミフィケーションの盛り上がりにみるゲームの力」題された本セッションは、コンシューマゲームやソーシャルゲームといったエンターテインメント産業を「ゲーミフィケーション」という視点から捉えることで、その社会的意義を議論する大変興味深いものでした。

トークセッションのモデレーターはグリー株式会社の澤田典弘氏。テクノスジャパンで「ダブルドラゴン3」や「初代熱血硬派くにおくん」を手がけ、元気株式会社で代替現実ゲームなど野心的な試みを行ない、現在グリーにてスマートフォン向けソーシャルゲームを開発運営しているクリエイターです。

一方、パネリストは3名。国際大学GLOCMO客員研究員の井上明人氏は、本セッションのテーマとなる「ゲーミフィケーション」に関する日本の第一人者。震災後の節電対策をゲーム化した#denkimeterプロジェクトで話題を集め、今年、NHK出版から著作『ゲーミフィケーション』を上梓した気鋭の研究者です。

さらに任天堂で『ピクミン』などを手がけ、現在独立して株式会社エンタースフィアを起こした同社代表取締役の岡本基氏、映像関連の仕事を経験した後、ベンチャー企業として株式会社gumiを起業した代表取締役の國光宏尚氏が加わり、トークセッションが開始しました。

まず澤田氏は「ゲーミフィケーション」について、井上氏に専門家の立場からの簡単な説明を求めました。井上氏によれば、ゲーミフィケーションという考え方は何も目新しいものではなく、私たちが日常的に行なってきたものの中にすでにあったといいます。例えば、観光地でのスタンプラリーやラジオ体操で集めるハンコといったものも、現在ではゲーミフィケーションの一つと考えることができます。ごく大雑把にいえば、ゲームの力で人々に動機を与えることであるとまとめることができます。

日本ではまだ馴染みのない「ゲーミフィケーション」という考え方ですが、アメリカではオバマ大統領の選挙戦において非常に注目を集めたと、井上氏は説明します。オバマ大統領の選挙戦略は、支援者が選挙に協力しやすいように、ゲームのようにデザインされているといいます。また、アメリカでは科学の最先端の研究などもパズルゲームのようにデザインすることで、競争力が増しているそうです。

井上氏の説明を受け、澤田氏は今回のセッションでは、実際のゲームの事例からこのゲーミフィケーションについて考えてみようという提案がなされました。そこで焦点を当てられた考え方は、「過去からの変動の可視化」、「場の文脈付け」、「達成すべき大きな目標をレイヤー化させていく」という3つです。どれも抽象的で難しい話のようですが、セッションでは実際のゲームの事例に従い、分かりやすく説明され、議論が盛り上がりました。

まず、最初の「過去からの変動の可視化」とは何か。岡本氏はコンシューマゲームでは昔から存在していた「スコアリング」や「コレクション」といったものがそれに当たるのではないかと指摘しました。つまり、スコアやコレクションとは、ゲームプレイの中でユーザーが行った過去の歴史を可視化することであるというわけです。『ポケットモンスター』シリーズのヒット以降、コンシューマゲームではコレクション要素を取り上げる作品が増え、今ではアイテムやモンスターの図鑑などはオーソドックスな機能になっていると言えるでしょう。

一方、ソーシャルゲームの立場から、gumiの國光氏はいわゆる「クエスト」なども「過去からの変動の可視化」に当たると主張しました。ソーシャルゲームのクエストでは、ユーザーが行った行為が蓄積する形で、現在のゲームの進行度合いが可視化されます。

このようにゲームの世界では、過去の行動や履歴を可視化することでユーザーを楽しませるといったゲーミフィケーションのテクニックは当たり前のように存在していました。他方、ビジネスの中ではどのように活かされているか。その点に関して井上氏に質問が投げかけられました。

井上氏によると、最近のウェブサービスの中には、ユーザーの閲覧数や発言数をカウントし、スコアリングすることで、サイト閲覧の持続率を上げる試みがなされているそうです。ソーシャルゲームでよくある「ログインボーナス」のようなシステムは、ゲーム以外のウェブサービスにも応用されているといいます。

また、社内のプロジェクト管理や業務管理にゲーム的要素を取り入れている企業もあるといいます。タスクをこなしたら、その都度、バッジを与えるといった風に、業務管理にゲーム的要素を取り入れることで生産性が上がる事例もあると、井上氏は報告しました。

次に「場の文脈付け」について議論されました。澤田氏は、来場者に「もし、ここにお姫様がいて、悪者にさらわれたとしたならば、みなさんはどうしますか?」と問いかけることで、この考え方について説明しました。澤田氏は、多くの人はそのような出来事に対して「助けに行く」という行動を想起するだろうと指摘し、このような文脈を作ることによって人々を動機づけるゲーミフィケーションの方法は、ゲームの世界では昔からあった古典的なものだと説明しました。

ゲームではストーリーやキャラクターといった要素において、遊びを行なう場を文脈付け、プレイヤーを動機づけます。また、元任天堂の岡本氏は、キャラクターやストーリーだけではなく、直感的な見た目だけでも、プレイヤーを動機づけすることは可能だと主張しました。例えば、マリオにおける敵キャラクターはその形状から倒し方がわかるよういデザインされています。言葉を用いずとも、プレイヤーが特定の行動を選び、それがうまくいくことによって、どんどん上達させることが可能だといいます。他方、現在のソーシャルゲームでは、表現力に制約があるため、世界観や文脈をユーザーに提示するためには、テキストとイラストに頼っていることを、岡本氏は指摘しました。

gumiの國光氏は、エンターテインメント業界の企業が成功するためには、その会社のファンを作ることが一番有効だと述べた後、ファン作りのためにこの「場の文脈付け」が重要ではないかと示唆しました。國光氏によれば、現在まで生き残ってきた会社の多くは、「壮大なワンパターン」をユーザーに提供することで、ファンを形成してきたといいます。お笑いのよしもと、ミュージカルの宝塚、アニメーションのディズニーやピクサー、ジブリといった会社は、固定ファンを納得させるためのお約束を守りつつも、常に時代に合ったコンテンツを提供してきたと、國光氏は語りました。

その点において、株式会社gumiのソーシャルゲームもユーザーに「お約束」という文脈を分かってもらうための工夫を行なってきたといいます。例えば、「任侠道」、「騎士道」、「海賊道」といった「道シリーズ」は30代から40代男性の「中年の中二病」をくすぐるようなワンパターンのストーリーや世界観を狙っているそうです。

最後に「達成すべき大きな目標をレイヤー化させていく」について議論がなされました。澤田氏はゲームにおいては、チュートリアルなどの要素がこの方法にあたると説明しました。つまり、ゲームの大きな目的を達成するために、プレイヤーに操作やルールを少しずつ遊びながら教えていくチュートリアルは、ゲーミフィケーションにおける重要な方法の一つだというのです。

また岡本氏は、Xbox360における実績システムなどもこのレイヤー化にあたるのではないかと指摘しました。Xbox360の実績システムは、個々のゲームにおける特定の行動を可視化してスコアリングするだけではなく、一人のプレイヤーがXbox360のゲームでどれだけ遊んでいるかを、ゲーム間を横断する形でスコアリングします。そのため、ユーザーは特定のゲームの実績を解除するだけではなく、「Xbox360のプレイヤー」としての実績解除のゲームにも参加することになるわけです。Xbox360の実績やPSNのトロフィーといったシステムは、様々なゲームにも取り入れられていますが、ゲーム間をまたいで機能するものはまだ少なく、ソーシャルゲームにも応用可能だと、岡本氏は主張しました。

「レイヤー化」という議論から離れますが、gumiの岡本氏はコンシューマゲームでは、とても苦労しないと実績やスコアが伸びないのに対して、ソーシャルゲームではとりあえずプレイヤーを褒めることが主流になっている点が指摘されました。その点、従来のコンシューマゲームや映画、スポーツという娯楽と違って、ソーシャルゲームはストレスが多い日常の中でも気軽に遊んでもらえるために、なるべく褒めるようなデザインがなされていると、國光氏は強調します。つまり、ソーシャルゲームは「余暇」ではなく、日常に彩りを与えるものであり、その点からゲーミフィケーションとの親和性を國光氏は訴えたいようでした。

井上氏もその議論を受けて、ゲーミフィケーションの手法を用いて、人々の日常にゲーム的要素を持ち込むのが可能になったのは、なんといってもスマートフォンやSNSといった技術革新のおかげであると説明しました。コンシューマゲームは結局のところ、電源を入れている間しか楽しむことができないため、日常の行動をゲームにしようと思っても無理があります。その点、スマートフォンなどのデバイスは日常をゲーム化することを可能にし、スマートフォンというデバイスとゲーミフィケーションという方法論が「日常そのものをゲームハードにする」可能性があると井上氏は主張しました。

その点、「日常」という共通のプラットフォームを利用するソーシャルゲームとゲーミフィケーションは親和性が高いのではないかと、井上氏は指摘しました。ただ、日常的な行動をレイヤー化することは難しく、単純な行動を動機づけることが可能であっても、ゲーミフィケーションを利用して大きな運動を行なっていくには工夫が必要だといいます。

オバマ大統領の選挙戦略が巧妙であったのは、この日常の行動のレイヤー化にあったのだと、井上氏は説明しました。例えば、選挙の支援者は「一日5回、選挙のために電話をかける」、「選挙資金として1000ドルを集める」といった比較的シンプルな行動を、ゲーミフィケーションの手法によって実践します。しかし同時にそれらの行動が累積することで、結果として「オバマを大統領にする」という大きな目標を達成することが可能になります。よって、ゲームでは、オールクリアとそれまでのミッションやステップによって、これらのレイヤー化が実装されていますが、それを現実の社会に応用することで、大規模な人や社会を巻き込む運動も可能になるというのが、ゲーミフィケーションの大きな可能性の一つでしょう。

ゲーミフィケーションに関する3つの考え方について議論した後、澤田氏は全体のまとめとして、二つのことを主張しました。第一に、ゲーム製作者はゲーミフィケーションという考え方を通して、これからの時代の社会的貢献を果たすことができるのではないかという展望が述べられました。さらに、今回のセッションのように、ゲームの開発者は様々な人と知識を共有することで、より面白いゲームを作っていくことができるのではないかという期待も述べられました。

最後にこの二点について、それぞれの立場から登壇者のコメントがなされました。エンタースフィアの岡本氏は、コンシューマゲームにもソーシャルゲームにも関わった経験から、ゲームに関するノウハウは意外と共通しているものが多く、それらのノウハウはゲームに限らず利用ができるのではないかと述べられました。

またgumiの國光氏は、ゲーミフィケーションという考え方の核心は、普段「生産性がない」と批判されるゲームが、実際には我々の人生や社会に意味を与えているところにあると指摘しました。我々の人生や社会は生きていくためにはストレスや苦痛が多く、とても楽しめるものではありません。しかし、ソーシャルゲームやゲーミフィケーションはそういった日常に彩りを与え、人生を生き生きしたものに変えていく可能性があると、國光氏は力説しました。

井上氏は、研究者であるご自身がこのようなセッションに誘われたことを光栄に思い、ソーシャルゲームだけではなく、ゲーミフィケーションも日本でこれからどんどん盛り上がってくるだろうと展望を語りました。さらにコンシューマゲーム業界の方々がソーシャルゲームに挑戦することが増えて来るなか、次はゲーミフィケーションに挑戦し、日常をプラットフォームとしながら、より良い社会を作ることに挑戦して欲しいと期待を述べました。
《今井晋》

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