今週9月20日から、国内最大のゲームイベント『東京ゲームショウ(以下TGS)』が開催されます。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催しているこのTGSも、1996年の初開催から今年で22回目の開催を迎えすっかりおなじみのイベントとなりましたが、昨年は成長著しいソーシャルゲーム業界からグリーが参加し非常に大きなブースを構え話題となったのは記憶に新しいところです。今回は、このTGSも含めゲーム関連イベントが一般のゲームユーザーの間でどれくらい浸透し、また情報源として活用されているのかという話題を取り上げます。当社では、このたびゲーム専用機ユーザー(※)約5,000名に対し緊急アンケートを行いました。調査対象としたイベントは以下の通りです。※ゲーム専用機ユーザー・・・自身で何らかのゲーム専用機を1台以上所有しているユーザー『東京ゲームショウ(TGS)』 1996年より開催している国内最大のゲームイベント。ビジネスおよび一般向け。『次世代ワールドホビーフェア』 小学館が主催しているテレビゲームと玩具を対象商材とした一般ユーザー向けイベント。初開催は1994年。『ジャンプフェスタ』 集英社主催の一般ユーザー向けイベント。毎年年末に開催されている。初開催は1999年。『Electronic Entertainment Expo(E3)』 米国の業界団体Entertainment Software Association(ESA)が開催する世界最大のコンピュータゲーム関連の見本市。業界関係者以外は参加できないビジネスイベント。初開催は1995年。『アミューズメントマシンショー(AMショー)』 日本アミューズメントマシン工業協会(JAMMA)が主催しているアミューズメント機器の展示会。ビジネスおよび一般向け。初開催は1963年。『ワンダーフェスティバル』 海洋堂(造形メーカー)が主催している世界最大のガレージキットのイベント。年2回開催。初開催は1984年。『コミックマーケット(コミケ)』 毎年8月と12月に開催される世界最大規模の同人誌即売会イベント。主催はコミックマーケット準備会。初開催は1975年。【図1】は、これらイベントの認知・参加経験および情報源としての利用状況を確認したものです。それぞれ棒グラフが4本ずつ並んでいますが、上から「青:知っているもの」「黄:関心があるもの」「赤:行ったことがあるもの」「緑:情報源として利用することがあるもの」となっています。まず[認知状況(青)]ですが、TGSは32.5%とこれらイベントの中で最もポイントが高くなっています。次がコミックマーケット(以下コミケ)の25.6%、以下ジャンプフェスタ19.2%、Electronic Entertainment Expo(以下E3)12.3%と続きます。[関心あり(黄)]も全体に数値は低くなりますがこの序列は同じです。興味深いのが[参加経験(赤)]で、コミケがTGSを上回りトップとなっています。コミケは厳密に言えばゲームイベントという訳ではありませんが、今回の調査対象者がゲーム専用機ユーザーであるにも関わらずTGSを上回っているところを見ると、年1回開催のTGSと違い年2回開催であることを踏まえてもコミケの動員力の高さを感じるデータです。この中で唯一の海外イベントであるE3についても触れておきます。今や国内メーカー(プラットフォームホルダー、パブリッシャー)でもこのE3を重要な情報発信の場として戦略的に活用するところが増えてきていますが、一般ユーザーのE3認知率は前述の通り12.3%で、TGSの約1/3でした。認知以外の数値を見ると、「情報源として利用するもの(緑)」の数値がTGSの3.9%に対してE3は2.6%と相対的に高くなっており、一般ユーザーの間でも情報源としてE3が非常に注目されていることが分かります。【図2】は、これらのイベントの中からTGSとコミケにスポットを当て、両イベントに行ったことがある人たちのユーザープロフィールをまとめたものです。TGS参加経験者は、116万人と推定されます。男女比は78%:22%で圧倒的に男性中心の構成です。年齢分布は20代後半をピークとし、30代にかけて分厚くなっています。特徴的なのはIPS構成です。参加経験者数が最も多かったのは、やはりゲーム先行性が高いイノベータで、カジュアルユーザーになるほど規模が小さくなる傾向が見られます。但し、飛び抜けて多いイノベータ以外の3クラスタの差はそれほど大きくありません。なお、イノベータ全体のうち参加経験率が1割を超えているというのは、基本的に首都圏のみの一ヶ所(幕張メッセ)で開催されているイベントであるということを考えると非常に高い参加率であるといえます。一方のコミケですが、ゲーム専用機ユーザーのうち参加したことがあるのは167万人という結果でした。前述した通りTGSよりも多くのユーザーが参加したことがあると答えていますが、それよりもTGSと大きく異なるのが男女比で、TGSの78%:22%に対しコミケは55%:45%と、女性の参加経験者が非常に目立ちます。年齢分布に関してはTGSと同じく20代後半にピークがありますが、その周辺世代(10代後半から20代前半の若年層/30代後半から40代前半のミドルエイジユーザー)がTGSよりも厚みがあるのが特徴です。さらに興味深いのがIPS構成で、TGSとは全く逆でカジュアルユーザーになるほど規模が大きくなっています。今やコミケは一部のコアファン向けに特化したイベントではなく、一般ユーザーにもかなり浸透してきているイベントとして発展してきていることがデータの上からも確認できました。ゲーム専用機市場における供給側からの目線で考えると、TGSとコミケはこのように若年層向けという共通項はありながら、一方で男女比やIPS構成が大きく異なるという特徴も踏まえると、訴求対象のコンテンツ特性に応じて両イベントをうまく使い分けることが非常に重要であると考えます。かつて、イベントはマス媒体(テレビCMやゲーム専門誌など)と違い、接触者(参加者)がごく一部のユーザーに限られているということで費用対効果の面で疑問視する意見も少なくありませんでした。しかし、ネットワークインフラが発達した現代においては、Web媒体はもちろん、参加したユーザー自身がSNSなどを通じて情報を発信する側(=媒体)になり得ることを考えると、コンテンツホルダーにとってイベントの戦略的活用がますます重要になってきているといえるでしょう。ゲームエイジ総研コンサルタント 三宅 淳調査スキームについて本ページ掲載のデータは、約2万サンプルを対象とした大規模インターネット調査の調査結果を元に、社会調査(訪問調査/毎月実施/1,200サンプル)をベースに構築したウェイトバック値(補正係数)により拡大集計したものです。この手法により、ネットバイアスを排除したユーザープロフィールの実像を推計することが可能となっています。なお、調査手法その他詳細につきましては、ゲームエイジ総研のHPにてご確認ください。