ゲームと著作権、GREE VS. Mobage 釣りゲー訴訟で考える | GameBusiness.jp

ゲームと著作権、GREE VS. Mobage 釣りゲー訴訟で考える

2月23日、ゲーム業界に衝撃が走りました。東京地裁が下した一つの判決。釣りゲームを巡り、内容が酷似しているとして、グリーがディー・エヌ・エーを訴えた裁判。東京地裁はグリーの訴えを認め、配信の差し止めと約2億3000万円の損害賠償の支払いを命じました。グリ

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2月23日、ゲーム業界に衝撃が走りました。東京地裁が下した一つの判決。釣りゲームを巡り、内容が酷似しているとして、グリーがディー・エヌ・エーを訴えた裁判。東京地裁はグリーの訴えを認め、配信の差し止めと約2億3000万円の損害賠償の支払いを命じました。グリ
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2月23日、ゲーム業界に衝撃が走りました。東京地裁が下した一つの判決。釣りゲームを巡り、内容が酷似しているとして、グリーがディー・エヌ・エーを訴えた裁判。東京地裁はグリーの訴えを認め、配信の差し止めと約2億3000万円の損害賠償の支払いを命じました。グリーの『釣り★スタ』とディー・エヌ・エーの『釣りゲータウン2』を巡る戦いです。

「類似ゲームが多い」と指摘されるソーシャルゲームでは同様の裁判が多発しています。KLabは同社の『真・戦国バスター』を盗用したものだとして、クルーズの『チーム×抗争!ギャングキング』を提訴。コナミも『プロ野球ドリームナイン』の知的財産権を侵害されたとして、gloopsの『大熱狂!!プロ野球カード』を提訴。この他にも、一定のユーザーを集めていたゲームが著作権侵害の警告を受け、配信停止となったケースも複数あります。

海外でも同様です。最大手のジンガは、タワー建設ゲーム『Dream Heights』を巡り同じテーマのゲームである『Tiny Tower』を開発するNimbleBitに訴えられています。都市育成ゲームでは『Triple Town』のSpry Foxが『Yeti Town』の6waves Lolappsを訴えています。Spry Foxは裁判所に提出した資料の中で、この2つのゲームがいかに似たものであるか訴えかけています(こちらで閲覧可能)。いずれにしても、成功したゲームのメカニックスを採用し、ガワだけ変えてリリースするというのは日本だけの現象ではなく、問題が大きくなっています。


『Triple Town』と『Yeti Town』、Spry Foxが提出した資料では類似点が強調されている


無論、こうした問題はソーシャルゲームが発祥ではありません。世界で最初にヒットしたビデオゲームと言われるアタリ社の『ポン』(日本では『テニス』とも言われる)は瞬く間にコピーゲームが氾濫。同じように日本で大ブームを巻き起こしたタイトーの『スペースインベーダー』はコピーされた製品の方が多く出回ったと言われます。ビデオゲームは当たり外れが激しく、かつ模倣のコストが低いことから、ヒットしたゲームに似たゲームが雨後の筍のように生まれるのは時代を超えて繰り返す光景でした。

しかしゲームの著作権を争った事例はその産業規模から考えるとそう多いわけではありません。著作権は表現を保護するもので、ゲームデザインのようなアイデアを保護するものではないという難しさがありました。ゲームデザインが似通っていても、実際の表現として異なれば、それを問うのは難しかったのです。

公開されているグリーとディー・エヌ・エーの判決を見ると、類似性で争われたのは主に「魚を釣り上げる画面の設計」「全体の画面遷移と画面構成」です。結論として地裁は前者はグリーの主張を認め、後者は認めませんでした。


グリーの『釣り★スタ』とディー・エヌ・エーの『釣りゲータウン2』。こちらも公判資料から


判決文を見ていくと、魚を釣り上げるという表現には幾多の可能性がある中で、グリーの作品の表現は「過去のゲームには全く存在しなかったもの」として、制作者の個性が強く現れているものと判断。単なるアイデアのレベルを越えて、創作性の反映されたものと認めました。ディー・エヌ・エーの作品はそれに要素が加わったものの、ベースはグリーのものであるという判断です。

一方で画面遷移についても両者の作品には類似性が見られます。しかしながら地裁は、そもそもグリー作品の画面遷移も本当の釣りの流れを踏襲したもので、単なるアイデアか創作性が認められない範囲のものだとしました。また、各画面の構成も類似性があったとしても、フィーチャーフォンという限られた表現手段の中で、突き詰めていった結果として類似点が生まれたものであって、そもそもグリー作品の画面に創作性を認められないという判断です。

著作権に認められる表現には創作性が不可欠です。創作性はアイデアと表現が不可避なものについては認められず、かつ一定の水準を超えるものではなくてはならないとされています。「魚を釣り上げる画面の設計」は、様々な表現可能性の中から意図的に選択されたものであり、かつ以前の類似作品には見られなかった特徴であるとされ著作権が認められました。ゲームデザインでもその内容によっては認められ得るというのは重要なポイントです。冒頭で触れたように類似の訴訟が幾つも行われていますが、その中でも同様の判断が有り得ます。

ソーシャルゲームでは急速に市場が拡大する中で、スピード優先の開発がなされてきたのは否めません。しかし先行事例を十分に吟味しなければ、法的リスクにされされる可能性は大きくなります。家庭用ゲームの開発においては著作権に加えて特許を侵害しない為に大きなコストを割いています。市場が成熟すると共に、開発の現場でも著作権などゲームの法的な位置付けを意識する必要が出てくるでしょう。

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《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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