ゲームのテクノロジーが巻き起こす真の | GameBusiness.jp

ゲームのテクノロジーが巻き起こす真の

引き続き、SCSK製薬システム課MR2GOブランドマネージャー佐伯伸純氏、CRI・ミドルウェアモバイル事業推進部長幅朝徳氏のお二人にお話を伺います。

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引き続き、SCSK製薬システム課MR2GOブランドマネージャー佐伯伸純氏、CRI・ミドルウェアモバイル事業推進部長幅朝徳氏のお二人にお話を伺います。

前半では、ゲームのテクノロジーが「MR2GO-DMV」という製薬業界向けのソリューションでどのように活用されているか、を聞きました。では、ゲームのテクノロジーがゲーム以外の業界でどのような効果をもたらし、またどんな可能性を持っているのでしょうか。

■ゲームのテクノロジーを他の産業で活かす

ゲーミフィケーションという言葉がバズワードのように使われ、ゲームデザインの手法をゲーム以外のサービスやウェブの設計に用いることでユーザーのエンゲージメントを高めるということが盛んに言われています。そんな中、「MR2GO-DMV」はゲームデザインではなく、ゲームのテクノロジーをゲーム以外の分野に応用した例と言えます。


SCSKとCRI・ミドルウェアが開発した「MR2GO DMV」ではiPadを使って製薬会社のMRがいつでも自社の多岐に渡るパンフレットを紹介できるソリューション。クラウドを生かし、常に最新データが同期される。


技術的な面だけでなく、ゲームというコンマ一秒を争う世界の「空気」をエンタープライズ(企業向け)のソリューションやサービスシステムにもたらして欲しいと佐伯氏は言います。

「業務アプリケーションの世界でも、コンピューターのリソースが限られていた時代は、コンマ一秒を突き詰めるような開発がされていましたが、潤沢なリソースが使える今、そうした考えはあまり重視されていないように思います。
例えばCRIさんのファイルシステムに搭載されている圧縮データの展開技術Magic-Decomp(マジック・デコンプ:一時領域が不要のデータ展開方式で、メモリを圧迫せずに圧縮データを展開できる)なんかも良い技術ですよね。それがそのままエンタープライズで活用できるかどうかは分かりませんが、こういう"メモリを最小限で何かをやる"みたいな考え方は、様々な分野で幾らでも応用が効くと思うんです」(佐伯氏)

加えて佐伯氏は業務アプリケーションでもユーザーを第一に尊重した設計が益々求められるようになってくると言います。「例えば、処理中にユーザーを待たせている間の画面表示など、ゲームのやり方を見習える場所は沢山あります。今回のコラボレーションは新しい風を吹きこんでくれたと思います」

また、「今まで使っていたPCに加えてタブレットを利用するということで、上手い言葉がありませんが、"タブレットディバイド(タブレットを使いこなせる人とそうでない人で差ができてしまうこと)のようなものができなければいいなというのはありました。そこにゲームの直観的な操作性や考え方というのは活かせるのではないかな、と"」(佐伯氏)というように、誰でも使えるデバイス、アプリケーションにする、という意味でもゲームの考えが活かされたようです。


ゲームの考え方を取り入れたいと語る佐伯氏


ただ過去には「誤解なんですけれども、ゲーム業界の楽しければいい、射幸心を煽ればいい、というような技術を医療の世界に持ち込むなんてとんでもない、と言われたこともある」(幅氏)そうです。しかしそうした現状は変わってきたようです。「今は幅さんが言われるような事はないですね。むしろ営業の段階から"この起動の速さはゲーム業界だからできたことです"とセールスポイントに使っています」と佐伯氏は強調していました。

ちなみに「MR2GO-DMV」の開発チームは多くがゲーム好きなスタッフで構成されているそうです。「お陰様で多くの企業様に導入いただいて開発も進んでいるので、積極的に採用活動も行なっているのですが、その際の判断基準の一つとして"ゲーム開発技術やメソドロジーに興味がある"というものを置いています。ゲームに対する思い入れや経験、そういったものを大切にしています」(幅氏)


ゲームの魂を大事にしたいと語る幅氏


■今後は業界特化ソリューションとして成長したい

基本機能の実装は完了している「MR2GO-DMV」ですが、佐伯氏によれば「当初の構想は半分程度まで来ましたが、どんどん考えが膨らんでいって、それを考えればまだ10%程度」ということで、今後も積極的なアップデートが計画されています。

iPadの事例が多いものの、Androidタブレットへの対応も完了しているとのこと。「Androidタブレットへのニーズも増えている」(幅氏)とのこと。

また、現状ではMRはiPadとPCの両方を持って病院を回っているような状況を、「PCを持たなくてもいい状態にしたい」(佐伯氏)と意気込みを語っていました。

さらに、「MR2GO-DMV」によって紙資料のパンフレットをデジタルデータに置き換えるという意味で、お医者さんが紙資料で欲しいというニーズにも応えるため、iPadとプリンターの連携機能や、手元にデータを残してもらうために、お医者さんが持っているiPadなどのデバイスとの連携機能を拡充していくことも検討中だといいます。

「MR2GO-DMV」は世界最大のモバイル関連商品の展示会である、スペイン・バルセロナで開催されるMobile World Congress 2012(2012年2月27日〜3月1日)に出展されることも決定。世界にも製薬会社は多数あり、そうした会社を視野に入れているそうです。

また、製薬業界以外への横展開も始まっています。「それぞれの業界に特化したソリューションとして成長していきたい」と幅氏は語りますが、製薬業界に続いては金融業界向けにも「FR2GO」として開発が進められています。製薬同様に専門知識が求められ、多種多様な商品を扱う金融業界でも活躍が期待できそうです。

ゲーム機の発展と共に独自の進化を遂げてきたゲームのテクノロジーですが、その優れたテクノロジー自体やゲーム開発の手法というものは他の分野でも十分に応用可能なもののようです。SCSKとCRIは、製薬そして今後は金融に幅を広げていく意向ですが、その他の分野でもゲームのテクノロジーを広げるプレイヤーが登場することを期待したいですね。

最後にお二人が意気込みを語ってくれました。

「僕は小さい頃から病弱で、人にもびっくりされるほど薬に詳しいんです(笑)。僕が小児喘息だった時に命を救ってくれた薬を作ってくれた製薬会社さんの業務を支援するような仕組みに携わることができて、少しでも恩返しが出来ているのは幸運に思っています。また、自分を育ててくれたゲーム業界に対してもそのテクノロジーを他の分野で活躍させるという形で恩返しをしているところです。ゲーム業界との直接的な接点は昔より少なくなりましたが、このミッションに強い使命感をもって臨んでいますので、引き続き全力で取り組んでいきたいと思います」(幅氏)

「CRIの方に様々な技術の説明を受ける機会があったのが2010年7月の事です。その中でもCLOUDIAという技術に可能性を感じて、幅さんと意気投合してMR2GO-DMVという製品が誕生したのですが、まだようやく1年半ほどです。道のりもまだまだ半ばです。MRさんの本来業務を支援する、ひいては社会に貢献するという目標は最後までやりきりたいと思っています」(佐伯氏)


SCSK青山オフィスにて
《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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