近未来のゲーム技術を予測した「CESAゲーム開発技術ロードマップ2011年版」が公開 | GameBusiness.jp

近未来のゲーム技術を予測した「CESAゲーム開発技術ロードマップ2011年版」が公開

CESA技術委員会とCEDEC運営委員会は、ゲーム技術の近未来を予測する 「CESAゲーム開発技術ロードマップ2011年版」を公開しました。

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CESA技術委員会とCEDEC運営委員会は、ゲーム技術の近未来を予測する 「CESAゲーム開発技術ロードマップ2011年版」を公開しました。

このロードマップはゲーム開発者や業界関係者、研究者や学生の活動指針となることを目的に、2009年に公開されて以来毎年改訂されています。技術分野をプログラミング、ビジュアル・アーツ、ゲームデザイン、サウンド、ネットワークの5分野に分け、現状と近未来の予測を簡潔に示しています。

以下、ロードマップです。

■プログラミング分野

プログラミング一般
<最新>
・C/C++で作成。マルチコア CPU で API ベースのスレッド制御、ゲームエンジンを使用した開発環境の普及
<数年後>
・メモリの共有・排他レベルの宣言とスレッド生成・同期の簡略化等をサポートする新言語もしくは言語拡張の実用化
参考例) CUDA/Axum/ATIstream/TBB/OpenCL/OpenMP/関数型言語
(F#,Ocaml,Haskell)のアプローチ、Apple の GCD, Blocks のような言語拡張
・LLVM/PGO 等にみられる実行時最適化技術の向上
・ゲーム本体部分は、徐々に C#や JavaScript 等の生産性の高い言語に移行

コンピューターグラフィックス
<最新>
・ポリゴンベースのモデル+マッピングのバリエーションが広まっている、またDeferred 系の Rendering が普及
<数年後>
・DX11 で可能になった表現の一般化
・Voxel/Micro polygon/NURBS/Displacement Map/Tessellation/Fractal 等を使用した、スケーラブルなジオメトリの実現
・Global Illumination のリアルタイム化、リアルタイム RayTracing の実現
・スマートフォンなどでも現行据え置き型ハードレベルのグラフィックス表現の実現

AI
<最新>
・FSMのスクリプトベースの実装
・ノードベースでのグラフィカルな AI 実装
<数年後>
・プランナ向けのグラフベース、セッティングベースのビジュアルスクリプト
・ソースコード上の条件分岐によらない得点計算、条件判定等による行動選択
参考例) プランニング/Behavior Tree/確率推論等
・動画、画像、音声、構文解析による自動・半自動コンテント生成

物理
<最新>
・剛体シミュレーション + Constraint Solver、Ragdoll 物理等
<数年後>
・セットアップに頼らない破断、壊れ、変形などのリアルタイム処理
・クラウドコンピューティングによる大規模シミュレーション
参考例)海洋など環境レベルの流体表現

アニメーション
<最新>
・スケルトンベースのキーフレームアニメーションと IK による自動補完
<数年後>
・プロシージャルなアニメーション技術の普及
・物理シミュレーションと連携したよりリアルな動きの生成

■ビジュアル・アーツ分野

レンダリング
<最新>
・プロシージャルテクスチャの活用
・プログラマブルシェーダーによるリアルタイムディスプレーメント
・物理ベースのシェーディング、BRDF など近似式の活用
・レンダリングパスのハイブリッド化による高速なライティング
・ステレオ視対応
<数年後>
・高スケーラビリティの実現 / プロシージャル LOD / ポイントクラウド
・レイトレース法をはじめとする既存ソフトウエアレンダラのリアルタイム実装
・サーバサイド・レンダリングの活用
・カメラ入力とリアルタイム CG との高品位な合成

アニメーション
<最新>
・低価格なモーションキャプチャシステムの普及
・ダイナミクスを加味したポーズ変形、プロシージャルアニメーション
・破壊・軟体シミュレーションの簡易実装
・高度な群集シミュレーション
<数年後>
・ビデオベースのモーションジェネレートによる巨大なモーションデータベース
・ビデオや Mocap から自動生成したデータを直感的にスタイライズできる技術
・ゲーム上のあらゆるステート反映するプロシージャルアニメーション
・3D 上の軟体物理シミュレーション(流体、筋肉など)

ハイエンド・オーサリング
<最新>
・高効率なコンテントパイプラインの構築と可視化
・多様な色空間・HDRI テクスチャのハンドリング
・アセット・ゲームオブジェクト単位での管理システム
・DCC ツールとゲームランタイムとの相互乗り入れ
<数年後>
・インバースレンダリング
・シンタクス・ルール抽出からのプロシージャル化
・ファイル操作やバージョン管理を超えた、コンカレントオーサリング

ミッドレンジ・オーサリング
<最新>
・アセット、ミドルウェアのモジュール化とゲーム規模に応じた実装
<数年後>
・潤沢なアセット DB、オープンコンテンツの積極的な利用

グラフィックデザイン
<最新>
・モーショングラフィックスを活用したダイナミックな演出
・PPI 向上による高解像度対応、または解像度フリーなグラフィックスデザイン
<数年後>
・ビヘイビアベースのインタフェース演出
・立体視を前提にした、空間を操作する GUI
・カラーユニバーサルデザインの導入等、より広い層のユーザーへの視覚対応が普遍化

■ゲーム・デザイン分野

ゲームシステム
アイデアの出し方、元になる要素、操作しやすいインターフェースの生かし方
<最新>
・ソーシャルを一要素としたゲームデザイン
・UGC における「いいね」評価の一般化
・アクションゲームにおける、ノンターゲティングとターゲティングの共存
・常時ネット接続可能な情報端末を活用したクラウド型ゲーム
・ゲームデザインにおける CERO の適用外での倫理的な自主的制限
・高年齢ユーザーを意識した高解像度携帯端末でのインフォメーション
・モーションコントローラーの操作方法の標準化
・フリック、スワイプ操作によるインターフェイス
<数年後>
・ソーシャルに代わる新たなゲーム要素の発生
・ヒット事例の法則化を基にした、再構築型のゲームシステム
・CERO に代わる倫理基準の策定と、対応したゲームデザイン
・立体的コントロールと 3D インフォメーションの体感的一致
・移動体端末における、地下鉄など断続的通信環境下での補完的処理

生産性と品質の向上
アイデアを生かすために生産性をあげる技術
<最新>
・ゲームエンジンの使用を前提とした工程管理
・ローカライズを必要としないゲームデザイン手法
・アルゴリズムの整合性の自動テスト
・ユーザーに合わせて難易度を自動調整する AI の搭載
・多方面へのゲーミフィケーションの応用
<数年後>
・雰囲気表現の自動スクリプト生成や正規化支援を組み込んだゲームエンジン
・高度なローカライズ、カルチャライズの成功事例のデータベース化と自動化
・プロダクトリプレイスメントを扱う広告代理店の増加
・コンセプト主導型ゲームデザインにおけるシステム構築の自動化

気にしなければならない周辺技術
アイデアの元になる未来に予想される技術
<最新>
・立体映像が及ぼす悪影響を軽減する描画方法とゲームデザイン
・個人情報を保護するためのセキュリティ技術の向上
・クラウドを利用したゲームにおける各種端末での描画の最適化
・高精度空間情報システムを利用したゲーム
・マルチタッチデバイスの多人数同時操作におけるプレイヤーの特定
・IT家電のコンピュータを利用したインタラクティブコンテンツ
<数年後>
・空間コントローラーにおけるフォースフィードバックの一般化
・生体信号や、視線の動きなどの生理現象を利用したコントローラー
・感覚間相互作用や脳科学的認識作用を利用した体感表現

■サウンド分野

音響効果(音楽・効果音・音声を使った演出表現)
<最新>
・物体質量、形状、速度に応じた発音波形の動的選択
・パートトラックの音量変更など、シンプルな仕組みのインタラクティブミュージック利用が活発化
・3D 映像に対する立体音響表現手法の追求(バイノーラルや上方スピーカーを利用した上下表現のアプローチなど)
<数年後>
・より高度な物理演算エンジンとの統合、AI エンジンの発音制御への応用
・音響工学や建築音響などをベースとした、空間音響シミュレーションのリアルタイム化
・音響心理や周波数ドメイン制御が考慮されたリアルタイムミキシングの登場

信号処理技術(DSP/シンセサイズ・波形生成・合成・解析など)
<最新>
・リアルタイムオーディオエフェクトなど DSP 利用が活発化
・音声合成エンジンによる発声利用や、音声解析による自然言語入力の実験段階
・波形合成技術の多様化(周波数ドメイン制御、数式による信号生成、グラニューラなど)
<数年後>
・信号処理のリアルタイム組み替えや調整が出来るツールが登場し、ワークフローの一部となる
・VST のようなオーディオ入出力標準規格がゲームプラットフォーム上でも採用され、機種個別に作成する必要が無くなる
・ハード性能の進化により、スクリプト制御やタイムストレッチ等を利用した、より高度で柔軟なインタラクティブミュージックが実用化する

開発ツール・オーサリング環境
<最新>
・ゲームエンジンと同化した音源配置等のオーサリング環境を提供
・多言語同時開発・マルチプラットフォーム用の統合環境の登場
<数年後>
・CG オーサリングツールからモデル情報をダイレクトに音配置・遮蔽情報として利用したり、音場空間の事前計算に用いるなどの連動構築が加速
・タイムライン情報のインポートなど、DAW ソフト上のオーサリングデータとの連携による作業の効率化
・音声フォーマットに含まれたメタデータ(マーカー等)の有効活用
・音情報の統計・ビジュアライズ化により、利用頻度を考慮したリソース配分や、 素材音圧の自動調整、エラー自動検出など実装・デバッグが効率化される

■ネットワーク分野

個人所有データ
<最新>
・個人所有データや情報を、共有サーバに保持したり、他のユーザと共有したりすることが一般化しつつあるが、セキュリティについては、サービス提供社に一任されている
・二次創作以降のコンテンツについても同様の行為が広まりつつあり、元著作者との権利上の衝突が発生しつつある
<数年後>
・データの所有権、遺失時の瑕疵責任、権利保護の問題に対する、技術的、法律的、道義的な取り組みが進む
・個人データの取り扱い方の確立とともに、これを利用したサービスが拡大する

サービスプラットフォーム
<最新>
・「クラウド」「P2P」などを利用した、各種サービスプラットフォームが乱立しつつある
・多様なプラットフォームの相互乗り入れ技術の開発が試みられつつある (APIを用いての相互接続フレームワーク、共通認証サービス、データの共有による同一コンテンツのマルチプラットフォーム展開など)
・放送、書籍・音楽出版などのコンテンツ提供者も、この動きに参入しつつある
<数年後>
・利用者にとって、プラットフォームの違いを感じさせない環境の提供
・マルチプラットフォーム化にともなうビジネスの拡大と、各サービス提供者間における権利、法律上の問題が顕在化する

ゲームとコミュニティ
<最新>
・SNS など、コミュニティサービスを主眼とするビジネスの拡大に、ゲームが大きな付加価値を提供している
<数年後>
・SNS のゲーム化、ゲームの SNS 化が進み、相互の境界があいまいになる
・AR 技術の進化により実世界との融合も進み、現実世界での利害と関係が深まる

インフラストラクチャ
<最新>
・限られたアクセスポイントでのWiFiアクセスが、都市部限定で提供されている
・都市部においては、家庭への光回線などブロードバンド接続が普及しつつあり、様々なリッチコンテンツの流通経路となりつつある
・日本全国で、3G クラスの携帯電話回線接続が普及しているが、高性能端末の急速な普及により回線が逼迫しつつある
・都市部と、地方におけるインフラストラクチャ格差が依然として存在する
<数年後>
・次世代携帯電話網の普及が進む
・東日本大震災の復興策として、地方へのインフラストラクチャ整備が進む (遺失したカルテデータの電子化などが需要となる)
《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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