ニンテンドー3DS体験会レポート・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第9回 | GameBusiness.jp

ニンテンドー3DS体験会レポート・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第9回

Nintendo World 2011。一般ユーザー向けニンテンドー3DSの体験会が1月8日から10日の3日間、千葉県・幕張メッセで行われました。その様子をご報告します。今回は変則的な3部構成です。

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Nintendo World 2011。一般ユーザー向けニンテンドー3DSの体験会が1月8日から10日の3日間、千葉県・幕張メッセで行われました。その様子をご報告します。今回は変則的な3部構成です。
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Nintendo World 2011。一般ユーザー向けニンテンドー3DSの体験会が1月8日から10日の3日間、千葉県・幕張メッセで行われました。その様子をご報告します。今回は変則的な3部構成です。

Part1では体験会で感じた私の個人的印象をアットランダムに書かせていただきました。Part2では会場で『新・光神話 パルテナの鏡』のディレクター、桜井政博氏とお話ができました。そのダイジェストをご報告します。Part3では今後のニンテンドー3DSについて私の予測を述べています。



■Part1 イベントの印象

会場には多数の来場者がいるのに静かでした。ほとんどすべてのソフトを、ヘッドフォンをつけてプレイをするので、ゲームの音楽と効果音が場内に聞こえてきません。活気はあるのに静寂の体験会。東京ゲームショウやアミューズメントマシンショーとは、まったく異なる雰囲気です。

静かなのはゲームの音だけではありません。来場者のお行儀が良いのです。試遊をするために行列ができています。係員の方の指示にしたがって、並ぶわけですが黙っています。まるで私語が禁止された教室のように会話が少ないと感じました。

行列をしていると、「何名様ですか」と係員の方に尋ねられます。ファミリーレストランで人数を訊かれる場面を想像してください。試遊台が空いた台数に応じて案内されます。この質問を聞いていて意外だったのが、「ひとり」と答える人が多かったこと。家族連れ、友人同士のグループも、もちろんいます。ですが、もの静かなゲーム好きが、はるばる幕張に足を運んできている。そんな場であったようです。

ブースごとの派手なイベントはない。壁面は白地。コスプレイヤーなどひとりも見かけない。ゲームのイベントというよりも、美術館の展示場にいるような感じもしました。

会場に行くまで注目していませんでしたが、発売されたら欲しい、もっと遊びたいと感情が揺すぶられるソフトがありました。そのタイトルは『STEEL DIVER(スティールダイバー)』です。ニンテンドー3DSには本体の動きを感知するジャイロセンサーの機能がついています。この機能を使って、画面を潜水艦の潜望鏡に見立てます。ニンテンドー3DSでしか遊べないソフトの発見でした。


評価の高かった『STEEL DIVER』


静寂な会場の中で外国語がよく聞こえました。外国の中小デベロッパーの方たちも来ていました。中国からの留学生グループもいました。彼らはニンテンドー3DSに多大な関心を示していました。行列しながら雑談しました。「我々には、ニンテンドー3DSを使ったソフトをつくるアイデアが限りなくある」と豪語し、熱弁をふるっているフランスのゲーム企画者がいました。

3Dの見え方には個人差がある。このことは以前から知っていました。その差を調整するためにニンテンドー3DS本体には3Dボリュームと呼ばれる装置があります。ですが、3Dの見え方は、同じプレイヤー(=私)でも、ソフトによって相当な差があることを知りました。3Dの奥行きが深く設定されたゲームと、浅く設定されたゲームがあります。

ニンテンドー3DSを持ち、自分で電車に乗ったつもりになって、カラダを揺らしてみました。案の定、左右の目に投影される映像が重なって見えます。ニンテンドー3DSは視差バリア方式といって、異なる映像を左右の眼に投影することによって立体感をもたらすしくみになっています。したがって、本体と眼の位置関係が変わると見える像も変化します。

ところが、映像が重なって見えてしまっても、あまり気になりません。瞬時のうちに眼の位置を自分で補正しています。「ズレた」ということについても、心の中で許している寛容な自分がいるのです。不思議な感覚でした。

映像のズレは気になりません。ですが、ゲーム内のメッセージなど、文字がぼやけると不安な気持ちになりました。ゲームの映像は楽しみの要素ですが、文字はプレイ進行上、読んでおかなくてはいけない不可欠な画面要素。ゲーム内の文字の重要性を改めて認識しました。

ゲームの良さを人々に知らしめるのに「やってもらえばわかる」はある種の禁句です。なぜなら「やってもらえばわかる」を実行するのには、相当な費用と労力がかかるからです。でも、必要と判断したら実際にやってしまうのは任天堂らしいと思いました。

山内前社長の言葉。「任天堂は、無理・無駄をしない。だから社屋は全部矩形の組み合わせており、廊下はまっすぐにしてある。だが、必要なものには金をかける。バブルの真っ最中でも、必要と判断すれば東京に土地を買った」を思い出しました。

■Part2 桜井政博氏との対話
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■Part2 桜井政博氏との対話

次に桜井政博氏との対話をご紹介します。私は他の人が思う以上に、桜井政博という人物はニンテンドー3DSの評価を左右するキーマンだと考えています。

理由その1。『新・光神話 パルテナの鏡』はニンテンドー3DS初期作品のなかで最もすぐれた作品、私自身、好きな言葉ではありませんが、いわゆるキラーコンテンツと見込んでいます。

理由その2。ニンテンドー3DS、また『新・光神話 パルテナの鏡』を開発するために、株式会社プロジェクトソラという特殊な会社設立をした意味について知りたかった。

理由その3。桜井政博氏は、株式会社プロジェクトソラの取締役とは別の立場でゲームを語ります。『週刊ファミ通』にて連載コーナーを持ち、発売元やプラットフォームにかかわらず、「ゲームについて思うこと」を書く。オピニオンリーダーでもあります。

このような理由があり、今回のイベントでどうしても会いたかった桜井政博氏です。会場内で以下のような会話をしました。

ちなみに私は、桜井政博氏とは彼が20歳、私が28歳ときからのつき合いで、いつもどおりのように「桜井君」と呼ばせてもらっています。



平林: ゲーム業界、任天堂、ニンテンドー3DSとは関係ない現象として、その製品やサービスを誰が評価したか? が重視される時代になってきていると思う。極端なことを言うと桃屋のラー油、アマゾンのレビュー。良くも悪くも、メーカー当事者の意見よりも他者の評価が重視される。で、ニンテンドー3DSの場合、桜井君の見解は影響力が大きいと思った。だからどうしても話をしたかった。少し時間をください。
桜井: 話せないこともありますけれど、お手柔らかに(笑)。
平林: はい。では、改まってお尋ねます。株式会社プロジェクトソラが設立した経緯を今の言葉で話してもらえますか。
桜井: 株式会社プロジェクトソラは、任天堂・岩田社長のご要望をいただいて立てた会社です。任天堂が最新の3D技術を取り入れた新ハードを発売する。新ハードの特性をいかしたソフトづくりが必要で、そのディレクターとして私を任命してくださいました。普通ではありえないケースですよね。自分にかけてくださった期待が大きい。やりがいがあります。ちゃんとした3Dのゲームをつくろうとお約束いたしました。
平林: 普通の人ならば聞き流すところだけど、桜井君が「ちゃんとした3D」と言うと奥が深そう。その先の意味を知りたくなります。
桜井: 最初に思いついたのは、空中戦、いわゆる3Dレールシューターでした。ところが、空中だけの戦いでプレイヤーの気持ちを引っ張れるかと考えた結果、やはり、空中と地上が合わせてしっかりした3Dゲームを表現しようと考えるようになりました。
平林: 空中も地上もあるから、「ちゃんとした3D」。
桜井: はい。空中を飛ぶ、地上を走る、という要素を入れようと思いました。
平林: なるほど。場所だけではなくプレイヤーの操作も視野に入れていたんですね。
桜井: 当時、別の観点から、何らかのシリーズ作品にする必要はありますか? と岩田社長にご相談したことがありました。その際に岩田社長がおっしゃったことは、シリーズを決めるのではなく、まずは企画自由に考えてから検討しようとのことでした。
平林: で、1986年当時、隠れた名作と言われた『パルテナの鏡』がフォーカスされることになった。
桜井: はい。Wii版『大乱闘スマッシュブラザースX』でも、『パルテナの鏡』の登場キャラクター、ピット君が登場します。海外で『パルテナの鏡』の人気は高く、「続編は出ないのか?」とよく尋ねられます。また、日本では未発売ですが『パルテナの鏡』のゲームボーイ版が海外では発売されています。私自身、『パルテナの鏡』は好きなゲームソフトです。けれども、『パルテナの鏡』のニンテンドー3DS版を企画するというよりは、空中を飛ぶ、地上を走る、の要素を持った題材に『パルテナの鏡』を組み合わせるのは面白そうだと考えました。
平林: 『新・光神話 パルテナの鏡』を遊ばせてもらっての第一印象。思い切ったインターフェイスだと思った。右のタッチペンで振り向くところが特に。
桜井: 他の3Dゲームにおいて、PCゲームならばマウスで向きを変えるとか、ニンテンドーDSではタッチペンをオールで何度も漕ぐような操作で向きを変えるゲームってありますよね。
平林: はい。たくさんあります。
桜井: ああいう操作を今回は取り入れるべきではないと考えたんです。タッチペンの動き一発で振り向くことができる。地球儀のようにグルグルと回る感じ。直感で画面を操作できることがタッチスクリーンの良いところだと思うので。
平林: すると、身体の外側になる左手が攻撃ボタンになるでしょ。これは、右手で戦いをする習慣がついているプレイヤーに対して違和感があるかもしれない。ゲームの文法からはずれている面があるけれど、そんなことは気にしなかった?
桜井: はい。左手で攻撃することにデメリットが少しはあるかもしれませんが、タッチペンで振り向くことのほうがメリットは大きい。ですから、ニンテンドー3DSの操作系は決まっていない段階でしたが、企画書の最初の段階であの操作システムを決め込んでいます。
平林: え? あの操作を一発で決めた? いろいろと試したわけではなく? さすがとしか言いようがない。
桜井: はい。さらに言えば、3Dゲームをやり慣れていない人のために、視野を左右にしか振れないように、あえて制限をかけました。『新・光神話 パルテナの鏡』においては、プレイしていて、いきなり天井や足元が見えてしまうような360度が見渡せるゲームにする必要はないだろうと判断したんです。
平林: ゲームの中には、ゲーム特有のウソがある。たとえば、ジャンプしたマリオが空中で振り向いて踏み切り地点に戻るような……。実際の放物線運動ではありえない動きをしますよね。「ちゃんとした3D」の空間だけど、視点は左右の振り向きに制限する。ニンテンドー3DS版の美しいゲーム内のウソが考え抜かれている感じがする。偉大な発明だと思う。
桜井: ありがとうございます。ともあれ『新・光神話 パルテナの鏡』は、ニンテンドー3DSの独自性をきちんと表現するという点においては成功した、と思っています。
平林: ところで、『新・光神話 パルテナの鏡』の作者ではなく、引いた目で見てのニンテンドー3DSの感想は、将来の期待は?
桜井: これは任天堂の方からうかがったのですが『スターフォックス』の例をお話しします。NINTENDO64版の『スターフォックス』では、弾を敵に当てることができなかった人が、ニンテンドー3DSでプレイすると、よく当たるというのです。この意味は深くて、ニンテンドー3DSの本質を示しています。そのキャラクターがどこにいるのかが、明確にわかる。立体視によって、今までプレイヤーが持てなかった正確な情報を与えることができます。この点が3D映画や3Dテレビと違うところでしょう。「迫力が増す」といった付加的な機能ではなく、ゲームプレイに密接にからみます。正確な情報を与えることによって、ゲームを楽しめる人が増えてくれたらいいと思います。ニンテンドー3DSは高性能なガジェットにしてしまうのではなく、「ゲームってわかりやすいんだ」と思われる存在になってほしいですね。
平林: 『新・光神話 パルテナの鏡』がまさにそうなっている。わかりやすい。操作しやすい。3D酔いなんて言葉とは無縁の心地良さがあります。ところで、展示映像のナレーションもすごくわかりやすかった。「テキトーに押せば敵に当たります」なんて、他のコピーライターは怖くて書けない。あのメッセージは良かった。桜井君が書いたでしょ?
桜井: はい。紹介用映像のシナリオだけではなく、ゲーム中のメッセージも私が書いています。
平林: ハードそのものについて、尋ねます。ニンテンドー3DSの魅力、可能性、好きなところは?
桜井: 今はNintendo World 2011の会場にいるので、特に目立つことをお話するとARゲームですね。紙をレンズに写して遊ぶというのは、私もはじめて見た時にショックを受けました。とてもユニークだと思います。現在、ニンテンドー3DS用ソフトを開発している各社がARゲームを考えているかと思います。紙なのにカメラの中でモノが立つ。すごいことです。だけれども、モノが立っただけではゲームが成立しない。このへんが知恵の絞りどころで、ARゲームは、私もいつか取り組みたいですね。ですが、今は『新・光神話 パルテナの鏡』の完成に全力を注ぎます。
平林: 忙しいところ、ひきとめてごめんなさい。どうもありがとうございました。


■Part3 ニンテンドー3DSの予測
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■Part3 ニンテンドー3DSの予測

長文を読んでいただいたうえで、とんでもない予測で、申し訳ありません。ニンテンドー3DSの将来は、「まだわからない」が現時点での私の感想です。

今回のイベントは、ニンテンドー3DSの「裸眼立体視」できることの体験会でした。
また、実際に遊べるゲームソフトの発表の場でもありました。

体験したのは、ほんの一部です。

ニンテンドー3DSは、過去のどの家庭用ゲーム機とも異なっていて多彩な機能を持ったハードです。

「裸眼立体視」を基本として、外側に2個、内側に1個、合計3つのカメラ、ジェイロセンサー、モーションセンサー、ARゲームを遊ぶ機能、内蔵ソフト『思い出きろく帳』には歩数計が搭載されています。そして、「すれちがい通信」「いつの間に通信」の機能があります。

これらのどの機能とどの機能を組み合わせるかによって、ニンテンドー3DSのソフトの方向性は大きく異なります。ニンテンドー3DSは、未来を予測するには「変数」が多いマシンです。無限の可能性を持っているともいえます。

ですが、そんな理屈をこねて未来を予測しているうちに、ニンテンドー3DS本体内で作成したMiiが「すれ違っただけで、おもしろい!」と、発売同時に大評判になったとしても驚きはしません。

ニンテンドー3DSの未来は未知です。
体験すればするほど、未体験の部分が気になってしかたなくなるニンテンドー3DSです。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。

(C)Nintendo
《平林久和》

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