オランダのゲーム産業のいま(前編)・・・当地で活躍するデベロッパーと尊敬を受ける日本人 | GameBusiness.jp

オランダのゲーム産業のいま(前編)・・・当地で活躍するデベロッパーと尊敬を受ける日本人

在日オランダ大使館の招待で、4泊6日のオランダゲーム産業を巡るツアーに行ってきました。

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在日オランダ大使館の招待で、4泊6日のオランダゲーム産業を巡るツアーに行ってきました。
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在日オランダ大使館の招待で、4泊6日のオランダゲーム産業を巡るツアーに行ってきました。

前半2日間が地元企業や大学などの視察、後半2日間が国際ゲーム会議「フェスティバル・オブ・ゲームス」の取材です。後者については主要セッションをレポート済みですので、ここでは前半2日間の模様について紹介します。

ツアーに参加したのは、イギリスの老舗ゲーム雑誌『EDGE』のライターをはじめ、欧米のゲーム系・IT系メディアが4名。他にオランダ在住の映像コーディネーターと、ベルギー在住のジャーナリストで、共に日本人。そして筆者の全7名です。

オランダの空の玄関口、スキボール空港は成田から約11時間。空港からユトレヒト市内まではオランダ国鉄で約30分です。市中央部は中世の街並みを残し、運河が広がっています。初日はボートに揺られながら夕食を食べつつ、政府関係者からオランダゲーム産業の簡単な説明を受けました。

中世の街並みが残る市中央部運河を船で遊覧しながらディナー政府関係者とプレスの面々


オランダ政府が教育目的や科学技術振興の名目で、ゲームデザインやテレビゲームの産業育成に力を入れはじめたのは1990年のこと。こうした下地から今日でも、同国ではシリアスゲームの開発が盛んです。これらがエンタテイメント産業の下地となり、今ではPS3の看板FPS「キルゾーン」で有名なゲリラ・ゲームズや、MMORPG「スペルボーン」を開発したスペルボーンといった大手ディベロッパーを排出するまでになりました。

■マルチメディア系大学「Gameship」

翌日は『パックマン』の生みの親として有名で、フェスティバル・オブ・ゲームスで基調講演を務める東京工芸大学の岩谷徹氏も合流し、小型バスでオランダ東北部フリースラント州の州都レーワルデンへ移動。オランダ最大級のゲーム&マルチメディアスタジオ、Gameshipを見学しました。

Gameshipは映像系大学のNHL University of Applied Sciencesや、モーションキャプチャー技術を扱うMOTEK MEDICAL社など、複数の企業、大学が共同で出資し、2009年に設立されたプロダクションスタジオです。設立予算は約4億ユーロで、そのうち半分をフリースラント州の人材・産業育成支援の名目でEUが負担しました。商業スタジオの一方で、職業訓練大学としての側面も持ち、約850名の学生を受け入れています。映像制作全般に加えて、ゲームデザインも授業に取り入れられています。

Gameshipの外観VRとMOCAPの融合「CAREN」筋肉の動きを表示できる


Gameshipの自慢は、MOTEK MEDICAL社の次世代MOCAPシステム「CAREN」を備えていること。バーチャルリアリティとモーションキャプチャーを組みあわせ、今までにない人体の動きを計測できます。台座は6軸のアクチュエータに支えられ、上下左右前後の動きに加え、回転や傾斜も可能。台上には重量センサーを備えた走行ベルトが設置され、前方のスクリーン映像にあわせて動作できます。

この台座上でスクリーンを見ながら動作する人物の動きを、周囲に備えた12個のカメラでキャプチャする仕組みです。サーフィンなどのソフトウェアに加えて、計測データから筋肉の動きをリアルタイムで解析・表示する機能などもあります。主な用途は軍事・医療用で、教育機関で納品しているのは同校だけ。確かにこれでFPSなどをプレイしたら、非常に楽しそうです。

続いてGameshipにゆかりのある地元ディベロッパーの紹介がありました。2006年に設立されたTriangle Studiosは、学生ベンチャー第1号となったゲームディベロッパー。社員数は15名で、DSを中心に4年間で25本のゲーム開発に携わり、昨年は自社IPのアクションゲーム「HERON: STEAM MACHINE」をWiiウェアでリリースしました。また既報通り、iPhone向けの音楽ゲーム「WINtA」を七音社の松浦雅也氏と共同開発しています。翌年には米テキサス州ダラスに開発スタジオを設置し、iPhone・iPad向けのゲーム開発や、ソーシャルゲーム開発を強化する計画とのことでした。

Grendel Gamesは、2003年にシリアスゲームで起業した独立系ディベロッパーで、医療用トレーニングゲームなどを開発。先述した「CAREN」のアプリケーション開発にも携わりました。現在はエンタテイメントゲームにも進出し、Wii、Xbox360、PS3向けにゲーム開発を進めています。社員数は12名で、代表作にはWiiウェアでリリースされたアクションゲーム「DIATOMIC」があります。今後もシリアスゲームとエンタテイメントゲームの双方を手がけることで、バリューチェーンを広げていく計画です。両社ともGameshipの徒歩圏内にあり、大学を中心としたコミュニティが形成されています。

Triangle Studios創始者のRemco de Rooji氏社内に15人のスタッフを抱える自社IPの「HERON」(Wiiウェア)
Grendel Games創始者のTim Laning氏 自社IPの「Diatomic」(Wiiウェア)新作パズル「DIAMOND DAN」を配信予定


■カジュアルゲームポータル「Spil Games」

次に向かったのは北中部の街ヒルフェルスムにある、カジュアルゲームポータル大手のSpil Games。同社の運営するゲームサイトは欧州・北米に加えて、ブラジル、中国、インドなど全世界に広がり、その数は45サイト、日本でも「Egames.JP」というサイトを展開しています。無料でプレイできるゲームは4000種類以上で、17カ国語にローカライズされ、月間ユニークユーザーは1億1500万人を数えます。

同社は2000年に2人の開発者でスタートし、今ではハンブルグと上海に開発・サービス拠点を設置。全世界で230人の社員を抱えるまでに成長しました。社内には『FF13』や『スーパーマリオギャラクシー』など国産ゲームのポスターが張られ、棚の上にはバーチャルボーイの姿も。社内のミニバーにはビンテージゲーム機「オデュッセイ2001」のケースがおかれ、ゲーム好きが集まっている会社という印象を受けます。

ビジネスモデルは広告モデルで、自社開発ゲーム以外に他社からのライセンスも受け、収益をレベニューシェアする仕組み。ゲームサイトは女児(8〜12歳)、ティーン(10〜15歳)、ヤングアダルト(16〜26歳)、ファミリー(20〜49歳の主婦と10歳以下の子ども向け)の4種類でブランド展開されています。全アクセスの56%がファミリー向けで、ティーン向けが25%、女児向けが18%、ヤングアダルト向けは2%となっています。

Spil Gamesの本社外観内製でカジュアルゲーム開発も行うミニバーでオデュッセイ2001を発見
日本でも「Egames.JP」として展開アクセスの半数以上はファミリー層iPhone・iPadアプリにも進出


提供ゲームはパズルやアクションなどが主流で、ソーシャル要素やアバターなどもありますが、全体的にソロプレイが中心。日本で主流のアイテム課金もありません。もっとも同社では現在iPhone・iPadアプリや、Facebookアプリの開発も進めています。よりソーシャルなプレイ体験を提供していき、さらなる成長をめざすのことでした。また中国と日本は戦略的に非常に重要な地域で、ライバル企業も多く、継続的な改善を続けていきたいと抱負が述べられました。

ちなみにツアーで改めて驚かされたのが、同行された岩谷氏の人気ぶり。GameshipでもSpil Gamesでも、見学後はトップからサインの依頼が続きました。Spil Gamesでは岩谷氏に開発セクションのスタッフに向けて、即興で挨拶を依頼されたり、記念写真を依頼される一幕も。『パックマン』を創り出したクリエイターに対するリスペクトは、オランダでも非常に高いものがあると感じさせられました。

サインを頼まれる岩谷氏。オランダでも高くリスペクトされている。
《小野憲史》

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