ローカリゼーションという仕事・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第1回 | GameBusiness.jp

ローカリゼーションという仕事・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第1回

ゲーム機の性能が向上し、開発規模が肥大化した今、これまで以上に海外のゲーム市場が重視されるようになりました。その一方、でそのノウハウはゲーム業界で広く共有されているとは言い難いものがあります。新連載「ゲームウォーズ 海外VS日本」ではローカリゼーション

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ゲーム機の性能が向上し、開発規模が肥大化した今、これまで以上に海外のゲーム市場が重視されるようになりました。その一方、でそのノウハウはゲーム業界で広く共有されているとは言い難いものがあります。新連載「ゲームウォーズ 海外VS日本」ではローカリゼーションの専門会社であるアクティブゲーミングメディアのイバイ・アメストイ氏がその長年の経験から得た知見を紹介します。


移り変わりの激しいゲーム業界では、大手や優良メーカーさえも浮き沈みを繰り返し、事業環境も劇的に変化していきます。そして現在、グローバリゼーションの進行は、現在のゲーム業界の環境を形成する上でかなりの要因となっています。また、技術進歩により国や文化がさらに一体化する中、国際的なゲーム文化の形成がすでに始まっていることは疑いの余地がありません。大陸や文化を越えて、世界中のあらゆる場所にゲームやゲームプレイヤーが存在するようになりました。ゲームが世界的に流通することで、ゲーム体験を共有できるようになったのです。

こうしたゲームのグローバル ネットワークを支えているのが、ローカリゼーション業界です。文化の垣根を越えてゲームの言語や感覚を伝えるゲーム ローカライザーなくして、ゲームを海外に普及させることは不可能でしょう。しかしながら、良いゲームは場所や文化を問わず良いゲームなのだから、どのような文化圏でも売れるはずであり、単に言葉を翻訳すれば十分だという考えも依然としてあります。こうした考え方は時代遅れで見当違いです。ある特定の国のゲームプレイヤーは、その国の文化の産物であり、固有の趣味や好みを持っています。つまり、国が違えばニーズも様々なのです。これは目新しい考えではありませんが、限られた予算と厳しい納期の中、業界内でこの点への配慮が十分になされないことも珍しくありません。

文化固有のニーズに対応するため、開発者はゲーム制作に着手する時点からターゲット層を念頭に置いておく必要があります。制作したゲームがローカライズされた時に、プレイヤーに合ったゲームになるようきちんと配慮しなければなりません。

私たち アクティブゲーミングメディアは日本国内で唯一のゲーム ローカリゼーション専門企業です。今回の連載では、ローカリゼーションの世界の一部を皆様にご紹介したいと考えています。また、国際的なゲーム市場で成功を維持するために日本の開発者はどのように適応すればよいかという点について、話を進めていきたいと思います。

ローカライザーは、ゲーム開発者の皆様にとっての文化面での案内役または大使として、独自の役割を担っています。また、元々ゲームが制作された国のプレイヤーと同じぐらい、世界中のゲームプレイヤーがそのゲームを楽しむことができるような環境を提供すべく責任を持って取り組んでいます。まずはこの役割を担う当社の経験や、質の高いローカリゼーションがゲームの売上に対して及ぼす影響について当社が収集した情報をいくつかご紹介しましょう。

ローカリゼーションが適切に行われれば、単に言語が翻訳されるだけではなく、文化の垣根を越えてその意味合いが伝わることになります。これにより、ターゲットとなる言語を使用するプレイヤーも、元の言語のプレイヤーと同じぐらいゲームに満足できるのです。なぜここでプレイヤーの満足度について申し上げているかというと、要するに、ゲームに対するプレイヤーの満足度こそゲームの成功のカギを握る大きな要素となるからです。

プレイヤーに満足してもらうには、まずゲームのテキスト(メニュー、アイテム、会話など)を適切に翻訳し、そのテキストが文化的に見て違和感がなく適切かどうか確認する必要があります。どのような文化や言語にも、他言語に簡単に訳すことができない考えや表現が数多くあるものです。単純に翻訳しても、別の文化のゲームプレイヤーにとっては混乱するだけという場合もあります。なぜなら、文化的な決まりごとが元の国の文化で生活するゲームプレイヤーとは異なるからです。ターゲットとなる文化圏で生活するゲームプレイヤーにも、翻訳前の言語でゲームをプレイするプレイヤーと同じぐらい満足してもらえるかどうかは、ローカライザーが、二つの文化間で同じ意味に相当するものとして最もふさわしい言葉を見つけると同時に、ターゲットとなる文化圏のゲームプレイヤーを引き付けるような方法でこの言葉を届けられるかどうかにかかっています。

ただ、最終的な目標は何よりもゲームの売上増加です。そのためには、ターゲットとなるゲームプレイヤーに大いに満足してもらわなければなりません。元の言語では実におもしろくて引き込まれるようなゲームでも、適切にローカライズされないと、最終製品はゲームプレイヤーにとってストレスと不満をもたらすだけということにもなりかねません。その要因は数多くあります。例えば、プレイの質を落とすようなひどい翻訳、プレイする際にいらいらさせられるような、時にはプレイが不可能になるようなコーディング、そして慎重な対処が求められる文化的問題に全く配慮していないことなどが挙げられます。どれもが、最終製品にダメージを与え、売上面でマイナス影響を及ぼす要因になり得るのです。

質の低いローカリゼーションを避けるためには、以下の点を考慮することをお勧めします。まず、そのゲームのターゲット層について考えてみましょう。これは最も重要な点です。この決定いかんによって、ゲームの翻訳とプレゼンテーションの方法やスタイルが変わってくるからです。ゲーム開発者は、ゲームのテーマ、文化そしてオーディエンスについてローカリゼーション チームにしっかりと伝えることが重要です。開発者はローカライザーに対して、ゲームの背景や状況をできるかぎり多く伝えるべきでしょう。これにより、ゲームのテキストの翻訳に取り掛かる前にすでに、最終製品を担当する人々がゲームの内容や関係する重要な文化的要素について深く理解できることになります。

第二に、ローカリゼーションの予算を適切に定める必要があります。ローカリゼーション企業が急増する中、最も低い金額を提示した会社にプロジェクトが発注され、結果として劣悪な品質を招くことも珍しくありません。開発者が、ローカリゼーションの質の重要性を過小評価していることに一因があるのかもしれません。または単に、質の高いローカリゼーションを行うだけの予算がないという理由によるものかもしれません。しかし実際のところ、質の低いローカリゼーションを行うぐらいならば、まったくローカリゼーションを行わないほうがマシなのです。ある特定のゲームを海外に広めることができないことを嘆くプレイヤーはたくさんいるかもしれませんが、まさにこうしたプレイヤーこそ、いい加減なレベルのローカリゼーションに対して際限なく苦情を言うものです。不完全な状態で製品を海外に進出させれば、結果的には開発者のイメージに傷がつくと同時に、ファンとの関係も悪化します。適切なローカリゼーションを行う予算がないゲーム開発者は、むしろ他の事業分野に投資したほうがよいでしょう。

最後に、ローカリゼーション チームに対して妥当なスケジュールをきちんと提示する必要があります。予算の少なさに次いで、厳しい納期は質の悪いローカリゼーションの要因となります。ここで留意すべき重要かつ明確な点は、ローカリゼーションに割り当てられる時間が削減されれば、最終製品の質も下がるということです。開発者がゲームの海外進出を計画している場合、まずは、ローカリゼーションの計画とスケジュールを現実的な納期を考慮して策定するべきです。
上記の3点は、別の言語や文化圏に渡ってもゲームの質が保たれるようにするための手段です。なぜ意味不明なゲームになっているのか、またはなぜプレイしにくいのか、消費者はその言い訳など聞きたくないのです。消費者はただゲームをプレイし、楽しみたいだけなのです。文化を問わずあらゆるプレイヤーがゲームを楽しめるようにすることこそ、ローカライザーである当社の仕事です。

今回の記事が皆様にとって何かの参考になれば幸いです。ゲームのローカリゼーションや国際的なゲーム業界についてさらにご紹介できる機会を楽しみにしています。
《イバイ・アメストイ》

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