東京ゲームショウ前夜となる9月20日、神田明神ホールにてスペインのゲーム開発者が集うパーティ「スペインゲーム祭」が開催されました。
このイベントは、スペインを拠点に活動するゲームスタジオが十数社参加するパーティ。東京に集ったスペインゲーム会社の集まりはどんな内容だったのか、イベントレポートとしてお届けします。
15のゲーム開発社らが集結！
このイベントはスペイン貿易投資庁と、スペイン大使館経済商務部が主催。日本とスペインの交易促進を目指すという交易投資庁の思いの下、日本とスペインのゲーム業界をつなぐこと目的に開催されました。
会場にはスペインの開発者はもちろん、日本のゲーム業界人も多数参加しています。ステージには『ストリートファイターII』や『キングダムハーツ』などで知られる下村陽子氏が姿を見せました。
元週刊ファミ通の編集長で、一般社団法人日本eスポーツ連合やデジタルメディア協会の理事を務める浜村弘一氏が登壇。ゲーム業界初期は日本やアメリカの大手ソフトハウスがゲーム産業の中心だったものの、最近は多様性が高まり、大手以外の作品も力を持っているため、スペインのゲームも注目を集めてきていると述べました。
今回参加していたのは、インディーを中心とした15のゲーム開発スタジオや関連会社・組織です。会場では、一部の参加社によるゲーム紹介映像が流されました。また、試遊台も設置しており、実際に手にとって遊ぶこともできました。
Digitlal Sun
『ムーンライター 店主と勇者の冒険』で知られるスタジオ。タワーディフェンスとRTSを組み合わせた新作タイトル『Cataclismo』のパブリッシャーがHumble Gamesになったことを発表し、動画を公開しました。
Maniac Panda
Web3を活用したゲームを開発するスタジオ。メタバースが舞台の基本無料三人称視点アクションRPG『Outer Ling』、同作の世界設定をベースにした無重力アーケードレースゲーム『Racerloop』、2.5Dスタイルの没入型パズルアクション『One Last Breath』を紹介しました。
Vermila Studios
ホラーアクションFPS『Crisol: Theater of Idols』を開発中。発売時期未定で、現在パブリッシャーを募集しています。
Undercoders
電車がトリックをキメまくるバカゲー『Densha Attack!（電車アタック）』の映像をお披露目しました。
Metrobots Games
Web3やブロックチェーン・NFTといった新技術を活用したゲームを開発するスタジオ。スマホ向け戦略カードゲーム『Exobots』を配信し、現在2作目を開発中です。
Cosmic Spell
基本無料のターン制RPG『Soul Breach』をPC/モバイル向けに2025年リリース予定。ダークなアートスタイルで描かれたクリーチャーを集めて戦います。
Polygonal Mind
ゲーム開発スタジオ兼3Dアーティスト。キュートなキャラが特徴の2Dスノボゲームの映像を公開しました。
SelectaVision
映像の配給会社で、ゲーム部門を持っています。パロディアニメ「タデオ・ジョーンズの冒険」原作のゲームなど、様々な取り扱いゲームを紹介しました。
Odders Lab
リズムフィットネスゲーム『OhShape』で知られるVR/XRゲーム開発スタジオです。実在の「レズミルズ・プログラム」の種目をベースにしたVRゲーム『Les Mills Body Combat』をMeta Quest Storeで配信しています。
あの『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラ』にスペイン産が！？スペイン最新ゲーム事情
ステージ終盤では、元週刊ファミ通の編集長でハナペン合同会社代表であるバカタール加藤こと加藤克明氏と、『改造町人シュビビンマン』などメサイヤ作品の復刻などを行うパブリッシャーShinyudenの代表ガルシア・ルイス氏が登壇。スペインの最新ゲーム事情について講演を行いました。
スペイン国内におけるコンソールの普及率は、ニンテンドースイッチがトップ。次いでPS5、Xbox Series X|Sと並んでいます。スイッチは他コンソールの3倍近い販売台数という、圧倒的なシェアを誇っています。
2022年のソフト売上ランキングTOP20では、サッカー大国であるスペインらしく『FIFA 23』が最も高い売上を記録しました。『FIFA 22』も比較的高い順位に位置しています。
他には『ポケモン』シリーズや『星のカービィ ディスカバリー』といった任天堂タイトル、スイッチ版『マインクラフト』や『GTA V』といったロングセラータイトル、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』や『ELDEN RING』など新作がランクインしています。
そして2023年7月は『ゼルダの伝説 TotK』や『ピクミン4』、『マリオカート8 デラックス』や『Nintendo Switch Sports』などシェア率通り多くの任天堂タイトルが人気に。『FIFA 23』はPS4/PS5の両バージョンが売れているそうです。
特にポピュラーなジャンルとしては、アクションやRPG、スポーツが挙げられています。
2022年のスペインにおけるゲーム産業の年間収益は3,177億円にも上っており、デジタル・物理共に好調です。コロナ禍が始まった2019年頃にやや下がりが見られるものの、基本的には右肩あがりとなっていることがわかります。
2022年の収益は前年比12.1％増、2014年の2倍以上の売上となっており、今注目すべきマーケットのひとつとなっています。
こちらはスペインに拠点を置く開発スタジオの分布図です。首都であるマドリードの他に、カタルーニャやアンダルシアにも多くのスタジオが存在します。
海外企業の拠点としては、マドリードにEA、バルセロナにユービーアイソフト、King、Bandai Namco Mobile、ゲームロフトなどが存在するそうです。
ここからはスペイン産の有名作品を紹介します。まずは、『キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ』や『メトロイド ドレッド』を手掛けたMercurySteamが紹介されました。
2021年に発売した『メトロイド ドレッド』は19年ぶりの2Dシリーズ完全新作でしたが、新旧のファンより高い評価を獲得。300万本以上を売り上げました。
美麗かつダークなドット絵が特徴的なメトロイドヴァニアACT『Blasphemous』シリーズも、スペインのThe Game Kitchenが開発した作品。同シリーズはマドリードの宗教観や文化が反映された作品であるそうです。
1作目は300万本を売り上げたほか、最近発売したばかりの2作目も発売1週間で20万本以上を売り上げる人気シリーズとなっています。
パズルアドベンチャー『RiME』やゾンビアクション『Deadlight』で知られるTequila Worksも有名で、前者は地中海のスペインらしい風景が登場する作品です。
著名インディーパブリッシャーであるDevolver DIgitalが発売する『GRIS』も、スペインのNomada Studio生まれ。美しいアートスタイルは高い評価を得ました。
クラシックなゲームとしては、Pyro Studios開発の『Commandos』シリーズが有名です。同作は『Shadow Tactics』など見下ろし型のステルスゲームである「リアルタイムタクティクス」ジャンルを築き上げた作品で、最近もリマスター版が発売されています。スペイン国内においては、ゲーマーであれば知らない人はいないほどの有名作であるといいます。
今後の期待作としては、先程も紹介されたスペインの伝承をベースにしたホラーFPS『Crisol: Theater of Idols』や、一人称視点のナラティブホラーゲーム『The Occultist』が紹介されました。
会場は多くの人で賑わい、パエリアなどのスペイン料理やスペインビールも振る舞われ、大盛況のパーティとなっていました。
