有志翻訳者とローカライズ会社の本音トーク「頑張っている者が『有志』『商業』で分断されてしまうのは悲しい」【有志日本語化の現場から】 | GameBusiness.jp

有志翻訳者とローカライズ会社の本音トーク「頑張っている者が『有志』『商業』で分断されてしまうのは悲しい」【有志日本語化の現場から】

海外のPCゲームをプレイする際にお世話になる方も多い有志日本語化。今回は匿名座談会形式で、海外ゲームの有志日本語化に携わる方々と、海外ゲームを日本向けにローカライズしている会社の方に話を訊きました。

ゲーム開発 その他
有志日本語化の現場から(匿名座談会)
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海外のPCゲームをプレイする際にお世話になる方も多い有志日本語化。今回は匿名座談会形式で、海外ゲームの有志日本語化に携わる方々と、海外ゲームを日本向けにローカライズしている会社の方に話を訊きました。

日本語化とは海外のゲームを日本語で遊べるようにすることです。その中でも、デベロッパーやパブリッシャーによる公式の日本語化ではない、ユーザーによる非公式な日本語化を有志日本語化(有志翻訳)と呼びます。一般的にボランティアで行われ、成果物は無償で配布されます。

有志日本語化には、デベロッパーやパブリッシャーが許可する範囲内で行われるものと、無許可のものがあります。許可されているものには、Mod(ユーザーによる改造)が公式に認められている場合や、直接許可を得ている場合などがあり、最近はインディーゲームを中心に有志日本語化が公式日本語版として採用される例も出てきています。



連載第8回は匿名座談会形式で、海外ゲームの有志日本語化に携わる方3名と、海外ゲームを日本向けにローカライズしている会社の方1名に忌憚のない話を訊きました。匿名座談会のため、出席者の名前や肩書きは伏せています。


日本語化プロジェクトの管理


有志翻訳に期限はありませんが翻訳者がいなくなることが心配です
――今回は匿名座談会ということで、皆さまのお名前や肩書きは記事に掲載しません。最初に、海外ゲームの日本語化に携わるようになったきっかけを教えてください。

A氏海外の有名RPGに接してからPCゲームに興味を持ち、日本語化Modを使ってプレイするようになりました。しかし、日本語化Modがないゲームも多いため、自分で日本語化にチャレンジするようになりました。

B氏古今東西、様々なPCゲームを遊んでいました。多言語化が容易であるにもかかわらず、日本語化が不適切であったり、日本語がないことで普及が妨げられている作品が多くあります。そこで開発元に問い合わせたりしていたところ、結果として自分で日本語化作業をするしかないケースが増えてしまいました。

C氏あまり積極的な理由ではないのですが、数年前に転職する機会があり、その空き時間にある海外PCゲームの翻訳にチャレンジしたことがきっかけです。

D氏私は実際にローカライズを行って配信している会社の中の人です。15年ほど前から海外ゲームを日本向けにローカライズして配信しています。海外ゲームの楽しさを日本のユーザーに伝えたい思いがあって、この仕事に関わっています。


――日本語化のプロジェクトを円滑に進めるために、どのような工夫をしていますか。

B氏有志翻訳ですと、昨今のトレンドはGoogle スプレッドシートを用いたクラウドでの複数人同時作業だと思いますが、ローカライズ会社の場合は開発元から指定される形式に合わせるのでしょうか。

D氏開発元からテキストデータを提供していただいて翻訳するのですが、これが結構いい加減です。IDが振られたデータがそのまま来たり、Microsoft Wordに貼りつけられたままのデータが届くことがよくあります。ですから、こちら側で翻訳しやすいデータ形式を提案することもありますね。多言語に翻訳することを想定していない作りで3万ワード前後の場合ですと、ソースコードに直接テキストが書き込まれている場合もあります。

B氏Wordに貼りつけられたままのデータですか。私は商業翻訳も行っていますが、この前そのままズバリのデータがありました。インディー作品ですが、結構大きい開発元です。そのあたりは開発規模によらないかもしれませんね。

A氏商業翻訳ならゲームの背景資料が入手できるのではないですか?

D氏無いことの方が多いです。

B氏開発元に大手を振って直接問い合わせられるのが商業翻訳の強みですね。とはいえ、その返答も常にスムーズとはいきません。このデータがありませんと問い合わせても返事がなく、納期近くになってやっと回答が来ることもあります。

D氏納得がいくまでローカライズしていたら一年かかったこともあります。

C氏明確な期限はないのでしょうか?

D氏タイトルによりますね。多言語同時リリースですと結構きついです。時期をずらして出したり、テキスト量が多すぎて開発元も悩んでいるようなタイトルは意外と融通がききます。

B氏時期がずらせると、有志翻訳と条件が近くなりますね。もちろん、その間ユーザーをお待たせすることになりますが。

A氏有志翻訳に期限はありませんが、翻訳者がいなくなることが心配です。気がついたら誰もいなかったり。匿名ですから連絡も取れません。

B氏小規模インディー作品だと、商業翻訳でも翻訳者が逃げたりギブアップする話は聞き及ぶことがありますが、完全なフェードアウトはあまり無いですね。

A氏それは予算の関係でのギブアップですか?

B氏聞いた限りでは作業に入ってからの場合が多いので、請けた者の都合だったり、力量を超えているケースですね。

D氏想定していた翻訳環境と違っていたりすると、プレッシャーを感じて降りる個人の方もいると思います。翻訳にかけられる予算の問題もあるので、出す方も請ける方も折り合いがつかなくなる場合はありますね。


日本語化を支える翻訳と技術


きちんと表示されるようになれば嬉しいのでなんとかしています
――日本語化を支えている翻訳と技術のスキルについて教えてください。

A氏有志翻訳で悩むのは、RPGなどでセリフの順番と話者が分からないことです。皆さんはなにか工夫していますか?

B氏テキストデータの管理がしっかりしていないゲームではよくありますね。

D氏最近は翻訳の精度を上げるために、管理用の項目を増やして話者を入れてもらうよう開発元に依頼しています。「翻訳する人が大変だから、その情報があればいい翻訳が上がって来ますよ」と説得しています。

B氏ローカライズ会社ならではの努力ですね。自分の場合はデータの位置から時系列を推測しています。

――そもそもゲーム自体が日本語表示に対応していない場合もあるのでしょうか?

D氏あります。過去には翻訳して組み込んでみたら表示されず、ソースコードを見たら直接テキストが書き込まれていたこともありました。最近では変わって来て……いませんね。あと困るのが、改行処理と禁則処理です。

B氏改行処理と禁則処理は永遠の命題ですね。日本語用の処理が搭載されているゲームですら、不具合は少なくありません。

D氏組み込んでみて初めてわかる問題もあります。日本語なので左寄せで表示したいのに中央寄せで表示されて、句読点だけ改行されていたり。

A氏確かに半角スペースを挿入したりして改行させるのは苦行ですね。しかし、Unityなど最近のゲームエンジンでは、アジア圏の禁則処理に対応し始めています。

B氏とはいえ、どのゲームもUnityやUnreal Engineを使用しているわけではないのが実情です。また、商業翻訳だとスペースを入れて見かけだけ動かすというわけにはいかない場合もあります。納品するものですから、きちんと説明しないといけません。そこは有志翻訳の強みですね。


C氏ソースコードに直接テキストが書き込まれている場合ですが、修正したものをこちらで実行ファイル形式にして渡すのでしょうか?

D氏そうしているタイトルも何本かあります。しかし、最近はソースコードが提供されないことも多いので、問題点を見つけたら画面をキャプチャーして問題がある画面と期待していた画面の対比表を作り、開発元に送ってローカライズしています。

B氏組み込んで初めて分かる問題の中にはどうしようもない部分もありますね。自分が関わったケースですと、本来ある縁取りが日本語では表示されず、一部の場面で背景と文字が同化していました。その問題を報告したら、技術的問題なので対応できないと言われ、そのままになっています。

C氏そもそも英数字しか表示できないゲームが提供されることもあると思いますが、そのような場合は断っているのでしょうか?

D氏ソースコードが手元にある場合は表示処理を修正します。そして、ゲームに合ったフォントを見つけて開発元に提案ですね。

C氏ソースコードを修正しているんですね。結構コストがかかりませんか?

D氏かかります。ですが、きちんと表示されるようになれば嬉しいのでなんとかしています。ソースコードがない場合は説得ですね。海外のインディー作品の開発元は結構一緒にやってくれます。

A氏有志翻訳の場合はソースコードがないので、無理やりプログラムを差し替えないといけないから大変です。うまくいくことはまれですけどね。

B氏いわゆる“ハック”ですよね。やはり試行錯誤という感じなのでしょうか?

A氏自分で立ち上げた有志翻訳ですと、「すみません日本語化できませんでした」とは言えないので、プレッシャーですね。アップデートで一時的に日本語化できなくなったケースもありました。

B氏それはなかなか大変ですね。自分の場合は、他の人に知らせるにしてもめどが立ってからです。ユーザーインターフェイスは全部終わらせて、用語も固めてから知り合いにだけ教える場合もあります。


《FUN@Game*Spark》

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