モバイルゲーム市場における「カジュアルゲーム」の台頭――エンジニアがその魅力を解説【CEDEC 2019】 | GameBusiness.jp

モバイルゲーム市場における「カジュアルゲーム」の台頭――エンジニアがその魅力を解説【CEDEC 2019】

近年では、もっとシンプルな無料ゲームである「カジュアルゲーム」がランキングの上位を占めるようになる変化が起きています。「ハイパーカジュアル」とも言われる潮流も生まれている中、各開発会社はどのように取り組んでいるかのセッションです。

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スマートフォンによるソーシャルゲームが大きな地位を占めていた日本のモバイルゲーム市場に、近年変化が起きています。よりシンプルで、かつ無料で楽しめる「カジュアルゲーム」がランキングの上位を占めるようになってきたのです。

2019年9月5日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」で「エンジニアから見た「カジュアルゲーム」の魅力」のセッションが行われ、現役のエンジニアたちがカジュアルゲームの現状やその魅力について語り合いました。

カジュアルゲームの魅力とはなにか?



セッションは「カジュアルゲームの魅力をエンジニアに知ってもらうこと」をテーマに据え、株式会社AppLovinの萬野有生氏を司会に、カジュアルゲームを開発している3社からそれぞれスピーカーが招かれました。


株式会社エウレカスタジオのCEOである馬場紘弥氏は『仕事サボる! -脱出ゲーム 』などのカジュアルゲームを制作してきました。日本での評判だけではなく、中国iOSストアでチャート3位を記録する結果を出しています。

馬場氏はカジュアルゲームについて、「「ボリュームが短いので量産ができる。カジュアルゲームはほとんど素人でも作れるくらい敷居が低い」点が魅力だと語りました。また、カジュアルゲームは開発からリリースまでのプロセスも比較的平易で、ビジネスの全体像も俯瞰して観やすいと言います。「エンジニアは技術的な追求をしたいと思うんですが、こうした利点もある」とまとめます。


株式会社Geisha Tokyo, Inc.の田口聖久氏は『Traffic Run!』や『Snowball.io』といったタイトルに関わり、100を超える国のチャートで1位を獲得する実績を出しています。

田口氏は、かつてソーシャルゲームに携わっていた経験と比較して、「ソシャゲは2年開発するんですが、その間にお客さんの反応は見られない。2年かかって、ようやくお客さんの反応が見られるというのがきついんです」と語り、「カジュアルゲームでは1週間で作ったプロトタイプで、お客さんの反応が見られる」という魅力を挙げました。

また、「開発のフィードバックの多さに魅力を感じるスタッフもいる」と、ユーザーの反応に対するレスポンスの早さも特徴だとしています。


株式会社マジカントのリードエンジニアを務める矢嶋孝康氏は。『1LINE 一筆書き パズル ゲーム』などに携わり、USランキングで1位を獲得したこともあります。「パズルは息が長く利益が出る」と言います。

矢嶋氏も田口氏同様「短期間で作って出せる」ことを特徴として挙げ、「一人のエンジニアが開発を全部できるため、好き勝手開発して良い」という利点を語りました。「エンジニアにとって、カジュアルゲーム開発は技術的に成長できないのでは、と思いきや、やらなきゃならないことがいっぱいあって、いい経験になるんです」と全体の作業でのカバー範囲が広いことを取り上げました。

カジュアルゲームの難しい点



一方で、カジュアルゲーム開発の難しさについても討論されました。田口氏は本当の意味での面白さを追求しなければならない点に難しさがあると語ります。

ソーシャルゲームならば、コアであるゲームプレイだけでなく、キャラクターやイラストレーションなど複数の要素が魅力になりうるのに比べ、カジュアルゲームはゲームプレイそのものの面白さを追求しないと、チャートで勝つことはできないそうです。

ユーザーが旬樹にゲームの内容を把握でき、ダウンロードしてもらうことも、チャートで勝ち上がるために重要な要素の一つとして挙げられました。

馬場氏は「ハイパーカジュアルゲームの分野だと、人間は本質的になにが気持ちいいか」が重要だと指摘。「プチプチの梱包を指で潰すような気持ちよさ」を例に挙げ、なぜこれが人間にとって気持ちいいかをチームと共有するそうです。「人間のことばかり研究しているようなところ」もあるため、エンジニアにとっては合う合わないはあると言います。

カジュアルゲーム開発会社の採用―どんな人が向いているか?


カジュアルゲーム開発に向いているのはどういう人か、また採用したいと思うのはどういう人材かも議題に上がりました。馬場氏は株式会社エウレカスタジオが新興の企業である点を強調しつつ、「来年は会社があるかどうかわからないけど、来てくれますか?」と面接で聞くと言います。そこで「行きます」と即答できなければ不採用にすると話していました。

では、実際どのようなメンバーが働いているかと言うと、多くは前職などで「作りたいゲームがあるのに」というフラストレーションを抱えていた人 だといいます。スタッフの年齢層も20代半ばと若く、「なんとかなるだろう」とついてきてくれているそうです。

矢嶋氏が所属する株式会社マジカントでは「6、7割の社員が家庭を持っている」と説明します。マジカントでは働きやすい環境を意識しており、自宅作業も推奨しているそうです。矢嶋氏は採用について、「ちゃんと工数を計算し、コミュニケーションを取りつつ作業ができる人」を採りたいと語りました。また、カジュアルゲーム開発には「飽きやすくて同じゲームを作っていられないという人」が向いているという自身の考えを述べていました。

田口氏は、より俯瞰した立場から、採用においてはカジュアルゲーム開発のカルチャーにフィットするかどうかを重視すると語りました。「カジュアルゲームのトレンドはどんどん変わるから、以前言ったことと変わることがよくある。それをダブスタだと思わず、トレンドの変化に対応できること」をポイントに挙げました。学生インターンからそのまま入社する人も多く、まず現場に入り、カルチャーフィットするかを判断すると言います。ゲーム自体は1週間や2週間で作れるので、そこで判断するそうです。

今後カジュアルゲームの業界にどうなってほしいか



今後のカジュアルゲーム業界の展望についても語られました。馬場氏は「もっと盛り上がってほしい」と期待を口にします。「簡単に作れるものを中国にリリースしています。まず小さく初めて、雪だるまのようにビジネスを大きくできるので、カジュアルゲームってチャンスがある業種なんです」と語ります。

田口氏は、「ゲームと言えば日本」だったのが、近年は日本のチャートでも海外のカジュアルゲームが上位に躍り出るという現状に悔しさを覚えていると言います。「カジュアルゲームって、コアゲームと違ってゲームをやらない人がやってくれるんです。」とユーザーの傾向を指摘していました。

矢嶋氏は「アメリカのランキングで日本のタイトルも見られるように、デベロッパーも増えていく」と見ています。「ここ2年ハイパーカジュアルがバズワードのようになっている。しかしアメリカのランキングを見る限り、なぜ各国がカジュアルゲームを競っているかというと、利益を出せる形があるから。各国がお金をかけてやっている」と指摘。そこでカジュアルゲームも多様化していくことを望んでいました。

田口氏は矢嶋氏の意見を広げる形で、カジュアルゲームは「まず市場の大きいアメリカのストアに出して、日本に後でリリースする」そうです。

カジュアルゲームの特徴はわかりやすさですが、欧米のストアを見てきた田口にとっては「文化によって、わかりやすさは違ったりする」とも指摘。USのヒットチャートを研究し「サングラスをかけてもわかるような色彩がいいのではないか」など模索を続けていると語りました。

矢嶋氏は、馬場氏が中国でもタイトルをリリースしていることに触れ、「中国は特殊な市場で参入が難しいと思うが、アジアではそうでもないのでしょうか?」と質問しました。馬場氏は「日本とアメリカほど嗜好は乖離しないんです。日本でヒットしたゲームが中国でもヒットする可能性はあります」と回答していました。

会場からの質疑応答では、「上手く行くカジュアルゲームとそうならないゲームの差はなにか?」の質問に対し、馬場氏は「開発で面白いと思うものが、お客さんと誤差があるかを考えられることが大事」だと意見を述べました。

矢嶋氏は「一目見てどんなゲームかわかることが重要」としつつ、「いくつが出して、10個のタイトルからひとつ当たればいい」と数を出すこともポイントとしていました。田口氏は「アメリカのチャートを見ると、全てのデザインに理由があると感じるんです。逆に当たらない理由がないというか……」と、当たっているタイトルは徹底したロジックに裏付けされていることを指摘しました。

「広告マネタイズは永遠でしょうか?」という質問については、「課金があるとゲームの作りこみが必要になる」と馬場氏は回答。田口氏は「収益の大半は広告。広告削除など課金もできるが、買ってくれない。全体の収益に対して課金は1%。」と語りました。

カジュアルゲームながら、各社のハードな試みがうかがい知れるセッションとなりました。今後カジュアルゲーム業界はますます広がりを見せていくでしょう。
《葛西 祝》

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