障害者に希望を授ける新たな医療系アプリの可能性とは? ゲーム開発者と障害者ライターが語る魂の10000字対談 | GameBusiness.jp

障害者に希望を授ける新たな医療系アプリの可能性とは? ゲーム開発者と障害者ライターが語る魂の10000字対談

ゲームの可能性を医療や福祉領域にも拡大させたい神江氏と、障害者×娯楽を掲げる吉田氏。ゲーム開発者と障害者ライターが語る魂の10000字対談。

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ソーシャルゲーム市場が踊り場を迎えています。ゲーム内容のマンネリ化もさることながら、背景にあるのは少子高齢化に伴う人口減少。こうした中、AR技術を用いた医療系アプリの研究開発を進めているのがSol Entertainment(ソル エンタテインメント)という企業です。

ゲーム開発者ならではの知見をもとに、リハビリ用途への進出も模索するなど、より大きな市場の開拓を見据えています。もっとも、そのためには想定されるユーザーニーズの精査などが必要となります。

一方、昨年6月に突如として右足切断手術を実施し、周囲を驚かせたジャンクハンター吉田(吉田武)氏。ベテランのゲームライターだけでなく、映画の宣伝マン、交通ジャーナリストなどマルチに活躍。本年1月にはクラウドファンディングで調達した資金をもとに、映画『ロボコップ』の4K上映会も成功させました。4ヶ月の入院生活や車椅子生活を通して視野が広がったという吉田氏は、4月の統一地方選挙に関心を高めています。障害者に娯楽や希望を与える社会の実現が目標です。

ゲームの可能性を医療や福祉領域にも拡大させたい神江氏と、障害者×娯楽を掲げる吉田氏。ARによってゲーム体験を拡張できるという神江氏のアイディアは?そして右足を切断して義足歩行者となった吉田氏にとって、リハビリゲームはどのような意味を持つのか?二人の対談は止めどなく続き、3時間以上の長丁場に。対談原稿はかなり刈り込んでいますが、それでも10000字をゆうに越える始末。両者の熱い対談をお届けします。

■ジャンクハンター吉田(よしだ武)

映画&ゲーム系コラムニスト/交通ジャーナリスト
2019年1月にお台場で開催した『ロボコップ・コンベンション東京2019』をクラウドファンディングで大成功へ導く。現在は政治活動中で、4月に行われる統一地方選挙で東京都北区の区議会議員選に関心を高めている。
公式サイト http://takeshi-yoshida.com/


■神江 豊(こうのえゆたか)

Sol Entertainment代表取締役社長/ゲームクリエイター
ナムコ開発で15年間ディレクターとプロデューサーを経験し独立。企画専業のソル社では、特許出願に至る独創性の高い未踏ゲームやエンタテインメント企画を得手とする。『ドラゴンクエストXI』など各社プロジェクトの開発協力や新事業創出支援、コンサルティングを実施。また、国内屈指のオンラインカジノ事業知見を持つ。
2018年よりヘルステックやAR×AI技術を用いた新事業とクリエイター支援事業に力を入れ、2019年はAR新会社設立に至る技術者や投資家との新たなつながりを期待している。
公式サイト https://www.sol-ent.com/
ARFit https://www.arfit.games/


バカが『ロボコップ』を担いでやってきた



神江どうも、ソルの神江です!映画『ロボコップ』のクラウドファンディング成功おめでとうございます。

吉田いきなりそこからですか!でも、ありがとうございます。右足を切断して障害者になったかいがありました。

神江その話を以前うかがって、びっくりしたんですよ。それって、どういういきさつだったんですか?

吉田12年前におきた交通事故の後遺症が去年になって悪化したんです。交通事故といっても、完全にもらい事故だったんですが。前々から痛んだり、しびれたりして、医者にいったら右足が壊死しつつあると言われて。その場でスパッと「切ってください」とお願いしました。

神江その潔さがすごいなと。普通は迷うじゃないですか。

吉田時間が無かったんですよ。というのも1月末に『ロボコップ』の4K上映会を行うため、資金調達を目的としたクラウドファンディングを計画していたんです。600人以上入る会場を抑えて、1年間の上映権を得るためには、最低でも360万円くらい集める必要がありました。そこからリハビリなどの時間を逆算したら、どうしても去年の6月に手術する必要があったんです。医者も驚いていました。普通はそんな風に言われたら、どんな人でも悩んだりするのが普通なのに、すごいって。

神江いや、実際にすごいとおもいます。

吉田ただ、手術後に4ヶ月ほど入院してリハビリしたんですが、見舞客がみんなムチャクチャだったんですよ。義足に電飾を施して光らせたら目立つとか、護身用にエアガンを仕込んだらとか、バネを仕込んだら早く走れるだとか。他に「クラウドファンディングに間に合わせるために足を切るなんて、前々から吉田はバカだと思っていたけど、そこまでバカだとは思わなかった」とも、良く言われました。

神江まあ、なんとコメントしたらいいか返答につまりますが(笑)

吉田自分にとってはバカって褒め言葉だから、良いんですけどね。もちろん、本当に頭が悪いバカはダメですよ。でも、自分の場合は計算できるバカだから。それに「クラウドファンディングに間に合わせるために足を切る」っていったら、それだけで自分の覚悟が伝わるじゃないですか。上映会に来た人に、なんで支援してくれたんですかって聞いたら、直球勝負だったからと言われました。そんな風に言われたら、これはもう支援するしかないって。

神江それにしても600人以上入る会場を個人で予約するって、すごいですね。

吉田どうせやるなら大きな会場で上映したほうが良いじゃないですか。そんな風に自分はバカばっかりやるんですよ。でも、上映会で満席になった会場を見て感動しました。うわーっ、日本にはこれだけ『ロボコップ』バカがいるんだ。こいつら最高だなって。

神江そのエネルギーにはホント、感服しますね。

病院でリハビリして、人生に絶望している人の多さにおどろいた



神江それで、今日のテーマなんですが、いま弊社ではARとヘルステックの分野で研究開発を進めていて、『ARFit』というシリーズ名でサービスを展開していく計画を立てているんです。商標と特許を出願し、出資者やビジネスパートナーを探しています。ARといえば『Pokémon GO』が有名ですが、我々の考えているものは少し違っていて、スマートフォンで誰でも楽しみながらフィットネスが体験できるようなイメージです。それをARと絡めて展開しようという。

吉田それはおもしろそうですね。というのも、入院中ってホントに退屈だったんですよ。早く日常生活に戻りたくてリハビリをしたくても、国のルールで1日3時間までしかできないんですね。仕方がないから、映画『ターミネーター2』のサラ・コナーのように、病室で自主練をしていました。看護師さんに「何をしているんですか」って驚かれましたね。ただ、リハビリって同じことの繰り返しだから、そのうち飽きちゃうんですよ。

神江そういった話は良く耳にするんですね。なので、いま作っているゲームも健常者向けに、一般的なエンタテインメントとして提供する予定なんですが、それとは別に研究開発費を調達できたら、リハビリモードみたいなものを作る予定です。その上で施設や病院などで使っていただいて、シリアスゲーム的な展開をしたら、社会的意義が出てくるんじゃないかと。

吉田すごくいいと思います。そもそもエンタテインメントって、人を楽しませるものですよね。自分が入院して驚いたのは、障害者の方がみんな絶望していることなんですよ。人生に希望がないんですね。だから、ただでさえ飽きやすいリハビリが、すぐに続かなくなってしまうんです。人間、目的があるからリハビリするわけじゃないですか。希望がなければリハビリしませんよね。


神江そんなに絶望している人が多いんですか?

吉田多かったですね。高齢者だと「どうせ自分は死ぬだけだから」だとか。若い人でも脳症をやってしまうと、リハビリしても再発してしまうんじゃないかとか。それに病院って退屈なんですよね。自分が入院していた病院は片麻痺でリハビリをしている利用者さんが多かったんですよ。

自分はゲームや映画の宣伝もしているので、職業がら気になっていろいろヒアリングしてまわったんです。そうしたら、みんな口を揃えて娯楽がないっていうんですね。それは自分も同じで、せいぜいスマートフォンでマンガや小説を読んだり、映画を見たりするくらいで。全部、受動的なんですよ。

神江それは興味深いですね。スマートフォンでゲームはしなかったんですか? みんな、ちょっと暇があったらスマホをいじっているじゃないですか。カードゲームみたいに片手で遊べるものもたくさんありますし。

吉田言われてみれば、あまりしなかったですね。病院内でも患者さんが遊ばれている姿は、あまり見かけませんでした。まず患者さんでいうと、カードゲームって子ども向けのイメージが強いんですよ。あと、カードゲームにはコレクションの要素も出てきますよね。障害者って、今を生きるだけで精一杯なので、先々のことを考える余裕がない人が多いんです。自分自身を振り返ってみても、入院していることで、だんだんとゲームを遊ぶモチベーションが低下していったところがあるかもしれません。

神江たしかに病院にはゲームを遊んでいたら、怒られるイメージがありますよね。

吉田そうですよね。でも、ゲームって人をポジティブにさせる力があるし、神江さんの考えられている、スマートフォンでフィットネスができたり、リハビリの支援に使えるようなものって、まさに病院やデイケア施設などで必要なものじゃないですか。実際、そういったものが早くできないかと、妄想していたくらいなんです。それに、絶望している人に希望を与えることにもつながりますからね。実は自分もそういった人を見て、前々から抱いていた決意を新たにしたんです。

神江決意って何ですか?

吉田政治家になることです。ちょうど4月に統一地方選挙がありますよね。生まれ育った東京都北区に、なにか恩返しできればと思い、いろいろ調べています。右足を切って障害者になったことで、こんなにも多くの人が人生に絶望しているんだと、本当に驚いたんです。今後、少子高齢化でこの傾向は、どんどん拡大していきます。そこで健常者も障害者も、一人でも多くの人が笑顔になれる社会をめざしたいと考えました。

神江選挙ですか! 熱いですね。政治家になって、どんなことを考えられているんですか?

吉田車椅子でも移動しやすいバリアフリーマップを作るなどは、その一つですね。そうしたら周りの区でも、北区は何かおもしろいことをやっているなって、広がっていくかもしれない。そんな風にしてマップをどんどん作っていきたいんですよ。自分たちが子どもの頃は、RPGのマップなどを手書きで書いていましたよね。まさにゲーム感覚なんです。

神江なるほど。

吉田他に病院や施設で楽しめる娯楽を増やしていきたい。ちょうどパラリンピックも2020年に東京で開催されますし、障害者スポーツのように、障害者とゲームという取り組みも、やっていきたいことの一つです。そんなふうにして、北区から全国に発信していきたいですね。

神江それは究極の社会貢献じゃないですか。ただ、前々から抱いていた・・・というくだりが気になりました。以前から政治家に興味があったんですか?

吉田最初に意識したのは2007年で、その時は単純に北区の人口を50万人に増やしたかったんです。当時の人口は30万人くらいで、今も35万人くらいなんです。理由はというと・・・これを言ったら完全にバカだと思われるかもしれませんが、自分は『シムシティ』が大好きで、中でもスーパーファミコン版が好きなんですよ。スーパーファミコン版は人口を50万人にするとマリオ像が建てられたじゃないですか。政治家になって北区の人口を50万人にして、任天堂にマリオ像を建ててもらおうと、本気で考えていたんですよ。


神江それはまた、途方もない話ですね。

吉田当時は「そこまでバカだとは思わなかった」「政治家には絶対に向かないから、止めた方が良い」などと、口々に言われました。ただ、人口が増えると税収も増えるし、行政サービスも良くなるし、良いことずくめじゃないですか。ただでさえ今、少子高齢化で日本の人口は減少しているのに。

神江正直、少子高齢化ってピンと来てないんですが、確かにそうですね。税収が増えて、行政サービスが良くなって、マリオ像も建てられると(笑)

吉田当時はそんなふうに、ただ人口を増やしたかったんです。それが昨年、障害者になって、病院で人生に絶望している人をたくさんみて、これは政治家になって行政を動かさなければダメだと改めて感じるようになりました。

神江リアル版シムシティなんですね。

吉田夢は北区の区長になることなんです。区議会議員だと、やれることが限られるじゃないですか。でも、区長になれば予算が編成できるし、区役所の人事権も掌握できるから、ずっとできることが広がる。こんな風に言うと、また吉田がバカなことを言っていると思われるかもしれませんが、さっきも言ったようにバカは褒め言葉ですからね!

神江いやーホントに熱いですね。

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《小野憲史@インサイド》

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