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障害者に希望を授ける新たな医療系アプリの可能性とは? ゲーム開発者と障害者ライターが語る魂の10000字対談

ゲームの可能性を医療や福祉領域にも拡大させたい神江氏と、障害者×娯楽を掲げる吉田氏。ゲーム開発者と障害者ライターが語る魂の10000字対談。

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車椅子に乗って、スマホで秘孔を付き合う対戦ゲームがあってもいい



吉田そうはいっても、スマホARでフィットネスやリハビリ展開というのも、なかなか聞かないですよね? 

神江そうかもしれないですね。自分はナムコに1991年に入社して、主に『鉄拳』、『ガンバレット』など、アーケードゲームをメインに企画をしてきました。2006年に退職後、ソル エンタテインメントを立ち上げて、今年で13年になります。当時のナムコは内製中心で、何でも好きなことができたんですよ。ただ、独立してそれをするのは難しいので、企画に特化して案件ごとにいろんな人や会社とコラボして、おもしろいことをやるのがポリシーです。

吉田それで『ARFit』なんですね。

神江そうなんですよ。というのも、内製をしないのがポリシーだったはずが、ARについて研究開発を始めたところ、おもしろすぎるんですね。それで、ついうっかりとゲームのプロトタイプを作ってしまったんです。

吉田ARというと、ニンテンドーDSiやPSP、それに最近だと『Pokémon GO』まで、「画面を覗き込むと何かが見える」というのが特徴ですよね。

神江そうなんですが、それはARの一つの側面でしかないんです。実は自分も最初はそんなふうに思っていて、なぜ『Pokémon GO』があんなにヒットしたのか、わからなかったんですね。いろいろと考えた結果、あれは現実空間を拡張して、お散歩時間をエンタメにしたからヒットしたんだと結論づけました。スマホを覗くのは、その手段でしかなくて。

吉田現実世界を拡張するって、どういうことですか?


神江日常の風景がAR技術を使うと、まったく違ってみえるなどは、その一つですね。たとえばディズニーランドをAR技術で拡張するなどは、わかりやすい例かもしれません。ただ、実際には現実世界とAR技術で拡張された世界のリンクが途切れると、体験自体が台無しになってしまうので、いろんな落とし穴があるんです。我々もプロトタイプを作っていて、さんざんハマりました。それで得たノウハウを元に、特許を出願しています。

吉田そういえば病院で、お孫さんとキャッチボールをするのが夢だというお年寄りにお会いしたことを思い出しました。ただ、その人は片麻痺で、車椅子にも乗っているので、実際に戸外でキャッチボールはできないんですね。そういった人でもスマホを振って、ARでキャッチボールができたら、リハビリに希望が持てるようになりますよね。そういったことはできるんですか?

神江2つのスマホがどれくらい離れても近距離通信ができるかなど、技術的な検証は必要ですが、基本的にはできますね。もちろん、実際にアプリやコンテンツを作るには、相応の費用がかかりますが。

吉田それはすごいですね。スマホARを使ったリハビリの可能性が、一気に広がってきました。結局、自分が政治家になってやりたいことも、そういうことなんですよ。自分も病院で散々リハビリをやったんですが、目的と手段が逆転してしまっている感じで、やっていて全然おもしろくなかったんです。それでも自分はリハビリをして、義足をつけて、『ロボコップ』の上映会でステージに立つという目標があったので続けました。ただ、普通の人だと飽きちゃうんです。

神江自分もそんな風に感じていました。そこで単に体を動かすゲームとしてリリースするだけでなく、シリアスゲーム的な展開ができるんじゃないかと思ったんです。

吉田たとえば車椅子バスケや車椅子テニスがありますけど、実際に車椅子に乗っていると、タイヤを自分で回すので、上腕の筋肉がすごく鍛えられるんですよ。でも、筋肉は動かさないとだんだん衰えていくんですね。中でも重要なのが肩甲骨の周囲の筋肉で、これを意識して動かすようにするといいんです。特に円運動をさせるような動きをゲームでアシストできれば良いなと思っていたんですが、そういったこともできますか? 片手だけでなく、両手で2台スマホを持って、別々に動かすなどの遊びがあってもいいですよね。

神江コスト次第ですが、できると思います。

吉田うわーっ、それは最高ですね。そういったものを病院で妄想していましたから。ああ、そういえばなぜ、病院であまりスマホゲームを遊ばなかったのか、思い出しました。車椅子に乗っていて、うっかり物を床に落としてしまうと、拾うのがすごく大変なんです。うっかりすると車椅子が転倒して、転んでしまったりするんですよ。そういうのが続くと、だんだんスマートフォンを持ち歩くのが億劫になってしまうんですね。

神江なるほど、それは健常者には気づかない視点ですね。

吉田それに片麻痺の人だと、そもそも論として片手でスマホを持って、もう一方の手で小さい画面を操作するというのが、難しいんですよ。そのため病院ではリハビリでタブレットが使われていました。テーブルの上にタブレットを置いて、画面に表示される数字を順番に指で押していったりするんです。自分からすると単純すぎるんですが、そういったことすら片麻痺になると難しいんですよね。

神江そうなんですね。

吉田それで思ったのは、車椅子にスマホやタブレットを装着するスタンドなどがあればいいなということなんです。体育館みたいなところにみんなで集まって、スマホやタブレットの画面を覗きながら、車椅子で移動しつつ戦うゲームって、おもしろくないですか? 『北斗の拳』みたいに、相手の体に秘孔が浮かび上がるので、それを狙ってタップで攻撃するとか。実際、こんなに『PUBG』が流行っているのも、大勢で集まって手軽に遊べるゲームがなかったからだと思うんです。


神江おもしろそうですね。実際に弊社で出願中の特許技術を応用すれば、そんなふうにニッチだけど、すごく広がりのある分野に向けてエンタメを作ることも、可能だと思うんです。ただ、そのためには実際に障害者の人がどんな風に生活して、どんな課題を抱えているか、定量的にも定性的にも知る必要があります。その上で、そうした課題をARで解決できる目処がつけば、実際にコンテンツが作れるわけで。

吉田病院で聞いた感じでは、リアルタイムではなくターン制のゲームが良いと言っていましたね。片麻痺の人って、多かれ少なかれ脳の一部が損傷しているので、反射神経では健常者に勝てないんです。だからターン制の方が良い。ターンごとに制限時間を設定すれば、バランスも保てるだろうし。相手の動きを推測し、複数人で技を選択して、合体技を繰り出すみたいなこともできますよね。

神江ああ、おもしろいですね。ただ、一人の人に濃い話を聞く一方で、できるだけ多くの人にアンケートのような形で調査をすることも大事だと思っているんです。どのようにコンタクトを取るのが良いんでしょうか? 

吉田病院や施設に協力してもらうことになりますね。病院の医者や施設のセラピストさんなどにコンタクトして、彼らが協力してくれれば、そういった調査も可能です。いずれにせよ、実際に病院や施設に行って、そこで患者さんや利用者さんにヒアリングするのが、すごく大事だと思います。

神江なるほど。実際に吉田さんとこうして話をしているだけでも、我々では気づかない、いろいろなアイディアが出てきますしね。

吉田ただ、障害者の人って結構デリケートなんですよ。自分は同じ障害者だから心を開いてもらいやすかったんですが、いかに関係性を作るかが重要だと思います。

神江いずれにせよ、車椅子で移動中の退屈な時間を拡張して、移動を促したり、楽しい時間にしたりして、ハンディキャップを持っている人が、より豊かな生活を送れるようになるものができれば、可能性はありそうですね。

吉田何かコミュニティみたいなものを作りたいですよね。リハビリ施設によっても、やっていることや考え方が違うんです。一番有名なのは所沢にある国立障害者リハビリテーションセンターで、自分も行ったことがないので、ぜひ一度見学に行きたいんですよね。利用者もすごく多いらしいです。

神江自分も行ってみたいですね。

吉田あとはコントローラーを持たないで、発話だけで操作できるARゲームってできないかなと。脳症になると発話のリハビリも必要になるんです。

神江スマートスピーカーで遊べる「しりとりゲーム」のように、AIと組み合わせれば、技術的には可能ですね。実際、ARとAIは切っても切れない関係だと思うんです。現実を拡張するには、まず現実を認識しなくてはいけませんから。弊社もARとAIの組み合わせに可能性を感じていて、そこに向けて研究開発を進めています。

吉田未来を感じさせる話ですね。ぜひ神江さんには、この分野でパイオニアになってほしいですね。

「人生は挑戦だ」という言葉の意味が40歳を過ぎてわかってきた


吉田それにしても、なぜ神江さんはARに興味を持つようになったんですか?

神江前々から興味はあったんですよ。これだけスマートフォンが普及していて、性能が非常に上がってきていて、しかもカメラもマイクも、いろんなセンサーもついているわけじゃないですか。それで試作品を作ってみたら、これが非常におもしろいんですね。自分だけじゃなくて、周りの人々や投資家といった人々に見せても、非常に反応が良い。なかなか、こういったことはなくて。

吉田自分もVRよりARの方に可能性を感じていたので、その感覚はわかります。

神江VRとARは似たような技術を使うんですが、まったく意味が異なるんですよ。VRは仮想世界に籠もるような体験ですよね。ARは現実世界を拡張する体験なので。そこが新しいし、まだまだ可能性がたくさんある。実際、VRは1990年代からナムコでも、業務用を中心にいろいろな研究開発が行われてきたので、そこで可能なことや得られる体験が、だいたいわかっているんです。ただ、ARについては本当にこれからなんですよ。それって、新しい刺激や体験ができるということなんです。


吉田たしかに『Pokémon GO』の前は、ニンテンドーDSiやPSP向けにミニゲームがあったくらいで、そんなに聞かなかったですしね。

神江ゲームの楽しさっていろいろあると思いますが、自分はその中でも新しい刺激や体験におもしろさを感じるタイプなんですよ。子どもの頃から親や先生に叱られても、ゲーセン通いを辞めなかったのも、新しい刺激や体験が常に得られたからなので。

吉田ああ、それはわかりますね。自分も映画とゲームの両方の仕事をしてきて、ゲームに絶望したことがあるんです。2006年くらいだったかな。ある会社に呼ばれて、アイディアを出して欲しいと言われたから、いろいろと提案したら、何も通らなかったんですね。というのも「新しすぎた」からなんですよ。過去に似たような事例でヒットしたゲームがあれば・・・と言われて、これはもうゲーム業界は駄目だなと思ったことがあります。映画は逆なんですよ。アイディアが新しければ、それをベースに制作委員会を立てることができるんです。

神江何をもって新しいかという話もあるんですが、とりあえずゲーム業界で制作委員会方式って、うまくいった事例が非常に少ないんですよ。それに制作委員会方式は映画やアニメなど、パッケージ商品に対する投資と回収をベースにした契約になっているので、スマホゲームで一般的な運営型のビジネスモデルと極めて相性が悪いんですね。制作費に投資して、作品がヒットしたら、出資比率に応じて利益を分配するのが制作委員会方式じゃないですか。でも、利益を再び制作に回して、延々と運営していくのがスマホゲームなので、分配のしようがないですから。

吉田なるほどなあ。それはかなり難しいですね。でも、そうした中でもARに先行して投資されているのはすごいですね。だって、儲かるか否か、まだわからないじゃないですか。それよりも受注仕事だけを淡々とこなしていたほうが利益率は高い。

神江アプリを試作するだけで少なからぬ持ち出しをしてしまって、大変です。ただ、自分は常に世の中の事象の先読みをして、そこに対して仮説と検証を繰り返していくのが好きなんですね。何か新しい技術なり、トレンドなりが出てくる。その結果こうなるだろうと予測をする。それにもとづいて企画を立てたり、座組をくんでモノを作る。その結果、仮説が当たったら嬉しいし、外れたら悲しいけれど、そこも含めて楽しいというか。ひらたくいえば、常に新しいことに挑戦していたいんです。


吉田それはまったく自分と同じですね。自分がバカばっかりやっているのも、常に全速力で走り続けて、新しいことに挑戦していると、自然に人が周りに集まってきてくれるからなんです。自分が大好きなプロレスラーであるジャンボ鶴田に「人生は挑戦だ」という名言があるんですよ。若いうちはピンとこなかったんですが、40歳を過ぎるとわかってきました。みんな失敗するのが怖くなっちゃうんですね。でも格闘家やアスリートならわかると思いますが、負けると思って試合にのぞむと絶対に負けるんですよ。勝つイメージを持って試合に臨まなくちゃいけない。それって挑戦し続けるってことなんです。

神江吉田さんほど挑戦をしている人は他にそうそういないと思いますよ。ちょっとお話ししただけでも、周りに人が集まってくるのもわかります。

吉田だからといって、自分の真似をしちゃ駄目ですよ。そうか、クラウドファンディングをして足を切断すれば良いんだなんて、大間違いですから。要はそれだけ本気度を見せたから、人々の琴線に触れて、支援が集められたと言うことなので。だから足を切断したことは、まったく後悔していないんです。実際は右足が壊死するかもといわれた時、セカンドオピニオンを採ることだってできたんですよ。でも、時間もなかったし、それは違うなと思った。そこで悩んだり、振り返ったりすることは、すでに負けているってことなんです。

神江いや、身が引き締まる思いですね。

次のページ:ARとAIを使って、日本で世界と戦える組織体を作りたい
《小野憲史@インサイド》

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