「alive2018」イベントレポート─Live2Dが見せた順調な拡大の先は「映画制作」の夢へ(基調講演概要) | GameBusiness.jp

「alive2018」イベントレポート─Live2Dが見せた順調な拡大の先は「映画制作」の夢へ(基調講演概要)

株式会社Live2Dが主催する「alive2018」イベントレポートをお届けします。本稿では基調講演と「Live2D Creative Award 2018」授賞式の模様まで。映画制作の夢が現実に!?

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あらゆる技術の発展により、高品質なクリエイティビティが順調に個人アーティストの手へ渡ってきています。超美麗なスマホゲームや、VTuberの台頭など、2018年の主要な話題とも言える中核の要素として「2D」の分野を外すことはできないでしょう。

2018年12月3日──ベルサール秋葉原にて、Live2D社による「alive2018」が開催されました。「alive」は2014年より毎年開催されているLive2D社の各製品に関わるアピールの場で、今年で5回目を迎えます。

本稿ではイベントレポート第一弾として「基調講演」の内容をお届けします。Live2Dの発展の模様、確実なシェアの拡大、そしてその先に見据えた大きな夢──2019以後に向けた挑戦の展望をご覧ください。

2Dで夢を描く、2Dで夢を掴む。



基調講演は「2Dで夢を描く、2Dで夢を掴む」と題し、株式会社Live2Dの代表取締役である中城哲也さんが登壇しました。「alive」への参加者が増加傾向にあることを冒頭に紹介し、着実な拡大をアピール。特に、イベントを有料化した2017年には一旦減少してしまった参加者も、今年は700名を超えたことを強調しています。これは2016年の549名を大きく超える結果となっており、需要を生んだ説得力のある結果と言えるでしょう。

中城哲也さん

更に拡大の様子を強調します。昨年の「alive」から1年間を通してアクティブユーザー数が1.8倍。Cubism 3(2D表現をそのままに様々なアニメーションを効率よく作成できるソフトウェア)に限った場合、その数は2.6倍にも昇るとのこと。

教育機関への採用数としては72校、更に直接「Live2D製品へのスキル」に関係した求人も増加している点にも触れ、最前線の現場で確実に仕事として活用されている点は注目に値します。


また話題性としてTwitterの関連ツイート数を紹介。前年の「alive」の時点と比較して、2018年は確実にLive2Dに関連したツイートなどのアクティビティが増加しているのがわかります。局所的とは言え、それまでの5倍である50万件を記録したことは大きな実績となります。


ユーザーの用途に関しても、2018年は特に「VTuber」の台頭が見逃せません。昨年ではここまでのシェアは見られなかったようです。本年は「alive」へのスペシャルゲストセッションとして、自分で絵を描き、自分で動きをつけ、自分で声を当て、自分でVTuberとなった「魔王マグロナ」様が登壇するなど、非常にライブ感のあるイベントといった印象を受けます。


VTuberが流行ったのはつい最近のことであるようにも思えますが、気が付けばどんなに時間があっても追いきれない程の広がりを見せました。基本的には3Dモデルありきの分野であるという印象を持っていた筆者でしたが、魔王マグロナ様をはじめ、Live2Dの技術を活用することで、その垣根を越えられたのも大きな要因となったのだろうと思います。

Cubism新機能の紹介と展望



一年間を振り返り、新たに搭載した機能は66件にもわたるとのことで、その一部が紹介されました。ワープデフォーマ(格納した2D部品に対して「面で変形」を行うことで立体的な表現を行う機能)の動きをモデルの反対側にも同様に適用できるといった新機能が搭載されました。


年内にリリース予定とされるCubism 3.3の新機能として、アートメッシュ(Cubismへ2Dの部品となる絵を登録すると、自動的にポリゴンが割り当てられ、変形による表現が可能となる機能)の動きの反転機能が搭載されます。画像のような表情へ動きを付けるときに効率的な作業が可能となるようです。

注目すべきはメッシュ形状が非対称でも動作するとのことで、よりファジーな運用にも耐え得る設計と言えるのではないでしょうか。

更に、ワープデフォーマの変形によって生じていた歪みが、3.3ではより改善され高品質な変形が可能となるとのことです。



更に半年~2019年中にリリース予定としているCubism 3.4(もしくはCubism 4)で搭載予定の機能についても言及。当面は「映像制作専用の機能」としつつも、アートパス(線機能)として、ドロー描画のようなパラメータを持つ線を実装し、太さなどを動的に編集できるものとするようです。


補間表現の強化として「だ円補間」を予告。本来は3.3の時点で導入予定だったようですが、処理が重く改良の必要があったことから遅れてしまったとのことでした。


「オブジェクトの切り替え機能」として紹介されたのは、条件により部品そのものを動的に交換するというものでした。大変恐縮ながら画像ではわからないのですが、腕が外側へ向かうとき、瞬間的に手のひらが表示され、腕が伸び切るころには手が反転しているといった表現が、とてもスムーズに行われていました。

手をメッシュの変形で表現するのではなく、瞬間的に別の部品へ切り替えることで、作業効率を確保しつつ、違和感のない表現が可能となるようです。

この他にも、時間毎の描画回数を意図的に減らす「コマ打ち機能」(ゲーム的に言えばFPSを減らすような表現)や、アニメーション編集画面上で直接変形を行える「フォームアニメーション機能」など、次々と新機能が紹介されました。まだ先の技術とはいえ、効率化に磨きがかかりそうなアップデートに期待できそうです。


そしてCubism 3 SDK(※1)に関しても、開発者やデザイナーにとって使いやすいものとなるようアップデートを進めることを示唆。一部ソースコードの公開により、ユーザーによるカスタマイズを可能とする方針を取るようです。

(※1)ソフトウェア開発キット:あるシステムに対応した開発が行えるよう必要な機能をまとめたもの。例えばUnity用の「Cubism 3 SDK」ならば、Unityに取り込む形を取ることで、Unity上でもCubismで作成した素材を扱えるようになり、ゲーム内で処理をかけて表現できるようになる


また、システム内へ組み込むモデルやそのモーションなどを「Live2D Cubism Viewer」で確認しながらセットアップできるようになり、SDKにおいて同様の動きを再現できるという「Original Workflow」を確立したとのこと。各システムへの対応も、予算を大きく取って進行しています。

『FaceRig』のCEOが登壇!?


Holotech Studios CEO Dragos Stanclescu氏

2Dをリアルタイムに動かすという点では忘れられないのが『FaceRig』です。カメラで写した自分の顔のパーツを動的に認識することで、アバターの表情とリンクさせて生きているかのように扱えるソフトウェアとして、大きな人気を勝ち取りました。『FaceRig』には以前から、Live2Dで作成したアバターに対応したモジュールが販売されています。

そんな『FaceRig』を開発するHolotech Studios社のCEOであるDragos Stanclescu氏がはるばる秋葉原へやって来ました。

Stanclescu氏は「デジタル・コミュニケーションにおいてアバターが活用される時間が増えてきている」と指摘。表情や動作などによる表現の幅が増えていく上で、コミュニケーションの多様性が広がっていくが、アバターを使うことはプライバシーを覆う役割も担っていると主張します。


2015年にLive2Dモジュールとして対応させ、これが特に人気となっており、ユーザー作成のアバターの95%がLive2Dによるものという統計も出ているようです。更に『FaceRig』の利用者の4人に1人はLive2Dモジュールを購入していると、そのシェアの高さを強調します。


2018年におけるVTuberの台頭は『FaceRig』とLive2Dモジュールの関係に大きな影響があったようです。2017年に比べて『FaceRig』の日本での売上は6倍以上ともなり、アジアでの売り上げは全体の5割を占めているとのこと。

Facerig Studioは、Cubism 3 OWをサポートし、VTbuer、アバタークリエイター、およびユーザーに最新のLive2Dテクノロジーを提供することを発表しました。

ここで、Stanclescu氏による本イベントでの発表として「最新版のCubismを導入する」ことを決定したと報告が。これは、VTuberの世界、アジアおよび日本のユーザーを支援するためのものだということです。

Stanclescu氏は「弊社はアバターを介したコミュニケーションの未来を信じており、Live2Dの素晴らしい技術や、アーティストのコミュニティが大変重要な役割を果たしてくれると願っています」とコメント。Live2Dへの大きな期待を隠しません。


更に二つ目の発表として『FaceRig』に関するプラットフォームの展開を予告。プラットフォームではアバターの作成・流通・使用が可能で、普及の手助けとなるとのこと。プラットフォーム内には「マーケットプレイス」を提供し、Live2Dなどで作成されたアバターのマネタイゼーションが可能になるようです。

VTuberの盛り上がりによって、基幹となる技術が一気に近づいた形となりました。2019年は、よりアーティスト個人の参入障壁が少なくなると期待できそうです。

Live2D Euclidの提供停止──開発の選択と集中



ここでLive2D Euclid(※2)の販売を停止し、Cubismへリソースを集中することを発表。Euclidの次期バージョンへの開発は継続する形をとるものの、現状では目指す形への進展に時間が掛かることなどを理由とし、ノウハウをCubismへ反映するなどの対応を取るとのことでした。

なお、サポートは2019年4月16日までとなるそうです。

(※2)より3D表現に特化した製品:Cubismのように一枚の絵から変形して表現するのではなく、複数の原画を組み合わせて原画のタッチをそのままに3D空間で表現するソフトウェア

集中の先に目指す「夢」──映画制作プロジェクト



基調講演のタイトルに掲げられた「夢」というキーワードとは何だったのでしょうか。ここで明かされるのが「映画制作」でした。

ANIPLEXとLive2Dによる業務資本提携を結び、映画制作プロジェクトを発足したと発表。中城氏は「最高峰の表現の一つ」として、時間と費用をかけて制作する長編アニメーションに触れ、Live2Dとしても表現力を極限まで高めていく為に、いつか取り組みたいと考えていたとのこと。ANIPLEXからのオファーにより、夢物語だと思っていたものが一気に現実的になってきたと力説しました。

制作の中で高めた表現力を、いかにして技術的な面で効率よく活かせるかといった課題は、Live2Dにとって通過しなければならないものだったとし、今後のゲーム表現やリアルタイム表現へのプロセスとして、長編アニメーションの制作は重要なプロジェクトであるとしました。


Live2Dでは「開発力」と「制作力」を両輪で育てており、CubismやEuclidは両チーム合同で映画に向けた研究開発を続けていくようです。その中で映像用に特化した「Cubism M」(開発コードネーム)を開発し、この中で培われた技術は随時、製品版のCubismに反映していくというスタイルを取っていくとのことでした。


Cubism Mにおいて現状で研究が進められている機能の一つとして「色指定できる陰影表現」が挙げられました。単に乗算などの計算で影を重ねるだけではなく、状況に応じた「色の指定」を細かく行えるような機能となるようです。

筆者はこの機能の紹介を聞きながら、以前どこかでスタジオジブリの制作に関する番組を見たことを思い出しました。一秒にも満たない、しかも名前もないような一瞬のキャラクターの影の色について、非常にこだわって制作している現場の紹介という内容でしたが、長編アニメーションに対応するということは、このような細かい指定にも耐え得る設計でなければならないということです。

その意味でも「Cubism M」への研究は、現場に即した非常に実践的なものであると言えるでしょう。


「アートメッシュによるアートメッシュの変形」では、それぞれのアートメッシュを入れ子状のような形で親子関係を設定することにより、連動して変形を起こせるという機能が紹介されました。

画像ではカラフルなリボンの中に、歪みのある丸いものが五つ描かれていますが、実際はシンプルな丸のアートメッシュがそれぞれ独立して存在しています。この丸いアートメッシュをリボンの中において、親子関係を設定することにより、リボンの変形に応じて、まるで表面の模様であるかのように連動して変形されるという機能です。

これによって、服の模様なども一度設定してしまえば連動によって違和感なく表現できるということになります。


また「ガウスぼかし」として、動的にぼかしを効かせることも可能に。紹介は一瞬でしたが、空間的な表現という点では「ぼかし」は非常に有効なものですので、これを動的に処理できるというのは、映像表現の制作としては強力だと感じます。


他にも様々な機能を研究中とのこと!!リストアップされているものは、ほぼ実用レベルに動作しているとのことで、これらの成果は順次製品版Cubismへと導入していくとのことです。


「Live2D Creative Studio」はこれまで、Cubismなどの製品研究・開発と、ゲーム制作などのサポートという形でしたが、ここに大きな柱として「映画制作」を加えることになります。


2019年2月に開催予定の「Live2D Designers' Day」にて、オリジナルのアニメーションとなる「Beyond Creation」が公開されます。Live2D Creative Studioの映画制作の柱が既に走り出しているということがわかります。


中城氏はPixarを例にとり「開発」と「制作」の両チームを持っていたことを指摘。3D表現の大成を成し遂げたPixarのように、2D表現でアカデミー賞を取ります!!と宣言し、その決意の深さを露わにしました。

『2次マ』──クリエイターの為のマーケット



またLive2Dが運営する『2次マ』を紹介。クリエイター向けのマーケットとして、イラスト・Live2Dモデルの公開と販売ができるようになり、制作の依頼も行えるとのこと。

購入したモデルの利用可能範囲を製作者が設定できるなど、活動規模に応じた細かい設定もできるとのことで、クリエイターと利用者のトラブルをなるべく発生させない構造を目指したものとなっているようです。

Live2D Creative Award 2018 受賞者の発表


aliveではコンペティションとして「Live2D Creative Award 2018」を開催し、基調講演に続けて受賞者の発表を行いました。12ヶ国から、165作品が応募されたとのことです。

※受賞者および最終候補作品の一覧はこちらをご覧ください
Live2D Creative Award 2018 最終候補作品一覧


◆学生賞 [作品名:DDID PV](Lam Wing Keiさん)

表彰台では非常に緊張されている様子でした。


◆クリエイティブ賞-映像作品部門 [作品名:あなたに命を吹き込むなら](堀内アサヒさん)

周囲にはLive2Dに難しい印象を持っている人が多く、自身の創作活動を通して広げていきたいとのことでした。


◆クリエイティブ賞-インタラクティブ作品部門 [作品名:GhostSectionPV](ガンモさん)

自分の絵を理想通りに動かしたい!との思いが受賞に繋がったのだろうとのことでした。


◆クリエイティブ賞-アバター作品部門 [作品名:Vが躍る](焔機パイロさん)

VTuberとして活躍されていることから、なんとコメントは映像でした!!


◆グランプリ [作品名:The Gallery](Enma Akatsukiさん)

インドネシア在住の方の為、ビデオレターの形でコメントを寄せられました。海を越えたクリエイティブの波の広がりに感動を覚えた一瞬です。


以上、飛躍止まらぬLive2Dのイベントを、基調講演から授賞式まで紹介させて頂きましたが、いかがでしたか?大手ゲーム開発の現場でもそのシェアは高く、まだまだ発展の可能性を大いに秘めた技術に、2019年は一体どんな新しい文化が生まれるのだろうかと楽しみでなりません。

編集部では同日に開催されたいくつかのセッションも取材しました。随時掲載致しますので、こちらも是非ご覧ください。
《編集部@インサイド》

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