アカツキが手がけるe-Sportsリーグ「LPE」代表が目指すe-Sportsのカタチ【インタビュー】 | GameBusiness.jp

アカツキが手がけるe-Sportsリーグ「LPE」代表が目指すe-Sportsのカタチ【インタビュー】

この度インサイドでは「LPE」を設立した、チャビ・コルテス・トゥビオ氏のインタビューを敢行。「LPE」をチャビ氏と共同で運営するアカツキ、e-Sports事業の責任者である熊谷祐二氏にも両社が目指すe-Sportsの形を伺いました。

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『八月のシンデレラナイン』などのスマホ向けゲームを開発・運営するアカツキが、PEL(PROFESSIONAL ESPORTS LEAGUE, S.L.)の株式を取得し子会社化。PEL社はFCバルセロナやサントスFCといった世界の名門サッカーチームのe-Sports部門が参加するグローバルe-Sportsリーグ「LPE(League of Professional Esports)」を設立・運営しており、日本からは東京ヴェルディなどのプロスポーツクラブが参加を表明しています。

この度インサイドでは「LPE」を設立した、チャビ・コルテス・トゥビオ氏のインタビューを敢行。「LPE」をチャビ氏と共同で運営するアカツキ、e-Sports事業の責任者である熊谷祐二氏にも両社が目指すe-Sportsの形を伺いました。

【聞き手・平林久和】


──まずは、「新リーグ設立」の意味をe-Sportsに詳しくない人にもわかるように説明をお願いします。

チャビ・コルテス・トゥビオ氏(以下・チャビ):
たとえば、日本のサッカーならば「Jリーグ」のように、メジャースポーツのプロリーグ(連盟)はひとつの団体として統一されています。しかし、e-Sportsは1997年にアメリカでプロフェッショナル・ゲーマーズ・リーグが設立された黎明期の頃から、複数の企業がリーグを結成して、それが並列的に共存するのが慣例。現在も世界各国でe-Sportsのリーグを多数の企業が運営しています。

私たちが結成した「LPE」もPEL社という私企業が設立したものですが、私たちとアカツキは自社のゲームソフトの宣伝のために、このリーグをつくったのではありません。私たちはe-Sportsが健全、かつ長期的に発展するために中立的な存在となり、そこを足場として他に類を見ないユニークなリーグを運営しようとしています。

──プロスポーツチームが参加する意味は?

チャビ:
e-Sportsが健全、長期的に発展するためには既存スポーツクラブの参入を促すことが最善のプランであると考えました。現在はFCバルセロナのような名門サッカークラブの名が発表されていますが、サッカーに限らず、どのスポーツのクラブチームにもe-Sportsに参加してほしいと働きかけています。歴史があって、多くのファンに支持されたスポーツクラブが参加することによって、e-Sportsの社会的なイメージは違ってくるでしょう。実際に世界の名門クラブチームが私たちのリーグに加盟したことにより、スペイン政府やカタルーニャ政府がe-Sportsへの関心を高め、今まで以上に私たちのビジョンに興味を持ってくれるようになりました。


──他のe-Sportsリーグ、ゲームパブリッシャーとは異なるビジョンを持っているということですね?

チャビ:
たとえばアジア地域では、大手パブリッシャーのテンセントがe-Sportsに関わる企業に戦略的投資をしており市場をリードしています。私たちとはやり方は異なりますが、それを批判しません。むしろ、これまでの努力に敬意を表したいと思います。しかしながら、e-Sportsの発展のしかたは一様ではない。多様な可能性があります。いろいろなコンテンツがあり、いろいろな大会運営の方法もあるというメッセージを発信し続けていきたいですね。

私には社会で認知されるe-Sportsは、パブリッシャーではなくコミュニティが決めるという持論があります。たとえば、ブリザード・エンターテイメントは『スタークラフト』をe-Sportsのために開発したわけではありません。しかし、韓国のゲーマーコミュニティがe-Sportsにふさわしいタイトルとして、その存在感を押し上げました。逆にe-Sportsを意識したゲームを開発しても、コミュニティが拒んだケースも過去には多々あります。最終的にはユーザーコミュニティが決める。それがe-Sportsです。私たちはユーザーコミュニティの中から、さらに「LPE」の価値観にあったゲームを選別して競技に採用していく方針です。


──「LPE」の価値観とは?

チャビ:
基本指針は……繰り返しになりますが、その対戦型ゲームをコミュニティが受け入れていることです。スポーツゲームであれ、カードバトルゲームであれ、MOBAであれ、ゲームジャンルは問いません。現在、オリンピックの公式種目化が検討されているIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長は「キラーゲームは採用しない」との見解を示していますが、私たちはこの考えに賛同します。私たちは非暴力を大事な価値観としています。

ただし、ここで申し上げる非暴力とは、暴力をストレートにシミュレーションしたものを意味します。たとえば、『スターウォーズ』という映画では、戦いが描かれていますが、あの映画は暴力的ではありませんよね。であるように、ファンタスティックな戦いは歓迎します。この線引きを明文化することは難しいのですが、まず生々しい暴力は私たちの価値観とはそぐわないとお考えください。また、フェア、公平であること。男女が平等に参加できることも重要視しています。私たちは女性選手や、男女混合のチームの育成にも今後は期待しています。世代についても同じことが言えます。特定の世代に偏ったものではなく、「親子で試合が見られる」「親が見て、これならば息子や娘が見るのにふさわしい」と思われるようなタイトルを採用していきます。


熊谷:
さらにつけ加えますと、親が「子供を選手にしてもよい」と思えるようなゲームを採用していきたいですね。クラブチームがe-Sportsに参加することによって、選手を送り出す親御さんたちの側にも安心感をご提供したいとも考えています。


──選手の発掘や育成も視野に入れているということですね。

熊谷:
はい。私たちが目指していることは大きくふたつあります。まずは、健全化。一部の人の趣味ではない健全なe-Sportsの場をつくることです。もうひとつはプロ化です。憧れの的になるようなプロが登場して、それを見た人が努力する。その若い選手を応援する周辺の大人がいる。そういったエコシステムをつくっていきたい。

そのためには、ただ試合に強いだけではなくて、発言や立ち居振る舞いも含めて人々から憧れられるような真のプロフェッショナルが現れてほしい。そんなビジョンを描いています。既存の有名クラブチームが持っている、こうした人間性教育のメソッドにも期待しています。

──ところで、チャビさんの経歴をお聞かせください。

チャビ:
私はe-Sportsと長い期間かかわってきました。今から15年ほどまえ、バルセロナに選手を集めたイベント『ドラゴンボール天下一武道会』の主催者です。ゲーマーとしては1998年にドリームキャストのゲーム『ソニックアドベンチャー』のヨーロッパチャンピオンになったこともあります。それ以外にもE3でe-Sportsのドキュメンタリーを製作したり、ゲームズコムでe-Sportsのイベントを主催したりしてきました。日頃はスペインでアナリストとして活動してきました。

近年ではスポーツクラブ、おもにサッカークラブを対象としたe-Sports分野のコンサルタントをつとめており、これらの経緯から「LPE」の設立に至っています。ちなみに、日本のゲームはネオジオ(1990年発売)の頃から大好きで、ゲームソフトのコレクターでもあります。


──チャビさんとアカツキの出会いは?

チャビ:
e-Sportsを新しいステージにするためにパートナーを探していましたが、ビジョンが一致した唯一の企業がアカツキでした。単なる投資家ではなく、一緒に成功する大事なパートナーと出会うことができました。

熊谷:
私たちはもとからe-Sportsに関心がありましたが、大きくてユニークなことをやりたいと考えていました。当社の役員がスペインでチャビさんと出会い、プロスポーツクラブとe-Sportsを結びつけるビジネスモデルや、健全でフェアなe-Sportsを発展させていくビジョンに惹かれて現在に至っています。ご案内させていただくと、「LPE」は2018年11月からプレシーズンマッチを開始。2019年から1stシーズンを開幕します。競技タイトルなどの詳細については11月に発表いたします。


──「汗をかかないe-Sportsはスポーツではない」という批判者が日本では他国よりも多いかと思いますが、今後、こういう方たちの理解をどうやって得ていきますか?

チャビ:
日本に限ったことではありません。スポーツは身体を使った「運動である」ととらえている人はどの国にもいます。しかしながら、同時にこの価値観は変わりつつあるとも感じています。e-Sportsに対する認識は、白と黒ではなくグレーゾーンを行き来するものなのではないでしょうか。ですが、情報のグローバル化によって、いろんな知見やコンテンツが広まるうちに、確実に理解者が増えていくと考えています。

特に若い世代は総じてe-Sportsを肯定的にとらえるメンタリティを持っています。改めて私が、e-Sportsの魅力を定義すると、まずは集中力です。e-Sportsでは他のスポーツと同じような集中力が求められ、自己の精神に負担がかかります。ときにリミットを超えることもあります。その結果として勝利すれば無上の喜びが得られ、敗北すればさらに努力しようとするエネルギーが生まれてきます。この精神の営みは他のスポーツと同等です。

さらにe-Sportsは、他のスポーツにはない良い面もあわせ持っています。先ほども述べましたが男女差がないこと。e-Sportsでは男女が平等に戦えます。男女で同じチームをつくることもでき、車椅子に乗った方でも健常者と平等に戦うことができるのもe-Sportsの素晴らしさでしょう。このようなe-Sportsの可能性を「LPE」、ならびに「LPE」を支援してくださるスポーツクラブや政府など関連する諸団体から発信していきます。

──Muchas gracias por hoy.(本日はどうもありがとうございました)


~インタビューを終えて、聞き手、平林久和氏の所感
チャビさんの印象を一言でいうと「筋金入り」ですね。競技ゲーマーとして、e-Sportsの伝道師として20年来活動してこられたことについて、素直に敬意を表したいです。e-Sportsの世界には、こう言っちゃナンですが「ぽっと出」の人が多いと思うのです。そんな中ではありますが「筋金入り」のチャビさんのような方、こういう方が信じる者は救われる、になってほしいですね。人に説明するのが大変なお仕事が続くでしょうが、チャビさん、頑張ってください。
《平林久和@インサイド》

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