ゲームのTVCMは「疑似体験」させるもの・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第4回 | GameBusiness.jp

ゲームのTVCMは「疑似体験」させるもの・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第4回

ゲーム業界の皆様、こんにちは。今回はゲームCMを制作する上でのちょっとしたテクニックについて話してみたいと思います。

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ゲーム業界の皆様、こんにちは。今回はゲームCMを制作する上でのちょっとしたテクニックについて話してみたいと思います。

当たり前ですが、ゲームは「やる」ものです。ところがTVCMは「見る」ものです。

見るメディアでやるメディアの楽しさを表現するのは根本的に無理がある。

ゲームクリエイターがTVCM案を見ると、たいがい「ピンと来ない」となるのはそういう理由で、やっぱりゲームのプレイ映像をつなぐのが一番だ、といった結論に走りやすいのですが、それだと「見て楽しいゲーム」という表現になってしまう。映画の予告編なら成立しますが、それでやる楽しさを表現はできない。

あるいは「このゲームの面白さはやってもらわないとわからない」なんてことになり、イベントでプレイしてもらおうとか、体験版を配信しまくろうとか、そういう策に走ることもありますが、そういう場合だいたいは少数のマニアがやるだけの失敗となりがちです。

ではどう考えていくべきか。

ゲームに限らずですが、TVCMの基本的役割は「疑似体験」にあります。たとえば飲料のCMなら、「飲んだ気になってもらう」ということ。そのために重要なのは「飲みカット」。登場人物が気持ちよさそうに商品を飲む、これを見て、視聴者はどこか自分が飲んでるような気になるのです。

これは本にも書きましたが、アメリカの大学でこんな調査がありまして、架空のポップコーンのCM見せ、その1週間後ぐらいにそのポップコーンを食べたことがあるかと聞くんです。そしたら約半数が「ああ、あれはなかなかうまいよね」などと答えたという。CMには偽の記憶を作り出す力があります。

そういう人が店頭に行って商品を目に留めると、「これはうまかった」という作られた記憶を思い出して、手に取ってくれるというメカニズムです。だから、飲料なら飲みカット、食品なら食べカット、クルマなら運転カット、といった「疑似体験カット」がCMにおいては必須なんです。

これを削って商品説明だけにしてしまうと、CMの意味すら希薄化します。ちなみに演技力のある役者さんは飲みカットや食べカットが上手です。サントリーは飲みカットをとてもこだわって撮ってますが、その中でも北川景子さん、吉高由里子さん、檀れいさんなどは「やるな」と思いますねえ。

では、ゲームCMで疑似体験させるにはどうするか?わかりますね。

プレイカットを必ず挿入する、ということです。

「モンスト」の初期は、いろんな人がプレイする、というシーンでシリーズ化していました。これは鉄板です。このやり方だと、大きく外すことはないです。

ところが、新規参入が下がってくると、刺激を与えようという目論見で新しい表現を展開したりすることになりますが、その時プレイカットのない表現をやったりします。そうするとだいたい、下げに拍車がかかる結果となります。

プレイカットのないゲームCMもあります。コロプラのCMとか。これは僕なんかからすると挑戦的でドキドキします。いまオンエアしている「黒猫と〜」CMはラストカットにスマホが出て来ますが、僕ならスマホを操作している指を足します。そうするとプレイ感が出るからです。プレイ感がないと、どこか他人事になってしまいます。

ほんの少しでもこれがあることで、「ははあ、ああやれば楽しめるのだな」と自分事としてイメージしやすくなるわけです。

PSVita「共闘先生」は登場人物たちがゲームの世界に入ってしまう話だったので、プレイシーンが挿入できませんでした。なので、最後のロゴのところでPSVitaを操作している手を4つ差し込むようにしました。そういうところまで含めてゲームCM表現なのです。

自分は今、ある潮流に備えようとしています。HDM(ヘッドマウントディスプレイ)です。このバーチャルリアリティの楽しさをCMでどう表現するか?今のうちに考えておこうと。ただ、そもそもバーチャルリアリティが疑似体験ですからね。疑似体験をCMで疑似体験させる?アタマガワレソウ…。でもHMDのCMを作る日は確実に来るでしょうから。やはり自分が先にやり口を見つけないとなあ、と思っているわけです。

次回は…何について話しましょうか。
《小霜和也》

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