ゲームが売れる売れないの成否はコピーで決まる・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第2回 | GameBusiness.jp

ゲームが売れる売れないの成否はコピーで決まる・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第2回

ゲーム業界の皆様、こんにちは。
前回予告したとおり、今回は「ゲーム広告のコピー」について話してみたいと思います。

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ゲーム業界の皆様、こんにちは。
前回予告したとおり、今回は「ゲーム広告のコピー」について話してみたいと思います。

さて、ゲーム広告で、コピーってどれだけ重要と思います?

これはゲームCMに限らず、TVCM全体の傾向ですが、ずっとコピーが軽視される流れが続いています。昔のCMは、コピーを先に決めました。CD(クリエイティブディレクター)とコピーライターがコピー案を広告主にプレゼンし、まずコピーが固まってからCMプランナーがチームに参加してコンテを考える、というやり方が多かったです。

今は逆。
CMプランナーがコンテを考え、それを後からコピーで補足するやり方が多くなっています。でもこのやり方は間違い。それでは商品が売れないからです。

コピーで売っている例を一つ。たとえば『モンスターストライク』。このCMは、何をやればどういう快感が得られるかがシンプルに伝わる、優れたものです。様々なタイプを展開していますが、これをギュッと一つの記号に集約しているのが「引っ張りハンティング」というコピーです。これがあるからユーザーはゲームの楽しそうな印象を記憶でき、また、想像を膨らませることができるのです。もしこれがなければぼんやりとしたイメージになって、コミュニケーションの効率はぐっと下がっていたでしょう。こういうコピーのありなしが売れる売れないの成否を決める、と言っても過言ではないのです。

そのコピーの作り方も、以前と今では微妙に変化があります。コンシューマーゲームで僕がよくやったのは、

「プレイヤーにクエストを与える」

やり方です。

印象深かったのは、ずいぶん古い話ですけど、プレイステーションの『レガイア伝記』というRPG。
オリエンでは、バトルシステムが斬新で気持ちよいので、そこを立たせたいと言われたのですが、そんなに斬新かなあ…と自分は疑問に感じました。それに、RPGファンってそこをそんなに重視するものだろうかと。それよりも世界設定が面白く思いました。毒のような霧が立ちこめている世界で、町は高い城壁でその霧が入って来ないように防御してるんですね。ちょっと進撃の巨人に似てます。

それで、「この霧を晴らすのは、僕たち。」というコピーを提案しました。悪の魔王をやっつけるでもなく、お姫様を救うでもなく、このゲームでは霧を晴らすのが君たちの使命だよと。クライアントも納得してくれて、そういうキャンペーンを展開したら、確かもともと10万ぐらいの見込みだったのが思わず50万本以上も売れてしまったという…。

僕は、ゲームのコピーはクエストの提示であり、超短いチュートリアルでなければいけないと考えています。それを読むだけで何を目的とするのか、何をやればいいのか、パッとわかるということ。CMのビジュアルやストーリーはその補足です。ゲームで重要な要素は没入感(immersion)であると思いますが、最初にそれを提供する役割も果たしてくれます。

しかし、この「クエスト提示」というやり方はコンシューマーでこそ効果が高い。ソーシャルゲーム、スマホゲームなどネットゲームではそのコピーの作り方は通用しにくいでしょうね。ゴールがないわけですから。何かを達成するということがない世界で、大きなクエスト提示で魅力付けをするというのはなかなか難しい。そこで「引っ張りハンティング」といった、プレイから得られる快感のコピー化、ということになるわけです。

ただ、ネットゲームコミュニケーションの目的は大きく2つですよね。新規プレイヤー獲得と、アクティブプレイヤー率アップ。いったん取り込んだプレイヤーが離脱しないように、広告コミュニケーションで何ができるか。これを見事に解決しているコピーは、まだないように見えます(自分が知らないだけかもしれませんが)。

僕は昔、元祖ネットゲームの『Ultima Online』にずいぶんハマりましたけど、「こんなことやってても何もいいことないよな…」と、ふと虚しくなる瞬間がありました。ネットゲームでは誰しもその虚しい瞬間が連続した頃、離脱してしまうのでしょう。この無限作業を延々とやり続けた先にいったい何が待っているのか?そこをズバッと一言で提示してあげる、こういうものが得られるんだよ、と気づきを与えてあげる。もし今度僕がソーシャルゲーム、スマホゲームのコミュニケーションをやらせてもらうことになったら、そのあたりにトライしてみたいなと思っています。

ゲームのコピーと言えば、「よいこと良い大人のプレイステーション」といったプラットフォームコピーも僕はかなり書いて来ました。あまり大きな声では言いにくいのですが、僕はWindowsゲームが好きなんですよね…。『Total War』シリーズとか。『Hearts of Iron』シリーズとか。マニアックすぎるでしょうか…。何がいいかって、WindowsゲームはプレイヤーMODが楽しいんですよね。コンシューマー機だとこれができない。僕は『Skyrim』はもう、乳揺れキャラ以外ではプレイしたくないです!なのに、不思議ですが、日本ではWindows版は売れないんですよね。

なんだかんだ、日本人は枠にハマるのが心地よいのでしょうか。だとするといまのソシャゲ群雄割拠も、三國志ぐらいのプラットフォーム割が必要になってくるのかもしれません。プラットフォームのコピーについては、また別稿で。

五里霧中のゲーム業界ですが、この霧を晴らすのは、僕たち。

では、次回では、「ゲームのブランド化」について語ってみます。


■著者紹介

小霜和也 (こしも かずや)
コピーライター、クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント。博報堂でコピーライターを務めた後、独立し現在は株式会社小霜オフィス、ノープロブレム合同会社代表。プレイステーション、KIRIN一番搾り、その他日本を代表する数々の広告キャンペーンを手掛けてきた。ゲーム関連での実績多数。近著「ここらで広告コピーの本当の話をします(宣伝会議)」が大ヒット中。
ノープロブレム合同会社 / 小霜オフィス
《小霜和也》

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