フィンランドのゲーム事情と、DiGRA JAPANとの意外なつながり・・・「ゲーム・アカデミクス」第7回 | GameBusiness.jp

フィンランドのゲーム事情と、DiGRA JAPANとの意外なつながり・・・「ゲーム・アカデミクス」第7回

GameBusiness.jpの読者のみなさま、こんにちは。DiGRA JAPAN(日本デジタルゲーム学会)の七邊です。今回の「ゲーム・アカデミクス」では、フィンランドのゲーム事情と、DiGRA JAPANとの意外なつながりについてご説明したいと思います。

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GameBusiness.jpの読者のみなさま、こんにちは。DiGRA JAPAN(日本デジタルゲーム学会)の七邊です。今回の「ゲーム・アカデミクス」では、フィンランドのゲーム事情と、DiGRA JAPANとの意外なつながりについてご説明したいと思います。

フィンランドのデジタルゲーム産業は近年高い注目を集めています。世界中でヒットした「Max Payne」「Alan Wake」制作会社のRemedy、世界で20億回以上ダウンロードされた「Angry Bird」を手がけるRovio、「Clash of Clans」などのヒットで脚光を浴び2013年にソフトバンクとガンホーに約15億ドルで買収されたSuper Cellなどは、ノキアと共にフィンランドを象徴する企業であると認められるようになっています(拙稿「モバイルゲーム産業の『北欧モデル』―フィンランドとスウェーデンを中心に―」参照)。

フィンランドはまた、ゲーム研究が盛んな国でもあります。2002年、タンペレ大学にゲーム研究所(Game Research Lab)が設置され、コンピュータゲームの会議がタンペレで開催されました。その後、同研究所の所長で、フィンランドを代表するゲーム研究者であるフランス・マユラ(Frans Mäyrä)教授らが、欧米を中心とする研究者・制作者と国際学会「デジタルゲーム学会(Digital Games Research Association, DiGRA)」(2003年)を設立、同教授が初代会長に就任しています。DiGRAは、2003年以降、2年毎(現在は1年毎)に国際会議を開催しており、歴史学・人類学・心理学・社会学・教育科学・コンピュータサイエンス・文学・芸術学などの分野で個々にゲームを分析していた人びとが、専門知識を共有し創造していくために不可欠な場として機能するようになっています。

さらにフィンランドでは、ゲーム教育も盛んです。タンペレ大学の他に、オウル大学アールト大学などで、ゲーム研究で学位を取得できる教育カリキュラムが用意され、同国の質の高いゲーム制作・研究人材を育成する機能を担っています。また、マユラ教授が2008年に著した『ゲーム研究入門――文化の中のゲーム(An Introduction to Game Studies: Games in Culutre)』は、おそらく世界初の、デジタルゲーム研究をしたい学生のための教科書であり、各国のゲーム教育の現場で採用されています。

一方、「スーパーマリオブラザーズ」「ポケットモンスター」などの世界的人気から、「デジタルゲームの聖地」と呼ばれることもある日本では、2006年にDiGRAの日本支部「日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)」が設立されています。2007年、DiGRA JAPANは、DiGRA第3回国際会議「DiGRA2007」を日本に招致し、これを東京大学で開催しています(写真)。同会議にはフィンランドをはじめとする世界中のデジタルゲーム研究者が集い、日本の研究者が世界のゲーム研究と出会うきっかけになりました。さらに2011年には、立命館大学が「ゲーム研究センター(RCGS)」を設立、トゥルク大学ヤッコ・スオミネン(Jakko Suominen)教授らを客員研究員として受け入れ、国際会議、シンポジウム、研究会の開催を通して世界と日本のゲーム研究の橋渡しを行っています。


DiGRA2007の模様


現在、DiGRA JAPANやRCGSには国内外のゲーム研究者・制作者が参加し、国内で、またグローバルに社会関係を形成しています。また、学会大会、研究会、学会誌でゲームに関する専門知識が共有され、新たな知識が創造される一方で、大学でも制度的にゲームを教育・研究するようになっています(「日本でゲーム研究を専攻できる大学院・大学リスト」参照)。

これまで国内で独立して行われてきた日本のゲーム研究は、フィンランドをはじめとする各国のゲーム研究と交流することにより、さらなる発展を遂げようといています。また、その交流は今後も活発になっていくはずです。すでにDiGRA JAPANは、DiGRAの国際会議を日本に再び招致・開催することを発表しています。また『ゲーム研究入門』をはじめとする各国のゲーム研究書の日本語翻訳も、今後進められていくのではないでしょうか。

日本とフィンランドのゲーム研究者・制作者の交流は、まだ開始されたばかりです。両国のゲーム研究者・制作者のコミュニティ形成と学術研究の活性化が進むことを、日本でゲーム研究に関わってきた一人として期待したいと思います。
《七邊信重》

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