リアルではないがフィジカルだ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第29回 | GameBusiness.jp

リアルではないがフィジカルだ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第29回

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2000年代に入りゲームコンテンツを取り巻く環境は大きく変化しました。
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2000年代に入りゲームコンテンツを取り巻く環境は大きく変化しました。

2000年の前半から中盤にかけて、コンテンツパブリッシャーとデベロッパーが分化し、開発費の高騰するなか、大手のパブリッシャーはリスク回避と確実にキャッシュフローを稼ぐためナンバリングタイトルを積極的に推進しました。そのため、自ずと作品は飽和し、やや閉塞感が漂いました。他方、海外の大手パブリッシャーによる、映像作品とゲームの融合が促進された時代でもありました。

2000年代の後半になるとガラケーのゲームコンテンツを中心に小規模、中規模のパブリッシャーが台頭、その中から、ソーシャルゲームシフトが急速に進み、mixi、GREE、DeNAなどSNS的プラットホームを持つ、新しいパブリッシャーが生まれてきました。そこでは「有料ガチャ」による課金システムが促進され、大規模なキャッシュを生むマーケットが形成されました。

しかし、その「有料ガチャ」も消費者庁からの勧告により自主規制となり、同時にスマートフォンの普及による新しいマーケットが生まれ、パブリッシャーや個人開発者によるコンテンツが多数導入されました。海外ではユーザーとデベロッパーが直接的なファイナンスを行うクラウドファンディングが積極的に活用されています。

そのクラウドファンディングも日本ではイマイチな伸びで、国内クラウドファンディング関係者が思うほど甘くはない状況と言っていいでしょう。

事実、クリエイター・稲船敬二氏はアメリカのクラウドファンディングサイト「Kickstarter」でアクションゲーム『Mighty No.9』という企画を立ち上げ、最終的には7万人の支援者から約4億円の開発資金を得ました。開発進捗も順調と聞いています。ただし、このサクセスは稲船氏の海外でのネームバリューやコンテンツのバリューありきという指摘もありますので、誰もが実現できるかどうかわかりませんが、新しい座組みとしてクリエイターに可能性の示したことは大いに評価に値すべきことだと思います。本来であれば国内でファイナンスができることが理想ですが、そうもいかない事情もあります。

国内のコンシューマー市場は開発費の高騰や、新ハード待ちの市況環境によって大きなヒット作に恵まれないまま、2014年を迎えることになりました。ゲームソフト開発に関して、日本の大手開発会社の収益モデルも大きく様変わりし、海外パブリッシャーと異なり開発スタジオのカルチャーが定着することが困難な状況です。さまざまな流動性は向上したものの、依然として混迷の中にあります。

2013年12月に『バーチャファイター』の導入20周年を記念して対談をした鈴木裕(元セガAM2研部長)氏も新作の企画はあるものの、なかなかファイナンス面がうまくいかないという状況を感じました。『バーチャファイター』が格闘ゲームの概念を変革し、その技術面も大きく進化させたことは言うまでもないでしょう。

現在は3Dのコンピュータグラフィックスで開発することが当たり前ですが、当時は開発用のグラフィック基盤などのスペックの問題など課題も多くあったと聞きます。しかし、ポリゴンで形成された特徴的なキャラクターが電流を帯びた瞬間に躍動する様は人間の息遣いさえ感じるほどのコンテンツ(作品)でした。リアルではないがフィジカルだったという表現が正しいのかもしれません。

その後、開発された『シェンムー』なども画期的な作品として位置づけられており、海外のメジャー開発スタジオのメンバーからは「リスペクト」コンテンツとして有名です。その意味で鈴木氏が海外で評価されるのも頷けます。今年2014年のGDCからも招聘されるという話もありますので、鈴木氏の活躍は注目すべきものがあると思います。

さて、今年2014年2月22日には「プレイステーション4」が発売になります。すでに正月テレビ放送のなかで海外での先行ロンチされたPS4の興奮を切り取ったコマーシャル映像も大量にオンエアされ始めました。SCEとしての想定以上に好調な販売状況で日本での販売も待たれるところですが、一部大手流通では取り扱いを行わないという判断もあると聞いています。また、本来であれば日本での先行販売であれば中国やアジアの需要をプラスアルファで見込めたところですが、今回はすでに海外販売が先行しているため、そのアルファ需要も見込めません。そのあたりも嫌気があったのかもしれません。

混迷の時代をいかに生きるか。ゲームのみならずエンタメ受難の時代かもしれません。しかし、遊び方や時間の配分が変わることで、新しい娯楽が生まれることも事実です。かつて『バーチャファイター』に感じたリアルではないがフィジカル的な新しい感覚のコンテンツ、すべてがF1のマシンのような高スペックである必要はありません。ハンドリングを間違えると一瞬で事故るようなものではなく、ハンドルのアソビがあるようなコンテンツ。そのアソビの部分に意味あいを求める必要はなく、そのアソビはクリエイターの感性かもしれません。そのような感性を感じるコンテンツが今求められているのではないでしょうか。


次回 黒川塾十六 告知 http://ptix.co/19d2KSc
「ゲームビジネス潮流観測〜混迷の時代に新たな萌芽を探す」
ゲスト やまもといちろう /和田洋一 株式会社スクウェア・エニックス 取締役会長


■著者紹介
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

現在はインディーズゲーム制作中「モンケン」 電子書籍 「エンタメ創造記 ジャパニーズメイカーズの肖像 黒川塾総集編 壱」絶賛販売中

ツイッターアカウント ku6kawa230
ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』
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《黒川文雄》

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