ロートル侮るなかれ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第24回 | GameBusiness.jp

ロートル侮るなかれ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第24回

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「うっせーよおっさん、ロートルは黙ってな!」

とは・・・ジャーナリスト・津田大介氏の名ツイッターです。「一番最初に飛びついただけ。流れに乗って礼賛するやつはアホ」という津田氏に対する批判ツイートに脊髄反射的なツイートが冒頭の「黙ってな!」というものだったわけです。

コトの経緯は省略しますが、津田氏の気持はよくわかります。ま、ツイッターもブログも2ちゃんねるも相手の言い回しや表情が見えないだけに真意を測りかねたり、文字面の暴力的な部分が強烈に印象に残ることがあります。かくいう自分も最近「ロートルはおとなしくしてろよ(c)家入一真」というツイートを受けたことがことがありますが、なかなか、香ばしくもあり、しょっぱくもあり、趣豊かなものを感じます。

さて、先日6月27日、私が主催する「黒川塾(十)」を開催しました。今回のゲストはSCE創業者であり、プレイステーションビジネスをゼロから創り上げた丸山茂雄氏(エピックソニーの創始者、ソニー・コンピューターエンタテインメント取締役会長、ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役社長を歴任)、久夛良木健氏(ソニーコンピュータ・エンタテインメント社長を経て、名誉会長、現・サイバーアイ・エンタテインメント代表取締役社長)のお二人でした。テーマは「国産エンタテイメントの生きる道」で、個人的にはお二人がソニーという会社のバックボーンを利用しつつ、そのなかで個人の創造性や情熱をどのように発揮しコンテンツやプロダクツを生んでいったかという部分を来場者と共有するというのがテーマでした。しかし特に久夛良木さんは「もう、ソニーはプレステのことは話したくないよ」といい、開演直前の控室でも「ソニーとかプレステの話になったら帰るよ (笑)」というムードでした。一方の丸山さんは、終始ニコニコとされて、まあ、(内容は)なんでもいいんだろうという、丸さん流の「ちゃらちゃら」ムードでした。

しかし、実際には開演すると、若い来場者多かったのですが、終始プレイステーションやその関連のソフトビジネスがどのようにして生まれ、成長して行ったかという話に終始しました。二人はソニーというフィールドで丸山さんは音楽を極め、久夛良木さんはデジタルをベースにゲームで新しい時代とコンテンツを創生していったというエピソードを披露していただきました。かといって順風満帆であったというわけではなく、先人たちの教えや手ほどきがあってのもので、まったく何もないところから新しいものを作りだすのは大変だという感覚でした。何事も経験であると・・・。そしてソニーでの二人の出会いが後に大きなゲームビジネスやマーケットを生み出すことになります。おそらくどちらかが欠けていたら実現はしなかったのではないでしょうか。

お二人が活躍した時代から考えると、現在は世界(ワールドワイド)との障壁がなく、才能のある人が集まれば一気に世界を狙える時代であり、組織云々のしがらみで、昔は説得しなくてはいけない人たちや国境などの障壁がなくなったっているのになぜチャレンジしないかということを強く訴えていました。また、印象的だったのは、何かをやるならば、少人数で意欲のあるメンバーで小さく始めてアイデアを膨らませていくことがポイントではないだろうか・・・ということです。プレイステーションのビジネスはソニー内部では「何あれ?」的な否定的な意見のほうが多かったと聞きます。ある意味で「クレイジー」な立ち上げだったのかもしれません。

また今は何事も短期間で結果を問われるが、それではなかなか結果は伴わない。目標を立てた上で、長期的なスパンで取り組むほうが向いているのではないか。何を作ってどんな夢を実現したいのかが重要。エンタテインメントであれば人をもてなすわけで、どうやって面白いと思ってもらうか、感動させられるかという部分や、クリエイターとして作りたいことややりたいこと、届けたいことの視点に立って取り組むことの重要性を認識したほうがいいという言葉がとても印象的でした。お二人とも年齢を感じさせない迫力と説得力のある90分間だったと思います。

また、数日前にセガに在職していたときにお世話になったAM事業の役員(常務)だった鈴木久司氏とも面談する時間に恵まれました。鈴木氏とはゲーム創りの神髄とは・・・一番面白い部分を、さらにどうすれば面白いと思えるようにするかということを改めて教えていただきました。

「なあ、黒川よ、野球はバッティングが一番おもしろいだろう?・・・だから『バッティングセンター』が流行るわけで、『守備センター』ってのは世の中にないだろうよ。つまりバッティングをどう面白く演出するかだよ」

「サッカーもドリブルが良いんだという奴がいるけど、俺に言わせれば違うね!やっぱりゴールだろうよ。その瞬間が一番盛り上がるんだよ。そのあたりの感覚をゲームのなかにどう生かすかが良いゲームかどうかの分かれ道なんだよ」。

僕は丸山さん、久夛良木さん、鈴木さんの言葉はするすると肚に落ちていきました。

お三方は、ロートルという表現では括れない何かがそこにありました。またロートルならではの経験や知識を感じるのです。このお三方が特別なのか?どうかは皆さんの個々の判断に依るものもあるでしょう。しかし、塾の最後に若い世代に一言というリクエストに対して久夛良木さんが「長生きして良かったなと思うぐらいのソフトを作って楽しませてほしい」という言葉をいただきましたが、「それは俺たち(ロートル)も負けないぞ・・」・という想いを感じました。黒川塾1周年にふさわしい結びの言葉だったと思います。どうもありがとうございました。

■著者紹介
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。
《黒川文雄》

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