創業、育成、成長、買収、淘汰というソーシャルシステム!? ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第16回 | GameBusiness.jp

創業、育成、成長、買収、淘汰というソーシャルシステム!? ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第16回

前回のコラムで、東京ゲームショウにおけるソーシャルゲーム系のパブリッシャーのラインナップが「ゲームらしく」なってきましたと書きました。それは1〜2年ほど前にコンシューマゲーム業界から転職した開発者や企画者たちの手がけたコンテンツが徐々に市場に導入されて

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前回のコラムで、東京ゲームショウにおけるソーシャルゲーム系のパブリッシャーのラインナップが「ゲームらしく」なってきましたと書きました。それは1〜2年ほど前にコンシューマゲーム業界から転職した開発者や企画者たちの手がけたコンテンツが徐々に市場に導入されてきたことに他なりません。

そのすぐあとの出来事ですが、TGSでハデなブース演出で話題を提供してくれたgloops(グループス)社を韓国系ネットゲーム会社のネクソンが365億円で買収しました。今回、創業者を含め4人の株主で構成されているgloopsの経営メンバーは創業から約7年でこの大金を手にしたことになります。gloopsに対してはネガティブな記事や事実もあるのでしょうが、7年間であのポジションをソーシャルゲームの世界で構築したことは事実で、批判や非難だけでなく、誰もやれなかったことをやったという点で評価できるところもあるのではないでしょうか。

また、グリーがソーシャルゲーム会社、ポケラボを138億円で買収したことも大きな話題になりました。開発者、デザイナー、イラストレーターなどリソースの確保とコンテンツの確保を会社ごと買収することで解決してしまうという大きな買収ができてしまうことも大きな会社ならではのダイナミズムなのでしょう。

今後はソーシャルゲームを創る(開発する)にも、技術的にもスペックが高まり、遊び方も家庭用ゲームのテイストが導入され、グラフィックスもより精彩なものを必要とすることから、大きなキャッシュが必要になるということの表れであり、またそれを創る技術者たちの流入、流出がさらに加速するのではないでしょうか。

また気になるのは、まだあまり表面化していませんが、中小のソーシャルアプリケーションプロバイダー(SAP)も淘汰が始まるのではないかと思います。創業に際して大きな資金調達をしたものの、思ったようなスケジュールでコンテンツが市場に出すことができず、思ったほどの収益を生み出すことができないという事例が少し目立ってきました。また、その関係で経営地盤に少し揺らぎが見えるような組織もあります。経営陣の資質が問われる大きな転機なのかもしれません。いずれにしても、それらの転機や資質は一般的に社員や外部には見えづらいもので、孤独な作業であり、良質なコンテンツを提供するSAP様においてはなんとか乗り切って欲しいと思います。

個人的なことになりますが、10月12日に開催した「黒川塾 その参」に株式会社ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下社長、パズル&ドラゴンの山本プロデューサー、元スクウェアエニックスの田中弘道氏(現在ガンホー社顧問)を招待してイベントを開催しました。「創りたいものを創る」「ゲーム開発にKPIやマネタイズという言葉は禁句」というポリシーが現在のガンホー社のヒットを生む要因になったように思いました。私自身も、よく耳にする「KPI」「マネタイズ」「マーケティング」などの言葉を聞くたびに自問自答するようになってしまいました。本来、市場が求めるようなものはマーケティングなどは不要で、すでにレッドオーシャンだからこそ、理由や背景やセオリーが経営や自分の指針確認のために必要なのではないでしょうか。コンテンツのライフタイムも短くなった分、その選択、淘汰のタイムリミットも早くなったように思います。

■著者紹介

くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」、まんたんWeb「サブカル黙示録」や「ニコニコチャンネル 黒川塾ブロマガ」も更新中。
《黒川文雄》

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