ガチャ騒動の終わりと事件の始まり・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第11回 | GameBusiness.jp

ガチャ騒動の終わりと事件の始まり・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第11回

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5月5日、子供の日、読売新聞(朝刊)に掲載された「アイテム新商法 『違法』」という記事が発端でした。小見出しには「コンプガチャ中止要請へ」。内容は市場規模2500億円を超えるソーシャルゲームの主な収益源となっている「コンプリートガチャ商法」を消費者庁として景品表示表に抵触すると判断し近々見解を公表し、従わない場合は措置命令を出す方針という記事が今回のコンプガチャ騒動の始まりでした。

その記事は、すぐに他のメディアに飛び火しました。ネット、ツイッター、フェイスブックのフィード、ブログなどでの書き込みが相次ぎました。すでにみなさんご存じのように実態としては消費者庁は「いかがなものか」という問題提議は行ったものの、正式な見解や措置命令を出したわけではないことが後日の発表で明らかになったわけです。しかし、日本で一番の発行部数を誇るメディアのことです。おそらくは具体的なソースと次の「事件」を想定したうえでの記事に違いありません。

その後8日になって、松原消費担当相が各事業者に向けて、注意喚起を促す方向でという方針を発表しました。消費者庁自体が内閣府の肝いりで設立された機関で、当初から警察や公正取引委員会のOBで構成された組織です。大した成果もない現状としては実績をアピールする恰好の案件と映ったことは明らかです。

それを受けて、GREE、DeNAそれぞれの社長が「真摯に対応したい」「正式な要請が来てから対応したい」などの声明を発表しましたが、実際のアクションは早く10日の時点でネットゲーム系6社がまとまって案内を発表し、5月末日ですべてのコンプリートガチャを廃止することを決定しました。なんと早いこと・・・でしょうか。それぞれの社長が「現行法に違反するという認識は無いが、社会的に問題視されている」「社会的に責任を負っている企業として真摯に対応した結果」というコメントを発表しました。それ以前に発表した会社もありましたが、どうにも株価対策としての側面が否定できません。また6社の策定したガイドラインも発表されたことで収束に向かっているようにも思えます。

しかし、本当に後ろめたい気持ちが無く、努力の結果の施策ならば突っぱねることもできたはずで、おそらくそのあたりのグレーゾーン感覚は当事者としても持っていたと認識せざるを得ません。おそらく従来からのゲーム会社の幹部の中には、マフィア映画などでよくありがちな「ヤツらは高く飛びすぎたのさ・・・」なんてセリフが聞こえてきそうです。家庭用ゲームソフト会社も、新しい要素を生み出すこともなく、走って、撃って、飛んで、美女と美男とゾンビが出るというありきたりのゲームの文法を使いまわしてきたことが凋落の原因であったことをこの機会に反省すべきではないでしょうか。

今回の件で、問題になったコンプガチャですが各社収益への影響は軽微なものとして広報発表をしていますが、はたしてそうでしょうか。2強を始めとして、SAPと呼ばれる各ゲームプロバイダーの収益を支えていたものはこれらのコンプガチャだったと思います。それも日本独特なシステムを駆使した、ユーザーの射幸心や不安や不満を駆り立て、そこをうまく突いた収益拡大方法だったと思います。これと同等の収益規模のものがあるならばとうに取り組んでいるはずですので、おそらくは威勢のいいIR対策の声明と考えています。

もうひとつ、「記事」の背景になるものは何らかの政治的な意図があるのではないかとのことです。実際に過去の事件や事象を見ても、なにかグレーなものとして取り上げられ、それが徐々に世論としてブラックに染まっていく過程をみるような気がします。おそらくそうなってもらっては困るからこそ、各社が一丸となって自主廃止を発表したことと思います。しかし、問題は供給側だけの問題ではありません。使う側のモラルも考えなければいけません。システムやデバイスが先行して著作権や利用法などのモラルが伴わない第三国のようなことになりかねません。またこのような世論や世相が醸成されると、今まで高揚していた加入者の熱が一気に冷却され市場がシュリンクするキッカケになります。

最後になりますが、コンプガチャがなくとも「もっと面白いゲーム」を作ることができるという発表があったと思います。しかし、各社が注力していたのは「ゲーム」創りではなく、「システム」創りだったことをよく考えるべき時期に来ていると思います。今回の「騒動」は終息したかに見えますが、これからが始まりです。次に起こる「事件」に注目してみたいと思います。
《黒川文雄》

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