ソーシャルゲームを巡る「嫉妬」と過去の挑戦者・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第10回 | GameBusiness.jp

ソーシャルゲームを巡る「嫉妬」と過去の挑戦者・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第10回

このところ、ネットや経済誌を紙面を飾ることが多くなったソーシャル系ゲームプロバイダー。なかでも、その筆頭はグリー株式会社です。

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このところ、ネットや経済誌を紙面を飾ることが多くなったソーシャル系ゲームプロバイダー。なかでも、その筆頭はグリー株式会社です。

その記事内容は、大半はソーシャルゲームでのコンプガチャに伴う高額課金の問題、それらを助長するリアルマネートレードに類した転売やアイテム偽造に関わる問題、また同業者とのあいだのゲームのパクリ疑惑など、今の様相は訴訟と中傷、疑惑が渦巻き、が多く喧伝されています。

それらの正否や真偽は相応の場所で争ってほしいと思いますが、なかにはグリー創業時期からのまとめ記事をアップするなどして、どこでグリーは道を誤ったか・・・など、現在の報道や傾向は、やや行き過ぎた感もあるように思います。

私ごとになりますが、1997年から7年ほど株式会社デジキューブ(2003年に自己破産)という会社にて宣伝関係と商品仕入れ関係の役員を担当したことがあります。デジキューブは株式会社スクウェア(当時)が出資し、主にプレイステーションのソフトをコンビニエンスストアで販売するために設立した会社でした。取引のあったコンビニはセブン-イレブン、ファミリーマート、サークルケイ、サンクス、四国スパーという5チェーンでした。

当時はまだゲームの小売流通や個別の店舗の販売力が強く、それらの団体や店舗オーナーからの反発が強かった記憶があります。

私自身もある既存のゲーム流通系メディアが取材する流通系フォーラムにゲストスピーカーとして参加しましたが、紹介され壇上にあがった瞬間からある種の敵意を感じ、最後の質疑応答でもコンビニ流通批判を基にした質問もありました。その多くはコンビニ流通だけメーカー側はなぜ特典などの部分でなぜ優遇するのかなどというものでした。もちろん小売の1店舗とは比較できない販売数を捌くコンビニ流通ならではのダイナミズムあふれるビジネスだからこそメーカー側も協力したということはわかっていても、ゲーム販売の歴史を作ってきたのは自分たち小売店だという自負があったのでしょう。当然ながら双方なかなか受け入れることのできないものがありました。

また、それ以外にも多くの中傷まがいの記事もありました。大型ソフトがリリースされないと財務体質が改善しない経営体質など会社がもともと持っている要素もずいぶんと攻撃をされたものです。最終的にはその影響もあり、自己破産に至ったことは明らかですが、新しい流通としてコンビニという店舗の拡張性を導いたこともデジキューブの功績と思っています。

そんな時に思ったのは、日本には嫉妬文化という側面があり、新しい展開や新しい成功を歓迎する気持ちが少ないというものでした。嫉妬という言葉に置き換えてもいいかもしれません。

もちろん、遠隔地やゲームショップにゲームを買いに行くにも時間がかかるユーザーなどに喜ばれた側面もあれば、新しい需要を開拓したという評価すべき点が多いにも関わらず批判や非難、中傷の対象になることも少なくありませんでした。

昨今のグリー(およびソーシャル系ゲーム)批判記事を読んで思うことは、その当時の私が個人で感じた新しいビジネスモデルへの批判や中傷に近いものを感じます。成功した企業家や企業に対しての「儲けすぎ」という側面での嫉妬ではないかと思うのです。

確かに未成年者が高額な課金をすることや、それを扇動するようなシステムが適切かどうかは判断の分かれるところです。しかし、振り返ってみれば、業務用ゲーム機の頃から、100円玉を何枚もディスプレイの上に積み上げ、ゲームオーバーするたびにコインを投入しコンティニューさせるというモデルがあります。はたしてそのプレイヤーは他人からコインを投下しろと言われているかと言えば、それは否です。自らの意思でコンティニューをしていたと思います。ただしデバイスが進化普及し手短な携帯電話になったことがすそ野を広げる要因になったことは否定できませんが・・・。

現在、懸念すべきは近鉄バッファローズ買収に名乗り上げた当時のライブドアのホリエモンへの注目とその後のバッシングへ至る側面にとてもよく似ています。もちろん、株価操作や虚偽報告などはあってはなりませんが、今の報道傾向はややその煽りが混ざったもので健全なものとは思いにくいのです。新しいビジネスへの愛と嫉妬の入り混ざった複雑な環境は日本独特なものかもしれません。

■著者紹介

黒川文雄 (くろかわふみお)
メディアコンテンツ研究家
1960年・東京都生まれ。武蔵大学卒。レコード会社を経て、株式会社ギャガコミュニケーションズ(現・ギャガ)、株式会社セガエンタープライゼス(現・セガ)、株式会社デジキューブを経て株式会社デックスエンタテインメントを起業。映画製作配給、オンラインゲーム企画開発運営に携わる。その後株式会社ブシロード副社長、株式会社コナミデジタルエンタテインメントを経て、現在は株式会社NHNジャパンにてオンラインゲームの企画開発運営に携わる。一方で数々のエンタメ産業への造詣が深くメディアコンテンツ研究家としてコラム執筆を行う。ブログもご参照ください。Twitterアカウントはku6kawa230
《黒川文雄》

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