新しいiPadからスマートテレビを考える・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第29回 | GameBusiness.jp

新しいiPadからスマートテレビを考える・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第29回

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すでにiPad3の呼び名に慣れてしまっていたので、書きにくいが「新しいiPad」を購入した。まず、バイヤーズガイド的なことを端点に言ってしまおう。
  • すでにiPad3の呼び名に慣れてしまっていたので、書きにくいが「新しいiPad」を購入した。まず、バイヤーズガイド的なことを端点に言ってしまおう。
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すでにiPad3の呼び名に慣れてしまっていたので、書きにくいが「新しいiPad」を購入した。まず、バイヤーズガイド的なことを端点に言ってしまおう。

もし、あなたがiPad2のユーザーだとしたら、あえて買い換える必要はないだろう。

処理速度が早くなったという。アイコンをタップした瞬間に、体感するほどの変化ではない。微差だ。高解像度になったという。この進化には感謝している。画面を拡大したときに、その差はわかる。小さな文字を拡大したとき、予想していた以上に鮮明に見える。しかし全体として、iPad2と比べて劇的な変化はない。だからきっと「3」と呼ばなかったのだろう。



同じアップルの製品ならば、あと数万円追加してMac Book Airの購入をおすすめしたい。軽量で、起動もシステム終了も早く、サブノートとして使うには最高の製品だ。あくまでも個人的で、しかも抽象的な感想になるが、現行のMac Book Airを利用したときの喜びと、新しいiPadを利用したときの喜びを比較すると、明らかに前者がまさる。そして、私が日々、持ち歩くのはMac Book Airである。

それにしても、アップル社はマーケティングがうまい。iPadのことを「魔法のようなデバイス」と呼んで、消費者に魔法をかけてしまった。生活必需品ではない電子機器を、ファッションアイテムのような流行品にしたのだ。私の妻が典型例だが、コンピュータにまったく詳しくない女性たちは、新しいiPadのことを、アンテプリマのワイヤーバッグなどと同列に並べて、購入の検討をしている。iPadは人間の、特に女性の美意識をくすぐる。

美しいバラにはトゲがある。
同じように美しいアップルにもトゲがある。

2012年3月7日に新しいiPadが発表されたが、日本の各メディアにはiPad2と並べて写真を撮ることを禁じたそうである。並べてもまったく斬新さは伝わらない。細かいことをいえば、新しいiPadのほうがiPad2よりも0.6mm厚くなっている。重量は約50g重い。このような報道規制によって、新しいiPadの美は保たれていたのだった。

それでも私はiPadを購入した。5M(メガ)ピクセルの解像度を持つカメラで動画を撮り、Apple TVを介してテレビに写したかった。アップルがAir Playと呼ぶ手元のタブレットと大画面に同じ画像を写した場合に変化はあるのか。手に持って試したかった。

そして思考の旅をするのだ。
スマートテレビについて。
以下は、新しいiPadを手にした私が書き残した。2012年春のスマートテレビをめぐるメモである。
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(1)まず、Apple TV。機能について不満があるが好きだ。Apple TVも新しいiPadとともに第3世代に買い換えたのだが、これについてもあまり変化がない。2007年に発売された第1世代を引き継いでいる。だが、8800円と価格が「安い」こと、iPhoneやWindowsマシンも含む5台のデバイスと接続できるオープンな設計がいいのである。わざわざカッコをつけたが、「安い」はキーワードだ。

(2)Apple TVは他のデバイスと接続をしないで単体でも使える。だが、その用途は限られている。基本的にアップルが運営するアップルストアの購入窓口として設計されている。HDクオリティの映画がレンタルできるのだが、ほとんどの新作映画が500円(視聴期間は30日)。我が家から徒歩5分の場所に蔦屋書店がある。「借りる」ならば物理メディアのDVDやブルーレイを使う方法を選ぶ。スマートテレビに視聴期限つきのレンタルは、今のところ魅力を感じない。ひとつの仮説。視聴期限つきの映画レンタルは、よほど価格が安くならないと普及しないだろう。

(3)Apple TVはお気に入りの製品だが、扱うのが難しい。他のアップル製品にマニュアルは無いに等しい。使えばわかる。任天堂のゲームソフトのようだ。だがApple TVには36ページ(表紙を除く白ページを含む)の取扱説明書が同梱されている。無線LANとの通信設定、他の機器と同期するまでの設定に手間がかかる。Apple TVは未来のスマートテレビの有力候補だ。接続のしかたを簡単にするか、英文を直訳したような日本語マニュアルの改善が必要だろう。

(4)Apple TVの映画レンタルは高価だし、他のコンテンツもメジャーリーグ中継などアメリカンな匂いを消しきれていないのだが、ポッドキャストという無料コンテンツが大量にそろっているのは便利である。iTunes、iPodが積み重ねてきた資産がいきている。英語のリスニング、名作文学の朗読、落語。スマートテレビと大げさに構えずに、音声再生装置としても使える。

(5)アップルは真のiPad3、またはiPhone5の登場とともに、Apple TVにも大幅な改良を加えてくるのではないだろうか。その時、今のiPhoneアプリ市場のようにApple TVでもゲーム市場が活性化すること期待したい。私がはまっているゲーム、『パズル & ドラゴンズ』(GungHo Online Entertainment)、『GROOVE COASTER』(タイトー)のApple TV版を遊びたい。

(6)Apple TVの特徴は、「安い」と書いた。まったく逆を行くのが日本のテレビメーカーである。国内家電メーカー各社はこの春から、いっせいにスマートテレビを売り出している。どの新製品のカタログやWebサイトを見ても「つながる」の文字が躍っている。インターネットとつながる、他のデバイスとつながる。スマートテレビを簡単に言ってしまえば、コンピュータが内蔵されたテレビだ。2012年の家電業界はスマートテレビの成否が業績を上げもすれば下げもする。命運を握った製品だ。

(7)パナソニックのスマートテレビの最上位機種(VT5・60型)の推定価格は50万円程度とされている。東芝の最上位機種(REGZA 55X3・55型)の実勢価格は60万円から70万円だ。画面サイズが小さい中位モデルもあるが、20万円程度するのが現在のスマートテレビの市況である。なぜ、こんなに高いのか? 安くてはいけないからだ。今期、テレビ部門の業績不振によってパナソニック、ソニーの赤字となった。日立製作所は9月末にテレビの自社生産を休止する。日本の家電メーカーは、テレビに多くの付加価値をつけて高額で売る体質がある。

(8)私は絶対に50万円もするスマートテレビを買わない。内蔵されたCPUやメモリが年々進化することが目に見えているからだ。ディスプレイの裏にコンピュータの基本機能と円盤メディアの挿入口がついたテレビ一体型パソコンに、まったく興味がないのと、理由は同じだ。

(9)つまり、スマートテレビが騒がれている昨今だが、高額な家電メーカーの製品は普及しないだろう。テレビはコンピュータではない。新型機が出たからといってすぐに欲しくなるものではない。むしろ、一度買ったら壊れるまで使いたい、10年使いたい‥‥のが消費者の心理だ。皮肉なことに、世の中が「スマート化」すればするほど、つまり技術革新が起きるたびに、テレビは外部のデバイスを照射するための、ただのディスプレイとなっていくのではないだろうか。

(10)家電メーカーの採算が合うかどうかは別にして、テレビの中のコンピュータの部分が脱着できるモジュールになっている。性能が進化したらモジュールのみを交換する。ここでやっとゲームが主題になるのだが、そのモジュールに任天堂のソフトが動くモジュール、プレイステーションが動くモジュール、Xboxが動くモジュールがあってもいい。心臓部を部品交換するテレビだ。部屋の搬入に手間がかかる巨大なテレビの買い換えではなく、部品を好みで選べる「消費者選択型」「部品交換型」のスマートテレビがあるならば、私は購入を検討するかもしれない。
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(11)外部デバイスとつながるスマートテレビは、言い換えると映像が2画面表示されることになる。Wii Uの画面つきコントローラ、あるいはPSP、PSVitaのリモートプレイはスマートテレビのコンセプトの先駆けとも言える。任天堂もソニー・コンピュータエンタテインメントも、「良質なゲーム」「ソフトラインナップ」という常識から離れて、自社の強みをいかした、テレビのスマート化を戦略のひとつに加えるべきだろう。

(12)ちなみに、ビデオ、フォトビューワー、インターネットブラウザ、音楽プレイヤー、ブルーレイ再生、トルネ、海外ドラマシリーズや邦画などが見られるhuluを搭載したプレイステーション3の全機能を使いこなすと、スマートテレビの体験ができる。

(13)各家電メーカーが「つながる」をキーワードにスマートテレビを発売しているが、ソニーのBRAVIAも例外ではない。Skype、YouTube、その他、動画コンテンツのサービス会社、イオンのショッピングサイト、あらゆるものとつながっている。だが、肝心なものとつながっていない。PSPとPS Vitaだ。この連携の悪さを、まともに批判する刺々しくなる。同じグループ会社なのだから仲良くしてね、と呼びかけることにする。


様々なサービスとつながるが、PSP/PSVitaにはつながらない


(14)Googleはすでに、2010年5月にアメリカでGoogle TVを発売している。発売当初はテレビと通信を融合させるコンセプトだったが、UI(ユーザーインタフェイス)が不評で専用アプリも少なかった。Google TV用のセットトップボックスも高額で299米ドルだった。先行するApple TVに負けた。だが、昨年にニューバージョンを発表。今年になってからGoogle TV用の安価なセットトップボックスを発売するパートナー企業も増えた。その理由のひとつに、Androidのスマートフォン、タブレットPCの普及があるだろう。

(15)AndroidのタブレットPCは、iPadのような華がない。iPad特有のメニューアイコンがタップした時に広がる画面、画面をスワイプしたときの動き、4本指または5本指での独自のジェスチャー機能。触るだけでゲームをしているようだ。だが、スマートフォン同様にタブレットPCもアップル独占時代は終わり、Androidタブレットのシェアは高まりつつある。また、性的・暴力的な表現を一切なくしているアップルに対して、Androidの規制は緩やかだ。Apple TVとGoogle TVを比較した場合、お上品すぎることがApple TV普及の足かせになるのではないだろうか。

(16)ようするに、一長一短が寄り集まっているのが、今のスマートテレビである。高額で専門家がインターネット接続してくれる家電製品もあれば、低額だがセッティングに知識を必要とするセットトップボックスもある。つながるデバイスは多種多様で、テレビに映し出されるものは通信と放送が入り混じっている。国内外の異業種企業が参入してくる。スマートテレビ普及のまえに、スマートフォンに放送を流そうとする動きもある。4月からは“日本初のスマホ向け放送局「NOTTV」”が開局する。資本金は248.9億円。株主は、以下のサイトに記載された企業群である。新聞や雑誌は、スマートテレビ元年と騒ぐ。だが、メディアが騒ぐ元年は元年になった試しがない。


日本発のスマホ向け放送局 NOTTV


(17)されど、テレビは変わろうとしている。テレビが変われば、自然な流れとしてゲームも変わる。今年のゲームの面白い変化は「つながり」によって起きる。画面と画面、放送と通信、遊びと実用、人と人、企業と企業、現実と架空の世界、十字キー・タップ・キーボード。ゲームの変化は無限の組み合わせの中から生まれてくるだろう。どんなにテレビが変わっても、人が画面を通じて遊びたいという気持ちに変わりはない。画面の中で起きる出来事を考えるのが、今までのゲームデザイナーだった。これからは、遊ぶ人の生活を楽しくさせる、ゲームライフデザイナーが活躍する時代となるだろう。

スマートテレビの言葉は踊る。
去年体験した地デジ化と違って、ある日、いっせい訪れるわけではないスマート化。
今年は試行錯誤の年だ。
決勝戦は遠い。
予選トーナメントの組み合わせすら決まっていない。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式サイト公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuH、Facebookアカウントはhttp://www.facebook.com/hisakazu.hirabayashiです。
《平林久和》

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