コンピュータには不得意なことでも、人間なら簡単にできることがある。だったら大量の人間を使って作業してもらえば良い。それもゲーム仕立てで・・・。こうしたコンセプトで誕生したゲームが、タンパク質構造予測を行う「Foldit」(2008年)です。ゲーミフィケーションの例として、メディアにもしばしば取り上げられています。このように、いわゆる「集団による人力計算」を科学の発展に応用する試みは「CITIZEN SCIENCE」などと呼ばれています。2010年にスタートした「Phylo」(http://phylo.cs.mcgill.ca/)は、その最先端の事例の一つです。GameITサミットの最初のセッション「Game Structured Hiveminds: Organizing People & Solving Problems with Fun」は、本事例の紹介から始まりました。講演者はMcGill大学のJerome Waldispuhl氏です。 Phyloはさまざまな生物の遺伝子コードを元に、特定のパターンに並べ替えることを目的として作られたパズルゲームです。遺伝子内に含まれるDNAやRNAの塩基配列を比較することは、鎌形赤血球症などの原因になる遺伝性疾患を発見する上で、非常に有力なツールになるとされています。しかし、これらをコンピュータで行うのは、最新技術を持ってしても困難なのです。そこでスピードは遅くても、より高性能な判断ができる人間の脳の出番というわけです。PhyloはMcGill大学のプロジェクトがベースでデザインされ、ウェブ上でプレイできる無償ゲームとして公開されています。プレイヤーは塩基配列を模したカラーブロックを、画面上で左右に動かしながら、上下のパターンが最も増えるように整えていきます。カラーブロックを効率的に動かすほどに得点がアップし、制限時間内に最適なパターンが見つかればレベルクリアとなります。同時にマッチさせる塩基配列の数は難易度によって異なります。人間・猿・ネズミ・コウモリなど、さまざまな動物を示すアイコンも表示され、人間と進化の系統樹が近しいほどに、塩基配列も似通ってくることが、プレイしながら理解できるでしょう。パズルの結果はUCSC Genome Browserに送信され、研究に活用されます。ランキングやFacebookとの連結機能もあります。講演では2010年の11月29日にスタート後、60万人以上のユーザーがおとずれ、45万種類以上のパズルを完成されたことが示されました。ユーザーの地域別割合ではアメリカが38.7%とトップで、以後カナダ、ノルウェーと続きますが、4番目にブラジルが入っている点が注目されます。なおゲームはFlashで作られていますが、HTML5版も公開されており、iPhoneのブラウザ上でもプレイ可能です。
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