就活生へ。業界研究より産業動向を見る時代だよ・・平林久和「ゲームの未来を語る」第26回 | GameBusiness.jp

就活生へ。業界研究より産業動向を見る時代だよ・・平林久和「ゲームの未来を語る」第26回

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■ある講義より
(以下の原稿は2011年11月に行った講義をもとに執筆いたしました)
  • ■ある講義より
(以下の原稿は2011年11月に行った講義をもとに執筆いたしました)
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(以下の原稿は2011年11月に行った講義をもとに執筆いたしました)
■ある講義より
(以下の原稿は2011年11月に行った講義をもとに執筆いたしました)



12月になりました。
本格的な就職活動のシーズンになりました。
就活といえば、「業界研究をしましょう」と指導されますね。
学校の先生や、就職部、最近はキャリアサポートセンターなどと呼ぶ学校も増えましたが、オトナたちは、業界研究は就活の第一歩と言います。
民間企業が主催する業界研究のイベントのポスターが、目立つ季節にもなってきました。

ですが、今日の講義では業界研究をするまえに、しておくことがあるのではなかろうか。
他のオトナが言いそうもない、私の考えを述べさせていただきます。
いきなりですが、スクリーンを見てください。ふだん、何気なく使っている言葉ですが、業界と産業について改めて定義をしてみました。





えー、この図でお伝えしたいことは、業界が示す意味は産業よりも狭い。
業界は産業の一部であるということです。

業界と産業の違いは何かというと、同業者の集まりが業界。
寄り合い所帯、なんて言葉、聞いたことありますか?
そんな意味でもあるんです。業界ってね。

ところが産業は、閉じていない。
莫然とした言い方ですみません。社会や時代の変化とつながっているのが産業です。

同業者の集まりである業界は、大きな産業に包まれたようなものなので、産業が動けば、業界も動いてしまいます。

したがって、業界研究のまえに、産業動向を見ようよ、というのが今日の本題です。
ここにいる皆さんは、学校でゲームかCGを学んでいる。
就活をして、できればゲーム会社に入社して、企画の仕事やグラフィックデザインをしたい、と考えています。

でも、さあ業界研究だといって、調べれば、噂でも聞くかな? その門は狭いことがわかるでしょう。ちょっとインターネットを使ったくらいで、ガッカリしたり、あきらめたり、してほしくないんですね。

まず、今、ゲーム業界は産業動向の中でどんな立ち位置にいるのかを知ってください。そのあとから企業選びをすれば、いい会社を見分けることができるし、就活がうまくいく確率は高くなるはずです。みんな、「つまらない話をしている」って顔をしているなぁ。

■業界が混ざり合う時代を迎えて
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■業界が混ざり合う時代を迎えて

OK、では、身近な話をひとつ、お話しましょう。
10月のことでした。
バンダイナムコゲームスは、電通と協力して、ゲームづくりのノウハウを他業種の製品開発やサービスに活用するサービス「ゲームメソッドコンサルティング」(『SPECIAL FLAG』)を行う、と発表しました。



*バンダイナムコゲームス発表報道資料より

参考リンク
http://specialflag.net/


ゲームが持っている魅力ってありますよね。ユーザーインタフェイスのわかりやすさ、人を夢中にさせて反復される力を、他業種の製品開発にいかす。レベルデザインの考え方なども取り入れて、人事研修・人材育成に使おうという試みです。

こういう事例こそ、まさに産業動向から生まれたものです。
ゲーム業界も広告業界も、サービス産業のうちのひとつ、ととらえましょうか。
サービス産業に変化が起きています。

ゲーム会社は、ゲームソフトの制作という今までの枠にとどまらない。完成したゲームでなくても、ゲームづくり共通のエキスは、他の業界でも利用できると考えたんですね。

広告会社は、テレビ・新聞・雑誌の広告枠を売買するのがビジネスの基本でした。完成した顧客(クライアント)の商品をなるべく多く売ることに知恵を絞ることもしてきました。ですが、一歩踏み込んで、もとから売れる商品をつくる。売れる商品をつくる人材を育てる。そういう新サービスを展開しようとしています。

ゲーム業界も広告業界も、寄り合い所帯から飛び出す時期がきているんです。
数年前では考えられなかった業界と業界の化学反応が、今は起きやすい環境になっています。

「テイルズシリーズをつくりたい」と思って、バンダイムコゲームスに行ったら、同じことを考えている就活生ばかりで、狭き門になってしまいます。いや、もうすでにバンダイナムコゲームスにはテイルズシリーズをつくれる人は、たくさんいます。だから、ソフトが発売できるわけですからね。これではなかなか内定にはつながりません。

同じことは広告業界でも言えます。
電通といえば、日本で一番大きな広告会社です。電通に入社して、広告コピーを書いたり、テレビCMをつくったりしたいと思う就活生がたくさん集まります。

ところが、テイルズシリーズと同じで電通には、広告をつくれる人材はたくさんいます。やはり、広告がつくりたいだけでは就職できません。

ひとつの業界だけを見ていると、異なる業界同志が混ざり合っていく、今の産業動向が見えなくなってしまいます。ですから私は、いきなり業界研究をし、昔の価値観で企業選びをすることに、ちょっと待って、と言いたいんです。

■チャンスか? ピンチか?
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■チャンスか? ピンチか?

次は古い事例なのですが、業界が滅びたお話をしましょう。
昔、日本にはフィルム業界がありました。
カメラの中に入れて写真を撮る、あのフィルムのことです。

2大メーカーがありまして、ひとつは富士フィルム、もうひとつは「さくらカラー」で有名だった小西六写真工業です。

余談ですが、スクウェア・エニックスの前身、エニックスは1983年に合弁会社、小西六エニックスという会社をつくったことがあります

高価だったカメラが、どんどんと安くなって家庭に普及した。たくさんの人が写真を撮るようになる。フィルム業界は、カメラが売れるほど儲かりました。

皆さんは絶対に知らないと思いますが、ある年代の人ならば「お正月を写そう、フジカラーで写そう!」なんてCMが年末年始になると流れっぱなしだった記憶があるかと思います。

ところがその先は、どうなりましたか?
わかりますよね。時代の変化。
技術の進化は便利や夢を与えてくれますが、残酷でもあります。

(一番まえに座っている学生が「デジカメ」とボソリ)

どうもありがとう。その通りです。デジタルカメラが登場して、ある意味、従来のカメラと同じ道をたどります。技術が進歩する。安くて高性能なデジカメができて、各家庭に普及する。そのうちに携帯電話にカメラ機能がついてしまう。

フィルムの売上はガタ落ちで、2大メーカーは次の一手を打たなくてはいけません。
このままでは、フィルム業界とともに会社は無くなってしまうかもしれない。危機感を持ちました。そこで考えました。自分たちは何ができる会社なのかの本質について、ですね。専門用語でいえば、経営のリソース(資源)を見直しました。

すると、わかってくるんです。なにも、カメラでなくてもフィルムを使う業界は、ほかにもあるではないか、ということが。たとえば、印刷ですね。印刷はフィルムに焼きつけた色を紙に刷りますから、持っている技術を転用することができる。

病院でもフィルムを使っています。レンズも使っています。レントゲン写真のフィルムや胃カメラのレンズをつくることにして、医療の業界に進出することになるんです。

フィルムメーカーは精密なものをつくるのが得意ですから、次にはコピー機やプリンターの部品やCDやハードディスクをつくるようになる。今では、富士フィルムは化粧品や薬品をつくるメーカーにもなりました。「お正月を写そう、フジカラーで写そう!」が、松田聖子と中島みゆきが出演する「コラーゲンパウダー」のCMに変わってしまいました。



*富士フイルムのウェブサイトより
http://fujifilm.jp/

小西六写真工業は、ミノルタという会社と経営統合。今はコニカミノルタという社名になっていますが、2007年にはカメラ・フィルム事業から撤退。もう、「さくらカラー」は売っていません。それでもフィルムの写真にこだわるマニアの方たちからの問い合わせが絶えないからでしょうか。撤退してから4年が過ぎてもコニカミノルタは自社のサイトで、「もうカメラ・フィルム事業はやっていません」とお知らせをつづけています。



*コニカミノルタのウェブサイトより
http://www.konicaminolta.jp/

さきほどはサービス産業の話をしましたが、今度は精密機器産業です。
精密機器産業というのは、なくならないんです。
でも、その一部であるフィルム業界は、時代、技術、社会の変化によって消えてしまうことだってある。産業は不滅です。業界は不滅ではありません。

はてして、冒頭に述べましたオトナたちは、このことをわかって皆さんに「業界研究をしなさい」と言っているのか。私は疑問を感じているんです。

経営の教訓みたいな言葉で「ピンチはチャンスなり」、聞いたことがあるでしょうか?

(複数名の手が挙がる)

あ、かなりの人が知っているようですね。
だったら話しは早い。
カメラ用のフィルムが売れなくなったのはピンチ。
でも、時代の転換点は、次のビジネスを考え、会社をもう一段成長させるチャンスでもあります。

世の中の企業は、ピンチになると倒れてしまう企業と、かえってチャンスにしてしまう企業のふたつに分かれます。

「良い会社」と聞いて、皆さん、それぞれのイメージが湧くかと思います。私が最も重視するのは、今の売上高や給与水準や福利厚生ではなくて、「ピンチをチャンスにしちゃう力」です。

■ゲーム化を求める産業動向
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■ゲーム化を求める産業動向

業界をまたぐ、業界の枠から飛び出している事例は、まだまだありますよ。
具体例を挙げます。
たとえば、大手の不動産会社が「ゲームのようなもの」をつくっています。

その会社は東京の一等地の再開発を得意にしています。
再開発ということは、現在住んでいる人に、立ち退いてもらわなくてはいけません。立ち退いたかわりに、新しくできたビルに入居できる。そういう営みをしているのですね。

立ち退く人。その土地の所有者であれば地権者といいますが、その人たちにとっては貴重な財産にかかわる問題ですよね。

再開発をするとどんな町になるのか。図面で説明するよりも、CGで空間を再現したほうがわかりやすい。それも、ムービーを見るよりも、実際に空間に立って歩いてみたり、視点を変えてみたりすると、一段と説得力が増しますよね。

で、その不動産会社は地権者に説明するために空間を、ゲーム制作用のアンリアルエンジンを使って開発しているんです。不動産会社なのに、「光源はどこがいい?」「この視点移動、もうちょっと早くならないの?」。そんな会話を社内でしています。

最近、日本の株価が下がっているのは皆さん知っていますよね。
もう、株はやらないと考える人が多いようで、個人投資家が離れています。

となると、困るのは証券会社。
証券会社は、株の売買の手数料で収益をあげていますからね。

で、あるインターネット証券会社は新しいお客さんを獲得する新しい手段を考えた。
簡単に言ってしまうと、ブラウザゲームです。

はじめて株取引をする人がとっつきやすいように、ゲームで売買を体験する。
それも、ただの取引のシミュレーションではなく、自分のトレーディングルームを格好良くしていく、ゲーム的な要素が盛り込まれています。「アメーバピグみたいな」というと、イメージが伝わりやすいかな。証券会社なのに「このキャラクター、もう少し目をやさしく描いたほうがいいんじゃない?」。そんなことを社員の方たちが言っています。

私は今から約1年半まえに、こんなことを原稿で書いたんです。
スクリーンに映っていますが、ゲームデザインは「を・にするの時代」から「が・になるの時代」がやってくるでしょう、と。



この予測は外れてはいないようで、不動産会社が土地を持っている人への説明がゲームになる。証券会社が新規のお客さんをつかむ方法がゲームになる。そんな動きがすでに起きています。

■さあ、ゲーム会社に行こう!

なんだか、私は皆さんにゲーム業界に来るな、他業界を探せと言っているみたいですか。
今の話しを聞いて広告会社、不動産会社、証券会社への就職をすすめていると、とらえられたら、私の真意とは反します。

産業動向を見渡せば、業界と業界が混ざり合おうとしています。
ゲーム的な発想を求める企業も増えてきています。

でも、他業種のどの会社がゲームやCGを学んだ皆さんを求めているのか。
その会社を探り当てるのは、雲をつかむようで、非現実的です。

私がお伝えしたいことは、あくまでもゲーム業界の立ち位置を知ってほしい、ということに尽きます。さらっと業界研究をして、いきなり志望企業を決めるのではなく、もちろんあきらめるのでもなく、一歩、立ち止まって、世の中の動きを広い視野で見てほしい。

これから皆さんは、ゲーム業界に入ろうと思って、会社説明会に行くでしょう。
CGを勉強している人は、映像の制作会社に行くでしょう。
そうすると、どこの会社も良いことを言いますよ。
「ウチは健全経営だ」とか、「若い社員でも責任のある仕事ができる」とかね。

でも、会社説明会に行って皆さんが見てくるべきなのは、そういうタテマエではない。さっきの例で言えば、この会社は富士フィルムになれるのか? 「ピンチをチャンスにしちゃう力」があるのか? その判断をしてほしい。かしこまって、陰気くさく会社の人の話を聞くとこはないんです。

これ会社説明会の様子。
スクリーンの写真見て。なんか思わない? 暗いでしょ。
わざとモノクロにして暗くしたのは、オレなんだけど。

(一同・笑い)



上から目線。大いにOK!
会社説明会は、会社が主語で、会社は好きなことを言います。
違う! 主語は皆さんです。皆さんが、会社を判断していいんです。

ゲーム業界は、パブリッシャー(発売元)とデベロッパー(開発会社)があって、コンシューマゲームとソーシャルゲームがある。そんなことを説明して、説明されて、何の意味があるんだろう? 乱暴なことを言うけど、意味ない。

ゲーム会社は、サービス産業、エンタテインメント産業、IT産業、コンテンツ産業‥‥と呼ばれるものの、どれかに属すことになるんだけど、その産業の中で、これからどうしていこうとするのか。

企業の大きい小さいは関係ありません。
業界のせせこましい話をする会社は減点。
あ、この会社は産業動向がわかっているな、と思ったら加点。
皆さんが採点してほしい。
そうやってね、若い人に採点されることで、ゲーム会社が「未来を語れる会社」になってほしいという願いもあるんです。

今日は長い話しにおつきあいいただき、どうもありがとうございました。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式サイト公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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