世界最大のアウトソーシング専門会社、上海のバーチャスに聞く(後編) | GameBusiness.jp

世界最大のアウトソーシング専門会社、上海のバーチャスに聞く(後編)

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世界最大級のアウトソーシング専門スタジオ、バーチャス。社員数は700名を数え、中国人を筆頭に世界10カ国から集結。フランス系企業ですが、現場は英語と中国語が飛び交い、世界規模に拡大したゲーム開発の現状が凝縮されています。
  • 世界最大級のアウトソーシング専門スタジオ、バーチャス。社員数は700名を数え、中国人を筆頭に世界10カ国から集結。フランス系企業ですが、現場は英語と中国語が飛び交い、世界規模に拡大したゲーム開発の現状が凝縮されています。
  • 世界最大級のアウトソーシング専門スタジオ、バーチャス。社員数は700名を数え、中国人を筆頭に世界10カ国から集結。フランス系企業ですが、現場は英語と中国語が飛び交い、世界規模に拡大したゲーム開発の現状が凝縮されています。
世界最大級のアウトソーシング専門スタジオ、バーチャス。社員数は700名を数え、中国人を筆頭に世界10カ国から集結。フランス系企業ですが、現場は英語と中国語が飛び交い、世界規模に拡大したゲーム開発の現状が凝縮されています。

一方、その真逆に位置するのが日本です。文化的均質性が高く、日本語という言語の壁に守られた歴史的経緯から、日本は世界でもユニークな文化発信国に成長しました。しかし、グローバル化の波にのみこまれ、ゲーム業界での立場も揺らぎつつあります。

実はフランスもまた、同じ問題にさらされています。CEOをはじめ、バーチャスのトップはフランス人。にもかかわらず社内の公用語は英語です。フランス人が英語でゲームを作る意味とは何か、フィリップ・アンジェリー氏に伺いました。

―――役職を教えてください。

欧州とアジア地域の担当者として、営業のとりまとめを行っています。日本市場も自分の担当です。

―――バーチャスといえば、家庭用ゲームの大作を専門に、グラフィックアセットの受注を行っている印象が強かったのですが、クライアントロゴを見ると、ZYNGAやNCソフトの名前がありますね。ソーシャルゲームや、韓国企業とも取引があるとは驚きました。

そのあたりは、あまり線引きをしていないのです。デジタルコンテンツであれば、家庭用ゲームも、オンラインゲームも、ソーシャルゲームも、それからCG映画でも、みな同じようなツールが使われていますからね。PSPやPSN向けゲームの共同開発も行っています。

―――今年のE3をどのように捉えましたか? 例年以上に華やかな雰囲気でしたが、「大作」しか見られませんでした。

そうですね。いまゲーム業界は一握りの大作ゲームと、ソーシャルゲームなどに極端に二分化されつつあります。5億円から10億円クラスのローバジェットゲームは、作っても売れないので、作るだけ無駄という感じです。下手をすると20億円クラスでも、そうかもしれません。ヒットを狙うなら50億円から100億円クラスの予算が必要ですし、それですら成功の保証はないのです。

―――日本企業には辛い時代です。

そうした見方があるかもしれませんが、自分は日本企業には、アクティビジョンやEA、UBIソフトといった、欧米の大企業では絶対に作れない、ユニークなゲームを作る力があると信じています。ソーシャルゲームしか作れないと諦めるのではなく、もっと家庭用ゲームにチャレンジして欲しいのです。実際、そうしたゲームを求めるユーザーもいると思います。

―――バーチャスのような企業とうまく協業する、という選択肢もあるかと思います。ただ、そこで問題になるのが言語の壁ですね。

バーチャスでは日本専門の窓口を置いて、日本語での発注に対応しています。ただ、現場では5-6名単位のチームを組んでいて、チームリーダーは英語、スタッフは中国語で作業をしています。つまり日本語での指示が、まず英語に翻訳されてしまうのです。欧米企業と同じように、最初から英語で指示を出していただけると、よりスムーズに作業が進むところはあると思います。

―――日本企業にとっては、そこがボトルネックになりますね。ただ、非ネイティブの人間がどれだけ英語を勉強にしても、ネイティブスピーカー並に英語が話せるようになるわけではありません。

そのとおりですね。

―――つまり、これから「Poor English」が業界の標準語になると考えられます。「Poor English」で日本のディベロッパーが得意とするような、繊細なグラフィックやゲームを作ることができるでしょうか? 

うーん、難しい質問ですね。

―――たとえば、フィリップさんもフランス人で、英語が母国語ではありませんよね。フランス人にとって、英語でゲームを作るというのは、どういう意味を持つのでしょうか?

確かに、その意味では日本人もフランス人も同じ問題を抱えていますね。ただ現実問題として、ゲームやIT業界では、英語が公用語になっています。アジアでも、ある韓国企業では、英語と中国語が話せなければ、一定以上の役職につけないと聞いています。我々としては日本のディベロッパーも、そういう時代になっていることを理解してもらうのを待つだけです。

―――なるほど。

フランスでも古い世代ほど英語アレルギーがあります。しかし、最近では状況が変わってきました。2000年代に入って、政府が大学以上の教育機関で、全学生に1年間の留学を義務づけたんです。自分も留学をしましたが、最初の3ヶ月は英語が分からずに、本当に大変でしたね。でもそれを過ぎると状況が変わりました。そのため最近では、英語でビジネスができる世代が増えています。

―――日本企業にとっての処方箋はありますか? それが見つからなければ、日本企業は日本語でゲームを作り続けるでしょう。それが日本のゲームの強みになっている部分があることも事実です。

ゲーム開発はどんどん国際化しています。日本のディベロッパーでも、海外のパブリッシャーと直接契約を結んだり、我々のようなアジア圏の企業にアセットの発注を行う例が増えています。実際にそうなっているのだから、そこから目をそらしても仕方がないと思うのです。

一つの方法として、社員の外国人率を高めて、英語や西洋のゲーム文化になれてもらう、というやり方はありますね。たとえばグラスホッパー・マニファクチュアさんなどは、そうしたスタイルの企業だと伺っています。

―――ありがとうございました。

短い時間だったが、日本もフランスも言語に対して、同じような問題意識を抱えていることがわかった(フランスは日本より、国家レベルで英語教育が進んでいるようだが)。

実際、2010年にオランダのゲームカンファレンスを取材した際、ドイツのディベロッパーがリクルーティングブースを出展しており、社内の公用語が英語だと聞いて驚いたことがある。ヨーロッパ中でスタッフが集まった結果、ドイツなのに英語でゲームが作られているのだ。

またゲームに限らず、昔は英語とドイツ語とフランス語が会話できなければ、オランダ企業で出世できなかったが、最近は英語とドイツ語だけで良くなったという(地理的にドイツ語は外せないようだ)。ここでもフランス語の地位低下が感じられた。

日本のゲーム業界においても、大作ゲームでは国際分業が課題になっている。そこで重要なのが「poor English」で開発が進められるようにする環境作りだ。

たとえばステージ制作などでは、企画やレベルデザインなどの上流工程は日本側で固めておき、背景のディティールアップを海外企業に発注するなど、作業の切り分けが必要になるだろう。そのためにも、土台となるゲームエンジンの作り込みが必須となりそうだ。
《小野憲史》

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