ニンテンドー3DSの3月、5月、7月・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第12回 | GameBusiness.jp

ニンテンドー3DSの3月、5月、7月・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第12回

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早いもので、当連載も第12回を迎えることができました。
連載開始時から、他メディアが扱わないテーマを、他の筆者が書かない切り口で、執筆してまいりました。半年の節目に、ご愛読いただいた皆さまに感謝申し上げます。

今回はニンテンドー3DSについて語ります。新しいプラットフォームの動静を3月、5月、7月の三段階で注目している、という私見を述べます。

この原稿は業界関係者が読みます。嘘をついてもバレます。だから正直に書きます。

サードパーティの経営者、開発者の方たちは迷っています。
あなたのまわりを見回してみてください。違いますか?

ニンテンドー3DSの良いところはあります。
しかし、不安もあります。
たとえば、ある人は2万5000円は高くはないか? と言います。
技術者は、ニンテンドー3DSは固定シェーダーだからCGの質感を表現しにくいなどと、難しいことを言います。

でも、ニンテンドー3DSです。
ニンテンドーDSの後継機です。世界の任天堂の新製品です。不安などすべて吹き飛ばしてしまうかもしれません。

さらに言うならば、ゲームビジネスに精通しているほど、この業界では何が起きるかわからないことを知っています。

山内溥・任天堂前社長は、しばしばこう言いました。
「娯楽の世界、一寸先は闇」である、と。しかし、この言葉、裏返せば「娯楽の世界、一寸先は光」でもあるのです。

ゲーム業界に属す誰もが、固唾を飲むようにしてニンテンドー3DSの動静を見守っています。

私自身も予想するのが難しいです。
私はかれこれゲーム業界を25年間も見てきたわけですが、そのなかでも最も予想するのが難しいハードと言えるかもしれません。

そこで、3月、5月、7月です。
わからない、難しいと言っていても埒は開かないので、3段階のフェーズに区切ることにしました。

■3月のフェーズ

まずは3月から。
裸眼立体視ができるゲーム機としてのニンテンドー3DSはどうなるか、です。

結論を先に言えば、絶好調のスタートを切るでしょう。
任天堂がテレビCMを、訴えるべきことは裸眼立体視。
それを体感して表現する人は嵐の5人(大野智、櫻井翔、相葉雅紀、二宮和也、松本潤)と割り切ったのは、大正解だと思います。

テレビCMの役割が「たくさんモノを売ること」だとしたら、絶大な効果のあるセリングポイントの選び方、およびキャスティングといえるでしょう。

固定シェーダーとプログラマブルシェーダーの違いを知らなくても、嵐を知っている人は相葉雅紀くんに「絶対興奮しますよ!」と言われたら、ニンテンドー3DSとは興奮する製品なのだ、と思うものです。

長男はもちろん、日頃、ゲームをしない母や妻まで、ニンテンドー3DSが我が家にやってくるのを楽しみにしています。そして、家族そろって「メガネがないのになんで立体に見えるの?」と興味津々となって私に尋ねます。

ニンテンドー3DSは、発売と同時に「すごいハード」とマスコミは大きく取り上げることになるでしょう。万が一、内閣総辞職があったとしても、3月、ニンテンドー3DSのメディアの露出量は相当な量になりそうです。

私はテレビ局、ラジオ局、雑誌、新聞の取材を受けています。取材者の方たちは、やはり裸眼立体視+嵐のCMを見て、ニンテンドー3DS=すごいハードとの認識を持ったようです。すでにネタは仕込まれています。

ユーザーは、どの同時発売ソフトを買ったとしても、ニンテンドー3DSの内蔵ソフトは種類も多く、よくできているので期待を裏切ることはないでしょう。

ニンテンドー3DSの内蔵ソフト群はミニゲームのようですが、「ニンテンドー3DSで何ができるか」のコンセプトをうまく提示しています。夢があります。クリエイターの創造性を刺激します。

『ニンテンドー3DSカメラ』『顔シューティング』『すれちがいMii広場』『思い出きろく帳』『ニンテンドー3DSサウンド』『Miiスタジオ』など。特に注目しているのは『ARゲームズ』です。カードから立体像が浮かび上がる映像はインパクトがあります。

『ARゲームズ』は、ニンテンドー3DS本体がARカードの印刷された情報を読み込んで遊ぶものです。コンピュータゲーム+カードゲームの融合、パッと思いつくのが『ポケットモンスター』とポケモンカードゲームなのですが、誰もが新しい遊びの登場を予見するでしょう。

個人的な好みを述べさせていただくと、発売日が決定しているタイトルのなかでは、3月17日に発売される『スティールダイバー』を早く遊びたいです。

裸眼立体視するニンテンドー3DSは、本体を動かすと像がぼやけて見えます。でも、ニンテンドー3DSにはWiiリモコンと同じようなモーションセンサー、ジャイロセンサーがついています。「動かないで見る」と「動かして遊ぶ」。ともすれば、相反する機能が両方ついているのですね。これを矛盾することなく、両機能をうまく使いこなしたのが『スティールダイバー』です。

ニンテンドー3DSの画面を潜水艦の潜望鏡に見立てて左右に動かして魚雷を撃つゲームです。まるで潜水艦の乗組員になったかのようなミミクリ(ごっこ遊びのこと/フランスの社会学者、ロジェ・カイヨワの分類による)を感じる操作方法になっています。

まず注目すべきは3月。
3月はニンテンドー3DS、ゲーム機としての評価がされる時です。
この時点では高評価を得るだろうというのが私の予測です。

同時に注目したいのが、「すれ違い通信」です。
ニンテンドー3DSは、使用しているソフトに関係なく、本体がスリープモードであれば自動的に他のニンテンドー3DSとデータを交換します。発売日以降、ニンテンドー3DSを持ち歩く人たちが、どんなデータを交換するのか。そしてどんな反応が起きるのか。微笑みか、驚きか、期待はずれか。その反応によっても、ニンテンドー3DSの評価は変わってくるでしょう。

■5月のフェーズ
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■5月のフェーズ

次のフェーズに入るのは5月です。かつてこの記事でも書いたように、ニンテンドー3DSの発表時のキャッチフレーズは「メガネがなくても3D」ではないことを、改めて確認しておきます。ニンテンドー3DSが目指す道は「持ち歩く、響き合う、毎日が新しい」です。裸眼立体視+嵐の効果は、マリオがスターを取った時の無敵状態のようなもので、いずれ効力が切れるでしょう。

5月はニンテンドー3DSの第二の発売日と私は位置づけることにいたしました。

なぜならば、ニンテンドー3DSは5月にバーションアップされることが公表されています。このページでは、「インターネットブラウザーは、5月末頃に実施予定の本体更新後にご利用になれます」と告知されています。この本体更新とインターネットブラウザーが一体となっているところが、なにやら意味ありげです。裸眼立体視の話題が静まったころ、ニンテンドー3DSは本格的なインターネット接続端末になるのではないでしょうか。

この時点で何が起きるかは、まだ明らかになっていません。ニンテンドー3DSもニンテンドーDSiで行われた「うごメモはてな」のような、Webサービスと連携をするのでしょうか。同じはてなのサービスならば、自分の身の回りにある“モノ”のバーコードをスキャンすることで手軽に投稿、コレクションができる「はてなモノリス」のほうがニンテンドー3DSにふさわしいでしょうか。

なにも「はてな」にこだわる必要はないです。その他のインターネット上で行われているサービスとニンテンドー3DSはどう結びつくのか? 『ニンテンドー3DSカメラ』で撮影した映像をFlickr等のフォトアルバムで公開するなど、用途はいろいろと考えられます。

もっと大がかりなことを言えば、ニンテンドー3DSがmixiを利用する端末になってもおかしくありません。

もっともっと大がかりなことを言えば、任天堂が独自にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめたとしても、驚きません。

任天堂がゲーム機やゲームソフトではなく、自前のSNSをつくったらどんなものができるのか、私は想像しただけで楽しくなります。しかもそれは、裸眼立体視できるSNS! 名前はSNSにNintendoのNをつけてSNNS、NSNS、SNSN?

ニンテンドー3DSの特長のひとつである、「いつの間に通信」を実行しやすくするために無線LANアクセスポイントをどこまで増やしていくのか。「いつの間に通信」以外にも、ニンテンドー3DSはインターネット接続端末としての機能を持つのか。注目ポイントです。

ところで、3月ではゲーム機として、5月はインターネット接続端末としてのニンテンドー3DSの話をしましたが、ちょっと気になるのが書店流通です。

現在、電子書籍の普及が進むさなかで、書店経営者はかつてないほどの危機感を持っています。業態の変更が迫られています。

そこに新しい商材として任天堂製品がやってくることは、望むところでしょう。書店でニンテンドー3DSとソフトを売る。併設しているカフェなどがあれば、そこを無線LANアクセスポイントにする。これは書店にとっても任天堂にとってもメリットのある話です。もちろんユーザーにとっても。

本社を横浜市に置く大型書店に、株式会社有隣堂があります。
私の仕事場の近くにある、有隣堂アトレ恵比寿店は行きつけの書店です。同店の店員さんを取材したところ、ニンテンドー3DSとその対応ソフトを、本の問屋(取次)を介さずに仕入れているそうです。

私が講演をした学校にて、ある学生さんから聞きました。たまたま有隣堂でアルバイトをしている学生さんがいました。「みんな、ニンテンドー3DSの予約開始の時に量販店に行列ができたり、アマゾンのサーバーがダウンしたりで大騒ぎしてましたけど、有隣堂では行列もなく予約を受けつけることができました」と言っていました。

■7月のフェーズ
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■7月のフェーズ

次は7月です。
2011年7月といえば、地上アナログ放送が停波。地上デジタル放送に完全移行する日がやってきます。

ハイ・ディフィニッションTVの家庭への普及率がグッと高まった段階で、任天堂のWiiはどうなるのでしょうか。

Wii2と呼ばれるものが出るのか。Wiiの名がつかない、まったく新しい新機種が出るのか。現行のWiiの周辺機器的なHD画像へのコンバーターのようなものが出るのか。それとも何も出ないのか。これまた、大いに注目すべきポイントです。

なぜか。
もし、Wiiが程度の差があるにしても様変りしたら、ニンテンドー3DSが据え置き機=仮にWii2と呼びましょう。Wii2のコントローラになる可能性があるのです。

画面にはプレイヤーの皆が見えるオープンなモニター。
手元には自分にしか見えないニンテンドー3DSのモニター。
非常にわかりやすい例をいえば、4人で麻雀ができるのです。
据え置き機で遊ぶのではない、携帯ゲーム機だけで遊ぶのではない。
新しいゲームシステムを持った『モンスターハンター』シリーズが出てもおかしくないのです。

ニンテンドー3DSはモーションセンサー、ジャイロセンサーがついていますから、Wii特有のジャスチャーによる入力装置にもなるのです。もちろんその時には、ストラップとニンテンドー3DSリモコンジャケットをつけることになるのでしょう。

■まとめ

ニンテンドー3DSは昨年9月に本体仕様が発表され、対応ソフトのラインナップも次々と発表されています。しかし、ニンテンドー3DSは発売されてもなお、ベールに包まれた部分が多きマシンです。ニンテンドー3DSは謎マシン。

それをウォッチする私たちは、今までのゲーム機のように現行の本体仕様・対応ソフト・価格を見るだけでは、判断が曇ったものになるでしょう。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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