「iPad」がAndroidに敗れ去る5つの理由(後編)・・・・・・北村勝利「モバイルゲーム屋が見るビジネスの未来」第9回 | GameBusiness.jp

「iPad」がAndroidに敗れ去る5つの理由(後編)・・・・・・北村勝利「モバイルゲーム屋が見るビジネスの未来」第9回

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「iPad」は素晴らしい。しかし悪夢は繰り返す!?

「Appleは携帯電話を再発明する」とはAppleのCEOスティーブ・ジョブズ氏が初代iPhoneの発表時に語った言葉。

「iPad」を使ってみて「Appleはパソコンも再発明する」っていう以前のトークをもじったフレーズが真っ先に思いついた次第。

「iPad」は従来のパソコンではない、「新しい用途」の市場を創出したといって良い。それもテクノロジーの進化なしに。

「iPad」は素晴らしい。という絶賛の声が世界中から聞こえます。

ただし・・・「iPad」は「Android」に敗れ去るのではないか・・・。

■理由その1 「羨望」と「嫉妬」と「商売人の性」

素晴しいがゆえに、誰もがその恩恵にあずかりたいと願うのは世の常、人の常、商売人の性。

「Appleよ市場を作ってくれて有難う!」

「さてスタートの鐘が鳴ったぜ!」

とばかりに世界中のデバイスメーカーやサードパーティーが一斉に動き出した音が聞こえます。Appleの悪夢は繰り返すと思う所以がここにあります。

順を追って解説すると今から26年前、1984年の1月24日に初代マッキントッシュが米国にて発売。価格は2,495$。当時の円が200円程度として約50万円強。

安くはないのでスグに売れたかどうかはわかりせんが、驚きの声と賞賛を持って市場に迎えられた事は想像に難くありません。

ただAppleの絶対君主であるジョブズの「鎖国政策」によってApple的なパソコン(OS)は他社にはライセンスされず、Apple以外のメーカーは「新しい発明」と「儲かりそうな市場」を羨ましく、ただ眺めるだけの状態に。

そこにGUIというAppleもどき手法が登場。

この「もどき手法」はWindows95というOSに姿を変えて、世界中のメーカーに対して「Apple的なパソコン」が提供できる機会を与え、世界中のメーカーの英知による、多用途・カスタマイズ・そして量産化による圧倒的なコストパフォーマンスにより、業務用市場(会社での利用)が動き、その圧倒的な数により業界のデファクトスタンダードが確定し、市場は「Apple的なパソコン」と当初は言われたウィンドウズパソコンが占めるようになった歴史は周知の通り。

■理由その2 生産量とコスト

実は私、某大手家電メーカーの子会社社長の経験があり、少しはデバイス生産の事が理解できるのですが、デバイス生産、というよりも組み立ては部材調達のボリュームが仕入れコストと販売価格を左右する世界でして、生産スケールが大きくなればなる程調達コストの合理化が測れるシンプルな世界。

例えば、コストのポイントになるタッチ部分の液晶に至っては、現在すでに大きな市場となっているカーナビの主流モデルである7インチタイプを採用し、androidOSで生産するだけで劇的な価格が実現します。

世界中の部材メーカーやPCメーカーの人たちは「iPad」を最初に手にしたとき、「ウチなら1万円で出来る!」とか「あのクライアントに持ち込んで10万ロットで作れば5千円で出来る!」とか瞬時に計算した姿は容易に想像できます。

■理由その3 アーリーアダプターとボリュームゾーン

発売されたばかりの「iPad」に騒いでいる人たちは、Apple信者の方々とマスコミ。
行列に並んで苦心して手に入れる事こそ信者の証。

私も今回は「iPad」の為に1時間以上並びましたし、iPhoneの時は在庫を求めて名古屋まで買いに行く信者っぷりを発揮して喜びに浸った人種です。

ブランド信者=いわゆるマーケティングで言う所の「新しいもの好き」のアーリーアダプターですね。
世界中に信者が居るんですから初動は大きく動きます。しかし、時間が経過すると共に類似商品との比較と価格競争に巻き込まれるのはいつものパターン。

「iPad」よりも少し重い,少し小さい、少し厚い、少し遅い…でも価格は「iPad」の5分の一・・・
みたいな「なんちゃってiPad」が出てくるのに半年も掛からないでしょう。

実はビジネス的には「なんちゃって」で十分なんです。市場シェアを決定つけるこれからのボリュームゾーンは「iPad」を知らない人たちですから比較のしようもありません。

あるのはApple信者からのブーイングだけ(笑

ちなみに「iPad」の販売予測は2年後の2012年で800万台と大きな成長が予測されてますが、今年(2010年度)のパソコン出荷台数といえば3億4400万台。この数字はボリュームゾーンの可能性の大きさを物語ります。

参照:米アナリストの「iPad」の販売予測
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20408029,00.htm

参照:世界のPC生産台数
http://202.214.174.229/article/column/20100531/228842/


■理由その4 様々な制約

裸が見える、著作権処理がグレーetc…昨年,アップルストアにて大量のアプリが削除された事件は記憶に新しいところ。最近ではウィジェット的なアプリも排除の対象になっているとか(参照)。

また、FLASHをとことん嫌う姿勢や、広告まで直接管理するスキームなどスティーブンジョブズ・ワールドはサードパーティーの介在を極端に嫌っているようにも見えます。

以下に示すとおり、アプリ以外のレイヤーは全てAppleで賄ってしまっている状況はAndroidと比較する事で制約の多さが浮き彫りになります。

           iPad    他のタブレットPC
・アプリ      制約有り         基本自由
・広告       iAd            基本自由
・チャネル     AppSTORE       基本自由
・ブラウザ     Safari          基本自由
・OS        iPhone OS        android*ライセンスフリー
・ハード      Apple           基本自由

加えて、アプリ開発においてもメールや電話帳などのネイティブ機能は触らせない、などandroidと比較した場合においてもアプリ開発者の創造性を拒む数々の制約が存在します。

この完全純血主義にウィークポイントがあるような気がするのは私だけではないはず。

■理由その5 サードパーティー

昨年のiPhoneフィーバーで語られたのは小規模事業者でも世界に向かってビジネスができる!というフレーズでしたが、個人や小規模事業者のビジネス的成功=iPhoneドリームは聞こえてきません。

話題になったアプリは多くありましたが・・・常に有料アプリの上位にあるのは大手のコンソール移植ゲームや世界的に流通するアプリが目に付きます。

スマートフォン全般に言えることですが、無料アプリが跋扈する中において有料アプリで稼ぐことはかなり難しく、この状況を打破するためには売り方そのもの、マネタイズ方法含め皆で考え試行錯誤するような土壌、つまりインターネット草創期の様な自由度の高さが必要だと思っています。

といった意味においても自由度が高いandroidには世界中のあらゆる英知が集約することによる「新発見」の可能性が秘めているといえます。

この事はiPhoneに限らずiPadにおいても同様であると考えます。

またもう1つのマネタイズとして存在する法人市場。B2Bビジネスにおいてもandroidベースの方がクライアントサイドの実情に合わせやすいことから、ハードウェアのみならずソフトウェア系のサードパーティーの活躍の土壌もandroid陣営にあるといえます。FLASHも使えますしね。

ちなみに「iPad」に対抗するメーカーの動向は以下の通り。本年1月に「iPad」が発表され、4月に米国発売。まだ現物が出て2ヶ月足らずでここまでチェックされて模倣されるマシンも珍しい・・・
想像よりも早いですね。

◇ライバルたちの動き(本文は下部に続いています) 参照
・エイサー、「Android」搭載タブレットを披露
・HP、「WebOS」搭載タブレットを計画中
・起動9秒のウェブブラウジング用タブレット「joojoo」、日本でも販売開始
・インテル、タブレットのプロトタイプを披露
・ASUS、COMPUTEXで「Eee Pad」を発表か--台湾報道
・Verizon Wireless、グーグル製ソフトウェアを搭載したタブレットを計画
・デル、「Streak」より画面の大きい第2のタブレットを開発中か
・ソニー、2010年中に「iPad」対抗の製品を発表へ
・HP、「Slate」のデモ動画2本を公開
・「iPad」対抗製品が売れるには--各社の差別化要素を考える
・「iPad」に対するMSの心中やいかに--タブレットPCの10年を振り返る
・タブレット型端末の歩み--「Newton」から最新スレートまで

こんな理由で今回も「iPad」をAndroidベースの「なんちゃってiPad」が自由度とコストパフォーマンスを武器に市場を席捲する所以です。

この事は「iPad」のみならず「iPhone」でも同様のメカニズムにより最後にはandroid搭載モバイルフォンに大きくシェアを譲ることになるというのが私の予測です。

ただ、ここからが面白い所!

この事を誰よりもわかっているのがApple。

新しい技術も使わず、パテントでも守れないデバイスが、コピー商品と価格競争に真っ先に巻きこまれる状況は火を見るよりも明らかですから。

だからこそAppleは「iPad」や「iPhone」でなければならない市場、すなわちブランド力が通じる巨大市場を確立しなければならないのです。

そのターゲットが教育分野の法人・業務用市場だと思っています。

そう考えれば、Appleによるモバイル広告への参入や、アップルストアでの違法性や性描写に抵触するアプリの突然の締め付けは、健全なコンテンツ(アプリ)とウェブサービスを管理・育成する為の必然の行動であったと思えますし、「ポルノを見たければAndroidを買え」といったスティーブ・ジョブズの過激な発言は絶好のセールストークであったのでは?と思えるのです。

あ、そういえばマイクロソフトも「Windows Embedded Compact 7」という製品名でタブレット用OSを出しましたね。ウィンドウズOSとの連動性の高さにより業務用ニーズは高いといえます。

大局的には、垂直に統合管理され、健全なコンテンツが揃う「iPad」と「iPhone」のApple陣営。そして何でも有りのandroid陣営、そして手堅いウィンドウズ連動のMS陣営。という勢力図になっていくのでしょうか。ポイントは法人・業務用市場の奪い合いに有るような気がします。

望むべくは、android端末においては日本のお家芸といわれた、小さいもの、薄いもの、コンパクト化の技術力を生かしてSONY、PANASONIC、富士通、東芝、日立、三菱、SHARP、SANYO、NECといった和製メーカーの活躍で日本を元気にしてもらいたい所です。

ってな感じで終わります。

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ちなみにタブレットではないのであくまでも参考材料ですが、先行するスマートフォンの市場でのOSシェアとモバイルフォンのメーカーシェアのデータです。

iPhoneOSのスマートフォンシェアは15%程度。またandroidの成長率が群を抜いています。

<OS別スマートフォンのマーケットシェア>

加えてモバイルフォン製造メーカーシェアは3%未満の状況です。タブレットPCとの直接比較にはなりませんが参考まで。

<携帯電話会社別マーケットシェア>

参照:http://arstechnica.com/gadgets/news/2010/05/mobile-market-up-smartphones-up-iphone-and-android-way-up-1.ars
《北村勝利》

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