
第1回の東京ゲームショウが東京ビッグサイトで開催された1996年。この年はアニメ「名探偵コナン」の放送がスタートし、アトランタオリンピックが開催されました。さらに映画「ミッション:インポッシブル」の第1作目や、「インデペンデンス・デイ」などが公開されました。
あれから30年。コロナ禍を乗り越えた東京ゲームショウはついに30年の節目を迎えました。今回の基調講演では「東京ゲームショウ30年の軌跡と、2056年に向けた提言」をテーマに東京ゲームショウの過去・現在・未来が語られました。
登壇したのは、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長でカプコン代表取締役社長の辻󠄀本春弘氏、そしてKADOKAWA Game Linkage/ファミ通グループ代表の林克彦氏です。


本講演は前半と後半にトークテーマを分け、前半となる第1部では30年の歩みを、後半となる第2部では次の30年へ向けての提言がなされました。
◆30年の歩みを懐かしのトピックで振り返る第1部

記念すべき第1回の東京ゲームショウが開催されたのは1996年のこと。まだ8月22日から24日までの3日間開催の時代です。場所は竣工間もない東京ビッグサイトの東1ホールと2ホール。その後、1997年に幕張メッセへ場所を移し、2007年からは4日開催に拡大しました。
30年間、すべての開催に参加してきた辻本氏が思い出深いと語るのは、2020年から2021年にかけて実施されたオンライン開催とのこと。当時はコロナ禍によって人との接触が避けられ、とくに人が集まるイベントは自粛を余儀なくされる状況下にありました。
しかしCESAの理事としてイベント委員長を務めていた辻本氏は、沈みがちだった世間を「なんとかゲームで明るくしたい」と思い、オンライン開催をほかの理事たちに訴えることに。さまざまなジャンルのイベントが次々と中止される中、手探りの状態で、2年間のオンライン開催が実施されました。


1996年当時は各メーカーが一堂に会するような大型ゲームイベントが国内にはなく、発足したばかりのCESAが主催となり東京ゲームショウを立ち上げました。その後、出展社数は右肩上がりで増加し、2025年には過去最高の1136社に。近年は海外メーカーがその半数を占め、海外メーカーも見逃せない存在となっています。
E3に匹敵する世界一のゲームイベントにするべく動き始めた東京ゲームショウでしたが、当初はいきなり頂点をめざすのではなく、まずはアジア最大のゲームイベントになることをめざしたと言います。それが今や、成長著しいアジア圏のゲームメーカーだけでなく、欧米のメーカーがアジアとの接点を得るなどの理由で参加するまでに巨大になりました。こちらは海外出展社が出展社の半数を占める勢いでの増加傾向で見ることができます。



また2017年は特設会場で「e-SportsX(クロス)ステージ」を実施し、早い段階からのe-Sports盛り上げに寄与してきました。それ以前からもPC主体で大会を企画してはいましたが、日増しに注目度が上がるe-Sportsを盛り上げるためにはお客さんにしっかりアピールしていく必要があり、ソニー・インタラクティブエンタテインメントや日本サムスンに協力を仰いで特設ステージを設定したそうです。

このような取り組みの結果、2018年には来場者数が過去最高の29万8690人を記録するほど大盛況となりました。しかし喜んでばかりはいられません。来場者が増加したことで混雑が深刻化し、一時は危険な状況にまで発展してしまったと言います。
そこで近年では、混雑が見込まれるブースを一か所に集めるのではなく、会場全体にバランスよく分散させることで緩和を狙うというもの。
2026年に初の5日開催になったのは、「土日だけでは行けない」という声に応えると同時に混雑緩和の狙いもありました。混雑に会場レイアウトだけで対応するには限界があり、ならば一般日を増やすことで集客を分散させようと、5日開催に踏み切ったのです。

◆日本ゲーム業界の未来に備える「次の30年に向けた提言」
第2部では、次の30年に向けた論点として以下の3つが掲げられました。
日本産ゲームが世界で勝負するためにCESAができることは?
人材育成のためにCESAができることは?
世界が日本ゲーム市場に注目する理由と、TGSの未来について
日本産ゲームが世界で勝負するためにCESAができることは?
まずは「日本産ゲームが世界で勝負するためにCESAができることは?」についてが語られます。
ゲーム業界は市場として増加傾向にあり、海外の売上でもしっかりと投資の効果が表れています。この勢いを衰えさせないためにも投資が必要ということで、CESAは以前より、国との調整の中で、官民で投資を増やすことが重要だと認識を一致させてきました。
その必要性を国に説明するうえで活用されたのが、CESAによるゲーム産業レポートでした。CESAのゲーム産業レポートは、会員のアンケートをもとにした、ゲーム業界の“生の声”が反映されたものです。調査会社に依頼したものではなくCESA自身が現場の声を反映し、かつ毎年データが更新されていることもあり、日本のゲーム産業がいかに成長しているかを示すバロメーターとなっています。そのような資料だからこそ、国も評価していると辻本氏は語ります。





また「SENSE OF WONDER NIGHT」のようなコンテスト企画や、東京ゲームショウでのインディゲームエリアの設置など、インディゲームの支援体制も新たな風を呼び込むという点で重視されています。こちらも投資とあわせて国に支援を求めた点であり、続く課題点「人材育成のためにCESAができることは?」にも通じる部分となっていました。
人材育成のためにCESAができることは?

現在、ゲーム業界ではAIの活用を促進する一方で、人材確保と育成にも力を入れています。そのために若手クリエイターを発掘・育成するための伴走型支援プロジェクトを展開しているのですが、ただゲーム作りのプロを育成するのではなく、ビジネスの観点を持ったクリエイターもしっかり育てていくと言います。
そして文化庁との二人三脚として実施しているのは、大学や専門学校でおこなわれている、「いま必要とされるスキル」などスキルセットに注目した人材育成です。
一方で、大学などではなく小中学校の授業に有名クリエイターを派遣する試みも2025年末からスタートしました。こちらは「好きな分野があるなら、幼少期から学ぶことでエキスパートを育成する」という考え方で、「ゲームメーカーに就職するには、まずは大学に入る」などの固定概念から脱却するものです。
たとえばカプコンでは大卒を採用して育成するのではなく、「ゲーム作りが好きで、高校生のころから作っていました」という即戦力を採用する傾向が強まっています。その根底にあるのは「好きなことを伸ばす」という理念。このようにCESAでは人材育成にも力を入れてきました。




世界が日本ゲーム市場に注目する理由と、TGSの未来について
最後は、3つめの課題である「世界が日本ゲーム市場に注目する理由と、TGSの未来について」。
ここではまず、任天堂をはじめとする日本企業が家庭用ゲーム産業の歴史で大きな役割を果たし、現在も世界で強い存在感を持っていると指摘しました。そもそも日本のコンテンツはマンガ・アニメ・ゲームが密接に関係しあい、世界でも戦えるコンテンツとして認知されています。
また日本ユーザーの評価力も見逃せず、日本で評価されればその分ブランド力もアップするということ。これが東京ゲームショウの存在感が高まることにつながります。同時に、東京ゲームショウは商談の場の側面も非常に強く、海外メーカーのビジネスチャンスにつなげられれば、よりそのポジションを高められると述べます。そういった意味でも協会の重要性は高いと辻本氏は語ります。

以上のような観点で語られた「次の30年に向けた提言」。最後に辻本氏は東京ゲームショウを作り上げた先人に感謝を述べるとともに、コンテンツ産業の重要性、なかでもゲーム産業が未来を支えるものになれるよう、会場に応援を求めて基調講演を終えました。







