
NVIDIAは、台湾・Computex 2025にて新型SoC(非常に端的に言うなら、CPUやGPUが全部セットになったもの)「RTX Spark」を正式発表しました。本稿では、同社のメディアブリーフィングにて伝えられた内容なども踏まえつつ、ゲーマー視点を中心に、同チップの特徴をお伝えします。
エージェント時代を見据えた"スーパーチップ"――RTX Sparkとは何か
RTX Sparkは、NVIDIAが「これまでに作られた中で最も効率的なチップ」と銘打つ、Armアーキテクチャの新型SoCです。3nmプロセスで製造され、6,144基のCUDAコアを備えるBlackwell世代の大規模GPUと、20コアのGrace CPUという2つのチップを1つのSoC上に融合させた構成が最大の特徴です。メモリはユニファイドメモリ構成で最大128GBだとしています。
純粋なゲーミング性能としては「RTX 5070ラップトップGPUと同等クラス」にとどまるものの(もちろん既存のDLSS 4.5テクノロジーにフル対応していますので、対応タイトルでは大幅なfps向上を見込めます)、消費電力は大幅に低減され、さらに近年NVIDIAが力を入れるAI用途の処理能力に関しては、FP4精度で1ペタフロップにも達します。
担当者が「RTX Sparkは単なる高性能チップではなく、PCがAIエージェントになる時代のために設計されたチップ」と強調するRTX Spark。ゲーミング用途ではArmアーキテクチャであるところがネックとも取れますが、ここについてもNVIDIAは大きな施策を打っているようです。
Windows on Armでのゲーム対応状況
NVIDIAは各ゲームデベロッパーと緊密に連携し、以下の人気タイトルのRTX Spark/Windows on Arm対応を進めていると明かしました。
『フォートナイト』
『VALORANT』
『リーグ・オブ・レジェンド』
『PUBG』
その他多数(今後数カ月で追加発表予定)
オンラインゲームをエミュレーションする際の大きな課題となるアンチチートについても、Easy Anti-Cheat、BattlEye、Denuvoなど主要アンチチートのネイティブArm対応をデベロッパーと協力して進めているとのことです。
さらに、ネイティブ対応していないArmアプリについては、マイクロソフトとの長年の協力によりWindows on Armに搭載された「Prism」Intel/AMDエミュレーターの改良を続けており、AVX2サポートや新たなパフォーマンス最適化も追加済みとのこと。ブリーフィングでは「Prismを通じて、ほぼすべてのゲームがRTX Spark上で動作すると見込んでいる」との見解も示されました。
最薄14mm・約1.4kgからのプレミアムラップトップ――さらに小型デスクトップも
そうなると気になるのは実際の製品ですが、2026年秋に、RTX Sparkを搭載するラップトップの初期ラインナップとして、ASUS、Dell、HP、Lenovo、マイクロソフト、MSIから製品がリリースされることが発表されました。いずれも厚さ14mmから、重量約1.4kg(3ポンド)から、そしてバッテリーも終日駆動するとして、RTX Sparkの効率の良さを最大限に生かした、携帯性や美しさと性能を両立させた機種となる見込みです。
価格面では「プレミアムラップトップ」クラスになるとのことです。また、RTX Spark搭載の超小型デスクトップ機の開発も並行して進行しているようで、Dell、HP、Lenovo、Acer、ASUS、MSI、Gigabyteらからリリースされる予定です。
DLSS 4.5 レイ再構成が大幅進化
今回のブリーフィングでは、RTX Spark以外のトピックもありました。ゲーマーにとっては同ブリーフィングにて最大のトピックでもあったそれは、DLSS 4.5 Ray Reconstruction(レイ再構成)の第2世代の発表です。
DLSS 4.5では既にSuper Resolution(超解像)に第2世代トランスフォーマーモデルが導入されていましたが、レイ再構成はアップデートから取り残されていました。今回発表された新モデルでは、以下の改善が盛り込まれます。
より効率的なデノイザー:新アーキテクチャにより、35%多い演算能力と20%多いパラメータを処理しながら、従来モデルと同等のパフォーマンスを維持
空間認識の深化:ゲームエンジンのピクセルサンプリングやモーションデータをより知的に活用
開発者向けの細やかな制御:テンポラル蓄積の精密なチューニングが可能に
ブリーフィングでは具体的なゲーム映像も披露されました。
『Alan Wake 2』:壁一面の旧型テレビが発するホワイトノイズや静的なグロー効果が、従来はぼやけて意図した演出が失われていたところ、新レイ再構成ではちらつくノイズや照明がより正確に再現
『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』:墓内の砂が従来は平坦なテクスチャに見えていたのに対し、光が砂粒一つひとつに当たる質感豊かな描写を実現
『プラグマタ』:レーザーの起動時に照明効果が音と同期し、消灯時のゴースティングも解消。ライティングの応答性と正確性の両方が向上
DLSS 4.5レイ再構成は2026年8月にRTX Spark向けおよび全RTX GPU向けにリリース予定です。
ゲーム以外の――AIエージェント、コンテンツ制作、開発者向け機能
以降は基本的にはゲーム以外の話題となりますが、NVIDIAはマイクロソフトと提携し、Windows上でオンデバイスAIエージェントを安全に動作させるプラットフォームを構築中です。新たなWindowsセキュリティプリミティブとNVIDIA OpenShellランタイムにより、エージェントの動作範囲やアクセス権限をユーザーが完全にコントロールできます。
ローカルでのAIエージェント実行には、データのプライバシー保護、高速な大容量データアクセス、トークン制約のない無制限の利用といったメリットがあります。RTX Sparkはその用途に適しているとのことで、クリエイティブエージェント(Photoshop内で自然言語から複雑なAIワークフローを構築)、デベロッパーエージェント(GitHubのバグ監視・修正・QAを夜間に自動実行)、ゲーミングエージェント(モニター設定の最適化、配信設定の自動切り替え)などの実用例も紹介されました。
ゲーマーにとってはゲーミングエージェントが役に立ちそうなところかもしれません。
ほかにも、AdobeがPremiere ProとPhotoshopのエンジンをRTX Spark向けに再設計し、MCP対応でAIエージェントからの自然言語操作が可能になるとしたほか、2025年秋にはRTX Videoにフレーム生成機能が追加され、Blender 5.3にもDLSS Ray Reconstruction対応が行われるとしました。







