ゲーム開発のプロジェクトマネージャーのお仕事は、 “生姜焼き”から学べる? プロジェクトを円滑に進める方法論【CEDEC2021】 | GameBusiness.jp

ゲーム開発のプロジェクトマネージャーのお仕事は、 “生姜焼き”から学べる? プロジェクトを円滑に進める方法論【CEDEC2021】

現在のゲーム開発プロジェクトを円滑に進めるために、重要なポジションとなるプロジェクトマネージャー。本セッションでは、そんなポジションの内容を「生姜焼き」作りにたとえて解説してみています。

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ゲーム開発のプロジェクトマネージャーのお仕事は、 “生姜焼き”から学べる? プロジェクトを円滑に進める方法論【CEDEC2021】
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国内最大のゲームカンファレンス「CEDEC2021」が8月24日から26日にかけて開催され、「生姜焼きから学ぶゲームのプロマネテクニック」のセッションが公開されました。

なにやらギャグのようなセッション名ですが、本セッションでは「ゲームのプロジェクトマネージャー(以下、PM)とはどのようなポジションで、何をする仕事か」を語る、いたって真面目なものです。

本セッションではOrange ButterflyのCEOを務める中山貴伯氏が登壇。PMとしてのスケジュールの読み方や、プロジェクト運営に役立つヒントが語られました。

PMとはどんな仕事なのか

中山氏は「ステイホームな時節、生姜焼き情報をちょっと挟んで自炊も楽しくなるようなお得な内容を目指しています」と前置きしながら、PMがどんな仕事をするかを紹介。

まずPMとは、主にプロデューサーとディレクター、制作の間に立ったポジションであり、主な仕事は制作が円滑にプロジェクトを進めていけるよう、サポートしていくものだと説明しました。

簡単にいえばふたつの仕事をやる傾向にある、と中山氏は解説。ひとつは「部活のマネージャー的なお仕事」とのことで、主に人事の書類の用意や発注、契約といった庶務の仕事があります。

もうひとつは「チームが設定したゴールに向かって進めるようにする、マネジメントのお仕事」であり、チームの情報共有や制作進行などなど、日々、生まれる問題を解決していく役割とのことです。

こうしたPMというポジションが台頭してきたのは、ここ5、6年のあいだだと説明。もともとWeb系のソーシャルゲームでPMのポジションは一般的であり、欧米のゲーム開発の現場ではかなり前から取り入れられたものだそうです。

これまでPMが担当していた業務は、各部門のリーダーやディレクターが兼ねていたそう。そうした歴史的経緯があるため、PMといっても会社によって業態が違っている職種でもあると指摘。とはいえ、本セッションにおいてはPMという職種のおおよその共通する仕事をまとめていくとのことです。

まさかの「生姜焼き作り」のプロセスから、PMの仕事を考える

ここから中山氏は本格的にPMの業務の基本となる、WBS(Work Breakdown Structure、作業を分解した構成図の意味)策定をメインに解説……するところなのですが、ゲームではなく本格的に生姜焼き作りへたとえて説明していきます

さて、生姜焼きを作るにはどういう流れが必要でしょうか。どんな味の生姜焼きを作りたくて、どういう風に味付けして、実際に調理するときにはどういう準備が必要で……と、ひとつひとつの流れが存在することはわかるでしょう。

中山氏は、作りたい流れのひとつひとつは「マイルストーン」という制作進行の区切りであると説明します。いわば、ゲーム開発において企画とは「作りたい生姜焼き」を決めるという区切りであり、プロトタイプ制作は「味付け」を決める区切り、などなど作業工程にははっきりとマイルストーンを設定していくことがポイントになるとのことです。

生姜焼きのたとえに固執する中山氏は、「生姜焼きとゲーム開発との違いは、大人数で作るか少人数で作るか」と指摘し「そもそもゲームは見たこともない、楽しそうなものを求められる違いがある」と続けます。

生姜焼きは毎回「見たこともない、おいしそうなものを求められる」ことはないはずなので、このたとえはさすがに破綻をきたしているではないかと思わなくもありませんが、ともかく作業工程におけるマイルストーンを簡潔にイメージできるように解説は進みます。

ゲーム開発のマイルストーンにおける、各フェイズでさまざまな作業工程があると説明。基本的に計画、検証、制作、テストの4つがあると覚えてほしいと中山氏は説明し、次の説明へ進めました。

中山氏は本セッションの「マイルストーン」として
さまざまな生姜焼きを置いていく謎の構成を取っていました。

ゲーム作りの大枠を確認する

実際にPMがサポートする部分を説明する前に、中山氏はゲーム開発の全体像を説明。大枠は企画段階から計画、実証から、生産とQAのプロセスに入り、リリースに至る……という流れが基本となっています。

しかしそうしたプロセスの中に、やるべき開発タスクが膨大に存在しています。中山氏は一例として、計画~実証のプロセスに含まれている、レベルデザインについて取り上げました。

レベル実装は、主に面白さや見た目を決めるディレクター層と、プログラマーやアーティストなど、レベルを制作する層に分かれているといいます。この場合、主にPMはレベル制作層のサポートをしていくことが主なミッションとなります。

中山氏は実際にプロジェクトを進行する際、まず最初に「確認」のマイルストーンが重要だと言います。レベル制作の例では、前段階にてゲームのイメージボードやアセットの用意されてるか確認が必要になるとのこと。

確認しないと大体、制作が止まりますね」と中山氏は断言。当然、レベル制作のプロセスで材料がなければ作れないわけです。事前に必要な要素が確認できたところで、それからレベル制作の量産に入れるとしています。

中山氏は、あらためて基本的なゲーム開発プロセスを振り返るにあたり、「数多くのスタッフが関わる総合芸術であると認識しており、あらためて非常に大変な作業である」と説明しました。

しかし「(総合芸術のかたちとしてゲームは)映画に近いですが、動的に変化する製品を作るのは、全体の予測や品質の保証がとても大変である」とも語っています。そんな作業を理解するのに生姜焼きはとても役に立つ……のだそうです。この項のマイルストーンとして「ポークジンジャー」を置きつつ、次の項目の説明に移りました。

英語で言ってみた


WBS策定を行うために、タスクとクリティカルパスを分解する

開発プロセスを確認したところで、PMの具体的な作業のひとつとなるWBS策定について解説。中山氏はすでに生姜焼きたとえに無理が生じているのが見えながらも、タモリの生姜焼きの作り方を例にしながら説明を続けます。

まず作業内容を判断するプロセスとして、タスクとクリティカルパスについて解説。タスクとはよく使われているとおり、「やるべき課題」であり、クリティカルパスとは「前のタスクが終わらないとと開始できないもの」を指してです。

タモリの生姜焼きづくりをタスクに分けたリスト
さらにタスクを流れに沿って整理した図

このように作業工程をタスクとクリティカルパスに分解し、整理し直す作業によって、各作業の担当者とスケジュールを加えたものがWBS策定です。生姜焼きでいうなら、作業工程を分解して「キャベツを切る」とか「タレを作る」といった作業で考えていくとよいとのこと。

ここでクリティカルパスの整理を進めた図

まとめとして、経験のない仕事ほど取り掛かりにくくなるのは避けられず、初めてゲーム開発に取り組むときは作業タスクを考えられるだけ細分化したあとで抽象化すると、やりやすくなるとのことです。ここまでの説明はよくよく聞いてみると、特に生姜焼きの例えを使わなくとも、非常にわかりやすくまとまっていたのではないかと思いました。

そしてPMの役割とは

PMの役割については得てして「絶対的な管理者」のイメージがありますが、もっと柔らかくまとめるならば「開発にとって安心できるサポーター」であると中山氏は説明します。開発における雑務を担当し、日々生み出される問題としてプロジェクトを円滑に進めていくことが主な仕事であるとまとめました。

最後に中山氏は、これからのPMを目指す人に向けてアドバイスします。まずWBS策定は一回作ったらそのままではなく。何回も更新するものだと指摘。これはゲーム開発は流動的なもので、例えば開発途中でRPG要素が入り、作業工程が大きく変わってしまうことがよくあることだからです。そのため、まったくちがうタスクが発生するから、何度を描き直すものだと説明しました。

またさまざまな業務をやるゆえに、仕事が増えがちになってしまいやすいところ、「全部で仕事を抱えない」ことも指摘。さらにPMはすべてを決める仕事でもないと言います。決めることは各組織のリーダーであり、PMとは曖昧な仕事を明確にしていくお手伝いであることだと認識することが大事だと語りました。

最後に「WBSがないプロジェクトを許してはいけない」と強く指摘し、そうしたプロジェクトは「絶対にNG」と断言。「計画性のないプロジェクトは自分やチームを不幸にすることは間違いない」と語りました。その言葉には、醤油とみりん、そして生姜で味付けした穏やかな味わいとはほど遠い、現場ならではの苦い味わいがあったと言えるでしょう。

本セッションのまとめとして中山氏は、PMの仕事はすべての仕事のエキスパートではなく、マネジメントのエキスパートを目指すべきだと説明。さまざまなエキスパートをリスペクトして業務を進めることで、円滑なプロジェクト運営を目指すことこそが最もPMにとって重要なことだとまとめました。おいしい生姜焼きを作るプロセスを計画的にまとめられることが、優れたPMへの道へ繋がることがわかるセッションだったと言えるでしょう。

さあセッションを見終えたら、イタリア風生姜焼きを食べよう
《葛西 祝》

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