マンガ・アニメ業界進展のため“知"の交換を。カンファレンス「IMART2021」の狙いと意義、注目セッションは?【インタビュー】 | GameBusiness.jp

マンガ・アニメ業界進展のため“知"の交換を。カンファレンス「IMART2021」の狙いと意義、注目セッションは?【インタビュー】

“マンガ・アニメーションの未来を作る” をテーマにした日本初のボーダーレス・カンファレンスIMART2021の共同実行委員長の山内康裕氏、土居伸彰氏にインタビューを実施。本カンファレンスの意義や注目カンファレンス、マンガ・アニメ業界の未来について話を聞いた。

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“マンガ・アニメーションの未来を作る” をテーマにした日本初のボーダーレス・カンファレンスとして2019年に開催された「IMART2019」

これまで業界を横断するカンファレンスがない中で、両業界のイノベーターや実務家による基調講演・セッション・交流会を行い、最終的に約2,000名が参加するカンファレンスとなった。

今回、第二回目として開催されるIMART2021の共同実行委員長の山内康裕氏(以下:山内)、土居伸彰氏(以下:土居)にインタビューを実施。本カンファレンスの意義や注目カンファレンス、マンガ・アニメ業界の未来について話を聞いた。
[取材・構成=森 元行]

現在に「トキワ荘」を再構築する


―――お二人のご経歴を教えてください


山内:レインボーバード合同会社の代表社員や一般社団法人マンガナイト代表理事を務めており、マンガを専門に事業展開を行なっています。「マンガを通じてコミュニケーションを創出していく」という想いのもと10年前にマンガナイトというコミュニティを立ち上げて運営していくなかで、マンガが今後も100年、200年と身近な存在として続いていくためには、作品性の素晴らしさに加えて、コミュニケーションやビジネス、教育など効果的なツールとして多方面に機能するという道も拓く必要があるのではと考え、活動しています。数世代先の未来に、伝統文化やハイカルチャーとしてのだけのマンガでなく、大衆文化としてのマンガとしても残り続けていれば良いと思っています。


土居:株式会社ニューディアーという会社で、世界のインディペンデント・アニメーション作品を産業とコネクトする事業をしています。具体的には海外の長編アニメーション作品の買付と配給、映画祭などのプラットフォームの企画・運営が中心です。また東京大学大学院でアニメーションの研究もしていたこともあり、評論や執筆、講演も含めた啓蒙活動も行っています。直近では国際共同製作を中心にアニメーション製作にも取り組んでいまして、たとえばフランスの助成金を活用しながら日本作家のアニメーションを制作したり、スイスのゲーム・デベロッパーと組んで日本作家の世界観を用いたゲームを制作したりしています。アニメーション文化に多様性を持たせたいと考えており、才能のある作家さんたちと産業を繋げていくことが僕のミッションです。

―――ゲーム産業でもインディゲームは注目されています

土居:ゲーム産業は短いストーリーであってもユーザーさんがコンテンツに対してお金を払うという文化が醸成されていますよね。一方でアニメーションはまだまだその領域には辿り着いていなくて、特にインディ作品はYouTubeなどで短編作品を無料で視聴できる、と習慣づけがされてしまっているかなと思います。現在は、助成金を活用しながら、作家さんたちが安心して作品作りに集中できる環境を作っていくチャレンジをしています。

―――第2回目となるIMARTですが、そもそもの開催のきかっけを教えてください

土居:豊島区が2019年度の「東アジア文化都市」の国内代表都市に指定されたことがきっかけです「東アジア文化都市」は日本・中国・韓国の3か国間の文化交流事業で、毎年各国から1都市が代表となり、通年で文化交流、文化芸術イベント等を実施する国家的プロジェクトです。代表都市はそれぞれ得意な分野で事業を行っていくのですが、豊島区は、昔から盛んだった「演劇」や「祭事」に加え、アニメイト本店があったり「乙女ロード」があったりとアニメ・マンガを消費する街としての側面もあることから、そしてさらには日本を代表するマンガ家が若き日を過ごした「トキワ荘」の所在地でもあったことから、「マンガ・アニメ」の事業を積極的に行うこととなりました。僕と山内さんはその事業立案と運営を担当する事業ディレクターをしており、めったにない機会なので官民一体となれる新たなイベントがなにかできないかと思案したあげく、マンガ・アニメーション分野を領域横断するようなフェスティバルを立ち上げようという話になりました。それが2019年に開催された第1回目のIMARTです。マンガ・アニメ業界のキーパーソンが豊島区に集まり、新たなマンガ・アニメ文化を胚胎させる「現代のトキワ荘」のようなプラットフォームになることを目指しています。

山内:マンガにおいては、作品や作家のゆかりの地のイベントや同人創作コミュニティ向けのイベントはいろいろあります。またマンガ表現や社会科学の面からの学会など文化よりの知見共有の場はあったりするのですが、産業を現場で動かしているイノベーターが刺激しあうようなイベントというものほぼありませんでした。企業間の競争優位に関わるような部分は機密にすべきですが、基礎研究の部分においては、知見の交換できればより業界や産業全体が前に進むことができるのではないかと考えています。特にマンガ業界はマンガアプリが活況ですが、さまざまなバックグラウンドからの参入しているので、持っている知見は多種多様です。加えて、アニメ業界ともクロスオーバーすることで、日本のマンガ・アニメ文化そのものがさらに盛り上がっていくと信じています。

マンガ・アニメ業界を前に進めるために”知"の交換を


―――第1回目のIMART2019の反響はいかがでしたか

山内:僕たちとしても成功したと考えていますし、参加者の方からもよいフィードバックを頂きました。マンガ・アニメ業界の関係者の約2,000名に会場に足を運んで頂いて、参加した93%の方が「また参加をしたい」とアンケートでご回答してくれました。それもあって、第二回目も開催しなければ、という想いもあって今回の開催に繋がっています。

土居:だいたいこういうイベントというものは、当初の企画段階では「俺の考えた最強のイベント」みたいな企画案が出て、しかし実現せず…みたいなことが多いと思うのですが、第一回のIMARTに関しては、幸いなことに当初のプランで計画していたものがほぼそのままできてしまいました。立ち上げたばかりのイベントで実績もなかったわけですが、業界としてもこういったものを求めていたのだな、とすごく感じました。第一回のIMARTは、業界関係者だけではなくコアファンの方々も多く来場してくれていて、マンガ・アニメ文化はファンあってこそだと思いますので、ファンの方々のリテラシー向上にも寄与できている、という部分も感じました。

―――今回のIMART2021のテーマやキーワードは?


IMART2021公式ホームページより

土居:最初は「ウィズコロナ、アフターコロナ」というものがひとつのテーマになるだろうと考えていたのですが、最終的にはそこまで強く押し出す形にはなりませんでした。ただし、マンガ・アニメの「最新」のフォーカスを当てることによって、どのセッションにもコロナ時代の影のようなものは見え隠れするものになっているのではないでしょうか。前回のIMARTの裏テーマは「国際化」と「デジタル」というものでした。Netflixなどの海外の配信プラットフォームやスマートフォンなどのデバイスの変化によりユーザーさんのマンガやアニメを楽しむ形が変わってきており、また、作り方も大きく変わっており、マンガ・アニメ業界は現在激変の時期にあると捉えています。今回の新型コロナウィルスの影響で、よりその部分は加速していったと思います。なので今回は「国際化」「デジタル」、それに加えて「ウィズコロナ、アフターコロナ」というこの3点がキーワードになるセッションが多くなると思います。

―――「アニメ業界 女性の働き方」といったセッションもあります

山内:テーマやセッションについては、前回開催の際に入れきれなかったもの、コロナ禍にある今議論すべきものなども今回取り入れるようにしています。「新しい生活様式」に合わせてユーザーだけでなく業界側も変わっていっていますし「コロナ禍におけるアニメ・マンガイベントの運営」「アニメ業界 女性の働き方」というセッションを今回実施します。


IMART2021公式ホームページより

―――多くのセッションが準備されていますが、お二人から見た注目のセッションは?

山内:IMART2019ではマンガのデジタルアプリ関連のセッションを多くしていたのですが、今回もその発展的延長で「急成長中!「クリエイターに直接課金する」サブスク最新事情」「“マンガ動画元年”を終えて考える、マンガ動画の過去、現在、未来」「新世代マンガエージェントの現在と展望」というセッションが前回実施から1年以上たったまさに今のトピックスとして語られると思います。

土居:IMARTは「ボーダーレス」を掲げるイベントですから、そういう意味では「ゲームエンジンがもたらすもの」というセッションは、出演者も国際的ですし、ビジネスもテクノロジーもアートも知ることができてとてもおもしろいセッションになると思います。またマンガとアニメに両方にまたがるセッションの存在もIMARTでは重要な要素ですので、そういう意味では「コロナ禍におけるアニメ・マンガイベントの運営」も要注目です。今回はオンライン開催でアーカイブ視聴できますから、ぜひ、すべてのセッションを見ていただきたいです。

『鬼滅の刃』が気付かせてくれた業界の可能性


―――マンガ・アニメ業界のこれからについて

土居:IMARTのセッションに登壇してくれている方々は、世の中的にはもしかしたら有名ではないかも知れないけれど、業界では注目されている人たちが集まっています。大きい会社に所属していたり、個人で活動している人だったりと様々なのですが、共通して言えるのは個人の知見や見識によって新しいサービスだったり新しい作り方だったり、とそういった新しい活動を切り開いている人たちの集まりです。個人の知恵や知見が業界によい影響を与えうるのだ、ということをIMARTを通じて体感できると思います。IMARTで出自は違えど同じ志を持つ人たちが集まっていることを見ると、この業界はまだまだ前にすすむ余地があるのだ、と感じることができると思います。

山内:『鬼滅の刃』が空前のヒットをするまでは『ONE PIECE』や『進撃の巨人』に並ぶような国民的大ヒットマンガはもう生まれないのでは、という空気感がありました。近年、「マンガ」を手に取ってくれる読者の裾野を広げるのは上限まで来ていて、特定のファン層から支持されるスマッシュヒットを狙うような作品が増えている傾向でした。マンガ業界は成熟期にある業界と捉えていた業界関係者の方も多かったと思います。今回『鬼滅の刃』の大ヒットで作家さんの方々も含めて業界全体が分かったことは、まだまだマンガ・アニメといったエンターテインメント自体に、ほぼ触れていない人たちがまだ沢山いて、マンガ・アニメは彼らの琴線に触れることができる可能性があるということ。その潜在的なすそ野がまだまだ広がっているということを業界全体で気づけたのは大きいと思います。

またコロナ禍における巣籠もりのなかで、多くのユーザーが過去の作品を観て読んだというの大きいです。当時のユーザーにとって、ある作品タイトルの「マンガ」「アニメ」「ゲーム」は、これが先だったという認識がある。よって「マンガ」「アニメ」「ゲーム」の区分を意識していいます。一方、今の10代、20代の方々にとって、過去作品において「ゲーム」「マンガ」「アニメ」のどれが先とか関係なくなって意識していない、分けずにフラットに楽しんでいる印象です。業界側は、業界構造も違うし、原作品の二次利用という関係性で分けて考えてしまいがちですが、受容するユーザーさんの態度が変化しているというころをしっかりと理解して、次の手を打つことも重要だと感じます。IMARTがそれらへの何らかのヒントになると嬉しいですね。

―――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします

土居:みなさま自身が興味があるセッションに参加するのはもちろん、興味関心や知見がないセッションに参加してもらうと新しい発見や驚きを得られると思います。今回、アーカイブ機能もありますので、ゆっくりゆっくりでいいのでボーダレスにセッションに参加してもらえるといろんなところを刺激されるんじゃないかな、と思います。

山内:オンライン開催ということで、全国どこからでも視聴が可能です。未来のマンガ・アニメ業界の今後を担う学生やクリエーターの方々にIMART2021のセッションをご覧いただけると嬉しいです。またこれからマンガ・アニメ業界に参入検討されている事業者や、業界への転職を考えている方々にも勉強する場としてすごく使えると思いますのでぜひ視てもらいたいです。純粋にマンガ・アニメ好きのユーザーの方にも楽しめるようなセッションもありますので、ぜひご覧ください。


IMART2021公式ホームページより
《森 元行》

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