現代のアナログゲーム製作から面白さの本質を探す――面白さの創出や特徴【CEDEC 2019】 | GameBusiness.jp

現代のアナログゲーム製作から面白さの本質を探す――面白さの創出や特徴【CEDEC 2019】

近年はアナログゲームに遊べる環境やゲームの評価の広がりが見られ、注目が集まっています。そんなアナログゲームはいかにして製作され、そして面白さを生み出しているのでしょうか?気鋭のアナログゲームデザイナーたちが語りあいます。

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近年はアナログゲームに注目が集まっています。国内で最大のイベントである「ゲームマーケット」が毎年開催されたり、ボードゲームカフェが各地で営業されたりするほか、作品の評価においても、日本で製作されたゲームが「ドイツ年間ゲーム大賞」にノミネートされるなど、遊べる環境やゲームの評価の広がりが見られます。

そんなアナログゲームはいかにして製作され、そして面白さを生み出しているのでしょうか?2019年9月4日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」では、そんなアナログゲームの状況についてを語った「アナログゲームの制作に見る、ゲームの面白さとは」が行われました。株式会社グランディングの菅沼正夫氏と、アナログゲーム製作サークル「カナイ製作所」代表カナイセイジ氏、そしてOKAZU brandの林 尚志らが登壇し、アナログゲームの面白さが何かが語られました。

アナログゲームとデジタルゲームの違いとは



冒頭の話題では「ゲームのアナログとデジタルの違いとは何か?」が挙がります。登壇したそれぞれの経験や背景から、考え方がわかれていました。


菅沼氏はもともとソーシャルゲームのデータを作ることが本業であり、代表作である『街コロ』はもともとデジタルの企画だったそうです。「いろんなところでプレゼンしていたが企画が通らず、最後はアナログゲームイベントであるゲームマーケットで売ったんです」という経験を持っています。 

そうした経験から、「デジタルとアナログの違いはマネタイズ。どれくらいお金がかかるか、稼ごうとするかです」と語ります。

菅沼氏はゲーム業界に入って30年の経験を持っています。最初は『ファイアーエムブレム』シリーズのような自分の作りたいゲームを作り、周りの人を喜ばせたいと考えていました。しかし作れる機会がまったくないことに気づきました。

商業のデジタルゲームでは「作らせてもらえるタイトルは決まっていて、現実化できることは少ない」ゆえに、いいアイディアでも開発に何億もかかってしまうこため「マネタイズもできないし、実験もできない」状況がありました。対してアナログゲームでは「20万から30万円くらいのコストで、マネタイズも考えずにできる」ため、自分のやりたいことができる点を強調します。


カナイ氏は制作したゲームの『ラブレター』が世界でヒットします。「トランプよりも枚数が少なく、製造するコストが安い。最大で4人まで遊べる」点から、いまも販売が続いています。『文絵のために』では「ループものをカードゲームで再現できないか」と考えてデザイン。挑戦の失敗からハッピーエンドを目指す体験を作りました。

カナイ氏も製造コストがやすい点を語っており、最初はコピー用紙で制作したものを300円で売っていたそうです。その作品を後にブラッシュアップして発表した経験を持っています。


林氏はもともとはプログラマーでしたが、6年前から専業ボードゲーム作家になりました。カナイ氏や菅沼氏のようにほぼ印刷費用で生産できるローコストなゲームと違い、多数のコンポーネントを使った重量級のゲームを制作しています。中でも『Trains』は大きな賞を獲得し、「ボードゲーム制作一本で生きていけるきっかけになった」と話します。

林氏のキャリアで特徴的なのはクラウドファンディングの利用です。代表作の『横濱紳商伝』のデラックス版プロジェクトでは、クラウドファンディングの最大手であるKickstarterで43万ドルを獲得しました。

林氏はクラウドファンディングの経験からデジタルとアナログの違いについて説明します。デジタルゲームがクラウドファンディングで資金調達する一番の人件費を集める必要があるし、スクリーンショットが上がっていても、実際に遊んでみるまでどんなゲームなのかわからない問題があるといいます。

対して「アナログゲームはもうほとんどできている状態」でプロジェクトに登場するため、出資者もどんなゲームなのか分かった状態で出資できることを指摘。「お金がかかるのは印刷費くらい。なのでクラウドファンディングと相性がいい」と語りました。実際にクラウドファンディングでデジタルゲームのプロジェクトが勢いが弱めており、アナログゲームのプロジェクトが伸びていることにはこんな背景があったようです。

アナログとデジタル、それぞれのメリットとデメリット


続いてアナログゲームとデジタルゲームのメリットとデメリットについて語られます。カナイ氏は「デジタルのメリットはユーザーがやりたいときだけ、すぐにやれる」とゲームをはじめたり、やめたりできる容易さを挙げました。「アナログはコマを準備したりする手間がかかる」煩雑さがあると話します。

菅沼氏はデジタルゲームとアナログゲームそれぞれで、プレイヤーがゲームプレイでどういう行動をしている差があるかに注目します。たとえばマリオのジャンプだったり、FPSのように動き回って銃撃戦したり、デジタルゲームの行動自体は身体を動かすものが多く、原始的な部分もあるゆえアナログではないか、と語りました。

むしろアナログのほうが、デジタルなことしかできない」と菅沼氏は発言。ルールや数値を取り扱うゲームプレイからそう評価します。林氏も論旨を掘り下げるかたちで「デジタルの場合は自分のインプットした結果が欲しい。アナログは行動の結果への思考が楽しい」と違いを語り、カナイ氏は「アナログゲームは一部分切り取って遊べるというか、テーマを抽出して遊べる」利点を挙げていました。

またデジタルとアナログが融合した例として、VRでアナログゲームをプレイすることをどう評価するかも語られました。

カナイ氏は「デジタルとアナログの境界は減っているのではないか」といいましたが、林氏は「アナログの良いところは現実の人と顔をあわせられることなので、VRのアバターは仮想でしかないのではないか。お互いを知っている友達同士のアバターならいいが、知らないひとのアバターだとAIと一緒かも」とあまり評価していないようでした。とはいえ「どちらかというとアナログでやったほうが楽。ただアナログにはデジタルに応用できる要素が多い」とも、可能性について否定はしていません。

アナログゲームの面白さとは



さてアナログゲームの面白さとはどこにあるのでしょうか? 菅沼氏はゲームの面白さについて、ゲームの要素を分けた一覧を提示します。

菅沼氏はアナログゲームの構成をテーマとシステムと大きく2つに分けて解説。コンポーネントに見られる世界観と、その中で何をするかの目的を設定するテーマに加え、実際にゲームプレイするためのシステムとして、ランダム要素のある「運試し」や、目的を達成するための「最善手選択」に加え、対戦相手との「駆け引き」を挙げ、伝言ゲームのような「伝達」を説明します。最後にプレイヤーのスキルがある「アクション」を挙げ、少しピンときにくい区分ですが、これはおはじきや「ジェンガ」のようなバランス系ゲームのことを指しています。

三者はどのゲームにも最善手選択があることが語られ、人が介在することで駆け引きがあると語りました。とりわけアクションに区分されるゲームでは、いわゆる習熟を必要とするジャンルであるとも指摘。カナイ氏は「実際、賞を取ったゲームはおはじきを高度にしたもの、シンプル極まりないものでも評価される」ということを説明していました。

日本で流行っているのは「伝達」に当たるゲームだといいます。例としてお笑い番組で当たり前となった「大喜利」は伝達ゲームのよく知られたものだと言います。林氏は「伝達に当てはまるものは海外でもあるが、大喜利は日本ならではのもの」だと話します。

カナイ氏にとって「アナログゲームのなにが面白いか」というと、「意識を集中させられるか。夢中をどうやって作れるのか」を挙げました。たとえば脱出ゲームは「60分内でなんとかここから出なきゃならない」というわかりやすいタイムリミットが設定されることで、プレイヤーはパズルを解くのに集中します。こうした例から「夢中」を作ることを挙げました。

また「面白さで重視するのは、秘密情報を管理すること、自分しか持っていない情報をコントロールすること」とも言います。「自分だけがこの情報を持っているって快感。そういうところがゲームの面白さだと思います」とまとめました。

一方、林氏は慎重に「面白さって言葉に疑問がある。あやふやだと思う」と述べます。「料理でいったら「おいしい」という感想と一緒。でもフランス料理好きの人と、マクドナルドが好きな人がいう「おいしい」はまったく違いますよね。それを一緒にしてしまうと意見の相違でケンカになってしまいます」と指摘。「自分はこういう属性があるから面白いんだって語ることが大事」だと細やかに考える重要さを語っていました。

どうやってアナログゲームで面白さを作りだしていくか



ゲームデザイナーとしていかに面白さを生み出していくかについての話題では、それぞれのデザイン哲学が見られます。

カナイ氏は面白さを生み出すことについて「テーマとメカニクスという二本の柱だと思っていた」そうですが「実際にはもうひとつあって、三角錐ではないか」と考えるようになったそうです。ではもうひとつ加わる柱は何かというと「コンポ―ネント」を挙げました。

フランスのゲーム作家から参照した考えだそうで、「ゲームはこの3つがあれば形になる」とカナイ氏はまとめます。そうした三角錐から「エモーションをゲームプレイで生み出すこと」を重視するそうです。

話題が「ゲームを開発するときにどこから着手するか」に移ると、三者それぞれの具体的なゲームデザインのアプローチが語られます。

カナイ氏は作るゲームよってアプローチが変わるそうで、「外側から出来てくる場合と、内側から作りたいと動く場合がある」と言います。

林氏は「メカニクスから作りますね。自分がプログラマーだったのもあります」と堅実な制作方法を挙げていました。「メカニクスとゲームサイクル、それが楽しいかが先に来ますね。」

菅沼氏は「たとえばUNOでいうと最後の1枚になったとき整理できることは何か?みたいに、狭いゲームプレイのシーンから作るんです」と、特定の状況化に置かれたゲームプレイから考えて、ゲームを組み立てていくそうです。

アナログゲームの現状と、日本と世界の差異



最後にアナログゲームの世界的な現状について解説。いまの中心地はドイツであり、『カタン』などスタンダードとなったゲームを生み出してきたことから ここ10年で台頭したのはフランスであり、こちらは競技的なゲームというよりも、コミュニケーションツールとしてアナログゲームという傾向があるそうです。

林氏はフランスのアナログゲームの傾向について「実はドイツとアメリカの中間くらい。メカニクスとテーマがいい感じに合わさるんです」と評価。日本のアナログゲームに近
いそうです。

アメリカのアナログゲームでは「世界観がよく出来ていて、プレイヤーはそこで活躍するみたいなゲームプレイの傾向がある」と指摘。カナイ氏は「いわゆるデジタルゲームをアナログゲームに持ってこようみたいな。ハック&スラッシュのジャンルをアナログゲームに持ってくるようなところがあります」と見ているそうです。林氏によれば「200時間を超えるアナログゲームもある」といいます。

また東洋と西洋の違いについても言及。「東洋はキャラを愛でる感じで、西洋はその世界に没入して活躍したい傾向」とカナイ氏は観ています。「日本は大喜利やジョークが発展していて、インフルエンサーがコミュニケーションツールとして使うようなこともある」とも見語りました。ただ林氏はシビアに「説明が5分で終わるゲームじゃないと受け入れられないのが日本」と、重厚なゲームを制作する側から見た傾向を話していました。

今、アナログゲームを作るということとは


まとめに、今アナログゲームに関わることについて三者から語られました。

カナイ「いまチャンスなんです。アナログゲームは注目されており、海外の受け皿もある」と流れが来ていることを語ります。菅沼氏も「チャンスも増えている」と同意し「作れる環境も増えているし、作ることで勉強になる」ことを挙げました。林氏は「僕もプログラマーだったので、プログラマーの人は作ってください」とエールを送ります。

アナログゲームを作り続けることが、自分にとってどういうことかもほんの少し語られます。菅沼氏は「最近はなんでゲーム作っているのかわからない。毎回がんばっているのですが……」と弱気な感情を見せるながら、「まだ『街コロ』を超えるものを作っていない」という焦燥感も吐露します。「いまでもドイツの年間ゲーム大賞を狙って作っている」と語りました。

「なんのためにゲームを作っているのかって?僕は世界平和です!」とカナイ氏は宣言。「夢中の話とも絡むんですが、やっぱり面白いゲームをやっていると気が付いたら2時間経っているってありますよね。その2時間のあいだはしんどいことを忘れられるみたいな。だからゲームデザインに「夢中」を重点に置いているんです」と、セッションを熱くまとめました。
《葛西 祝》

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