ビデオゲームを通し、いかに真の友情を育めるか?『Sky』『風ノ旅ビト』のクリエイター・Jenova Chen氏インタビュー【TGS2019】 | GameBusiness.jp

ビデオゲームを通し、いかに真の友情を育めるか?『Sky』『風ノ旅ビト』のクリエイター・Jenova Chen氏インタビュー【TGS2019】

『風ノ旅ビト』をはじめ、『Flowery』など、言葉を排したアートスタイルから、エモーションを呼び起こさせるゲームプレイが特徴のタイトルを生み出すクリエイター、Jenova Chen氏にゲームデザインの秘密や、これからの目標についてうかがいました。

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ビデオゲームを通し、いかに真の友情を育めるか?『Sky』『風ノ旅ビト』のクリエイター・Jenova Chen氏インタビュー【TGS2019】
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風ノ旅ビト』をはじめ、『Flowery』など、言葉を排したアートスタイルから、エモーションを呼び起こさせるゲームプレイが特徴のタイトルを生み出すthatgamecompany。その中心人物であるJenova Chen氏は、確固たるゲームデザインの方法を持っています。

今年2019年には最新作『Sky 星を紡ぐ子どもたち』(以下、『Sky』)をiOSにリリースし、『風ノ旅ビト』から一歩推し進めて、大規模なマルチプレイヤーのゲームでエモーションを生み出せるかに挑戦しています。 

今回TGS 2019にてJenova Chen氏へのインタビューが実現。2019年9月12日、ホテルニューオータニ幕張にて、ゲームデザインにまつわるお話をうかがいました。

『Sky』の反響



――『Sky』がiOS版がリリースされ、話題を呼んでいます。Android版へのリリースに向けて、進捗はいかがでしょうか。

Jenova Chen氏(以下、Chen氏)実はいま、きついスケジュールで、締め切りが迫ってきているんです(笑)(※インタビューが行われたのは2019年9月12日)。できれば北米に残って、チームのみんなと一緒に仕上げをやりたかったのですが、TGS2019を楽しんでいるところもあります。

ですがチーム一丸となって作業を進めておりますので、なんとか成し遂げられそうだと感じています。実際にいま出来上がっているところまでみると、iOSとAndroid、ふたつの機種にまたがって、プレイヤー同士が手を取り合っていくのはとても感動しますね。我々からすると、世界平和が達成されたくらいの達成感があります

――『Sky』がiOSでリリースされてから、現在までの反響はいかがでしょうか。

Chen氏世界中でおよそ8万6千ものレビューが投稿され、平均スコアが星4.9でした。ほぼ成功と言ってよいのではないか、と思います。ユーザーのご要望はさまざまな方面からいただいており、さまざまな分野の要望を受け取っていますが、もちろん対応していくつもりです。

日本でおよそ1万8千件のレビューがあり、北米ユーザーの半分にあたる数があり、そこでも星4.8の評価は変わりありません。そういう意味でも、日本のユーザーが一番私たちのファンなのではないでしょうか。

特にSNS上では活発なアクティビティがたくさんあり、その賑わい方は世界でも類を見ないくらい、熱いユーザーがたくさん集まっています。今後私たちも、彼らにとってよりよい体験を提供できるようにしていこうと思っています。

アカデミックを通過したゲームデザインの哲学



――Chenさんの手掛けたタイトルは、独特なアートスタイルやゲームプレイが評価されますが、私は伝統的な3Dアクションゲームのような構造を持っていると感じています。たとえば『Flowery』では、セガサターンでリリースされた『NiGHTS』のような浮遊感や、プレイヤーを導くデザインやギミックがあったと思います。実際にはいかがでしょうか。

Chen氏もちろん、私たちthatgamecompanyの皆さんも『スーパーマリオ64』や『NiGHTS』を遊んでいますし、それらの良い部分も体験しています。その中のゲームデザインやシステムを含め、3D空間内でのカメラの追従といったことも研究させていただいています。

16年前の有名なタイトルの優れた要素を、今も取り込んでいこうとしています。過去の偉人たちが表現、もしくは体現した技を習得していようとしていすが、私たちはそこをまったくマネしようと考えているわけではなく、過去のタイトルたちを良き手本としています。

またそれらが世の中にリリースされているため、ビデオゲーム市場に一定のハードルが設けられているとも言えます。目指さねばならないクオリティが提供されてしまっているので、そこを越えなければならないと思って作っています。

ただ私たちとしては、エモーショナルな表現をビデオゲームの中でいかに実現していくかが、過去の偉人たちが作ったタイトルとはちょっと違うものではないか、と考えており、それを体現したいのです。

――「エモーショナルな感情を体現したい」というお話が出ましたが、Chenさんは南カリフォルニア大学(University of Southern California、以下、 USC)でゲームデザインに関して学ばれていましたよね。そうした経歴からゲームデザインを捉えることについてうかがえますか。

Chen氏 通常、分野としては広いお話になり、詳しく話をすると数時間に渡ってしまうので、簡単にお話しますと、USCではビデオゲームを「ソフトウェア」か、もしくは「エンターテインメント」で捉えるかで分かれます。

ソフトウェアで見た場合、USCではジャンル分けしていったとき、たとえばスポーツや、アクション性のあるものなどに分けていきます。一方エンターテインメントとして見た場合、映画など題材にした悲劇や喜劇が出てきます。

たとえば喜劇では、『Serious Sam』のように、FPSではあるけれど非常にコミカルなタイトルであったり、悲劇的な物語であれば『サイレントヒル』だったり分かれています。エンターテインメントとして見た場合、やはりソフトウェアとして見た場合と比べてまったく違うジャンルとして扱われます。

ソフトウェアとして見た場合には、ハードウェアの急激な進歩や成長に紐づいてきてしまう。進歩ありきといいますか。逆に、アートやエンターテインメントとして見た場合、ビデオゲームのプラットフォームが急成長した30年間と比べると、映画や音楽と比較して、ビデオゲームは全然それらに追いつけていません。特にエモーショナルな表現に関しては。


――エモーショナルな表現ということで、最近日本でも議論されたのですが、たとえばゲームデザインにおけるナラティブのデザインがあります。Chenさんは物語を体験させるデザインをどのように取り扱っているのでしょうか。

Chen氏私は映画の手法を学んでおりますので、どうしてもその要素が入ってきます。ナラティブというのは、意識せざるを得ないというか、普通に学んだことです。「いいストーリーが入ってくるのが、いい映画」だと私は教わりました。

「いいストーリーで、優れた監督が、正しい技術で作られるものがいい映画」なのですが、ハリウッドの法則として、「Rise Fall Rise Again」という、(主人公が)立ち上がって、転んで、もう一度立ち上がる定番の手法です。これは聞いて驚くほどのことではなく、誰もがだいたい想像をつくところなのですが、そこでどういう構成するかによるのです。

thatgamecompanyの秘密のレシピとして、映像・音楽・シナリオ・マルチプレイそれぞれをオーケストラに見立てています。それぞれの要素を楽器として見た場合、ビデオゲームはソフトウェアである以上、表現のやり方は限られます。

たとえばレースゲームのジャンルである場合、終始レースするゲームプレイの構成になりますよね。それはthatgamecompanyのレシピと比較した場合、オーケストラとしてなりえず、要素が偏ったものになるのです。私たちはすべての要素が楽器となり、ひとつのオーケストラを奏でるように作ります。

たとえばマルチプレイならば、楽器で言えばソロパートの演奏にあたります。それがストーリーの骨子を作っています。とても簡単なたとえで言うと、AAAタイトルでのFPSではでは銃を撃って戦いますし、中盤でも変わりません。後半ではもっと大型の銃を扱っているかもしれません。いわゆるプレイヤーの感情曲線では、徐々に興奮し、上昇していきます。

それと比較して、『Sky』の場合は、最初は歩いたり走ったりし、その次に谷をサーフィンのように走り下り、地下に降りて迷子になったりします。さらに、山登りをするはめになって、ちょっとずつしか登れないとわかったところで、最後に、広い空を飛ぶことで、開放感のある体験ができるようにしています。

それはハリウッドの映画のように「立ち上がって、転んで、もう一度立ち上がる」感情曲線として描いているんです。

「人生の体験」としてのビデオゲーム



――映画のお話が上がりましたが、劇映画には通常、具体的な登場人物や世界観が描かれますよね。ですが逆にthatgamecompanyの作品では、抽象的に描かれています。たとえば『Flowery』では非常に抽象的です。先ほど話題にあがった感情曲線とは、どこで作られるのでしょうか。

Chen氏おっしゃるとおり、『Flowery』には登場人物もおりませんし、明確なストーリーもありません。どちらかといえば、俳句のようなものです。花に触れて、平和な世界だったものが、突然動けるようになり、世界が暗転し、真っ暗で怖いところを恐る恐る進んでいったところを、一気に動けるようになる構成は、「立ち上がって、転んで、もう一度立ち上がる」ものとまったく一緒です。

たとえ登場人物とストーリーがなくとも、感情を揺さぶり、興奮させることができるのです。そういう意味で『Flowery』を制作することは、私にとって貴重で、実験的な体験になりました。

――『風ノ旅ビト』ではアクションゲームに加え、マルチプレイの要素も含まれることで一本道で進めていく体験ではなく、どこか前のゲームプレイと同じにならない、揺らぎがあるようになっています。マルチプレイを導入していくようになった意図はなんでしょうか。

Chen氏一言で言えば「人生の体験」です。それをビデオゲームを通してできればと考えていました。人生では、他人と出会ったり、幼なじみがいたり、別れがあったり、また時間が経ってから、昔の仲間と出会ったりします。それを再現してみたかったのです。

ふつう人は一人で生まれて、一人で去っていきます。人生は一本道でありながら、揺らぎがあります。その揺らぎのなかに、マルチプレイという要素を入れることによって、人との友情や、関わりを表現していきました。


――『Sky』ではさらに発展し、スマートフォンで大規模なMMOの構成を取っています。MMOにRPGのようなゲームシステムを入れず、その瞬間に他人同士が出会うことにフォーカスした体験は、先行タイトルとしてはTale of Tales(『The Graveyard』、『The Path』を制作したスタジオ)の『The Endless Forest 』を想起しました。

Chen氏実は『Sky』はまだ未完成なんです。本来であれば、ゲームの中にもっとい続けたいとか、ナラティブデザインの視点からも、ストーリークエストは上からまぶすものであるべきです。まだそこまで至っておらず、本当にクエストをやらなければならない理由が、すべて入れられていない状況です。

なので、今度それを追加するように、努力していくつもりです。自分にとって『Sky』はまだ100%の完成度にはなっていません。

――現在、『Sky』はユーザーの要望に対応するよう運営していると思うのですが、そうしたレスポンスを繰り返しながら作る手応えに関していかがでしょうか。

Chen氏手応えというよりは、実質いま、どんなご要望が来ているかというと、もちろんお褒めの言葉がいちばん多いのですが、そこを聞きたいわけではないですよね(笑)。もっとも多い要望はハートに関係することです。

キャンドルを精霊と交換してハートを手に入れることで、ハートの入手に苦労されているユーザーが非常に多いですね。「これをもっと簡単にできないでしょうか?」との要望が大多数を占めています。

またコンソールに触れていない、スマートフォンで主に遊んでいるユーザーの皆さんからは、3Dの広大な空間に慣れておらず、迷子になってしまう方が続出しています。マップにビーコンやGPSを入れてほしいという要望もあったんですが、実はすでに作っており、一度実装したこともあったのですが、あえてそれは取りました。

またカジュアルゲームを遊ぶような、ライト層の皆さまが、3Dでのゲームをあまり遊んだことがないため、「カメラの視点操作が難しいので変更してほしい」というご要望があったり、飛行する時の操作が難しかったりするというのが、お問い合わせで多いですね。

逆にコンソールに慣れている方は、スマートフォンのタッチスクリーンによる操作が使いづらいと言われています。「コントローラーに対応してほしい」という要望も頂いたので、今回のアップデートで対応しています。

その理由は、謎解きが謎解きでは無くなってしまうため、面白さが半減してしまうことです。よくあるMMORPGですと、ユーザーの皆さんは同じ場所に集まり、同じようなクエストをこなし、場合によってはオートでクエストの場所まで歩けてしまう。3D空間でありながら、面白さがなくなってしまうため、あえて排除しました。

ユーザーが他のユーザーと出会い、頼って、ともに手を取って進めていくことをやっていただきたくて、『Sky』はいまのような形になりました。

――最後になりますが、今後エモーショナルな体験を生み出すのに挑戦したいジャンルはありますか?

Chen氏興味のあることは、MMOなどで誰かと誰かがマッチングすることです。基本、スキルベースであったり、レベルであったりするじゃないですか。そこを視点を変えて、気の合う仲間が出会って、友情を積み上げていくことをやるには、どういうことを入れ込めばいいんだろうか?ということに興味があります。

いわゆる(出会い系のような)マッチングサービスで、、本当に素晴らしい出会いがあったり、一夜限りの関係があったりします。これらの出会い系のような不健全さや不完全さを排除できない方法ではなく、どういうことを組み込むことで、ビデオゲームを通して、お互いに心から友情を見出せるような相棒を探し出せるかを考えています。

自分自身が何者であるのか」ということもそうです。どういうことを組み込めば、自分自身であることを知ることができるのか。実際ゲームの中でも、本当の自分が選択することで、他人と出会ったり、一緒に行動したりしています。私たちとしては、今までに積み重ねてきた経験をどのようにビデオゲームに落とし込めるかを掘り下げています。

実際、朝に起きて、顔を洗い、歯を磨き、呼吸をしている人たちが、今後ビデオゲームを通して、他の人たちと出会っていくというものを、今後は研究していきたいですね。それが次のチャレンジになります。



Chen氏は興味深い将来のビジョンを語ってくれたと同時に、thatgamecompany全体としても、「始まったばかりの『Sky』のお客さまにもっと遊んでいただけるようにすること」を重視していることが語られました。

『Sky』では今後も新しい追加コンテンツや、拡大したストーリーが語られるほか、ゲームプレイの不具合や不安定にも対応し、安定した体験を提供できるように改善していく予定です。
《葛西 祝@Game*Spark》

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