より良質な新作を世に― ファンプレックスが描くゲーム運営事業の未来とは | GameBusiness.jp

より良質な新作を世に― ファンプレックスが描くゲーム運営事業の未来とは

「ゲームの運営」に特化するファンプレックス。先駆者のいない分野を躍進するその背景と展望を、同社の執行役員 事業開発部長の村田卓優氏に伺いました。

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ファンプレックス株式会社 執行役員 事業開発部長 村田卓優氏


グリーが培ったソーシャルゲームの運営のノウハウを結集した"ソーシャルゲーム運営のプロフェッショナル集団"、ファンプレックス株式会社。ゲームの運営に特化しており、2019年5月現在は14タイトルを運営しているといいます。"ゲーム運営事業"という、先駆者のいない分野を躍進するその背景と展望とは? ファンプレックス執行役員事業開発部長の村田卓優氏にお話をうかがいました。

――本日はよろしくお願いします。まずは村田氏のご経歴からおうかがいできますか。

村田2010年にグリーに入社し、当初はグリープラットフォームにゲームを出していただけるパートナーを開拓する営業をしていました。当時はまだソーシャルゲーム黎明期といったところで、今はすっかり大きくなっているメーカーでも、まだ規模が小さかったような頃ですね。

やがて、ブラウザベースのWebアプリから端末へインストールするネイティブアプリの時代が到来し、2014年にはグリーが設立したスマートフォン向けアプリ開発スタジオのWright Flyer Studiosに移り、そこで事業開発に携わりました。具体的にはIPの協業案件を締結まで進めたり、ですね。その後、社でゲームの運営サービスに特化した子会社を作るという話が持ち上がりまして、そこで白羽の矢が立ったのが私でした。「お前はパートナー企業と仲がいいからピッタリだろう」と(笑)。

――丁寧に積み上げてこられたものが活かされる形となったわけですね。ゲームの運営に特化した事業というのはまだ分野としては若く、想像しづらい面もあるのですが、どのようなところにビジネスポイントを見出されたのでしょうか。

村田まず、スマートフォンで新作ゲームを一本リリースしますよね。すると、それまで開発していたメンバーがそのまま運営に移行してしまう。つまり、次の新作を作るリソースが足りなくなってしまうんです。ここ数年で、これが多くの企業様で問題になってきたと認識しています。

新たなゲームを作りたくてもリソースが足りない場合も。運営を移管することにより、新規開発に注力できるようになる

――そういった場合、一般的にはどのように解決を図るものなのでしょう。

村田一つは、新たに人を採用すること。二つは、なんとか社内で人をかき集めること。そして三つ目は、そのゲームのサービスをクローズし、新たなサービス(新作ゲーム)の開発に着手するというものです。

――どれも、選択に伴うデメリットも容易に想像できてしまいますね。

村田その通りです。際限なく人を増やし続けるわけにはいきませんし、人をかき集めても無理をさせてしまいます。今は一本のタイトルにかける規模やコストが大きくなっていますから、簡単にクローズしてしまうわけにもいきません。そんなときに、こうお声がけさせていただくんです。「それでは、私たちに運営を任せてみてはどうでしょうか」と。

実は以前、グリーのプラットフォームで、億単位の月商を出せているにも関わらず、新しいサービスの開発に着手するリソースが確保できないからそのタイトルをクローズしたいという企業様がおられまして。そういうことなら、私たちで運営を引き継ぎましょうかと申し出たのが始まりでした。なるほど、こういうニーズがあるのだ、と。

ゲーム運営事業が勃興した背景

――具体的には、どのように運営を引き継ぎするのでしょうか。

村田まずは移管作業です。その時点での運営と同じ数の人員を弊社から送って、運営と並行しながら少しずつ移管作業を進めていきます。仮に40人で運営しているタイトルでしたら弊社からも40人用意して、一時的に80人になるわけですね。移管作業自体は、大体2~3カ月で終わります。それまでにどのような運営をしてきたか、どのようなイベントなどを開催してきたかなどの洗い出しもこの段階ですべて済ませます。

それまでと同じことをして、ユーザーのみなさんにマンネリ感を与えてしまってはいけませんしね。詳細はお話できませんが、運営を続けつつ、移管作業も並行して行うのはノウハウが必要です。そのノウハウこそが、弊社の価値の一つだと考えています。それが済んだら、100%私たちのみでの運営に移行します。

――運営に特化しておられるということは、御社では開発はなさらないということでしょうか?

村田お引き受けしたタイトルで、それまでにない新たなイベントを行うことがあれば、それまでにない仕組みを新たに作ったり、UIの改善などを行うこともあります。弊社にはもちろんエンジニアがおりますし、そういう意味では開発もしています。

ただ、ラインを複数抱えておられる企業様では、どうしてもリソースのトレードオフが起きてしまうんです。「これはやった方がいい、やるべきだ」という改善点など見えていても、その上で「今はそれよりも新作の開発にリソースを割きたい」とか、「それよりもプロモーションにコストを充てたい」という結論になってしまうことは往々にしてあります。その点、私たちは運営中のタイトルだけに向き合えますから、そうした課題や改善点と真正面から向き合えるのも強みです。

――ソーシャルゲームが登場するまえのオンラインゲームから言えることでもありますが、サービスとしての側面も強いソーシャルゲームは、月日の経過とともにどうしてもDAU、ひいては収益が逓減していくことと思います。運営を引き継いだことで、そうした流れやそのペースに歯止めをかけられたと実感されるケースなどはありましたか?

村田はい。具体的なタイトルは申し上げられませんが、それまで月商が2億円ほどだったゲームを一時的に4.5億までハネさせた例があります。おっしゃる通り、運営を続けていくと収益は基本的には落ちていくものですが、安定した運営の実現や、サービスの高品質化/効率化に取り組み、確実にそのペースをよりなだらかなものにできるという自負はあります。

どうすればそうできるのかといいますと、究極的には「ユーザーの方々の高い熱量がどこにあるかを感知して、リクエストされているものをそれ以上のクオリティで出す。みなさんを飽きさせないゲーム、起動してもらえるゲームを実現する」ということになりますので、これをすればいいという答えはないのですが……。

――それがすぐ分かるものであれば、短期間でクローズするゲームの数ももっと少ないですよね……。運営を移管される際には、先方とどのようなやり取りをされるのでしょうか。

村田タイトルを買い取らせていただくこともあれば、運営用の固定費やレベニューシェアをお支払いいただくこともあります。その辺はケース・バイ・ケースですね。実は最近では、開発中のタイトルの運営を任せたいとお声がけしていただける案件も増えてきました。私たちが運営に特化してノウハウを集中的に積んでいることで、任せる価値=開発した会社がそのまま運営に入るよりも、運営フェーズから弊社に任せた方が価値があると判断してくださっているのだと思います。

ソーシャルゲームの運営移管には大きなメリットがある、と村田氏

――御社のように運営に特化する――言い換えれば、開発と運営の分業が成り立つようになったことにはどのような背景があるのでしょうか。

村田まず、この数年間で新作タイトルを作るために必要なコストと時間が大きく上がりました。その影響で、リクープするのがとても大変になっています。月商が1億~3億円のタイトルは、大手なら機会損失と割り切ってクローズの判断を下すこともあると思います。

――数字だけを見ると、大規模なタイトルでなければ十分にも思えますが、そうした判断にいたる理由をご教示いただけますか。

村田数字を分かりやすくして、たとえば開発費10億円、月商1億円のタイトルがあるとしましょう。まず、そこからプラットフォームにいくらか支払います。次に、運営しているのが30人だと仮定すると、人件費3000万円は飛んでいきます。人件費以外にも大きな部分としてはアート費用やサーバー費用、QA費用やCS費用などなどを含めると、そうこうするうちに、手元に残る利益は月に1000万円がいいところですよ。それを100か月……約8年間維持できればリクープできますが、現実的な数字ではありませんよね?

――なるほど……。

村田そしてこれは私の経験則によるものですが、月商1~3億円の規模のタイトルが、そこから10億クラスまでハネることは基本的にありません。そこで、私たちの出番となるわけです。そのくらいの収益規模でしたら、早くご依頼いただければそれだけお互いにメリットが得られます。ここ数年の日本のスマートフォンゲーム市場を見ると、1億~3億クラスの収益を出すタイトルは数倍に増えていますが、5億以上の数値を出せる"大作"の数は微減傾向にあります。1~3億円規模のタイトルは我々に任せて頂いて、皆様にはより大きなタイトルの開発に集中して頂く、そこに、私たちのような運営に特化した事業が道を切り開く道があると考えています。

国内スマートフォンゲーム売上の推移。5億円規模の売上をあげるゲームは微減傾向にある

――反対に、運営を移管することのデメリットやリスクとしてはどのようなものが挙げられますか?

村田運営の移管というものは、必ずうまくいくわけではありません。もし失敗してしまうと、どうにもならなくなってしまいます。弊社は経験を積んでノウハウを蓄えておりますのでそうした失敗の経験はありませんが、お話をいただいていざ引き継ぎの準備に入ってみたら、明文化されていないことが山ほどあって時間がかかってしまったことなどはあります。

また、移管がうまくいっても、そうしてまで作った次のタイトルが、移管していただいたタイトルより小さくまとまってしまってはどうにもなりません。それもリスクの一つであるとは言えるかもしれません。

――DeNA Games Tokyoなど、ゲームの運営に特化した企業は複数見られますが、そんな中での御社の立ち位置や得意分野はどのようなところにあるとお考えでしょうか。

村田グループ企業のタイトルの運営のみを受諾する、ゲームを商材と見立てて商社ビジネスのような取り組みをする、同時に運営できる数を追及する、数より質を追求する……ゲーム運営ビジネスは勃興したばかりで、今は各社が模索している最中だと思いますが、弊社では(運営の)質の高さを一番前面に押し出していきたいと考えています。まだまだ、何が正しいかはわからないんですけどね。

――それでは最後に、御社の目指す未来や展望をお聞かせください。

村田今の日本スマートフォンゲーム市場は、ユーザーとメーカーのバランスがすごく悪いと思うんです。サービス開始から3カ月でクローズされるタイトルも珍しくありません。「製品/サービスとして世に出した以上、最低でもこれだけの期間は続けなさい」というような法律はもちろんありませんが、それにしても不健全だと思うんですよ。ユーザーの方たちの中には、何万円をお支払いしてくださる方もおられるわけですし。だからこそ私たちは、もっと"最低限の責任"を持つべきだと思いますし、そういう気風になってほしい……いえ、そういう気風にしたいですね。私たちならその一助となれます。

ゲーム産業の健全化に、ゲーム運営企業が力になれると村田氏

村田とはいえ私たちはあくまで運営専門で、市場は新規タイトルを開発してくれる企業様あってこそです。そんなみなさんが良質な新作をさらに送り出して市場を盛り上げるために――そのための開発リソースを確保するために――私たちのようなゲーム運営企業に運営を移管するという選択肢を検討していただければ幸いです。

うれしいことに、近年は開発中のタイトルに関して、ローンチからの運営権を受諾いただける案件も出てきています。運営の移管は決してネガティブなものではないという認識が広まってきたからだと思いますし、私たちも自らのバリューを高め続けることで、ゲーム運営企業とのパートナーシップが実現するリソースの再配置のメリットをもっと広めていきたいですね。
《蚩尤》

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