Genvidは開発の効率化ではなく、新しいゲーム体験を提案するエンジンーGenvidキーマンインタビュー | GameBusiness.jp

Genvidは開発の効率化ではなく、新しいゲーム体験を提案するエンジンーGenvidキーマンインタビュー

ライブストリーミングゲームという新しいゲーム体験を掲げて、2016年に起業したGenvid。CEOのジェイコブ・ナボク氏と中嶋謙吾氏、そしてアドバイザーの和田洋一氏にビジョンや現状について聞きました。

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ライブストリーミングゲームという新しいゲーム体験を掲げて、2016年に起業したGenvid。

GDC2019では中嶋謙互氏のインディゲーム『SpaceSweeper』をはじめ、先行開発タイトルなどの発表も行いました。CEOのジェイコブ・ナボク氏と中嶋謙互氏、そしてアドバイザーの和田洋一氏にビジョンや現状について聞きました。

左から中嶋謙互氏、ジェイコブ・ナボク氏、和田洋一氏

◆Genvidは今までとは異なるメディアフォーマット


ーーGDCセッションを取材して、ゲームを「作る人」「配信する人」「遊ぶ人」という三者の関係性を再定義するサービスのように感じました。

ナボク氏だいたいあっています。弊社はすべてのゲーマーと視聴者が、ゲームの参加者になるという考えにもとづき、どこまで参加したいかを自由に決められる技術を提示したいんです。「僕は遊びたい」「僕は視聴したい」「僕は応援したい」・・・自分の時間で自分の好きなやり方でゲームに参加できるようなサービスは、これまでありませんでした。今までは基本的に遊ぶか、観戦するか、どちらかでしたからね。

これが「見るだけではなくて、ちょっとだけ参加したい」「5分しかないけれど、自分の参加で何かちょっとした影響を及ぼせるかもしれない」という楽しみ方が可能になるということです。これは今までとは違うメディアフォーマットだと思います。

実際、ゲームをプレイする時は、みんなゲームに集中していますよね。それは、そういうふうにゲームデザインされているからです。逆に言うと、そんなふうにしかゲームデザインできなかったとも言えます。これがGenvidのコンテンツだと、プレイヤーに対してさまざまな参加の仕方を提示できます。

ーーつまりGenvid対応にするには、それに適したゲームデザインが必用になるわけですね。

ナボク氏それが一番大切な考え方です。弊社は意図して「インタラクティブストリーミングエンジン」という言い方をしています。エンジンは何かを作る時に使うものです。弊社の技術も何か新しい体験を作る時に必用になるものだと定義しています。

ーー2016年に創業後、すぐにGDCに参加されて、今回で4回目の出展となりますが、現在のビジネスはどの段階にあるのでしょうか?

ナボク氏2016年のGDCではパワーポイントの資料しかありませんでした。その頃は半年くらい、視聴者参加型のコンテンツを作る際に求められるツールとは何か、業界内でヒアリングをしていました。その後、ある程度要件が固まってきたので、2016年の秋口から開発をはじめました。最初のバージョンをリリースしたのは2017年の1月です。

しかし、その頃はあくまでもゲームを軽くテストするためのものでした。そこから2年くらい技術開発を続けて、2018年の4月ごろに複数の会社がGenvid対応コンテンツを作り始めて、いろいろなデモを見せられるようになりました。そこからたくさんのフィードバックをいただいて、さらに技術を磨いていきました。

その後、2018年の9月頃に『Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)』の大会をTwitchと共に配信しました。かなり大規模な大会でしたが、これでGenvidが実際のサービスに耐えうることがわかりました。

また、この時にゲーム内で任意にカメラを切り替えたり、ミニマップを見たりといった、Genvidならではの視聴体験ができる「プレミアムチャネル」を10ドルで販売しました。同様の施策はその後の大会でも金額を変えて実施しています。これにより視聴者がeスポーツ観戦をする際に、よりよいサービスを求めて課金してくれることもわかりました。

一方で昨年秋には東京とロサンゼルスにオフィスも作りました。ロサンゼルスではライブストリーミングのオペレーションも行っており、東京もそれに続く予定です。これにより社員数も13人から40人弱にぐっと増加しました。他に20社以上の会社がGenvid対応コンテンツの開発を進めています。今年から来年にかけて、Genvid対応コンテンツがいくつか発表できる予定です。日本でも5社程度がGenvid対応コンテンツのプロトタイプを制作していますね。

他にゲームだけではなくて、スポーツなど、さまざまなエンタテインメントのコンテンツが開発中です。スポーツ中継の配信をブラウザで見ながら、カメラを任意に切り替えたり、選手のスタッツを見たり、他の視聴者と共に新しい応援スタイルを楽しんだりといったことが可能になります。


◆SDKを無料で配信中で、テストデプロイは無料で対応


ーー公式ホームページでUnityとUE4用にSDKが無償配布されていますが、たとえば僕が「じゃんけんゲーム」などのGenvid対応コンテンツを作って、配信することは可能でしょうか?

ナボク氏可能です。開発の際にはメールサポートやフォーラムなども活用いただけます。開発用のドキュメントも公式サイトに掲示されていますし、日本語にも翻訳済みなんですよ。SDKがバージョンアップするたびに2週間程度で日本語に翻訳しています。Genvidの日本向け公式サイトを制作中ですので、その公開にあわせて開示する予定です。中嶋さんが『SpaceSweeper』を作られた時も同じでしたよね? 公式サイトからSDKをダウンロードして、開発して、質問があったらフォーラムに問い合わせて・・・

中嶋氏そうですね。SDKをダウンロード後、手元のPCでチュートリアルを動かすのはすぐにできました。その後、ソースコードにSDKを組み込んで、コンパイルして、実行するのもすぐにできました。自分の場合はゲームエンジンではなくて、C++でフルスクラッチでしたが、問題なかったですね。その後ローカルのサーバ環境上で実行して、手元のブラウザでエンコードされた動画を視聴することも、すぐにできました。そこまでは一瞬でしたね。

ーーそれはすごい。

中嶋氏その後、ビルドしたプログラムをGenvid側に渡して、クラウド上にデプロイしてもらいました。Genvid側にそういったチームがあるんです。そのため、そこはノータッチです。座組によって違ってくると思いますが、『Space Sweeper』については、そんな感じですね。

ナボク氏デベロッパーがどのような座組で弊社と契約するかは自由です。AWSのデプロイから何から、全部やりたいのか。それとも弊社のサポートが一部必要なのか。デベロッパーに自由に決めていただくことができます。

ーーGenvidのビジネスモデルはどのようになるのでしょうか? 先ほどは一般ユーザーに向けてプレミアムチャネルの販売をテストされているとのことでしたが・・・

ナボク氏新しいことをしようとしているので、先に課金してしまうと、なかなかビジネスが広がりません。そのため現段階ではSDKは無料、開発も無料、テストも無料です。配信時には簡単なライセンス費用があり、月別のユニーク視聴者数によって課金するモデルを想定しています。

また、ブラウザ経由でアイテムを販売する際は、レベニューシェアも考えています。ただ、弊社は一般ユーザー向けに課金ビジネスをしたいわけではなく、ゲームエンジンのビジネスモデルに近しいスタイルを考えています。ディベロッパーが儲かれば、弊社も儲かるという仕組みです。

ーーまとめると、開発者は自由にSDKをダウンロードしてゲームを開発できるし、ビルドしたものを御社におわたしすると、AWSサーバーにデプロイもしてもらえると。

ナボク氏そうです。中嶋さんの『SpaceSweeper』は、まさにそうでした。『CS:GO』の場合はValveからソースコードをお預かりして、Twitchの視聴者向けに特別なUIを実装して、デプロイしました。UIなどの実装は協力会社との協業で行いました。これに対して配信やライブオペレーションは弊社が担当しました。

◆配信スタイルはディベロッパーが決定



ーー開発についてはわかりました。ただ、Genvidのエコシステムで重要なポジションを締めるのはストリーマーです。たとえば自分が発売後に『SpaceSweeper』を購入して実況プレイをしようとしたら、どのようにすればいいのですか?

ナボク氏Genvidの技術を使う方法はいろいろありますが、まずは一般コンシューマではなくて、企業がストリーマーになる方式を想定しています。ゲームのディベロッパーやイベント会社などがGenvid対応ゲームを配信し、そこに個人のストリーマーがジョインするイメージですね。

というのも、ひとことでライブストリーミングといっても、どのようなストリーミングの形態が望ましいかは、ゲームによって異なります。24時間ストリーミングしたほうがいいものもあるし、特定のイベントだけでストリーミングしたい場合もあるでしょう。どのスタイルが望ましいか決めるのはディベロッパーです。

中嶋氏一般のゲーマーが直接ストリームできない理由は何かあるんですか?

ナボク氏現状のSDKでは、コンシューマー向けの配信ソフトにまだ対応していないんです。その機能は開発中で、ちょっと時間がかかります。

中嶋氏なるほど。でも、それができたらすごいですね。みんながGenvid対応ゲームをプレイして、配信できるようになる。

ーー現状ではデベロッパーが直接配信して、ユーザーコミュニティとブラウザ経由でインタラクションをするという使われ方を想定しているわけですね。そして、そのためには、そうした使われ方を前提としたゲームデザインを考える必要があると。

ナボク氏そうです。

ーーわかりました。ただ、Genvidの民主化を進められた方がおもしろいですよね。

中嶋氏そっちの方が絶対におもしろくなる。

ナボク氏可能性はたくさんありますし、そうしたご要望もいただいています。ただ、開発リソースは有限なので、悩ましいんです。

ーーよくわかります。

ナボク氏配信者をディベロッパーに限定すると、Genvid SDKを組み込んだビルドは配信側にだけ用意すれば良いことになります。その方が対応はしやすいですよね。

ただ、最近になってディベロッパー側から、すべてのクライアントPCにGenvid SDKを組み込んだビルドをインストールさせたい、といった要望が出てきました。その方がさまざまな可能性が広がるからです。もっとも、そのためにはSDKのバージョンアップが必用になります。他にもいろいろとありますので、優先順位を切り分けて進めていきたいですね。

ーー最後に視聴者側ですが、何か特別なプラグインなどをブラウザにインストールする必要はありますか?

ナボク氏何も必要ありません。今GDCのブースで配信されているゲームも、Twitchの配信URLを叩けば、すぐにプレイできます。実際、GDCでデモしているゲームについては、配信URLを公開していないにもかかわらず、外部からプレイしているユーザーがいて、驚かされたくらいです、どうも3月20日に行った我々のセッションで『SpaceSweeper』のデモをしたところ、会場で配信URLをチェックしていた人がいたようです。

◆Genvidはクラウドゲームのコストを削減する


中嶋氏ゲーマーが自由にGenvid対応ゲームを配信できるようになれば、ぜひ「水槽を愛でるだけ」のゲームを作りたいですね。配信側は24時間ストリーミングしていて、視聴者はいつでもブラウザ上でエサをあげたり、新しい魚を増やせたりできるようなゲームです。たぶん、そのうちカオスになって、魚同士で共食いなどをはじめたりすると思うんですが、それはそれで見ていておもしろいという。

まあ、サーバ版でもいいんですけどね。でも、企業は儲かるか否かわからないものに投資できないので。それよりもユーザーが好き勝手に配信したほうが、絶対におもしろくなるじゃないですか。



ナボク氏ただ、そのためにはコストがかかるんです。Genvidではクラウドゲーミングに必要な3つのコストを削減することを考えました。第1にGPUのコストです。通常クラウドゲームを配信するには、1ユーザーにつき1つのGPUを割り当てる必要があります。

そうすると、ユーザーの増加に比例してコストがかかります。これに対して1つの配信を大勢で視聴すると、GPUの数も1つですみます。第2に帯域コストです。クラウドゲーミングでは動画配信のコストが事業者側に課せられます。

しかしGenvidのビジネスモデルでは、動画配信のコストはTwitchとYoutubeの負担になります。第3に遅延の問題です。ゲームをストレスなく遊ぶには、遅延を30ms以内に抑える必要があります。しかしTwitchでは1秒から30秒くらいの遅延が発生します。そこで直接的ではなく、間接的なインタラクションで楽しめるものにしました。

ーー遅延の問題でいえば、ライムライト・ネットワークスとの提携を発表されましたね。インターネットで専用線なみの低レイテンシーを実現する技術を持つ企業ですが、具体的な提携の狙いと取り組む課題について教えてください。

ナボク氏弊社を起業した時、ほとんどの企業はTwitchとYoutubeの対応を望んでいました。日本ではこれに加えて、時々OpenRecの名前が挙がったくらいです。しかし大手パブリッシャーの中には、自社のインフラを使いたい、自社の課金システムを使いたい、自社の顧客データを守りたい、といった要望が出てきました。

また、内製エンジンの活用を始めとして、すべてを自社環境で揃えたいという要望が出てくることも予測されました。実際、企業に行くとまず聞かれるのが遅延の問題で、次に聞かれるのが自由度の問題です。特定の広告を出したい、特定のリンクを出したい・・・TwitchやYoutubeでは、何かと制限があることも少なくないですからね。

こうしたニーズに対応できるようにするために、今回の提携に至りました。遅延を限りなく減らすためには専用線を使うのが効果的ですが、コストがかかります。これがライムライト・ネットワークスの技術を使うと、遅延をかなり押さえ込めます。

実際、Genvidとライムライトの技術を組み合わせると、誰でも手軽にブラウザ上でゲーム実況サービスを作ることが可能です。ブラウザ上で配信先をTwitchやYoutubeから、そうした専用サイトにワンクリックで切り替えることもできます。ゲームエンジンでゲームを作ると、マルチプラットフォーム対応が簡単にできるじゃないですか。Genvid対応ゲームの配信先サイト対応も、それくらい手軽なものにしたいですね。

ーー遅延は少ない方が望ましいですし、ライムライトの技術でそれが可能になれば望ましいですよね。今回の提携でそうしたことが可能になればいいですね。

ナボク氏ありがとうございます。そして、これはGenvidの可能性がゲームだけではないことも示しています。スポーツ中継などを配信する際に、TwitchやYoutube以外の配信サイトを使いたいという希望があるかもしれませんよね。我々もどんどん対応していきたいと思っています。

ーー来年は東京でオリンピックも開催されますし、追い風になりそうですね。一方でそうした非ゲーム以外の展開は、たとえばスポーツであればESPNを筆頭に、全方位で考えられていますか? そちらの方が市場が広がりそうな気がします。

ナボク氏私もそう思いますし、いろいろと仕込み中です。今年は欧州でも営業オフィスを開設しますので、欧州の事業者とも話をしています。また、アメリカではハリウッドとの事業提携との可能性もあります。ゲームエンジンを使って3DCGキャラクターを表示し、ライブコンサートをするような場合は好例で、Genvidの技術を用いることで、視聴者は複数のライブカメラを自由に切り替えて配信を楽しんだり、ブラウザをタップして応援したり、投げ銭をしたりすることが可能になります。

一方でスマートフォンがあれば、今や誰でも手軽にVtuberになることもできます。であれば、この両者を組み合わせて・・・といったアイディアも考えられますよね。そういった体験も手がけていきたいですね。

ーーまさに映画『サマーウォーズ』のような世界が広がっていきそうですね。

ナボク氏私もそう思います。

◆Genvidならではの新しい広告マネタイズも提案


ナボク氏続いて、別のデモの紹介もさせてください。


これはEpicGamesと一緒に作った『UnrealTournament』によるデモです。視聴者はブラウザ上で特定のキャラクターをクリックすると、ずっとそのキャラクターを追いかけて視聴できます。また、キャラクターを応援するために炎のマークを表示させることもできます。

ご存じの通り、ローカルPCで表示されるストリーミング映像は、それぞれの視聴環境に応じて遅延が発生しますが、この炎マークは遅延状況に関係なく、どの視聴者の画面でも同時に表示されます。一方で、あるキャラクターを応援したくないと思ったら、キルボタンをクリックして退場させることもできます。

ーー視聴者映えしない競技者は投票で殺されたりする・・・などのゲームも作れてしまうわけですね。

ナボク氏そうですね。最初にプレイヤーと視聴者の境目がなくなるといいましたが、これがまさにGenvidでやりたいことです。僕はコントローラーを握ってプレイしたい、僕はプレイヤーを応援したい、僕はキルボタンで退場させたい・・・一つのゲームを巡っていろんな楽しみ方ができるようになります。

別の例では東京のインディゲーム開発会社、ActEvolveさんと一緒にGenvid対応のVR競技ゲーム『BlitzFreak』を作りました。


摩天楼を跳び回りながら3対3で対戦する、e-Sportsを意識したアクションゲームです。これを使って昨年の9月に大会を行いました。このゲームでは視聴者は配信を見ながらチームに「いいね」を送ることができます。その結果、実況者はなぜ各々のチームで「いいね」の数が違うのか、配信中によく解説を行っていました。こうした解説のスタイルもこれまでのゲームでは見られなかったことです。

格闘ゲームの例もお見せします。チリのデベロッパー、AOne Gamesが開発している格闘ゲーム『オーメン・オブ・ソロー/ザ・ダーク・ストラグル』です。


このゲームでは対戦の配信中、視聴者はブラウザ上でボタンを押すと、各々のプレイヤーのコマンド入力をリアルタイムで表示させられます。対戦の勝ち負けにポイントをかけることもできて、オッズもリアルタイムに変化します。

こんなふうにGenvidにはたくさんの活用事例があります。弊社はまだまだ小さい会社ですが、本当に多くの会社がGenvidの技術を使って、いろいろなおもしろい体験を生みだしてくれています。日本オフィスも昨年11月から本格稼働して、現在は2人しかいませんが、あと3~5人は採用する予定です。ライブオペレーションのスタッフと営業スタッフ、そしてエバンジェリストを、それぞれ採用する予定です。テクニカルディレクターも大募集中です。

中嶋氏他に新しいタイプの広告も表示させられるんです。僕のようなインディゲーム開発者には、非常に重要な要素なんですよ。

ナボク氏ゲーム空間上に配置されたオブジェクトに対して、テクスチャのようにターゲティング広告を貼れるんですよ。未成年者が視聴している場合は、ゲーム中に清涼飲料水のロゴが表示されるし、大人の場合はビールのロゴが表示されるといった具合です。国別に広告を変えることもできます。

中嶋氏厳密にいうと3D空間上のどの位置に、どの向きで広告を表示するか、サーバ上から座標情報を毎フレームごとに送って同期させているんです。これはGoogleにはできないタイプの広告出稿ですね。これを応用すると、『SpaceSweeper』を無料ゲームで配信する際に、おもしろい広告を仕込むことができます。

『SpaceSweeper』は平たく言うと、ゴチャゴチャしたフィールドを掃除して、更地を広げていくゲームなんです。その時に更地ではなくて、広告を表示させられるようになるんですよ。オブジェクトを掃除していったら、だんだんその広告が見えてくるという。

ーーなるほど、それはおもしろいですね。

中嶋氏別にゲームの中で処理をやってもいいんですが、面倒くさいじゃないですか。それがGenvid対応にすれば、ゲーム側から座標を送るだけで、Genvid側からオーバーレイで地面の上に広告を表示させられるので、とても簡単なんですよ。それをブラウザ上で見てもらえれば、良い宣伝になって、マネタイズにも貢献できます。

他に『テトリス』でテトリミノの列がそろった瞬間に広告を表示させて、そのままフラッシュして消す、といったこともできます。座標だけでなくて、フレーム単位で広告の表示・非表示を切り替えることもできるんです。

◆Googleの存在はGenvidにとって追い風


ーー最後にこれからのゲームの話についても聞かせてください。タイミング良く今年のGDCではGoogleがStadiaの発表をしましたね。ライブストリーミングにも追い風になりそうですが、対応を誤ると暴風に巻き込まれて難破するリスクがあるとも思います。

和田氏Googleの発表は、これまでゲーム業界が進化してきた中で、今この瞬間で必要なものをすべて提供しますよという感じなんですね。クライアント側ではなくてサーバ側でゲームをストリーミング配信しますよと。Youtubeで見ている視聴者がブラウザ経由でジャンプインするのも簡単ですよと。

そうなるとゲーム会社とユーザーとのインタラクションが必然的に変化していきますよね。ユーザーもライブストリーミングというゲーム体験になれてきて、だんだんと高度なものを求めるようになる。そうなると、Genvidが求められていくというわけです。だからGoogleさんがStadiaで、どんどんサービスを広げてくれると、我々にとってもありがたいですね。

ーー確かに、これまでにない市場であり、ユーザー体験なので、ものすごいエネルギーが必要になりそうですね。

和田氏僕らはGenvidがおもしろいと思って作っているんですが、話だけ聞いてパッとイメージできる人って、そんなにいないんですよ。だからYoutubeを見ながら友達が遊んでいるゲームにジャンプインするようなことを、どんどん広めてもらえると、開発者もユーザーもライブストリーミングに対して、イメージがしやすくなると思うんです。

そうするとGenvidも、それにのって急成長できると思うんですよ。それにGoogleさんは、Genvidのようなサービスにあまり興味がなさそうだし、やる気も無いと思うので、追い風だと思います。

中嶋氏実際、Stadiaが流行ってくれるとありがたいですね。

和田氏我々はこの濁流に乗って進むのみです。サーファーですよ。


ーー日本のゲーム業界は閉塞感がありますよね。産業構造がここ数年変化がなく、モバイルベースのF2Pゲームで市場が寡占状態になっているので、各社共に利益率が低下しています。そうした中でGenvidのような新しい提案が出てくると、新しいアイディアをもったインディやベンチャーが入ってきて、活性化することが期待されます。

ナボク氏まさにそのとおりですね。コンソールのゲーム開発は時間がかかりすぎる。一方でモバイルのゲーム開発は市場が飽和状態で成功しづらい。だから何か新しいことをしたいという日本の会社から、問い合わせが熱心にあります。いま複数の日本企業がGenvid対応ゲームのプロトタイプを開発しているのも、そうした背景があります。

中嶋氏誰もがGenvid対応ゲームを配信できるようになったら、ユーザーが『SpaceSweeper』のMODやエクステンションを作って、自由に配信できるようにしたいですね。そうなると、絶対にもりあがりますから。

ーーいまゲーム業界でもブロックチェーンゲームが静かな盛り上がりを見せていますが、Genvid向けのコンテンツで何度か触れられていた「投げ銭」システムなどは、まさにブロックチェーン技術に向きそうですね。そんな風に、新しい技術がカジュアルに使えるようになってきたことで、新しいゲーム体験が期待できそうです。

ナボク氏そうなるとTwitchやYoutubeではなく、新しいゲーム実況サイトを自分たちで作って、マネタイズにつなげるといった必要性が出てくるかもしれませんね。多くのミドルウェアやツールは開発の効率化を促進することが目的ですが、Genvidはゲームのプロデュースや企画に刺激を与えられる技術なんです。だから我々もよく「何か一緒に新しいことをしませんか?」と提案しています。

ーーいろいろと夢が広がりそうですね。ありがとうございました。
《小野憲史》

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