【e-sportsの闇】ゲームイベント(大会)は儲かるのか。イベント運営者に訊く | GameBusiness.jp

【e-sportsの闇】ゲームイベント(大会)は儲かるのか。イベント運営者に訊く

「プロゲーマー」や「e-Sports」、「優勝賞金1億円強のゲーム大会開催!」などの言葉が飛び交い、ゲーマー以外もゲーム関連のニュースを目にすることが多くなってきました。

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「プロゲーマー」や「e-Sports」、「優勝賞金1億円強のゲーム大会開催!」などの言葉が飛び交い、ゲーマー以外もゲーム関連のニュースを目にすることが多くなってきました。

特に大会運営に関しては、ゲーム企業やPC関連企業以外にも大手食品メーカーや携帯キャリア企業、テレビ局各局がプロチーム設立やスポンサードを行うなど、「ビジネスとして成立する」と見込んで参入する企業がかなり増えてきている印象です。

ゲーム業界全体にとっては明るいニュースではあるのですが、そもそも本当にゲーム大会は「ビジネス」として成立するのでしょうか。我々ゲーマーはただ単にゲームを楽しんで、同じ熱量で、同じ熱狂を、同じ空間で共有したいだけなのに、よくわからない企業が「スポンサーです」といって登場…。さまざまな考え方や意見があると思いますが、今回はプロゲーミングチーム運営およびコミュニティイベントなどを開催する株式会社忍ismのチョコブランカさんに「ゲームイベントは儲かるのか?」というお話を聞きました。




――本日はよろしくお願いします。最近はニュースやテレビでも「e-Sports」が取り上げられることが増えています。忍ismもイベントたくさんやっていますよね。

チョコブランカ:はい。いろいろなタイトルでやらせていただいている状況です。

――正直、儲かりますか?


チョコブランカ:よく聞かれるのですが、自分たちがやっているところに関しては儲かっていないです。

私たちが主催するイベントはイベントそのものが1度も黒字になったことはなく、会場費、事前準備や当日の人件費、機材・機材運搬費等かかるコストで常に赤字です。

もちろん「儲かるよ!」と言う会社さんもあると思うのですが、それはもうちゃんとパブリッシャーさんなどから自社の利益も含んだ形で「案件」として受注されていて、それで運営できている方たちや営業機能をしっかりと持っていてお金を出してくださるイベントスポンサーが複数ついている方たち。そういった会社は儲かっていると思うのですが、基本的に私たちがやっているような(コミュニティ発の)「イベント」は儲かる仕組みができていない部分だと思います。なので弊社自体は儲かっていないですね。

――何を目的にイベントをされているのでしょうか

チョコブランカ:コミュニティやそこにいる一人一人のプレイヤーのみなさんを盛り上げたいというところですね。プロゲーマーになる前にゲームセンターで仕事をしていたのですが、その時からイベント運営をすることが好きだったんですね。いろいろなプレイヤーさん達が来てくれて、大会をモチベーションにしてゲームをやってくれて、ゲームセンターに来る人が増えてイベントを運営して交流できて、盛り上がっていく様が楽しいと思っていました。それをずっと続けているだけですね。

――イベントに際してスポンサーは集めたりはしないのですか

チョコブランカ:弊社が主催でやるイベントに関しては、許諾などの関係もあるので、参加費無料・賞金無しで運営しています。これは北米に限ったことではなく日本も同じだと思っているのですが、ゲームのコミュニティイベントはパブリッシャー側との信頼関係で成り立っていますので、あくまで「黙認」していただいている我々が勝手にビジネス・お金儲けをするわけにはいきません。

もちろん、パブリッシャー側と「無償使用許諾」等の書面を交わしたうえでイベント運営をする場合は、パブリッシャー側了承のもとスポンサーを募るケースもあります。とはいえスポンサーがつくイベントは、参加規模が大きかったり、視聴者が多かったりするイベントが対象になってくるので、自分たちがコミュニティをサポートするためのイベントというところでは規模が全然小さいものがほとんどですし、パブリッシャーさんへの配慮は怠ることはできませんから、毎回すべてのコミュニティイベントにスポンサーをつけられるような状況ではないんですよ。

――仮に規模が大きくなったらスポンサーを募ることを検討するのでしょうか


チョコブランカ:できることであればパブリッシャー側との信頼関係をキチンと確立したうえでしていきたいとは思いますが、そもそも私たちがやっている運営は「規模を大きくしていこう」とか「お金を集めよう」といったイベントにすることが目的ではありません。コミュニティが小さかったり(もしくは無かったり)、「続けていくのがしんどい」というようなコミュニティをサポートするためにやっている部分が大きいので、なかなか急激に大きくなったりするというのは難しいです。ほとんどのケースが「参加者をどう集めよう」、「30人集めるのも大変だっ!」というような草の根的なところなので、そういったところを盛り上げていこうと考えています。

――基本は忍ismでは「ゲーム大会」という形が多いのでしょうか

チョコブランカ:基本はゲームのイベントで、あえて大会と言わないようにしています。初心者から上級者、プロでも誰でも参加できる楽しいイベントにしたいという想いがあります。どうしても大会と言ってしまうと、初心者が参加してもいいのかためらってしまうようなハードルの高さが出てしまうので、そういったハードルを無くしたくて、あえてイベントと言っています。Tokyo Offline Partyというイベントもトーナメントを実施しているのですがそれも「Party」って付けるようにして、誰でも参加していいんだよ、と。イベントの楽しさを知ってもらって、それが楽しいと思ってもらえればゲームを続けていくモチベーションや理由になるかなと考えています。でも中身は交流できるような、ランダム2on2とかを組んで、無理やり交流を生み出せるようなこともやっています。あとはじゃんけん大会もやっています。

――タイトルは『ストリートファイター』以外も実施しているのですか

チョコブランカ:今は『ストリートファイター』以外がほとんどです。いま忍ismでやっているイベントとしては、Tokyo Offline Party、Tokyo Drift Party、弊社の運営ではないですが、『スプラトゥーン』のSplat Japan League(SJL)プラチナムカップをスポンサードしています。『スプラトゥーン2』に関しては、他の方々が運営されてきたイベント自体をスポンサーする形を取っています。SJLに関しては個人の方が中心となり、自費で運営しています。スプラトゥーンについては現時点で公式イベントが「ナワバリルール」のスプラトゥーン甲子園しかない、その一方でコミュニティのプレイヤーたちは「ガチマッチ」のハイレベルな戦いを観戦したい・応援したいという声も多い、と。そこで、よりコミュニティが必要としているイベントをやっていきたい、世界中のスプラトゥーンコミュニティが望むものを形にしたいというお話だったので、それを応援させていただく形でスポンサードしました。

SJLプラチナムカップは「海外選手の渡航費」「会場費」「日本人選手交通費」「宿泊費」など本来運営側が身銭を切るか、イベント参加費を充てないと持ち出しになってしまうところをすべて弊社で負担しています。もちろん、それ以外にお金を出していただけるようなスポンサーさんはつけられませんし、パブリッシャーさんに黙認していただけるだけの信頼度を担保していく必要がありますから、できるだけ多くの方々に観戦して、楽しんでいただけるような仕組み、参加費無料でチームの参加条件もウデマエ制限なしでどんなチームでもエントリができる「予選(入れ替え戦)」を実施してもらうなど、極力すべての運営に関する情報や参加する側の参加条件がオープンなイベント運営を主催の方にお願いしています。…とはいってもやはり勝ち残るのは実力のある強豪チームなのですが、そこはどんなゲームタイトルでも同じということで。

――コミュニティを応援するイベントは面白いですね

チョコブランカ:本来はパブリッシャーがあって、パブリッシャーがなにかしらの目的でお金を出して、それを受諾した運営会社がイベントを運営して、そのお金を使ってコミュニティを盛り上げていく。コミュニティが盛り上がればゲームタイトルの寿命は延びパブリッシャーに返って行くという循環構造があって、それが機能するとみんなが幸せに盛り上がれるんですが、今の日本だとパブリッシャーがコストを掛けて育てていくというところが少なかったり、業界団体で固まって中央集権型で代理店さんを据えて、スポンサーさんを集めて、自分たちでやっていこう…みたいな風潮がありますよね。これって「コミュニティとパブリッシャーが信頼関係のもと手をつないで二人三脚で発展してきた北米のe-Sportsコミュニティ」とは異なる流れになっていて、一言でいうと「コミュニティとパブリッシャーが分断された状況」になっていると思うんですよ。そうなるとどこかが割を食わなければならないんですね。


例えばスプラトゥーンのコミュニティ運営者の方だったりうちが持ち出しで頑張らなきゃならないのもありますし、運営者がいないコミュニティもあったりします。パブリッシャーさんからしたら「我々はコミュニティにそういうことしてくれと頼んだ覚えはない」っていう一言で終わってしまう話なんですが(笑)そこを無理やり「コミュニティが望んでいるのはこれなんだ!」「こういうイベントをやったら喜んでくれる人たちがいるはずだ!」って勝手にパブリッシャーさんの代わりにコミュニティ側のリスクマネーを担保してその構造を作り出そうと動いているのが忍ismです。

――Platinum Cupについては大会をスポンサードしているのでしょうか

チョコブランカ:はい。大会自体をスポンサードしています。「大会をスポンサードしているならどこかのイベントで収益上げてるんじゃないの?」とよく言われたりします。

――いやいや、イベントは儲からないぞ、と?

チョコブランカ:スポンサーがほかについているわけでもないですし、全然収益は上がってないんですけどね。コミュニティ自体に良くない流れもあったりするんですよね、例えば、うちの選手を出すならここのプラットフォームでしか配信しないでくださいとか、そういうのも無くしたいな、と思っています。それってお金を払って独占の配信権を買われているスポンサー企業さんやプラットフォーマーさんなら話は分かるんですが、スポンサーは弊社1社だけの無料のコミュニティイベントですからね。あくまで主役は世界中のコミュニティのプレイヤー一人一人。見る側の視聴者に対して1営利企業や1参加チームの利益・事情が優先されることはあってはならないと思っています。こういったコミュニティの発展の妨げになるんじゃないかなというところも正したくて。しんどいけど楽しいから頑張っています。

――Tokyo Offline Partyは専門学校の会場からスタートしましたよね

チョコブランカ:はい、東京アニメ・声優専門学校さんに場所をお借りして開催しました。

――会場費はかかりますよね?

チョコブランカ:基本、かかりますね。Red Bullさん(Red Bull Gaming Sphere)とかだと今年はかからないですけど、イベント形式やスケジュールの都合上毎回無償でお貸しいただける会場をお借りするわけにもいきませんから。なるべく安く済ませるためにやっているのが、晴海埠頭だとか大田区産業振興会館PiOだとか、ちょっとアクセスは良くないけれどコストが低くなるところを探してやっています。

――意義のあるイベントだから無料で貸し出すよっていう施設が結構あるのかと思っていました

チョコブランカ:なかなかないですね。Red Bullさんも大人気で予約でいっぱいなので、なかなか借りれないです。初めから赤字を大きくすると続かないので自分たちなりに工夫してコストを抑えながらイベント会場は探しています。


――赤字という言葉が出ましたが、イベント自体は赤字なのでしょうか

チョコブランカ:赤字ですね。うちの持ち出しです。イベント運営以外のところでe-Sports関連のコンサル業務などで会社としてお仕事をさせていただいて稼いだお金、あとは代表のももちが海外で獲得してきた他のゲーム大会の賞金だったり、いろいろありますけどそれをイベント運営に突っ込んでやっています。なので、会場費もそうですし、当日のスタッフさんのコストもそうですし、機材も自前で用意していますし、運搬もそうです。事前準備や当日運営も全部自費です。

――コミュニティからの反応はいかがですか

チョコブランカ:タイトルによりますね。コミュニティがまだできていないタイトルとか、オフラインイベントが今まで開催されていないタイトルとかだと「何だろう?」という感じです。コミュニティが未成熟なタイトルについては、エントリするまでの意識の部分での参加のハードルが高かったりとか、認知を獲得するまでのハードルが高いので、地道にやっていくしかないと思っています。格闘ゲームとかはゲームセンター文化からずっと大会文化があるので、そういうタイトルだと集まりやすい傾向にはあります。

――『頭文字D Arcade Stage Zero』はどうですか

チョコブランカ:今年は「頭文字D Arcade Stage Zero」のキャラバンイベント「走り屋交流会2」の運営を弊社で担当させていただいております。年間4回の地方イベントを運営させていただく予定なのですが、全4回だとケアできる範囲・場所が限られてしまいます。

そこで、コミュニティイベントの盛り上がりを1つ1つの点ではなく継続的な線にしたかったので、弊社側から自社主催のコミュニティイベント「Tokyo Drift Party」の企画を提案させていただきました。こちらは当初お任せいただいた交流会イベントとは直接関係がないものでしたが、セガさんはこのご提案を歓迎して下さり、専用のゲーム内アイテムをそのイベントのために用意して下さいました。

先日第一回「Tokyo Drift Party」をRed Bull Gaming Sphereでやらせてもらったんですが、そこでも色々課題が見つかりました。コミュニティイベントがほとんど実施されていないタイトルですと、プレイヤーはそもそもそれ自体がどんなイベントなのか想像がつかず、気になるけれど参加するにはハードルが高かったようで。第一回のイベント生放送を見たことで、「参加すればよかった」とか「次回があれば絶対参加したい」という声をいただき「1から作っていくというのはこういうことなんだな」と。

これまで『頭文字D Arcade Stage』はセガさん公式でキャラバンイベントや大会を実施されており長い歴史があるのですが、頭文字D Zeroコミュニティは若年層が多く、大会・イベント運営者が少ない現状があります。ですので、どんどんその輪を広げていきたいなと思っています。

――筐体などはどうされたのでしょう


チョコブランカ: 筐体はセガさんから貸していただく形で、無事開催することができました。2台1セットで実施したのですが、筐体自体が大きいのでRed Bull Gaming Sphereには分解しないと入らなくて、かなり大変な搬出入作業が発生しました。それにも関わらず「コミュニティのために」とセガさんがなんとかして下さいました。こうしたパブリッシャーさん側からのご支援というのは非常にありがたいことだと思っています。ご担当者様は「コミュニティイベントの拡大に協力していきたい」と仰っておられましたので、他にも同タイトルの運営者が増え、少しでもコミュニティとタイトルが活性化・継続するよう私たちも動いていきたいです。

――「e-Sports」というキーワードを振りかざして、ビジネスをやろうという風潮が日本の社会で起きそうだなと感じています。参入を始めた企業が期待しているところと、コミュニティが期待している点の乖離があると思うのですが、どう感じていますか

チョコブランカ:現状、日本はコミュニティ側に一部の大人の方たちがやりたいことを押し付けるという傾向があると思っています。いわゆるパブリッシャーさんやそこから許諾を取った一部の企業さんたちからのトップダウン型。でもそれはコミュニティやプレイヤー達が考えるものと乖離していることが多いと感じています。元々ゲームセンターや家庭用で日本のコミュニティを運営してきた方達や、海外のコミュニティを運営してきた方達は、コミュニティが望むものを形にしてきたんですね。

でも、現状はそうではなくて、普段はお金やスポンサーのことばかりを追いかけファンやコミュニティのケアをおざなりにしてしまっている大人達がやりたいことを押し付けているように見えます。そういう現状があるからこそ、双方の方向性を上手い具合に調整できる役割になりたいですし、自分達がそのためにいると思っています。

コミュニティはIPだったりタイトルを自由に扱う権利はないからこそ、純粋にゲームを楽しんで、楽しさを追い求めていくことができます。一方で、パブリッシャーさんはビジネスができます。その反面IPやブランドをきちんと守っていかないといけないという責任・使命もお持ちです。コミュニティが好き勝手にタイトルを消費してしまうと、そのタイトルが10年20年と愛されていくための障害になることもあり得ます。そういう「見極め」と「ブランドコントロール」を慎重にやらなければいけない分、パブリッシャーさんは権利を持っていますが、様々な判断やお金の使いどころが難しいんだと思います。

パブリッシャーさんが単純にお金を払いたくないわけではなくて、コミュニティ側のマナーやルールが整っていないので、逆にそこにリスクがあるのでコストをかけづらいという部分もあると思います。そこを両者が手を繋いでやっていければもっと広がると思っています。当然ながら、そこに至るまでには多くのクリアしなければならない課題はあるかと思いますが。

――コミュニティへの還元やユーザーが喜ぶ施策を行えているのはアプリゲーム会社だと思っていて、売上をユーザーに上手く還元できていると思います

チョコブランカ:そうですね、ゲームを遊んでくれている人の数が多いと様々な選択肢が取れると思いますし、たしかにそう思います。一方でユーザー数がいないとコミュニティにお金をかけられないですし、お金をかけるにしても方法が違うところもあると思います。

例えば最近e-Sports関連でよく見かけるスターを発掘するというようなイベントは良いと思うのですが、スターを作れるのはコミュニティだと思うんですね。見つけたり出てくるキッカケのところを作るのはパブリッシャーで、スターの卵を醸成しその価値を高める、要するに応援してくれる人を増やしていくことはコミュニティにしかできないと思っています。スターはお金で作れるものではなくて、コミュニティの想いが詰まってこそ輝けると思っているんですね。

全国のどこかの土の中に埋まっていてそれを掘り出しても見つかるものではないですし、輝けるものではないと思っています。プロアマ一切の肩書にとらわれず、勝つためにひたすらそのゲームをプレイして、いい試合をして、そのうえで輝いて、多くの人に応援されて、たくさんのプレイヤーの目線の先にいる存在、それが未来のスターなんだと思うんですよね。そういう存在が誰なのか、答えを知っているのはコミュニティの人たち一人一人だと思うんですよ。

みんな誰かしら心の中で応援したいプレイヤー、ついついその人のプレイが気になってみてしまうプレイヤー、地元が一緒だから、ゲームを教えてもらったから…何かしらの理由で「心の中の気になるプレイヤー」がいるはずなんです。それが誰なのか、どういう人が多くのプレイヤーの心をひきつけるのか、動かせるのか。そういうコミュニティの人たちの声に耳を傾けることこそが大事ですし、未来のスター発掘につながる近道だと思っています。

――「強いだけではダメ」「ゲームが上手いだけではスターとは言えない」ということですね

チョコブランカ:結局そこにコミュニティの想いが乗ってないとスターにはなれないんじゃないかと思います。スターが輝いているのはお金の輝きではなくて、コミュニティの想いの結晶だからなんですよ。真のスターはお金でできているんじゃない、みんなの想いでできているんです。自分たちも『ストリートファイター』のプロゲーマー育成を通して、「コミュニティの方々1人1人の思いが未来のスターを育ててくれるんだな」と実感しました。

――「でも、こういうことをやりたいんだ!」、と考えている企業がいた場合はどうしたら良いのでしょうか

チョコブランカ:そこはバランスだと思っています。ではどうすればバランスがとれるかといいますと、そこはやっぱりコミュニティと手を繋ぐことですね。現状色々なタイトルでそれぞれの企業様の思惑があると思いますが、なんだかんだでコミュニティと対話をしながら一緒に共存していくのが良いと思います。先程言ったリスクもあるので企業様やパブリッシャーさんにとっては難しい部分もたくさんあるとは思いますが。

――コミュニティイベントでも「イベントを行うのであればパテントを払うべき」「他のタイトルと並べるな」という話もでたりでなかったり?

チョコブランカ:「他のタイトルと並べるな」については権利元のパブリッシャーさんが理由があって言う分には正当な主張と思います。ただ、コミュニティのイベントなんだから、少し寛大に見てくださいよ(苦笑)みたいな個人的な意見を思うときはありますけどね。

あと「イベントを行うのであればパテントを払うべき」というお話ですが、これって要するにパブリッシャーさんのIPを使用するからには無料・有料イベント問わず「パテントを要求する」というお話なんですよね、実際にこの考え方をパブリッシャーさんから示されたことが最近ありました。

こうしたコミュニティライクとは反対の考え方(無償許諾ベースのイベントについてもMGやパテントを要求する)が日本のパブリッシャーさん側から示されたことについては非常に残念な気持ちでしたね。ちなみに無償許諾のコミュニティイベントからMGやパテントを取ったところで何十億円も使って新しいタイトルを開発されているようなパブリッシャーさんがそこから取れる金額って実はそこまで大きな金額ではないんですよね。そう考えると、純粋に黙認していただく形での関係値の構築ですとか、信頼の担保ですとか、そういうのを抜きに許諾を取らずに勝手にイベント運営を行って儲かっている人もいたり、ゲームバーが問題になったりしているわけなんですが、そういった問題へのアプローチ、釘を刺すためにこういう考えを掲げられているのかなぁという捉え方もできます。

とはいえ、いずれにせよこうした無料イベントからもMGやパテントを取ろうとするような風潮は長い目で見たらよい選択とはいえない、得られるものに対しての失うもののほうが大きい、と私は考えているのでこのお話のパブリッシャーさんにはぜひともコミュニティライクだった以前の方針に戻っていただきたいなぁと思っています。こういうやり方をしていくと早晩コミュニティだけが消費されてしまい、焼き畑になってしまいますので、今は様子を見ながら、我々のほうが機会を待っているような感じですね。

――お金のためにゲームをやるっていうのは違和感がある気がします

チョコブランカ:自分もよくテレビに呼んで頂くのですが、いまの段階では「賞金総額がいくらです!」といって視聴者の注目を引くことは自分なりに理解はしています。「e-Sportsってなんだろう」とか、「ゲームの大会ってありえない」というのが世間のイメージだと思うので、ゲームを全く知らない人にそこで注目を引いて知ってもらうという意味ではフックとして必要なんですよね。ただ、あまりに賞金が注目されすぎて違和感はありますね。

もともとゲームをやる目的ってそれじゃないですし、普通に考えたら各タイトルごとにゲームをプレイしているプレイヤーの中でも「e-Sports」的な要素に興味を持っているのは一部のプレイヤーだけですからね。多くのプレイヤーにとっては賞金やお金は関係ないですし、そこが前に出すぎてしまうと、本来のゲームは楽しむための娯楽である、という根本が置き去りにされてしまいます。全キャラクターのパラメータが同じ公平性を担保したスポーツゲームとか、まったく性能が同じキャラだけで戦う格闘ゲームとか、面白くないじゃないですか。でも賞金やお金、あとはスポーツかスポーツでないかみたいなことを突き詰めるとゲームってそういう方向に話が進んでしまうのではないかなぁと思っていまして。なんだかなぁと。

――プロゲーマーは賞金のためにゲームをやっているわけではないと

チョコブランカ:そうです。私もそうですが、ももちもお金のためにやっていないですし。私たちの世代でプロゲーマーになった周りの格闘ゲーマーの皆さんは「その瞬間の一番になるため」にひたすらゲームセンターでゲームをして戦ってきた人たち、積み上げてきた人たちだと思っています。

その人たちに結果としてスポンサーがついたり、チームに所属して給料をもらうようになっただけで、おそらくは今でもゲームの「1試合1試合の価値」は変わらない、相手がプロでもそうでなくても真剣勝負の価値そのものは変わらない、と思っているでしょうし。根本の部分である「誰にも負けたくない」「一番になりたい」という部分がすべてである、ということ自体は今も変わっていないんじゃないでしょうか。実際のところはご本人たちに聞いたわけではないのでわかりませんが、私の知る限りでは「賞金のためにやっている」人がいるのかなぁ…という感じです。

――別にゲームが好きなだけですよね


チョコブランカ:先ほどもお話ししたとおり、勝ちたいっていうだけですよね。「不動」というプロゲーミングチームもそうですし、今年から『スプラトゥーン』のチームとしてはじめた「花鳥風月」のメンバーも「チームで勝ちたい!」「楽しいからやりたい!」というだけで、「ゲームでお金を稼ごう」と思っていないんですね。「ゲームをやっていて報酬をもらうということがそもそも自分の中で頭になくて」みたいな、今の最前線でやっている日本の格闘ゲーマーたちの何年か前と同じようなことを面接のときに言う子たちなんです。みんな純粋に「好き」なんですよ、『スプラトゥーン』が。

海外では「お金のためにゲームをやるぜ!」という人も結構いたりするんですが、日本人は名誉や喜びのためにやってきた人が多い印象です。もちろん私もプロゲーマーとして活動をしてきたのは海外のe-sportsチームですし、チームメイトたちが「賞金があったこと」によりいかに救われたか、人生の転機になったか、を生で見てきていますので賞金自体の存在は否定しません。賞金だったり報酬自体は無いよりはあった方が良いと思うんですよ。でも、今の日本の風潮には違和感しかありません。そんなに賞金賞金って、まるでお金のためにゲームやるみたいじゃないですか。

日本の場合は海外と違って「好きでゲームをしてきた人たち」がそのまま時代の流れでプロゲーマーになって、ゲームだけで生計をたてられているケースが多いわけで。稼げるから、賞金が欲しいからゲームをやるということにはつながらないと思うんですよね。でもマスメディアやニュースでの大人の人たちの取り上げ方はなんでもかんでも「賞金総額」から入る。先ほどもお話ししたとおり別にそのためにゲームやってる人って割合的には決して多くないと思うんですよね。そこに違和感はありますね。

――賞金のためにゲームをやること自体は否定をしないということですね。海外に比べて賞金自体は少なく感じます

チョコブランカ:そうですね、その存在自体は否定はしません。賞金総額については国内でいえば上がってきてはいますが…。そもそも賞金ってもらえる人も上位の人達だけですし、それだけだと単発で終わっちゃってe-Sportsとしてのタイトルの取り組みが長く続かないような気もしています。そうなると、結局スポンサーがつかなくなったら終わり、放映権やライセンス料を高額で買ってくれる企業さんがいなくなったら終わり、みたいな。

――日本だと何百万円とか何十万円の世界ですが、海外では桁が違って、夢があると思います

チョコブランカ:けど、数千万円ぐらいじゃそんなに人生変わらないですよ。高額な賞金をもらっているプレイヤーも過去の所属チームにいましたが、やはり「人生」みたいな少し引いた尺度で見た場合、大事なのは高額な賞金ではなくて、プロゲーマーとしての在り方や、人との付き合い方、スポンサーやファンへの配慮だとか、人間性みたいなところかなぁと思っています。
高額賞金って一瞬の夢は見れるかもしれませんが、それ以上に自分の人生の一定の時期をゲームと付き合って過ごす、人によってはプロゲーマーでなくなった後もゲームと付き合って生きていくわけですからね。キッカケとしての「夢」も必要ですが、私は個人的には地に足の着いた冷静さも大切だと思います。

――結局は熱量で、中途半端な気持ちで動いてしまってはダメなんだと思います

チョコブランカ:そうですね。正しい構造で「よい付き合い方」を模索しながらパブリッシャーとコミュニティのお互いが協力しあってできるのが一番良いと思います。

――そこの架け橋になるのが忍ism?


チョコブランカ:そうなりたいです。私達は上場を目指すような企業ではなく自営業みたいなフットワークの軽い組織なので稼いだお金は好きにどこにでも使えるんですよ。もちろん、メンバーと相談のうえで、社内で稟議などもしっかりと案件ごとにやってはいるのですが、そのうえでももちの賞金であったり、自分たちがイベント運営以外の部分で稼いだお金だったりを自由に好きなところに使うことができる。でも上場されているような大きい会社さんはそういうわけにいかないじゃないじゃないですか。自分たちがやらないとコミュニティが小さくなってしまう、なくなってしまう、そういう「自分たちを必要としてくれるところ」に私たちが入れば、業界や市場単位で見ればプラスになると考えています。

――メディアもそうですが、公式はできないけど第三者だからこそできる、という部分もあります

チョコブランカ:パブリッシャーさんが迂闊に思ったことを言えないところやフットワーク軽く動くことができないところと、コミュニティが届けられない熱量といいますか、気持ち、「自分たちがこのタイトルを好きで、支えてきたんだぞ!」という部分のどちらもわかるような気がします。会社のメンバーもゲーム好きしかいないので、会社の稼いだお金をどんどん投資して、理解して一緒にやってくれるメンバーがいるのでやれるというのはありますね。そういった意味で弊社は特殊であるかもしれません。

――「e-Sports」という言葉自体はどうでしょう

チョコブランカ:流れで「e-Sports」というキーワードを使ってしまいますが、「e-Sports」がスポーツかどうかはどっちでも良いと思っています。が、その一方で本当に盛り上がればいいなぁと思っています。

―――改めて問いますがゲームイベントでビジネスはできますか?

繰り返しになりますが、コミュニティだけではビジネスを成立させることはできません。つまりはタイトルが少しでも長く愛され、存在していくためにはその生みの親であるパブリッシャーの協力が不可欠です。でも、お互いの役割というのがちゃんとあると思っていて、そのバランスをうまくとることで両者がバラバラに存在するよりも、より相乗効果を生み出すことができるはずなんです、本来は。少なからず私はそういったコミュニティを見てきました。我々はこれからもパブリッシャーとコミュニティの間でよい意味で懸け橋となるような存在でいたいと思っています。忍ismのモットーである「ゲームと人を繋げる」というのはこういうことだと思いますので、頑張ります。


ゲームビジネスの形は本当に多岐に渡ります。今回のお話は業界全体の一部分の話ではありますが、私たちゲーマー自身も納得できる方向に進んでいけるよう、さまざまな声を拾っていく予定です。
《森元行@Game*Spark》

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