コヤ所長とタミヤ室長が語る「VR ZONE Project ican」で得たアニメIP、VR化の秘策―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第48回 | GameBusiness.jp

コヤ所長とタミヤ室長が語る「VR ZONE Project ican」で得たアニメIP、VR化の秘策―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第48回

ゲーム開発 バーチャルリアリティ

コヤ所長とタミヤ室長が語る「VR ZONE Project ican」で得たアニメIP、VR化の秘策―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第48回
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筆者は本コラムでここ1年程、VRエンターテインメントの多様な状況を追ってきましたが、その最初を飾ったのが、株式会社バンダイナムコエンターテインメント(以下、バンダイナムコ)が2016年4月15から10月10日の期間限定でお台場のダイバーシティ東京プラザに設置したVRエンターテインメント研究施設「VR ZONE Project i Can」(以下、VR ZONE)でした。そのときのインタビューに対応いただいたのが、バンダイナムコエンターテインメント AM事業部 エグゼクティブプロデューサー 小山順一朗氏(以下、コヤ所長)。その際、VRを使ったアーケード施設が如何に従来のアーケードゲームとは違うのか、如何に多様なジャンルを厳選して、「アクティビティ」に落とし込んだのかについて語っていただきました。ですが、その後、VR ZONEでは、往年のリアルロボットアニメの金字塔「装甲騎兵ボトムズ」を題材とした『装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎』とガンダムの手のひら上でザクからの強襲を体験する『ガンダムVR「ダイバ強襲」』を展開。お台場でのVR ZONE終了後も、試験的に東海地区や大阪でいくつかのVRアクティビティを展開しつつ、17年2月20日から4月14日まで、東京ソラマチ3F12番地の特設会場で『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の公開を記念した『ドラえもんVR「どこでもドア」』(以下、『ドラえもんVR』)を運営するなど、矢継ぎ早に人気作品のVRアクティビティを開発してきました。これらのVRアクティビティはサービス終了まで常に予約が取りにくい程の盛況ぶりとなりました。

更につい先日、エヴァンゲリオンへの搭乗をVRアクティビティ化した『エヴァンゲリオンVR The 魂の座』(以下、『エヴァVR)』のメディア体験会を実施したばかり。なお、同アクティビティは、2017年夏にオープンを予定している超現実エンターテインメントVR ZONE SHINJUKUのメインコンテンツのひとつ。このような状況下、なんと、前述のコヤ所長と、同社AM事業部 AMプロデュース1部 プロデュース4課 マネージャーの田宮幸春氏(以下、タミヤ室長)が筆者の地元である京都で5月20日と21日開催されていた、A 5th of BitSummitのステージイベントに登壇したのです。テーマはズバリ、「アニメIPのVRを創る時に考えるコト」。というわけで、さっそく講演の模様をリポートします。

VRアクティビティを創造するうえで重要なのはマシンに頼らずに実在感を上げる「体感デザイン」

講演は、タミヤ室長が「Proect i can」プロジェクトの理念について言及するところからスタート。このプロジェクトは「さあ、取り乱せ。」というキャッチコピーとともに「本能に訴えかける最高の実在感を伴うVRエンタメ(体験)を追及するプロジェクト」であるとし、それを実行するために、「あらゆる手段で最高の実在感を追及するため」に体感筺体をつくっているとのこと。ただ、筺体と同様に重要なのが「体感デザイン」であるとし、今回のステージは主にそれについて語るとタミヤ室長は説明しました。

アニメIPのVR化で重要なのは、「王道展開」と「現実の超解釈」

ただ、一般的なVRアクティビティと、アニメIPのVR化を進めるうえでの大きな違いは、考え方の順番が逆だとタミヤ室長が言及。これについて、コヤ所長は、一般的なVRアクティビティを企画する際は、まず現実の実在感に如何により近づけるのかを意識して体感デザインを考えるとコヤ所長。これは、「ある意味、自分たちにとっては都合がよかった」とタミヤ室長は補足します。具体的には、高いビルで恐怖を実感させるために、なんの説明もなくビルから外向きに板が出ていることや、なぜかその板の先にネコがいて、プレイヤーはそのネコを助けなくちゃならない状況にあるとしても、その背景となる理由づけはあまり必要ないといったことを指すとのこと。これに対し、アニメIPの場合,IPとしての現実が既にある中で、そこからどんな体験を切り出したらいいのかを探さないといけないとコヤ所長。
アニメに登場する場面という限定されたシーンから,どんな体験を生み出すかを考えなければならなかったとのこと。だからこそ頭をひねらなければならない結果になったとタミヤ室長。

そこでチャレンジとなったのが「現実の超解釈」だったとタミヤ氏は言います。それは、アニメやマンガの場合は、物語を通して受け手の感情をどうコントロールするかに主眼が置かれているため、作り手が「見せたい絵」を優先して描けるように都合良くつくっているとタミヤ室長。その具体例としてあげたのがエヴァのパイロットの視界。設定では、操縦者の神経がエヴァに接続されていることから、あたかも自分がエヴァになったような視点である可能性もあるものの、劇中では主人公のシンジが操縦桿を動かしているシーンもあったりすることから、どうようにデザインするべきか迷ったとのこと。





実は、『機動戦士ガンダム戦場の絆』(以下、『戦場の絆』)の開発時も同様のことで悩んだ、とコヤ所長は当時を述懐しました。とりわけ、ホワイトベースにおけるモビルスーツ収容デッキを劇中の設定にあわせて忠実に再現しようとすると、同じく収容されているガンキャノンなどピッタリくっつけざるを得なくなってしまい、劇中シーンの雰囲気が再現出来なくなってしまったとコヤ所長。 結局、『戦場の絆』ではホワイトベースの寸法を本来の設定の3倍位、拡大せざるをえなかったとのこと。一方、タミヤ室長は、『ドラえもんVR』のときにどこでもドアで悩んだとのこと。というのも、どこでもドアである世界にいった際、ドアが空いたままの状態でどこでもドアを裏側から見たとき、その先がどのように見えるのか分からずさんざん議論したとのこと。これは、のび太の部屋からどこでもドアで南極に行くシーンでのこと。


(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2017

結局、どこでもドアを開けっ放しのまま、ドアの裏にまわると、南極が見えるようにしたとのこと。これは偶然、映画のワンシーンでそのように表現しているカットを見つけたことからそれをそのまま採用したとのこと。これらに加え「そもそも」論で頭を抱えてきたのが寸法問題だったとタミヤ室長。その具体例として、エヴァンゲリオンの身長をコヤ所長があげました。シーンによっては50メートルにも、100メートルにも、無限大のように見えることもあったと言います。一方、どこでもドアの場合も感覚的にいいサイズにすることの難しさがあったと、タミヤ室長は当時の苦悩を明かしました。設定を解釈し、辻褄を合わせるのに苦労するものの、プレイヤーにその理屈を納得してもらうのはさらに大変とのこと。ただ、こういった苦労を突破することで、「こうなっていたのか!」というプレイヤーの感動も開発者に必ず届くことから、超解釈を徹底的にコンテンツとして落とし込むことがVRでIPコンテンツを開発するうえでの頑張りどころだとタミヤ室長は強調しました。

プレイヤーが求める王道体験を提供する

また、アニメIPのVRを企画するうえでの重要なポイントとして「プレイヤーが求める王道体験」を考えるべきとも。これについて社内のブレインストーミングでは奇をてらったものになりがちとし、その具体例として「桃白白になって,自分の投げた柱に乗って飛ぶ」(「ドラゴンボール)」といったものや、「みんなでお酒のみたい!」(「ONE PIECE」)というものだったとのこと。しかし、企画を立てるうえで重要なのは、プレイヤーがその世界観に入り込んだとき、「まず何してみたい?」を大事にするべきとタミヤ所長。これは、VRを未体験のひとが多いことから、「見慣れた王道」を再現しても必ずいままでにない体験になるからだと言います。なので、王道を逃げずにVR化したらどうなるかを追求して欲しいとタミヤ室長はその重要性を指摘ました。この点について、コヤ所長は、『エヴァVR』での開発秘話について言及。80メートルもの巨体を動かしたときの構造はとか、パイロットの視点から見たエヴァの腕はどう見えるのかについて真剣に話し合い、おそらく巨大クレーンの先を見ているような感覚になると話し合ったとのこと。これについて、「操縦桿のレバーひとつを動かすのすら怖くなるのでは」と、タミヤ所長はさらに想像を働かせます。このように、王道体験のリアリティを徹底的に考えていくのが重要としました。

ヒーローの追体験はVR体験では禁じ手?

その一方で、王道のシチュエーションは提供しながらも、ヒーローではなくプレイヤー、自身の体験をさせるようにと付け加えました。これは、エヴァにのる体験は限りなく現実感を感じさせつつも、プレイヤー自身をシンジにしてはいけないことを意味します。なぜなら、ヒーローのように活躍できない自身に、プレイヤーが落胆してしまうことから。逆にヒーローなみの能力を与えられてしまった場合は、あまりにも荒唐無稽過ぎて、実感が湧かなくなってしまうとも。タミヤ室長はこれを「実在感の崩壊」を称し、この状況を回避するために体験者はあくまでも一般人としてその世界に参加する設定をつくりあげることが肝要としています。そのためにVR ZONEの開発チームとしては、プレイヤー体験について「世界を夢見た通りにしながらも、そこにいるのは紛れもない自分自身」であるといことを重視したとのこと。例えば『エヴァVR)』の場合、プレイヤー自身がエヴァに乗った場合、どうなってしまうのだろうということを追及したとタミヤ室長。そうすれば、思ったように操縦できなくても、使徒にエヴァを倒されてしまったとしても、プレイヤーは納得してくれるとコヤ所長。

これらを踏まえ、アニメIPのVR化を進めるうえで重要なのは、「多くの人がまずやりたい!と思う王道体験を想像力豊かに現実解釈することで」、プレイヤーに「期待を超えるギャップを創ること」とタミヤ室長。それを実現するうえで「空想科学読本」よろしく現実世界の現象と向き合いながら、VR化するとプレイヤーは「夢が叶った!(王道体験)」と感じると同時に「こうだったのかー!(現実解釈)」という驚きをVRで提供できるとタミヤ室長は言います。これにより、参加者には「期待通り!予想以上!」を体験させる、つまりVRやりたい!といって参加したプレイヤーが予想以上だった体験を提供できるとコヤ所長。「期待と、それを超えるギャップ」を提供することが出来、その結果、プレイヤーは、「確かに凄い」と思ってもらえる体験になるとタミヤ室長。



そして、最後にこういった体験をVR ZONE SHINJUKUで用意しているので、楽しみにして欲しいと参加者に期待を持たせながらイベントを終了しました。昨年の4月にVR ZONEが展開され1年強が経っていますが、サービスとしてのVRも確実に進化しているようです。そして当初展開してきた、多岐のジャンルに及ぶ、オリジナルコンテンツに加え、今回紹介していた、アニメIPのVR化などを経て、いよいよ、あらゆるジャンルのVRがエンターテインメントとして展開されることが期待されるだけにこれからが楽しみです。
《中村彰憲》

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