特撮体感VR 大怪獣カプドンの開発に見る、カジュアルなアトラクション系VRとカプコンが目指すアトラクション系VRの今後の展望―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第47回 | GameBusiness.jp

特撮体感VR 大怪獣カプドンの開発に見る、カジュアルなアトラクション系VRとカプコンが目指すアトラクション系VRの今後の展望―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第47回

2016年からアーケードシーンにVR設備が続々と投入されるようになりましたが、その中でも往年の怪獣モノのワンシーンを彷彿とさせるような作品が話題となりました。それがカプコンによる『特撮体感VR 大怪獣カプドン』(以下、『カプドン』)です。

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2016年からアーケードシーンにVR設備が続々と投入されるようになりましたが、その中でも往年の怪獣モノのワンシーンを彷彿とさせるような作品が話題となりました。それがカプコンによる『特撮体感VR 大怪獣カプドン』(以下、『カプドン』)です。おなじく、カプコンによる『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『バイオ7』)が徹底的にVRによる実在感を追及したのに対し、『カプドン』はプレイヤー自らが怪獣になって、街を破壊しながら子供怪獣を救い出すという、現実ではあり得ない設定。


作風も全般的に往年の怪獣モノの雰囲気を作り上げながら、建築物もコミカルなデザインで『バイオ7』と同作は同時進行で開発されながら、まるで両極に位置づけられるかのよう。そのようなこともあり、以前から気になっていた作品なのですが、関西で開催されたCG、VFX、VRに関する総合イベントIndustoryに参加されていた際、試遊させていただくとともに同作ディレクター中井実氏、プログラム担当の村蒔友夕基氏、そして企画担当の北川優一氏に『カプドン』開発の背景とその経験から得たアトラクションとしてのVRの可能性について伺うことが出来ました。

中央がカプコン ディレクターの中井実氏、左が企画担当の北川優一氏、右がプログラム担当の村蒔友夕基氏

たった3か月という開発期間を与えられた中、世界中の人に遊んでもらえる作品としてのテーマを絞り込む

――まずどのような経緯でこの作品が生まれたのか教えてください。

株式会社カプコン ディレクター 中井実氏(以下、中井):2016年の5月末頃、「アーケード店舗にVRゲームを置きたいので、9月中旬までに開発できますか」という依頼がありました。

――えっ?3か月ですか?

中井:そうですね。失敗や手戻りは全く許されないという状況です……。とにかく綱渡りの連続だったので、きちんと完成できて良かったなと改めて思いますね。

――どういった経緯で怪獣というコンセプトにつながったのでしょうか?他のVRコンテンツの研究などは進めていたのでしょうか?

中井:VRコンテンツは常にプレイして研究していますが、本作品についてはVR系からのインスピレーションはなかったですね。世界のユーザーは日本ならではのVRコンテンツを見たいと考えているでしょうから、「それならやっぱ怪獣モノだよな」という発想に自然と至りました。怪獣ファンは世界中にいますからね。

――怪獣をテーマにすることでゲームデザインとして意識した点は?

中井:プレイヤーが怪獣になるというデザインはすぐに固まったのですが、その時点で自分の足をトラッキングしないと、建物を足で潰したりできないねということになり……

――トラッカー付サンダルを足に装着すること自体、斬新ですよね!

Vive Trackerが装着された特製サンダル

中井:Vive Controllerを足へ装着することについては、6月の段階でHTC社に相談しましたが、その時はさすがに担当者の方が「え?」って感じでしたね(笑)。あと基本的にVive Controllerは2本までしかトラッキングできないので、色々と苦労して、ほとんど裏ワザみたいな感じで4本で動くようにして、サンダルに取り付けました。Vive Controller付きのサンダルを見て、HTC本社の方は爆笑してましたね(笑)。8月頃にはVive Trackerを試作中だというお話を伺い、9月頃にはプロトタイプの機材を特別にお借りすることができました。ですので『カプドン』を稼働して数日後には、そのVive Trackerのプロトタイプに交換して動かしています。

Vive Controllerを足に装着!機転を利かせることでこれまでにないVR体験を

――6月の段階で御社から手以外の部位にトラッカーをつけるという提案がなされたことが、Vive Trackerの開発につながったってことは(笑)?

中井:さすがにそれはないと思いますよ(笑)Vive Trackerは足につける以外にもひじ、バット、カメラなど、様々な部位に装着できるというのがポイントですので...

――アーケード用ということで、その他に意識した点は?

中井:やはり安全にプレイしていただく、という点です。ただ安全対策も含め、全て自分たちで1から構築しなければいけなかったのと、さらに当然ですがゲームも開発するという状況だったのでちょっともう、いろいろ大変でしたね(笑)。



(機材の装着をはじめる筆者)...中井ディレクターから操作方法を伺いながら、HTC Viveのヘッドマウントディスプレイも装着...ワイヤーが絡まないように中井ディレクターに対応してもらいつつプレイを開始する...

ここで『カプドン』のゲームプレイ内容を改めて説明します。プレイヤーは怪獣となって、自分の周りにある街並みをとにかく破壊し続けます。ゲーム中は大怪獣映画よろしく、プレイヤーの破壊状況をアナウンサーが怪獣映画の雰囲気たっぷりに実況。途中でヘリコプター、戦闘機などが攻めてきますが、これらは口から吐く火の玉で応戦します。子供怪獣を救出するとステージクリア。スコアは被害総額で報告されるところにウィットを感じました。






そして、プレイ後に...

――これだけの完成度のものを3か月で作るというのはどう実現したのでしょうか?

中井:頭を使ってたくさんの必要なプランを立てて、とにかくロスが起きないように動き回りました。Unreal Engine4(以下、UE4)を使っているので、色々と助かることも多かったですね。最初から最後まで本当に大変でしたが、初めてのことを経験するのは楽しいし、アーケード店舗で深夜に作業したりするのは文化祭みたいなノリで面白かったですね(笑)。

――プログラマーとしてはどうでしたか?

株式会社カプコン AM開発室ソフト開発グループ 村蒔友夕基氏(以下、村蒔):私は3か月の開発期間のうち2か月目から参加しました。なんて無茶なと思いましたね(笑)。過去にはいろいろ修羅場も経験していますので、大変ではありましたがモチベーションが下がるということはなかったです。参加前は(他部署ながら)大変そうだなと思っていただけだったのですが...

――実際にプロジェクトに参加してみていかがでしたか?

村蒔:ブループリントの存在が印象深かったですね。今回はじめてブループリントで開発をしましたが、かなり新鮮でした。デザイナーの方でもUE4を使いこなしている方の中にはブループリントを使える方もいらして、非常に助かりました。従来、アセットがバラで送られてきてプログラマー側で改めて組み立てていたものが、今回はデザイナー側である程度パッケージングされた状態で納品され、かなり手早く実装することができました。今後こなれていけば、開発効率ももっと上がっていくと思います。

――企画担当者としてはどうでしたか?

株式会社カプコン AM開発室企画グループ 北川優一氏(以下、北川):UE4のマーケットプレイスを活用することで、短期間で開発を進めることができました。マーケットのコンテンツは商用でも利用が可能で、活用すれば個人でも気軽にゲーム開発が出来るので、本当にすごい時代になったなと思います。またやはり、HTC様の協力を得られたというのも開発としては大きかったですね。

――あと、実際にプレイしてみて、全く酔わなかったのですが、どのように工夫しました?

村蒔:細かいノウハウは色々ありますが、まずはフレームレートですね。90fps(1秒あたり90フレームを描画)を絶対守れるようにしました。PCも当時、最高スペックのものにこだわりました。

――1ステージあたりにプレイ時間も快適に感じました。

北川:お一人あたりの体験時間は10分を想定していて、ゲームそのもののプレイ時間は3分程度になっています。

アトラクション系VRはまだまだ広がっていく!『カプドン』そしてアトラクション系VRのこれから

――今後の『カプドン』ですが、もともと3人位からはじめ10名までだったとのことですが、チームとしてはどうなるのでしょう?

村蒔:チーム自体は既に解散しているんです。今回のチームは商品化のためにとにかく出来る人を短期間で集めたという形でしたので。Viveについては、今後ワイヤレス化も予定されているとのことですので、積極的に取り込んでいきたいですね。

中井:怪獣モノなので、小さなお子様からも遊びたいと言っていただけるのですが、残念ながら今のところVRデバイスには年齢制限がありまして……。ですが近いうちに条件は緩和されそうですので、親子で一緒に遊べるようにしたいなという考えはあります。

――カプコンといえば、『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『バイオ7』もVRにフル対応していたのですが、なにかノウハウを共有するといった試みはあったのでしょうか?

村蒔:『カプドン』のメインプログラマーが、『バイオ7』にも関わっていました。あと、サウンドは別の担当者でしたが、交流自体はありました。

――アトラクションとしてのVRと、ゲーム機向けVRで何が違うと思われましたか?

中井:コンソールはじっくりと腰を据えて長時間遊ぶものが多いですが、アーケードはふらっと行って、短時間で遊ぶものが多いです。あとはグループでワイワイ遊んだり、広いエリアを利用して、体を使って遊べるというのが利点ですね。

――企画担当として、今後どんなアトラクション系VRをつくりたいですか?

北川:今はユーザー自身が新しい発見をしている段階です。お客様もプレイしてとにかく驚かれる方が多いですね。なので、そのあたりを刺激するものがつくりたいですね。『カプドン』のように体を動かすものや、ホラーなどのジャンルがVRに向いていると言われるのは、この「驚く」という行為と親和性が高いからで、結果的に今はそこが一番クローズアップされているわけです。ですが、VRゲームプレイに慣れ、VRが日常生活に溶け込んできたときに、じゃあ次に何が出来るのか、ということは今から常に考えておかないといけないことだと思います。

――ではアトラクション系VRに関する今後の展望を教えてください。

北川:我々としては、今後もアトラクション系VRをやっていきたいと考えています。VRは2016年にブームになり、その後、少し落ち着いた感があるのですが、ある程度落ち着いてもまだまだ成長期ですし、継続的に新作を出し続けていくことが市場に残るひとつの方法だと考えていますので。

中井:『カプドン』については海外展開の話もありますので、そのようなルートで今後も広がっていくと考えています。ですが知見を広めてノウハウを得るために、『カプドン』以外のVRゲームもどんどん開発するべきだと考えています。

――ありがとうございました!
《中村彰憲》

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