BASICで学ぶゲームプログラミング~『プチコン3号』が高校の授業に導入された経緯とは? | GameBusiness.jp

BASICで学ぶゲームプログラミング~『プチコン3号』が高校の授業に導入された経緯とは?

ニンテンドー3DSで、BASICを使ったプログラミングが楽しめる『プチコン3号』。このソフトが大阪府立泉尾高校で授業に導入されることになりました。その経緯や狙いについて関係者に集まってもらいました。

人材育成 学校
左から大見真一先生・中村泰孝校長・小林貴樹社長・徳留和人取締役  
  • 左から大見真一先生・中村泰孝校長・小林貴樹社長・徳留和人取締役  
  • 対談は校長室で和気あいあいと行われた
  • 学校側のキーマンで情報の授業も担当する大見先生
  • 中村校長の鶴の一声でプロジェクトが実現に踏み出した
  • 左から小林貴樹社長・徳留和人取締役
  • イメージキャラクターの「ハカセ」(小林貴樹社長)もかけつけた
  • 94年の伝統を誇る泉尾高等学校
  • 大正もの作りフェア2015で模擬授業を実施
ニンテンドーDSで「BASIC」によるプログラミングができる『プチコン』シリーズ。中でも昨年11月にリリースされた最新版『プチコン3号 SmileBASIC』はBASICで立体視によるビジュアル表現が可能になるなど、さらに機能がパワーアップしました。ユーザーの投稿プログラムを商品化した『プチコンマガジン』をニンテンドーeショップで発売するなど、さらなる広がりもみせています。

この『プチコン3号』が2015年秋から大阪府立泉尾高校で授業に導入されることに決定しました。『プチコン』シリーズとして初となる公立校での授業展開となります。はたして、どのような経緯で決まったのか。なぜ今BASICなのか。今後の展望は。さまざまな疑問がうずまくなか、関係者による座談会が行われましたので、その模様をお届けします。

【出席者】

■大阪府立泉尾高等学校 
 校長:中村泰孝先生
 首席 総務部部長:大見真一先生

■株式会社スマイルブーム
 社 長:小林貴樹
 取締役:徳留和人  

ネットで『プチコン3号』の記事を見て、これええやんと



―――今日はよろしくお願いします。公立高校の授業にBASICが、それもニンテンドー3DSで動作する『プチコン3号』という形で導入されることに正直、驚いています。今日はそういったところを、いろいろと教えていただければと思うのですが、はじめに話の発端から教えてもらえますでしょうか?

大見: もともと、うちの学校ではニンテンドーDSを使った授業支援システム「ニンテンドーDS教室」が導入されていました。ただ、いろいろな理由があって、次第に利用度合いが減っていったんです。せっかく機材があるのに、うまく使えないのはもったいないと思っていたんですよ。そんなおりにネットで『プチコン3号 SmileBASIC』の記事を見て、「これはおもしろいんじゃないか」と。

小林: ちょうどそのころ、任天堂さんから弊社の方に「大阪でニンテンドーDS教室を使っている高校があるんですけど、興味ありませんか?」という連絡がありまして。ちょうど弊社ではニンテンドーDSを使ったBASICのプログラミング環境『プチコン』シリーズを出していまして、ニンテンドー3DS向けに最新作『プチコン3号』をリリースしたころでした。それで徳留に聞いたら「興味ある!」と。

徳留: さっそく大見先生に連絡を取らせてもらって、状況を確認させてもらったんです。ところが、ニンテンドーDS教室は教師が使うPCと、生徒が使う多数の端末(ニンテンドーDSi)が一つのシステムになっていて、新しいソフトが入れられなかったんですね。

小林: もし学校にあるニンテンドーDSiが活用できるようなら、それに『プチコンmkII』を導入するやり方もあったと思うんですが。

徳留: それで弊社としては「ニンテンドーDSiも使えないし、どうせなら新しい環境で、最新の開発環境で授業をされた方が、子供たちのためにも良いんじゃないでしょうか?」と提案させていただいたんです。といっても、New ニンテンドー3DS LLと『プチコン3号』の組み合わせで、別の意味での「最新」なんですが。








※『プチコン3号 SmileBASIC』のゲーム画面。懐かしい黒地に白の文字。シンプルなゲームから高度なグラフィックを持つゲームまで。制作したゲームは公開することが可能。


『やったらええやん』で即決



―――いつくらいの話なんでしょうか?

徳留: たしか今年の1月末くらいでしたよね?

大見: そうですね。2年生と3年生で「社会と情報」という授業がありまして、2年生は必修、3年生は選択科目です。その3年生の授業で『プチコン3号』を使ったBASICのプログラミング教育をするということで、話がまとまりました。ただ、今年度から校長が新しく替わることになり、いったん3月で話がストップしてしまったんです。

―――ああ、良くある話ですね。せっかく現場レベルで話が進んでいても、トップが替わることで話が振り出しにもどるという。

大見: 中村校長が着任されて二日目に、「勝負決めよう」と思って行きました。「すみません、お時間いただいてよろしいですか? こんな話があるんですが」って。そうしたら「やったらええやん」と言ってもらえまして。即答でした。

中村: すごい遠慮がちなんですよ。何をびびっとるねんと。

―――いや、しかしそれが普通でしょう。

徳留: 実は僕らも最初、戸惑いがあったんです。民間企業の製品を公立高校の授業で使ってもらうなんてことが、許されるんだろうかと。学校さんが良いと言われても、教育委員会や行政や、いろいろめんどくさいことがありそうじゃないですか。

中村: いや、そういう意味でいうと、学校が企業さんからいろいろと力を貸してもらうなんてことは、今では当たり前なんですよ。たとえば企業に就労体験させてもらうのも、広い意味ではそうですよね。かといって、そこの企業に優先的に就職させるわけじゃない。あくまでボランティアで協力してもらう分には大歓迎です。もっといえば、工場のおっちゃんを連れてきてモノ作りの話をしてもらうとか、そういうのと一緒なんです。ただ、そこに金銭が発生すると「なんでその会社だけ発注するんですか」みたいな、ややこしい話になってくるんですが。

―――ということは、機材については・・・

徳留: New ニンテンドー3DS LLと『プチコン3号 SmileBASIC』、それから『プチコン3号 公式ガイドブック』を30セットずつ、貸し出させていただきました。

中村: ありがたくお借りしております。お返しするのが何年後になるかわかりませんが。

大見: 外箱も綺麗に保管してあります。

中村: もともと私の方も、そうした取り組みの必要性はずっと感じていたんですよ。今まで学校というのは教員の力でなんとかしようと思っていたんですね。それが今や限界に来ている。いろんな子どもがいるし、いろんな教育の形があっていい。ところが、学校の先生というのは、もちろんいろんな方がいらっしゃいますが、おしなべてワンパターンなんですね。なのでスマイルブームさんだけでなくて、いろんな外部の力を利用させてもらって、子供たちのためになるのであれば、どんどんやったらいいと。それで、ちょっとでも子供たちが関心が持てたとか、おもしろいと思ったとか、そういうきっかけが生まれたら、それで十分。そういう考え方で、いろんな方と連携できたらいいなと思っていたんです。

徳留: 僕としては大見先生の言葉を信じた形ですね。実際に教室で子供たちを相手に授業をされている方が、うちの子供たちには「このやり方が良いんじゃないか」と手を挙げてくれて、実際にやると言ってくれているわけですから。



―――ただ、そういったことを「めんどくさい」と感じる校長先生が多いのも事実です。

徳留: 大見先生は「口説く」って言ってました。

中村: なんか言われたら、自分が責任をとれば良いんですよ。子どものためになっていて、企業さんも好意で力を貸してくれると言われている中で、どこがあかんのという感じです。

―――しかし、ハードもソフトも相応のお金がかかっているわけで、企業としてどうなんでしょう?

小林: もともと『プチコン』シリーズを作っていること自体が、わりと泥船というか。自分と社内のプログラマー2人で、休日に作っているくらいで。あまり経費を使わないで作る形をとっていますから、それが広まっていくのは、逆にありがたい話くらいで。しかも私立ではなくて、公立校ですからね。

―――たしかに私立だと簡単かもしれませんね。

小林: そうそう。公立ということで導入事例にも適していますし。あと、うちはこういう変なモノを作る会社なんですという、販促グッズという意味合いもあります。実際、普通の会社はやらないと思うんですよね。正直にいって、あまりお金にはならないので。

―――そうですよね!

一堂爆笑
《小野憲史》

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