日本で映画を創ることが難しい理由!?・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第26回 | GameBusiness.jp

日本で映画を創ることが難しい理由!?・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第26回

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ギャガコミュニケーションズ(現在の株式会社ギャガ)に転職したのは1989年のことだった。その前年の1988年の11月ごろまで、アポロン音楽工業というレコード会社に勤務していた。当時、アポロンとギャガはビデオの版権ビジネスで取引をしており、僕がアポロンからギャガに転職することは、クライアントからスタッフの引き抜きに見えるのではないかという判断もあり、入社する時期は2月ごろにしようという話をギャガ経営サイドと申し合わせていた。

当時はまだ転職は珍しいほうで、28歳での転職だったが、約3か月、休暇を取るという方法を使った。休みの期間を使って2度目のニューヨーク旅行に行ったことをよく覚えている。88年の1月4日頃に成田空港からニューヨーク・ケネディ空港に降り立ったのだ。フライトはボーイング747-400。実はその前年に初めてニューヨーク旅行をしたことがあったが、当時のアポロンの先輩に頼まれてニューヨークのガイドブックを作る手伝いをすることになったのがきっかけだった。

ちょうどニューヨーク滞在中の1月8日のことだった。朝、新聞を見ると7日に昭和天皇「裕仁」が亡くなったというニューヨークタイムズを見た。英語だったので、はっきりとは覚えていないが、「日の出ずる国のエンペラー・ヒロヒト死す」という見出しだったと思う。あれから約四半世紀が過ぎた。ギャガからスタートした映像や映画との関わりも長くなった。

自分で劇場での映画配給宣伝にも関わったし、映画製作委員会も組成し、資金を集めたこともある。劇場用映画の製作も携わった。それにしても、映画ビジネスが厳しいとか、映画館への集客が大変だとか、30年以上前から同じようなことを繰り返し叫ばれながらも常に新作映画は配給され続ける。「まったく映画ってやつはもう!」っていう感じで、関わる人たちが懲りない何かしらの魔力のようなものが存在するのだろう。

どこかが倒産したり、解散したって、新しく参入する人も会社がいる。まして、東京キー局や大手代理店の旗振りで開局記念とか銘打てば数億円単位の資金が集まったりするから不思議なものだ。おそらくは話題の映画に出資したとか、映画を製作に参画したというのはとてもステイタスが高い行いのように思われるのではないだろうか。総合芸術としての完成形という昔ながらの言い伝えのようなものがこの世界ではまだ通用するのだ。しかし、DVDになったとたん、「あの作品なんだったけかな?」という程度のテンションになってしまうこともこの頃の作品は多くなってきており、劇場でのヒットがイコールDVDでの高回転率ともいかないようだ。もちろん逆もまた真なりなの。

そのようななかで、別のコラム(「サブカル黙示録」で検索)では日本で大作の特撮映画が成功しない理由を書いた。こちらでは別の切り口で書いてみたい。日本では唯一、奈良橋陽子さんを除けばキャスティングディレクターは居ないのではないだろうか。つまり、ある映画の主人公に適役の役者を探して、その映画のクオリティアップに貢献することが求められる。ハリウッドはこの部分がとても比重が大きく、最近噂される「バットマン」シリーズでも従来のクリスチャン・ベールから、噂ではオーランド・ブルームか、ベン・アフレックあたりが候補と言われているが、世間的にはベンは相当不評のようだ。しかし、好評不評にかかわらず、その作品に最適なキャストをアレンジすることが仕事だ。

最近観た「パシフィック・リム」は冒頭10分ほどで概要のバックストーリーが紹介され、あとはロボット対怪獣大戦に突入するという潔さがある。邦画ではなかなかここまで割り切ったことはできそうにない。映画の歴史もハリウッドとはまだ25年くらいの差があるはずなので、そんな簡単にキャッチアップできるはずがないだろう。

一般的には、主人公たちの魅力をバランスよく(ある種の行政的な措置?)演出するために、作品の印象散逸することがある。本来はアクション映画で訴求すべきものが、スーパーヒーロー的恋愛的物語に変質してしまったりすることもある。それとセリフや演出に説明をくどくどと行う流れも邦画ならではのものかもしれない。

おそらくは映画に関わる出資パートナーの要望や周りの力関係によるものが大きいのではないだろうか。日本では、真っ当なキャスティングからの映画製作ができないとなると、キャストに合せて映画創りを行う・・・という本末転倒のような製作作業が行われることになる。キャストに話題性があればまだしも、無理やりねじ込んだような感じがあったり、キャラ同士を立たせようという無理な演出が施されるとストーリーが無茶苦茶になってしまう、本来の脚本になかったような、ラブロマンス要素を盛り込んだりという惨事を引き起こすことにもなる。まして新進の女優、俳優などを起用しようものならば両雄並び立つような演出が施された日にはもうオリジナル作品などどこ吹く風のまったく新しい解釈の作品になってしまうこともある。そんなことは読者の皆様のご存じのとおりだろう。

私の長年の映画業界の友人が良いことを言っていた「ホン(脚本)以上によい作品にはならない」と。でもその「ホン」自体がキャストや出資関係の微妙なバランスシートの上に成り立っているようではいつまでたってもいい作品は望めないでだろう。

■著者紹介
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

現在はインディーズゲーム制作中「モンケン」 電子書籍 「エンタメ創造記 ジャパニーズメイカーズの肖像 黒川塾総集編 壱」絶賛販売中

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《黒川文雄》

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