家庭用ゲーム産業がダメになった理由・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第12回 | GameBusiness.jp

家庭用ゲーム産業がダメになった理由・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第12回

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6月30日、土曜日、新宿住友ホール、GameBusiness.jpとコナミデジタルエンタテインメントが共同開催する「コナミソーシャルコンテンツセミナー」に参加させてもらいました。休日にも関わらず、会場には200名ほどの参加者がおり、関心の高さを感じさせました。

内容自体にはあまり触れませんが、社外に対して機密性の高い情報の多い中で、当日、開示された情報は参加者にとっても今後の参考になったのではないでしょうか。

私自身も『ドラゴンコレクション』が導入される前後にコナミデジタルエンタテインメントに在職したことは貴重な経験だと思っており、その当時の開発スタッフのおかれた状況や心境、周りを支えた販売促進関係のスタッフの努力などを改めて思い返す機会になりました。

当日の発表で、興味深かったのは、コナミという会社がオールラウンドな攻撃守備範囲を持っていることです。これは私自身も在職当時大変興味をもっていた部分ですが、エンタメのあらゆる部分をカバーしている会社としては他に例を見ない規模をもっているというものです。同時に、可能性がありそうだと判断された部分への人材や投資は積極的に行うという部分が印象に残っています。逆に言えば、そうでなくなった部分への原資は減ることになります。そのあたりの資本主義的傾向は明確で、ゆえに早期にソーシャルゲームシフトを導入し、現在、ソーシャルゲーム系の開発チームで600人を超える陣容を誇っているというわけです。

しかし、コナミのように大きくソーシャルゲームに舵を切った会社ばかりではありません。むしろ、多くの家庭用ゲームソフトメーカーは立ち遅れました。ハイスペックな家庭用ゲームハードとガラケーやスマフォンを見比べればその可能性は当然低いもので、敢えてそのロースペックで何かチャレンジをしようと言うモチベーションは多くのゲームメーカーにはなかったのではないでしょうか・・・。

開発者や技術者はともすれば自身の可能性やマシンやスペックの可能性に対してチャレンジをしたいという生き物ですから、初めから限界が見えているマシンを相手に本気を出そうと思わなかったことも参入が遅れた要因とも言えます。

さて、要因はそれだけではありません。家庭用ゲームメーカーには過去の多くのレガシーコンテンツが埋蔵されていました。それらは、新興のソーシャルコンテンツパブリッシャーやポータルにとっては魅力的に映ったはずです。そして、それらを活用して簡易なソーシャルコンテンツを創ろうというのが顧客へのアプローチとしても早道と考えたというものです。

その結果、家庭用ソフトのオリジナルとはかけ離れたソーシャル系コンテンツがずいぶんと出来上がりました。家庭用ソフトメーカー側は、ソーシャル系パブリッシャーの提案した内容に関して、担当者をひとり起用して、「YES」か「NO」で判断し、その結果をソーシャル系パブリッシャーが修正していくという方法をとりいれたものが多かったようです。そのようなコンテンツが家庭用ソフトメーカーに、働かざるとも大きな収益をもたらすことになりました。メーカー側としても従来は数十億円かけていたコンテンツ開発をすることもなく、一人二人の担当者をたてることで、数千万円単位の収益が月次ベースで上がってくるわけですから止められません。

そのような側面から考えれば、コナミデジタルエンタテインメントの『ドラゴンコレクション』の成功は見ならうべき好事例ではないでしょうか。とはいえ、「ドラコレ」の開発にも苦労はあったようで、「とにかくやる」、「周囲の理解を得るには大変だった」「誰もやらないからやる」というコメントがありましたが、騙してでもやるくらいの気概がないと成功しなかったのでしょう。その意味では、そこに一歩先じた理由や組織力があったのではないでしょうか。

■著者紹介

黒川文雄 (くろかわふみお)
メディアコンテンツ研究家
1960年・東京都生まれ。武蔵大学卒。レコード会社を経て、株式会社ギャガコミュニケーションズ(現・ギャガ)、株式会社セガエンタープライゼス(現・セガ)、株式会社デジキューブを経て株式会社デックスエンタテインメントを起業。映画製作配給、オンラインゲーム企画開発運営に携わる。その後株式会社ブシロード副社長、株式会社コナミデジタルエンタテインメントを経て、現在は株式会社NHNジャパンにてオンラインゲームの企画開発運営に携わる。一方で数々のエンタメ産業への造詣が深くメディアコンテンツ研究家としてコラム執筆を行う。ブログもご参照ください。Twitterアカウントはku6kawa230
《黒川文雄》

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