オートデスクが目指すクラウドの活用と「Project Skyline」が実現する次世代ゲーム機向け開発パイプライン・・・マーク・プティ上級副社長に聞く | GameBusiness.jp

オートデスクが目指すクラウドの活用と「Project Skyline」が実現する次世代ゲーム機向け開発パイプライン・・・マーク・プティ上級副社長に聞く

オートデスクでゲーム、映画、テレビなどの分野を統括するメディア&エンターテインメント部門の上級副社長を務めるマーク・プティ氏が来日。GameBusiness.jpではプティ氏にオートデスクの全社戦略や「Autodesk Gameware」の今後の展開について聞きました。

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オートデスクでゲーム、映画、テレビなどの分野を統括するメディア&エンターテインメント部門の上級副社長を務めるマーク・プティ氏が来日。GameBusiness.jpではプティ氏にオートデスクの全社戦略や「Autodesk Gameware」の今後の展開について聞きました。
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オートデスクでゲーム、映画、テレビなどの分野を統括するメディア&エンターテインメント部門の上級副社長を務めるマーク・プティ氏が来日。GameBusiness.jpではプティ氏にオートデスクの全社戦略や「Autodesk Gameware」の今後の展開について聞きました。

―――まず自己紹介をお願いできますか?

オートデスクでメディア&エンターテインメント部門の上級副社長をしているマーク・プティと申します。元々は25年前にビジュアルエフェクトの制作者からキャリアを始めました。なので、クリエイティブな仕事がいかに大変でツールがどのような役割を果たすか理解しています。Softimageを経てオートデスクに加わった後も、より良いツールを生み出す仕事に従事しています。もっとも、すべき事はまだまだ沢山ありますけどね。

―――では、すべき事として今オートデスクが取り組んでいるのはどんな事でしょう

テクノロジーを使ったツールという意味では、クリエイティブな分野でも「クラウド」という言葉がもっと重要性を持ってくると思います。ゲームでも映像でも、制作には非常に大きなコンピューティングパワーが必要になってきています。クラウドを活用することでこのパワーを柔軟に利用できるようになります。既に我々のツールをクラウドと融合させるために大きな努力を払っているところです。

―――Mayaや3ds Maxなどのツールがクラウドに対応していくということでしょうか?

その通りです。これには3つの意味があると思っています。

まずは先程も言ったように、大きなコンピューティングパワーをオンデマンドに利用できるようにするということです。レンダリング、シミュレーション、ベイキングなどパワーを要する処理は沢山あります。どんな会社でもこのような高負荷な処理のために環境を整えられるわけではありませんから。

次にスタジオ内のコラボレーションや共同作業を円滑に進めるためにクラウドを活用するということです。

最後はもう少し先の未来ではないかと思いますが、ツールをサービス化していくという点です。現在、プロトタイプ段階ですが、タブレット端末でMayaのレンダリングを行うというものを実験しています。重い処理であってもクラウドで行えられれば端末がどんなものであっても関係なくなります。

いま、オートデスクではこの分野に大きな投資を行なっているところです。

―――大規模な投資ができないデベロッパーでもハイパフォーマンスを利用できるように?

その通りです。それに、これは非常に重要なことだと思っています。ハードウェアは非常に大きな資本投下が必要になります。しかし、プロジェクト単位でコンピュータインフラを借りるようなことも可能になってくれば、小さな会社であっても大手に対抗できるようなクリエイティブを発揮できる余地ができます。

―――既存のオートデスクの顧客はプロフェッショナルなユーザーが中心だったと思いますが、個人や独立系デベロッパーに対してもアプローチを強めていますね

我々は、それを仕事にしているかそうでないかに関わらず、誰もがクリエイティブな才能を発揮することができると考えています。クリエイティビティには色々なサイズがあると思っています。ですから、プロフェッショナルなユーザーだけでなく、それ以外の人々にもクリエイティブを楽しめるツールを提供しようとしています。特にスマートデバイスでは顕著です。

iPhoneやiPad向けの「SketchBook」は誰でも使える2Dペイントソフトです。3Dの分野でも幾つかのモデリングツールを提供しています。「123D Catch」、「123D Sculpt」、「123D Make」の3つがありまして、撮った写真から3Dモデルを制作するものや、それをカットしたり接合したりといった加工を行うツールです。アップルはiTunesで「Rip, Mix, Burn」(リッピングし、ミックス、CDを制作する)という言葉を使いましたが、我々は「Scan, Modify, Print」(スキャンし、加工し、プリントする)というキャッチコピーで、最後に3Dプリントするところまでを一括で可能なツールを作ろうとしています。

―――モバイルへの取り組みも大きな課題ではないでしょうか?

モバイルには既に大きな取り組みが行われていて、既に全ての製品がモバイルプラットフォームでも使えるようになっています。Gamewareの例では、「Beast」はプリコンピューティングのイルミネーションを実現するものですが、モバイルでも活躍しています。「Scaleform」ではGDCで見せた最新版4.1からゲームの全てをFlashで作る機能が導入され、既に『TwinSpin』という例が出ています。

■ゲーム開発の未来
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―――オートデスクのミドルウェアはGamewareとして展開を始めていますが、ゲーム分野に力を入れる理由を改めて教えていただけますでしょうか?

1つは我々のゲームビジネスが非常に上手くいっているということがあります。従来通りのDCCツールだけでなく、新しく始めているミドルウェア、その両方で業界の変化をサポートできています。

もう1つはコンテンツクリエイションというものがゲーム業界で更に重要な課題となっていることが挙げられます。それは、ソーシャルやカジュアルあるいはモバイルといった分野、それから次世代ゲーム機、その両方のケースでコンテンツクリエイションの効率化は重要性を増しています。カジュアルデベロッパーにおいては予算が限られ、次世代機向けのデベロッパーにおいては非常に複雑で精緻なコンテンツが求められています。オートデスクではこの次世代機で求められる環境づくりについても複数のデベロッパーと協力して「Project Skyline」という名称で取り組み、新しい世代のパイプラインを作ろうとしています。

―――Project Skylineは昨年のGDCで発表されたわけですが、現在はどのような状況でしょうか?

とても上手くいっていまして、まだ公表されているものはありませんが、実際に次世代機向けのプロジェクトの本番環境で使われています。当然、想像できるように非常に強力なハードですから、それに相応しいようなハイクオリティで、リアルで、本当に感情を伝えるようなキャラクター、そして真実味のある世界が描かれています。Project Skylineでは、映画会社が使っているようなクオリティのテクノロジーを、ゲームというリアルタイムの世界の中で実現しようとしています。今、とても刺激的な時間を過ごしています。

―――具体的にはコンテンツパイプラインをどう変えるのでしょうか?

幾つかポイントがありますが、核となるのはデータモデルです。これは現在、中間フォーマットとして提供している「FBX」を拡張したもので、これを用いてゲームエンジンとDCCツールをリアルタイム(ライブ)に接続します。これを核にしながら、生産性を上げる仕組みを幾つも提供します。

―――メディア&エンターテインメントの垣根を超えるようなことも起こっていると聞いています

そうですね。ゲームのテクノロジーを工場のレイアウトに応用するというようなことは既に行われています。機械をどこに置き、人の導線をどう設計し、最適化していくのかというトライ&エラーをゲームエンジンを応用して3D空間を構築してシミュレーションするというような事です。また、製造や建築業界では「Showcase」という、プレゼンテーションにゲームエンジンを使ったレンダリングを行う製品があり使われています。家具のIKEAの今年のカタログの写真の60%は3ds Max を用いて作られたものです。今までは写真を撮影していましたが、それをデジタルに作成するようになったのです。

新分野への取り組みは labs.autodesk.com にてその一端を明らかにしています。

―――せっかく日本にお越しになったので、日本市場についても教えていただけますでしょうか?

日本はもちろん我々にとって非常に重要なマーケットです。

日本のゲームメーカーは家庭用でもモバイルでも非常に良い地位にいます。また、新しいマーケットがどんどん出てきていて、それに対処するのは日本の会社にとっても他の地域の会社にとっても大変で、大きな努力が行われています。今までは家庭用ゲーム機(1)、家庭用ゲーム機(2)、家庭用ゲーム機(3)について考えていれば良かったのが、非常に沢山のプラットフォームが登場してきています。複数のプラットフォームで自分のフランチャイズやブランドを考える必要があります。そのために複数のプラットフォームを横断的に開発できる仕組みや、コンテンツクリエイションをより効率化する仕組みが必要です。幸いな事にオートデスクは日本のお客様とは長いお付き合いがあり強固な関係が出来ています。今後も手をとり合って、より良い開発環境を共に作っていくつもりです。

―――オートデスクの製品がゲーム開発のあらゆる段階で活用されるようになっていますね

ゲーム開発は、多くのプロセスが非常に専門的で、過去にはプラットフォームごとに様々な最適化が必要でした。しかし、全てのプラットフォームが非常に強力なものになってくる中で、それぞれに特化するのではなく、どこかに高いレベルの標準を定めてそれをターゲットに全てのプラットフォームにゲームを提供するようなことができるようになってきました。それにより、最適化ではなく、よりクリエイティブな作業に集中できるようなプロセスに変わっていくでしょう。そうなることでオートデスクの仕事がより重要になってくるのではないかと思います。

―――最後に、オートデスクがどういうゲーム開発現場を目指すのか理想像を教えていただけますでしょうか?

ゲーム、映画、テレビ、広告、何であれクリエイティブが目指すのは人々に感情を伝える事です。その核となるのは真実味のある物語とキャラクターです。人々を楽しませるのも、何かを売り込むのも、結局必要なのは惹きつけられる物語と身近に感じられるキャラクターをいかにして創造するか、が問題になります。これを生み出すプロセスは非常に複雑で技術的な問題も抱えています。オートデスクはこの複雑さと技術的な問題をまず解決していきたいと思っています。

ジェームス・キャメロンやスティーブン・スピルバーグのような人たちが我々のツールを使ってくれているのはとても光栄で、最先端分野は引き続き充実させていきます。願わくばそれに加えて、プロフェッショナルな人々だけでなく、誰でも作れるようなツールにすることができれば更にベストだと思っています。全てのクリエイティブな人々に楽しいツールですね。

私もこの業界に入って25年が経ちましたが、私自身もオートデスクとしても、すべき事はまだまだ沢山あると感じています。
《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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